SNOWのステマ問題、何が起きたのか
2026年8月6日、写真加工アプリ「SNOW」の運営会社が、ステルスマーケティング(ステマ)を指示していたとして消費者庁から措置命令を受けました。CEOセオさんはこのニュースを、日本の規制のあり方を考える入り口として取り上げています。
SNOWは、写真の加工やメイクができる画像加工アプリとして昔から人気のあるサービスです。セオさんは、音楽生成AIのSuno ── 文章の指示から楽曲を生成するAIサービス。名前の響きが似ているため、SNOWと混同されることがありますとは別物だと断ったうえで、韓国のNAVER系のアプリだと説明しています。
問題になったのは、X上で「流行りのAI画像を試してみた」という体裁の投稿をさせていたことです。セオさんは、投稿の文面まで指示していた点が特にクリティカルだったと話しています。
ただしセオさんは、このニュースを「SNOWが叩かれた」というありきたりな話で終わらせません。同じ時期にEUではAI法の第50条にあたる透明性の義務の適用が始まっており、海外と比べると日本の状況が見えてくると考えています。
海外では規制が今AIも含めてどんどん厳しくなってる部分があるんですよね。正確に言うと、厳しくなってるというよりは、正しいガイドラインを作ろうとしている。
(ステマの件は)正直全然日本がダメなんじゃないかというレベルでもあるんです、実は。
措置命令の中身と「課徴金ゼロ」という現実
消費者庁の措置命令の対象は、日本法人のSNOW JAPANと、韓国のSNOWコーポレーションの2社です。景品表示法 ── 不当な表示や過大な景品から消費者を守るための法律。2023年10月からステマも規制対象に加わりました違反とされました。
違反とされたのは、2025年4月2日から22日間にわたってXに投稿された約72件の投稿です。一部は2026年6月まで残っていたとされ、セオさんは1年前のステマに今になって命令が出ている点にも触れています。
SNOW JAPANは第三者のインフルエンサーに、数千円から数万円の電子ギフト券を対価として渡していました。そのうえで「SNOWのAI生成画像をやってみた」という趣旨の投稿文面まで指示していたといいます。
投稿にはPRなどの表記が一切なく、一般ユーザーの自然な投稿のように見せていました。これが景品表示法第5条3号に基づく、いわゆるステルスマーケティング告示への違反とされています。
セオさんによると、SNOWの運営2社に命じられた措置は次の4点です。
- 違反表示の取りやめ
- 消費者への周知
- 再発防止策の実施
- 今後の同様の表示の禁止
セオさんは、このうち消費者への周知の効果に疑問を投げかけます。1年前の投稿について今さら「ステマでした」と伝えても、届くかどうかわからないからです。
もうこれ週刊誌とちょっと似てるんですけど、週刊誌もね、言ったもん勝ちみたいな。
やっぱその一発目でしっかりリーチしちゃうとね、もうそれ(後からの訂正)も意味ないんですよね。
さらに今回の命令には、課徴金も罰金もありません。処分されたのは広告主の2社だけで、投稿したインフルエンサー72名は処分の対象外です。
ちょっと週刊誌っぽい感覚で、もうやったもん勝ちみたいなところちょっとあるんですよね、このステマ。
なぜマイクロインフルエンサーが狙われたのか
セオさんは、SNOWが現在どんな立ち位置にあるかも説明しています。もともとは画像加工アプリですが、今は「AIカメラ」という打ち出し方もしています。
日本では年間4600円のサブスクリプションプランがあり、全世界の月間アクティブユーザーは1億人を超えているといいます。有料サブスク数は2023年から2024年にかけて130%増え、2025年もさらに13%伸びているそうです。
セオさん自身もSNOWを使っていて、自分をよく見せることに特化したアプリとして洗練されていると評価しています。「終わったアプリ」と思われがちでも、実際には有料ユーザーが増えているという見方です。
今回のステマには、「AI生成画像」という流行の言葉を使って新機能を訴求する狙いがあったとセオさんは見ています。AIで画像加工するならSNOW、という時代に合わせたリブランディングの意味もあったと考えられます。
報酬が数千円から数万円だったことから、起用されたのは基本的にマイクロインフルエンサーだったとセオさんは推測しています。影響力の大きいインフルエンサーなら、文面まで指示される依頼は受けないかもしれないという見立てです。
ステマがバレちゃうと、本当はインフルエンサーって活動しにくくなるはずなんですけど、マイクロインフルエンサーぐらいだと、なんかね、変わらないっていうかね。
サンプルを配って自由に投稿してもらうだけなら問題はない、とセオさんは言います。問題は文面まで指示したうえで、ステマへの理解が弱いマイクロインフルエンサーを狙った点にあり、これではステマの数がなかなか減らないと指摘しています。
急成長するインフルエンサー市場と、執行わずか6件
ステマの手法が広がる背景について、セオさんは口コミの信用性の高さを挙げます。口コミの中でも最も信用されるのは友人からのものですが、インフルエンサーの口コミも効果が高いことが数字で示されていて、CPA ── 顧客を1人獲得するのにかかった広告費。低いほど効率よく顧客を獲得できていることを示しますの面でも上位の手法だといいます。
セオさんが紹介した日本のインフルエンサー市場の数字は、次のとおりです。
2024年の内訳は、YouTubeが280億円、Instagramが260億円、その他が320億円とされています。ソーシャル広告全体から見ればまだ一部ですが、成長率が突出しているため広告費が流れ込んでいるとセオさんは説明します。
しかもステマは広告費として計上されないので、実態はもっと大きいだろうとセオさんは見ています。表に出ていないステマも多くあるはずだという考えです。
その根拠として挙げられたのが、執行件数の少なさです。ステマ規制が厳しくなった2023年10月1日から3年弱で、措置命令はまだ6件しかないといいます。
景品表示法全体で見ても、直近1年の課徴金は3億3000万円にとどまるそうです。ステマ単体では課徴金すら課されていないため、セオさんはここでも「やったもん勝ち」の構図を指摘しています。
EUのAI法は最大24億円、日本は「注意」レベル
セオさんが日本と対比したのが、EUのAI法第50条の透明性の義務です。違反した場合の罰金は最大24億円、または全世界売上高の3%のいずれか高い方とされています。
EUのAI法第50条の適用が始まったのは8月2日で、SNOWへの措置命令のちょうど4日前でした。セオさんは、同じ時期に並べてみると日本の甘さが際立つと話しています。
行為の是正を求める措置命令が中心で、課徴金・罰金はなし
違反すれば最大24億円か全世界売上高の3%の高い方という金額ペナルティ
これを考えると、本当に日本甘すぎないかということなんですよね。
セオさんは、「日本は規制が厳しすぎる」という一部の起業家や識者の主張にも異を唱えます。ビットコインなど一部の分野ではそうした面があるかもしれないとしつつ、食品などでは海外よりゆるい規制も多いと話しています。
そのうえでセオさんは、明確に悪いことについては厳罰化が一部必要だと考えています。例として挙げたのが交通の分野です。
ながらスマホは2019年の大改正で厳罰化され、翌年には件数が半分以下になったといいます。飲酒運転についても、セオさんが子どもの頃はよく見られたものの、厳罰化によって一気に減り、事故も大幅に減ったと振り返っています。
こうした事実から、セオさんは人間はある程度の金額の罰則がないと行動を変えにくいのではないかと述べています。EUの姿勢も、その考え方に沿ったものだと見ています。
インフルエンサーを罰しないのは日本だけ?
日本のステマ規制で処分されるのは広告主だけです。これに対して米国では、広告主とインフルエンサーの双方に罰金を含む罰則を科しているとセオさんは説明します。
インフルエンサーにこれもし罰金したら、課徴金で例えば数千万来ますよなんて言われたら、多分余計なステマ受けないでしょ。どう考えてもね。
インフルエンサー本人に罰則があれば少なくともブレーキがかかり、受けた人は一発でアウトになるため、市場が健全化していくとセオさんは考えています。
EUでは、AI法の最大24億円または世界売上高3%に加えて、プラットフォーム向けには最大で世界売上高の6%という罰則があるといいます。売上が何兆円規模の企業なら、罰金は何百億円にもなりうる水準です。
セオさんが紹介した各地域の規制の対象を整理すると、次のようになります。
| 地域 | 主な対象 | 金額ペナルティ |
|---|---|---|
| 日本 | 広告主のみ(インフルエンサーは対象外) | ステマ単体では課徴金なし |
| 米国 | 広告主とインフルエンサーの双方 | あり |
| EU | 広告主・インフルエンサー・プラットフォーム、生成コンテンツやディープフェイク、チャットボットなど | 最大24億円または売上3%、プラットフォームは売上6% |
日本だけなんですよ、こんなインフルエンサー規制対象外で、自由にさせてるのは。
セオさんは、市場が拡大するまではある程度規制を緩めてインフルエンサーを自由に動かすことも必要だったと認めます。ただし規模が大きくなったら締めるのが世の流れで、広告主だけを叩く風習は見直すべきだと話しています。
多くのメディアは今回の件を「悪質なステマの摘発」として企業のコンプライアンス意識の問題として報じています。一方でセオさんは、インフルエンサー側への罰則や政府の制度づくりを世界と同じ水準に近づけるほうが、最終的に健全な市場につながると考えています。
AI詐欺広告が野放しになる日本の課題
罰則の弱さは、ステマ以外にも影響しているとセオさんは指摘します。TikTokやFacebookでは、堀江さんや伊沢さんなど有名人の姿を生成AIで作った詐欺広告が頻繁に出てきます。
あんなの(AI詐欺広告)も要するに罰則がないんですよ、日本ってほとんどが。
セオさんによれば、EUのAI法のような罰則は、日本企業であってもEUで活動すれば適用されます。逆に日本にそうしたルールがないままでは、Facebookなどのプラットフォームにいくら文句を言っても通用せず、プラットフォームもやりたい放題になっているといいます。
日本の対応の遅さを示す例として、セオさんは過去の事例も挙げています。2012年の食べログやらせ問題からステマが規制に組み込まれるまでには10年以上かかりました。
米国は10年以上前から金額ペナルティを運用しているとセオさんは話します。これだけの罰則があれば、偽レビューはやりにくくなるはずだという見方です。
最後にセオさんは、特にAIの分野ではこれから想像できないことが起きるため、ある程度の規制強化が必要だと述べています。誰かがやるまで動かない「右に倣え」の姿勢を、日本は少し考え直すべきではないかと問いかけて番組を締めくくりました。
まとめ
SNOWのステマ措置命令は、課徴金なし・広告主のみが処分対象という日本の規制の軽さを映し出しています。CEOセオさんは、EUのAI法や米国の運用と比べたうえで、罰則を世界水準に近づけることが健全な市場とAI時代への備えにつながると考えています。
- SNOWは投稿文面まで指示したステマで措置命令を受けたが、課徴金はなく、インフルエンサー72名は処分対象外だった
- ステマ規制の強化から3年弱で措置命令は6件にとどまり、セオさんは「やったもん勝ち」の構図を指摘している
- EUのAI法第50条は最大24億円または売上3%、米国は広告主とインフルエンサーの双方に罰則を科している
- 交通違反の厳罰化の例から、明確に悪い行為には金額の罰則が効くとセオさんは見ている
- 罰則の弱さがAI詐欺広告の横行にもつながっており、特にAI分野では規制強化が必要だと問いかけている






