ロッテはなぜライブハウスを作るのか?
ロッテホールディングスと野村不動産が、新大阪駅の近くにライブハウス「BeatParkOsaka」を作ると発表しました。CEOセオさんはこのプレスリリースを取り上げ、なぜロッテがライブハウスを手がけるのかを深掘りしています。
セオさんによると、渋谷や新宿のようなわかりやすいエンタメの中心地ではない場所で、エンターテインメントを展開する動きが非常に増えています。街づくりとエンタメをかけ合わせた新しい立地は、もはや最近のスタンダードと言っても過言ではないといいます。
ロッテといえば、日本ではガムやチョコレート、アイスといったお菓子のイメージが強い会社です。一方で韓国ではホテルが有名で、K-POPの文脈もあることから、今回のライブハウス事業にはその背景があるとセオさんは見ています。
1,600人規模の新大阪の施設、その中身は
ロッテホールディングスと野村不動産は合弁会社を作り、新大阪駅から徒歩3分にあるロッテグループの保有地にライブハウスを建てます。2026年2月に着工し、2028年3月に開業する予定で、今回のリリースはそのスタートを告げるものです。
施設は地上4階建てで、敷地面積は1,700平米ほどです。セオさんは、アリーナのような超巨大施設ではなく、Zepp ── 全国の主要都市に展開するライブハウスチェーン。数千人規模のスタンディング公演に対応する中規模会場として知られますと同じか、やや小さいくらいのサイズ感だと説明しています。
設備面では、18メートル×5メートルの大型LEDビジョンを配置し、ドイツ製スピーカーのKODAaudioで音響を整える計画です。
平日はMICE、週末はライブという二刀流
BeatParkOsakaの戦略のキーワードは、平日のMICE利用です。音楽ライブだけを目的にするのではなく、平日はMICE、週末はエンターテインメント施設として使い分ける狙いがあります。
会議、研修、セミナー
研修旅行のような報奨・招待旅行
国際会議や学術会議
展示会、見本市、イベント
さらにBeatParkOsakaは、日韓連携でK-POPを誘致し、「東京を経由せずに大阪からデビューする」と打ち出しています。セオさんは規模から考えて、超メガヒットのアーティストではなく、これからのアーティストがPOC ── Proof of Conceptの略で、概念実証のこと。新しい企画やアイデアが実際に成り立つかを小さく試して確かめる取り組みを指しますのように大阪でスタートする場を表明しているのかもしれないと話しています。
ライブハウスはどこで稼ぐのか?
ライブハウスの収益の柱は、アーティストや興行主から取る会場費です。そこにホワイエ ── 劇場やホールの客席の外にあるロビー空間。開演前や休憩中に観客が過ごす場所で、飲食や物販が行われることもありますでの飲食や物販が加わり、ロッテはコラボメニューやパートナー企業とのポップアップなどで食のノウハウを生かす考えです。
会場費
アーティストや興行主から受け取る
飲食・物販
ホワイエでロッテの食のノウハウを生かす
平日のMICE
入社式、記者発表、自治体の会議などで昼間を埋める
新大阪は新幹線で行けるため、会議や研修の会場としては非常に便利な立地です。セオさんは、ライブハウスという呼び方をしていても、稼働率80%を目指すなら平日のMICE利用は必須だと指摘しています。
ロッテと野村不動産、足りないピースをどう補うか
ロッテホールディングスと野村不動産の役割分担について、セオさんは「非常に綺麗」だと評価しています。両社が単独ではやや足りないピースを、互いに補い合う構図です。
自社の土地の提供、食の強み、韓国の文脈を生かしたK-POPやアーティストの誘致、ホテル運営の経験
ベニューの開発・運営ノウハウ
ロッテは国内に200拠点以上の自社不動産を保有しており、その中には稼働率の低い遊休不動産も含まれます。セオさんは、空き地ではないもののあまり使われておらず、持っておくだけでコストがかかる不動産だと説明しています。
ロッテ不動産は、こうした遊休不動産の有効活用について研究開発を推進すると明言しています。2025年9月にはロッテホテルズジャパンを発表し、ホテル事業の強化も打ち出しました。
セオさんの見立てでは、今回のライブハウス計画は、遊休不動産をホテルやエンタメで活用する既存戦略の「エンタメ版」です。エンタメとホテル宿泊をワンストップで提供し、街づくりに貢献する構想として考えられているのだろうと話しています。
宝塚からエスコンフィールドまで、エンタメ×街づくりの先例
エンタメで街の価値を高めるモデルは、昔から数多くあります。セオさんは古い事例から最近の事例までを挙げています。
| 企業 | 施設・取り組み | 効果として語られたこと |
|---|---|---|
| 阪急阪神HD | 鉄道付近に宝塚劇場 | 沿線の価値を上げる |
| 東急 | Bunkamuraや109などのカルチャー | 沿線の価値を上げ、渋谷といえば東急に |
| 森ビル | 六本木ヒルズ、アリーナ、美術館 | 六本木を象徴的な場所に変えた |
| ジャパネット | 長崎スタジアムシティ(ホテル・スタジアム・アリーナ) | 毎日のように2万人が埋まる |
| 日本ハム | エスコンフィールド(球場・ホテルなど) | 北広島に人が集まり、タクシーの仕事も増えた |
北海道の北広島について、セオさんは、もともと空港との中間にあたるあまり何もない場所だったと振り返ります。それが今ではものすごいことになっていて、タクシーの運転手さんも仕事が増えてしょうがないと言っているそうです。
人が集まる場所としては弱かったエリアに、企業がエンタメコンテンツとともに施設を作り、街づくりを率先してリードする。セオさんは、こうした事例がいま非常に増えていて、今回のロッテの計画もその一つだと位置づけています。
セオさんは、ロッテもエスコンフィールドや長崎スタジアムシティを見て可能性を感じたのだろうと推測します。北広島や長崎は、何万人もの人が毎日集まるとはイメージすらできなかった場所だったからです。
ライブエンタメ市場はどこまで伸びるのか?
ライブエンタメ市場は、2025年に市場規模8,564億円となり、前年比12.6%増で3年連続の過去最高を記録しました。動員数は9,200万人で7.7%伸び、公演回数も約10万回と前年比6%増で、2019年以来の10万回台に戻っています。
2035年には市場がさらに拡大し、16.8%伸びる見通しだとセオさんは紹介しています。ライブエンタメは伸びしろのある事業だといいます。
一方、ロッテグループの売上は8兆円を超えますが、そのほとんどが韓国で、国内は3兆円ほどにとどまります。セオさんは、韓国のホテルなどに依存する構造から、韓国のアセットを使って日本での展開を高めようとしているのだろうと見ています。
組む相手の野村不動産ホールディングスも、売上高7,300億円で前期比12.2%増、事業利益1,136億円と、いずれも過去最高を更新しています。セオさんは「ノリノリ」の2社が組む構図だと表現しています。
政府も、経産省がコンテンツの海外売上高を2033年までに20兆円にする目標を掲げています。インバウンドの強化や、東京一極集中を避けて郊外での展開を強める流れもあり、セオさんはエンタメが国としても追い風を受けていると話します。
1,600人という絶妙なサイズは吉と出るか
稼働率80%という目標について、セオさんは長崎スタジアムシティを訪れた経験を引き合いに出します。2万人が埋まるとは、最初は誰も思っていなかったといいます。
さすがにそんな埋まるのかな、ちょっと不安だなみたいなところから、実際やってみて、本当に埋まるということで、もっと大きくすればよかったとかね、こういう話もあったぐらい。
でもそんなん怖いじゃないですか、最初にね。
セオさんは、BeatParkOsakaの1,600人という収容数も、逆に小さすぎて「もっと大きくすればよかった」となる可能性があると話しています。
ただしサイズの選び方は戦略的です。大阪の主要ライブハウスは1,000人以下か2,500人前後に集中しており、1,600人前後の帯域は実質なんばHatch ── 大阪・難波にあるライブホール。スタンディングで1,500人規模を収容できる会場として知られます一択の状況だといいます。
その帯域は老朽化や競合の弱さもある「空白地帯」です。セオさんは、競合のいない場所で、絶妙なサイズ感を狙ったのが今回の展開だとまとめています。
新大阪という立地の課題と、狙うアーティスト層
新大阪は繁華街ではなく、通過駅として見られがちな場所です。セオさんは、ライブ後の食事をどうするかといった課題もあると指摘しています。
また、興行主やレーベルとのネットワークがない状態から始める点も課題です。K-POPに力を入れるとはいえ、大型アーティストになれば東京ドームやKアリーナのような大きな会場に向かいます。
千六百人というと、やっぱかなりね、これからのアーティストになる、推し活みたいな、多分世界になるんじゃないかなと思いますから、そこをおそらく狙っていくんでしょう。
セオさんは、BeatParkOsakaの主なターゲットは、これから育つアーティストとそのファンの推し活の世界だろうと見ています。
遊休不動産×エンタメが不動産会社の命題になる理由
ロッテホールディングスにとって今回の計画は、保有する遊休不動産を活用して商圏化する取り組みです。セオさんは、ライブハウスはそこまでリスクが大きくないこともあり、ビジネスとしては堅く、計算したうえで第1号をトライしているのだろうと話します。
ロッテは200拠点の展開を見据えており、ホテルも含めて、エンタメと新しい街づくりの開発がこれから進みそうだといいます。
背景にあるのは、東京一極集中から分散していく時代の流れです。セオさんは、東京の不動産価値が「おかしな値段」になり厳しくなってきているため、もう少し外れた場所の価値を上げることが不動産会社にとっての命題だと指摘しています。
最後にセオさんは、自社もエンタメ企業として、ソフトの提供を通じてこうした地域の活性化に貢献したいと語り、回を締めくくっています。
まとめ
ロッテホールディングスと野村不動産のBeatParkOsakaは、遊休不動産をエンタメで再定義し、平日のMICEと週末のライブで稼働率を高める計画です。CEOセオさんは、競合の少ない1,600人帯という空白を突いた戦略と、エンタメで街の価値を上げる時代の流れを重ねて読み解いています。
- 新大阪駅徒歩3分のロッテ保有地に、約1,600人規模のライブ施設を2028年3月に開業予定
- 稼働率80%の目標には、入社式や会議など平日のMICE利用が必須とされる
- ロッテは土地・食・韓国の文脈、野村不動産は開発・運営ノウハウで互いを補う
- 宝塚、東急、エスコンフィールド、長崎スタジアムシティなど、エンタメ×街づくりの先例が増えている
- 東京一極集中からの分散が進む中、郊外の価値向上は不動産会社の命題とされる


