AIを使うほど脳のネットワークは弱まるのか?
MITの論文を紹介した東洋経済のニュースによると、AIを使いすぎると脳の記憶装置としての機能が弱まる「認知負債」が生じる可能性があるといいます。
CEOセオさんはこのニュースを「AIを使いすぎるとバカになる」と端的に紹介しつつも、AIは脳の拡張装置だという見方もあり、結局は使い方次第だという立場をとっています。
もちろん使い方次第なんですけども、使い方によってはAI自身が、人間の脳をかなりバカにしてしまうということですね。
MITの実験は54人の被験者を3つのグループに分けて行われました。ChatGPTなどのLLMを使うグループ、検索エンジンを使うグループ、何も使わず自力で取り組むグループです。
CEOセオさんは、54人のデータなので全てとは言えないだろうと断りを入れたうえで、結果を紹介しています。ChatGPTを使ったグループは、脳の神経ネットワークの接続が最も弱かったといいます。
この数字から、自力で取り組む人ほど脳の接続が頻繁に行われ、AIを使う人ではそれが限りなく低くなる、という対比が見えてきます。
自分で書いた文章を思い出せない理由
実験では、ChatGPTを使ったグループの83%が、自分で書いた文章を数分後には思い出せなかったといいます。CEOセオさんは、この結果に「すごくわかる気がする」と共感を示しています。
CEOセオさんが例に挙げるのは、YouTubeを倍速で見たときの感覚です。見終わったあとに「さっきの動画は何だった?」と聞かれても、意外と思い出せないことがあります。
脳はもう刺激として見ているだけで、引き出しの中に格納されてないもんですから、もうまた引き出せないんですよね。
CEOセオさんによれば、AIでも同じことが起きています。課題やタスクをAIにポンと投げてしまうため、出てきた答えを見ても脳に定着しないというわけです。
さらに実験では、4ヶ月後にAIを外して自力で書かせても、脳の活性化はすぐには戻らなかったといいます。CEOセオさんは、これを筋トレにたとえ、使わなくなれば衰えるのは脳も同じだと話しています。
こうして認知できなくなる負債を積み上げていく状態が、AIを使うことで積み上がる「認知負債」です。
記憶も処理も外に置く時代、人間には何が残るのか?
CEOセオさんは、年齢のせいもあるかもしれないと断りつつ、最近は見たことや食べたご飯など、あらゆることを忘れやすくなっていると打ち明けます。テクノロジーに触れるほど、脳に記憶する必要がなくなるからではないかと考えています。
CEOセオさんが挙げるのは電話番号の例です。携帯電話が出る前は家の電話番号をみんな覚えていましたが、今は他人の番号すら怪しいほどで、連絡先は登録しておけば済むようになりました。
電話番号や情報を自分の脳で覚えていた
クラウドに記憶を預け、さらにAIに処理能力まで預けるようになった
クラウドの普及で記憶を外部に置くことがトレンドになり、そこへAIが登場したことで、記憶だけでなく処理する能力まで置き換わりつつある、とCEOセオさんは指摘します。
そうすると考えられなくなるし、その記憶もできない人になっちゃうんで、僕たちって本当に何なんでしょうかということですね。
CEOセオさんは逆に、リアルの体験はしっかり記憶されると考え、旅行などリアルなことをたくさんやったほうがいいのではないかと改めて感じたと話しています。
ビッグテックの巨額AI投資はどう回収されるのか?
CEOセオさんは、認知負債の流れは不可避であり、さらにひどくなるだろうと見ています。その理由として挙げるのが、ビッグテックによる巨額のAI設備投資です。
2025年の60兆円から2026年の120兆円へと、ほぼ倍の規模に急拡大しています。AmazonやAlphabet、Microsoft、Metaなどの企業は、当然この投資を回収しようと考えるはずだ、とCEOセオさんは話します。
CEOセオさんによれば、AI投資の出口は「AIの利用時間×利用料金」によるマネタイズです。単価は下がるかもしれませんが、利用時間はおそらく増えていくといいます。
しかもこれ使う時間は人間一人に対して24時間ってわけじゃないですからね。AIを使おうと思えばいくらでも使えるわけです、一人の人が。
CEOセオさんは、SNSがアテンションエコノミー ── 人々の関心や注目そのものが経済的な価値を持ち、取り合われる経済のあり方。広告収入を軸にしたSNSやメディアのビジネスと深く結びついていますとして多くの人のお金と時間を集めたように、AIは認知の外部装置として巨大な経済になる可能性があると見ています。
SNSは時間を奪い、AIは脳を奪う?
CEOセオさんはSNSとAIを、それぞれのトレードオフで比べています。SNSはショート動画のような短時間の報酬が中毒化し、集中力を下げる代わりに、お金をかけずに楽しい時間を得られるようになりました。
一方のAIは、考えることを外に置くことで効率化が進んだように見える代わりに、認知機能が下がるトレードオフがあるといいます。その分、1人でたくさんのことができるようになります。
お金をかけずに楽しい時間が得られる代わりに、集中力が低下し、時間を奪われた
1人でたくさんのことができる代わりに、思考の外部化で認知機能が低下し、脳を奪われる可能性がある
ニュースではこの状態を「脳の借金」と表現しています。CEOセオさんは、怖いとも言えるしイノベーションとも呼べるかもしれないとしたうえで、その借金を本当に返せるのかと問いかけています。
考えてから使うか、丸投げするか
CEOセオさんは、MITの実験データには見落としがちなポイントがあると指摘します。それが、AIを使う順番による大きな差です。
先に自分で考えてからAIを使う。AIを脳の拡張装置として使える
AIに丸投げしてから答えを取り込む。脳の活性が戻らない
このデータから導かれるのは、まず考えてからAIを使うという順番の大切さです。
AIを使うのはいいんだけど、まず考えてから使おうよっていうのが非常にこの、検証されるところですね。
CEOセオさんは、Mac miniでAIを動かして出てきたものを見て「いいアプリができた」と満足するような使い方は、実はかなり危険だと警告しています。
AIの生産性向上、マクロで見るとたかが知れている?
CEOセオさんは、どこまで正しいデータかはわからないとしつつ、AIによる生産性向上のマクロな数字を紹介しています。
これらの数字からCEOセオさんが言いたいのは、マクロで見るとAIによる生産性の向上はたかが知れている、ということです。
CEOセオさんによれば、AIで生産性が大きく上がったという声のほとんどはミクロな視点です。個人や少数精鋭なら、1人で何体ものAIを動かしてできることが増えます。
大企業でAIを導入し、何千時間・何万時間を削減したといっても、売上が倍になるわけではありません。人件費が削減できなければ、AIコストが増えただけになる可能性もある、とCEOセオさんは話します。
個人には追い風、AI熟練者の賃金プレミアム
マクロでは効果が小さい一方で、CEOセオさんは個人にとってAIは非常に追い風だとも話します。AIの熟練者には、60%もの賃金プレミアムがあると言われているそうです。
1人で100万円稼げるようになった、一人ユニコーンができた、といった話はニュースバリューがあり、恩恵を受ける人の声も大きいため、SNSなどで広まりやすいといいます。
世の中に出回りやすいんですけども、マクロとミクロはやっぱ違うということですね。
ただしCEOセオさんは、AI各社が巨額の投資を回収しなければならない以上、その回収は「脳の借金」から行うしかないと見ています。利用時間を押し付けるような回収モードに必ず入り、それは避けられないといいます。
ITバブルと比べてAIの生産性は小さいのか?
CEOセオさんは対策として、まずリアルの行動を増やすことを挙げます。リアルの行動をやめてしまうと、脳は本当に退化していくだろうと話しています。
歴史を振り返ると、1990年代後半のITバブルでもITによる生産性向上が期待されました。MITの論文では、今回のAIによる生産性向上はIT投資と比べて大幅に小さいというデータも示されているといいます。
FAXをメールに置き換えるなど、明確に生産性が上がった
マクロの生産性向上は小さく、個人のスケーラビリティが中心
電卓やカーナビに学ぶ「頭を先に使う」教訓
CEOセオさんは、過去のテクノロジーにも同じような例があると話します。電卓で暗算能力は下がったと言われる一方、高度な計算ができるようにもなりました。
カーナビでも、目的地まで連れて行ってくれるので覚える必要がなくなり、地理感覚を失った人が増えているといいます。それでも、だから人間がダメになったというわけではない、とCEOセオさんは捉えています。
こうした例に共通する教訓は、頭を先に使うのか、答えだけを見るのか、という違いです。カーナビでも、行き先をなんとなく考えてから使うのが理想ですが、面倒でだんだんやらなくなる、とCEOセオさんは率直に認めています。
見た目はね、若い人は最近頭もちっちゃいし、背も高いし、スタイル良くなって進化したように感じるけども、僕たちってどんどん退化してんですよね、実はね、テクノロジーによってね。
AIをピンチにするかチャンスにするかは使い方次第
CEOセオさんは、テクノロジーによる退化がいいのか悪いのか、答えは未来にしかわからないとしています。そのうえで、自然に触れたり頭を使ったりしなければ、人間がロボットに変わってしまうのではないかと懸念を示しています。
AIをピンチと捉えるか、チャンスに変えるかは、一人一人の活用の仕方次第だというのがCEOセオさんの考えです。
CEOセオさんはAIを原子力にたとえ、使い方によっては非常に役立つ一方、核爆弾のように悲しい結果にもなりうると話します。だからこそ、倫理観なども考えながらAIを使っていくのがよいのではないかと締めくくっています。
まとめ
この回では、MITの実験が示した「認知負債」を入口に、ビッグテックのAI投資の回収構造や、マクロとミクロで異なる生産性の実態が語られました。AIの利用拡大は避けられないからこそ、考えてから使う順番とリアルな体験が大切だと話されています。
- MITの実験では、ChatGPTを使ったグループの脳の接続スコアが4ヶ月で79から42に下がり、83%が自分の文章を数分後に思い出せなかった
- 先に考えてからAIを使う「Brain to LLM」と、丸投げする「LLM to Brain」では脳の活性に大きな差がある
- ビッグテックの巨額のAI設備投資は、利用時間の拡大によって回収されていくと見られている
- AIの生産性向上はマクロでは小さい一方、個人や少数精鋭には大きな追い風になっている
- AIをピンチにするかチャンスにするかは、一人一人の使い方次第とされている




