「AIで旅行会社は不要」の予測はどうなった?
Airbnbは2026年8月6日に第2四半期決算を発表し、翌7日に株価が一時最大14%上昇しました。CEOセオさんによると、4年ぶりの高値です。
株価上昇のきっかけは、通期売上高の見通しの上方修正です。Airbnbは売上成長率を少なくとも15%前後とし、通期の調整後EBITDA ── 利払い・税金・減価償却などを差し引く前の利益の指標。企業が本業でどれだけ稼いでいるかを比べるときによく使われますマージンも35.5%以上に引き上げています。
1年ほど前には、AIによって旅行の手配がすべて置き換えられ、AirbnbやExpediaのような旅行関連企業が苦しくなるのではないかと心配されていました。CEOセオさんは、その予測から一転して絶好調になったことに注目しています。
(旅行の)プランはね、作ったとしても、最終的に泊まる場所とか、エアラインの予約とか、まあこういったものに関しては、どこかに行くしかないというところもあります。
ChatGPTやClaudeで旅行プランを作る人がいても、宿泊や航空券の予約は結局どこかのサービスで行う必要がある、というのがCEOセオさんの見立てです。
Airbnbの第2四半期は、売上高が前年同期比17%増、総取扱高(GBV)が272億ドルで16%増となりました。総取扱高は日本円で約4.2兆円にあたります。宿泊数も1億4800万で10%増えています。
AIで問い合わせの45%が人を介さずに解決
Airbnbの決算は、売上高や宿泊数などすべての指標が好調でした。CEOセオさんによると、AirbnbのCEOは中東の紛争に不安を感じていたものの、世界的に底堅い成長があったといいます。コロナ後の旅行需要の伸びにも乗っています。
CEOセオさんが特に注目したのは、AirbnbのAI活用です。Airbnbはもともと、予約1件あたりの顧客サポートが重いサービスでした。そのサポートコストが、AIによって前年同期比で16%下がっています。
AirbnbのAIアシスタントが対応した問い合わせのうち、45%は人間のエージェントを通さずに解決しています。この割合は前年の四半期から大きく上がっており、対応言語も50以上あります。
半分ぐらいは(問い合わせ対応を)もう自動化できちゃったということですね。これ結構大きいんじゃないでしょうか。
Airbnbは世界中の物件を扱うため、あらゆる言語や時間外の問い合わせに対応しなければなりません。カスタマーサポートの信頼が揺らぐと事業全体がマイナスになるため、これまで大きな手間とコストをかけてきました。
CEOセオさんは、Airbnbのサポート業務をAI化できることは事業の構造改革だと捉え、「まさにAX推進」と表現しています。CEOセオさんの会社でも、複雑な音楽ビジネスの業務を全社で棚卸しし、AIトランスフォーメーション ── AIを業務や事業の仕組みに組み込み、働き方やコスト構造そのものを変えていく取り組み。AXとも略されますに力を入れているそうです。
在庫を持たないマーケットプレイスの強み
Airbnbはそもそも在庫を持たないマーケットプレイスで、総取扱高から手数料を取るビジネスです。CEOセオさんは、以前の回で取り上げたUberと同じモデルだと説明しています。
Uberのテイクレート ── 取扱高のうち、プラットフォームが手数料として受け取る割合のことは24%ほどでしたが、Airbnbは2026年第2四半期で13.2%と前年同期と同水準でした。約4.2兆円の取扱高から13%ほどを受け取ると、売上は約5600億円(36億ドル)になります。
Airbnbは物件を持たないため、成長しても資本がほとんど増えません。その結果、EBITDAマージンが35%ほどになり、フリーキャッシュフローも伸びています。
需要が増えれば増えるほどどんどん利益が増えていく。しかもこのAIエージェントがうまく活用できることによってコストも下がっていく。
CEOセオさんは、Airbnbの構造を「結構最強の構造になるかもしれない」と評価しています。そして今回の決算は、上方修正そのものより、コスト構造の置き換えによって良くなった点が本質だとしています。
CEOセオさんは、前回取り上げたOpenAIの事例とも比べています。OpenAIはAIによる改善で提供価格を80%下げましたが、Airbnbの場合はAIの効果が価格ではなく利益に乗っています。
ただし、Airbnbはもともと原価がかかっていないため、OpenAIのように80%も下げるほどの構造改革はできず、単純には比較できないとCEOセオさんは補足しています。そのうえで、AIで収益性を上げることが現実的になってきたと話しています。
AIアシスタント
問い合わせの45%を人を介さずに解決
サポートコスト減
予約1件あたりのコストが16%減少
売上が伸びてもコストが増えない
物件を持たない構造と合わさって利益が拡大
民泊から旅の全工程へ、ホテルは入り口に
Airbnbといえば、かつては民泊で泊まる場所を探すサービスというイメージでした。今のAirbnbは、食料品の調達、レンタカー、空港送迎などを加え、旅の全工程をサポートしています。
Airbnbはホテルの在庫の取り込みも始めていて、ホテルの宿泊数は住宅事業の約3倍のスピードで伸びています。さらに、ホテルを初回予約した人の約35%が、その後に住宅を予約しています。
いきなり民泊はちょっとなというところで、ホテルから入ってみて、サービス的に問題がなければ、今度は民泊でもやってみようかなというのがあるんでしょう。
CEOセオさんは、Airbnbのホテル予約を新規獲得のチャネルとして見ています。ホテルは住宅より収益性が低いと考えられますが、新規ユーザーを住宅予約につなげる役割を果たしています。
ホテルを初回予約
民泊に抵抗がある人の入り口になる
サービスを体験
問題がなければ民泊も試してみようと考える
住宅を予約
初回ホテル予約者の約35%が住宅を予約
グループ旅行のニーズも伸びています。ホテルでは全員の部屋がうまく揃うとは限りませんが、Airbnbならヴィラを丸ごと借りることができます。寝室ベースの宿泊は10億泊を超え、過去最高になりました。
日本とインドが牽引する初回予約の伸び
Airbnbはアプリ経由の宿泊も伸びていて、全体の64%を占めます。前年は59%でした。初回予約者も11%伸び、過去4年で最高です。初回予約者の伸びを牽引しているのは、日本、ブラジル、インドです。
日本では、出発地ベースの宿泊数が前年同期比で15〜19%伸びており、国内旅行が牽引しています。CEOセオさんは、円安とインフレで海外旅行に行けず、国内のホテルも高いため、国内で民泊を選ぶ人が増えているのではないかと推測しています。
インドは出発地ベースで60%伸び、初回予約者は2倍になりました。CEOセオさんは、インドでは旅行者そのものが純粋に増えているのだろうと見ています。
中東の戦争のような出来事があると、旅行は抑えられがちです。CEOセオさんは、ヨーロッパ系だけを狙う旅行会社は苦しくなる一方で、全世界で展開するAirbnbは影響をあまり受けていないと指摘します。Airbnbの時価総額は16兆円を超え、株価は安値から61%上がっています。
世界市場でも旅行者は増えています。2025年の国際観光客の到着数は15億人で4%増、2026年第1四半期も3億700万人で2%増と、中東情勢があっても伸びています。CEOセオさんは、Airbnbの地域分散が効いているのかもしれないと話しています。
日本の訪日外国人客は、2026年6月が314万人で前年同期比6.8%減でした。ただし台湾、韓国、米国、インドなどでは6月として過去最高で、上半期の累計は2100万人を超えています。一方で、京都などでは暑すぎる夏の影響で場所によっては客が減っているようだと、CEOセオさんは話しています。
日本の民泊の届け出は4万2000件で、海外と比べると少なく、提供側に伸びしろがあると言われています。民泊の利用者の外国人比率は62%です。CEOセオさんは、外国人を泊めたくない日本人もいるため供給が急増するかはわからないとしつつ、ホテル価格が上がれば民泊を貸すニーズは出てくるかもしれないと見ています。
Booking.comやExpediaと比べて何が違う?
CEOセオさんは、Airbnbを旅行業界の競合と比べています。Airbnbの売上成長率17%は、Booking.comの2倍以上です。利益率はどちらも35%ほどで同水準です。
株価の評価を示すPER ── 株価が1株あたり利益の何倍かを示す指標。将来の成長が期待される企業ほど高くなりやすい傾向がありますは、Airbnbが40倍、Booking.comが23倍、Expediaが19倍で、Airbnbはおよそ2倍の評価を受けています。CEOセオさんは、Airbnbの未来の成長性が見込まれている証拠だとしています。
競合各社の勝ち方の違いも、CEOセオさんは整理しています。
| 企業 | 戦い方 | PER |
|---|---|---|
| Airbnb | 供給と質、グループ旅行などの用途でポジショニング | 40倍 |
| Booking.com | 規模を生かしてコストを削る | 23倍 |
| Expedia | BtoBや他社向けで稼ぐ | 19倍 |
CEOセオさんによると、Trip.comは政策の追い風に乗っています。AI活用はExpediaなどもかなり進めているため、Airbnbの評価はAIだけでなく、ホテルとは違うリスク分散ができるプラットフォームである点にあると考えられます。
戦争などが起きると、その地域のホテルは大きな打撃を受けます。CEOセオさんは、分散型でビジネスをしてきたAirbnbが今勝っているのではないかと話しています。
AIに駆逐されると言われる企業ほど伸びる?
AIは旅行会社を苦しくすると言われていましたが、Airbnbの決算は蓋を開けるとAI活用のポジティブなニュースとして語られています。
CEOセオさんは、AirbnbのAIは売上を作ることにはあまり貢献していないかもしれないと話します。一方で、コスト削減という、AIの業務改善や効率化の分野では非常に良い事例だと評価しています。
ビジネスそのものなので、改善というより挑戦になる
これまでかけてきたコストをどれだけ圧縮できるかが問われる
AIを導入しても、AIのコストがかかり人も減らず、結果的にコストが増えただけという事例は少なくありません。そのなかでAirbnbは、カスタマーサポートにかかっていたコストをしっかり削減できた点が良い事例だとCEOセオさんは見ています。
CEOセオさんは、Airbnbの流れを追う企業がこれから増えると予想しています。人のコストがかかっていた業務がAIに置き換わることで、企業の収益が良くなるという見方です。
CEOセオさんはこれを「逆転」の発想と呼び、AIに脅かされる企業ほど利益が伸びる余地があるという視点を示して、リスナーに意見を求めて回を締めくくっています。
まとめ
Airbnbの2026年第2四半期決算は、AIに置き換えられると心配された企業が、AIによるコスト構造の置き換えで利益を伸ばした事例でした。CEOセオさんは、物件を持たないマーケットプレイスの構造とAI活用の組み合わせを強みと見ています。
- Airbnbは通期見通しの上方修正で株価が一時14%上昇し、4年ぶりの高値をつけた
- AIアシスタントが問い合わせの45%を人を介さずに解決し、予約1件あたりのサポートコストを16%削減した
- ホテル予約が新規獲得の入り口になり、初回ホテル予約者の約35%が住宅を予約している
- 日本やインドが初回予約の伸びを牽引し、全世界への地域分散が中東情勢の影響を和らげている
- 人のコストが重い企業ほど、AIでコスト削減に成功したときに利益へ大きなレバレッジがかかる




