子供向け日焼け止めが計画比2倍のヒット
今回SeiyaがテーマとしたのはSeiya、花王が出している子供向け日焼け止めのヒットです。花王のビオレキッズスタンプUVが、大きく売れているというニュースを取り上げます。
Seiyaによれば、この商品は2026年3月の発売から約3ヶ月で28万本を出荷しました。計画比の約2倍の売り上げで、3度増産するほどのヒット商品になっているといいます。
特徴は、日焼け止めの出方にあります。普通のチューブのようにクリームがピューっと出るのではなく、肉球の形でスタンプ式に出てくる仕組みです。
肉球の形でスタンプ式で出てくるっていうのでSNSでも話題になって、Instagramのショート動画も560万回以上再生されて。
SeiyaはこのニュースをSNSでの話題性とあわせて紹介します。国内だけでなく海外からも注目され、大人でも欲しいという声が多いといいます。
Yujiがなぜこのテーマを選んだのかを尋ねると、Seiyaは仕事上のきっかけがあったと明かします。どうやったら商品を使ってもらえるかを考える機会があり、この事例がすごいと感じたことが理由でした。
日焼け止めを「塗らない人」の心理
話は日常のスキンケアへ移ります。Yujiは日焼け止めを普段から塗っていて、化粧水も洗顔もパックも毎日やっていると話します。肌が綺麗だとよく言われるそうです。
一方でSeiyaは、仕事の関連で同世代に話を聞くと、日焼け止めをほぼ塗らない人が多いことに気づいたといいます。なんとなく必要だと思っていてもやらない、という状態です。
(日焼け止めは)やんなくてもいいですからね、極論。
死なないじゃないですか。死なないし別に寿命に影響ないでしょ。
この「別にやらなくても死なない」という発想は、Seiyaにはなかった視点でした。Seiyaは、男性も女性も美しく・かっこよくあろうとするのが基本で、スキンケアはやるものだという意識を持っていたと語ります。
Yujiは、塗らないことをむしろ美徳だと思っている人もいると指摘します。「男らしく」「小麦色の肌が」といった価値観です。ここでSeiyaは、この心理そのものが面白くなってきたと反応します。
「使う前後の感情」まで設計するという発想
ニュースに戻り、Seiyaはこの商品の核心を説明します。日焼け止めを塗るという面倒な行為を、子供が、そして親子で楽しめる体験に変えているというのです。
商品そのものを設計するっていうよりも、その使う前後の感情だったり、行動を設計しているっていうところが深い。
Seiyaによれば、子供は機能だけでは動かず、親も「正しいから」だけでは続けられません。だからこそ習慣化には楽しさや愛着が必要で、子供がやりたくなれば親の負担も減る、という設計思想があるといいます。
容器づくりの過程も具体的です。プロトタイプを子供に使ってもらい、その様子を動画で解析して、出し過ぎてしまうといった課題を見つけて改良していく方法がとられたと紹介されます。
Seiyaは、自分の仕事はウェブ広告がメインで、こうした体験設計はあまりしてこなかった感覚があると話し、戦略を考えるYujiに体験の設計を考えることがあるか尋ねます。
P&Gの家庭訪問と、ウェブでの体験設計
Yujiは、体験設計を考える場面はそう多くないものの、考えはすると答えます。そのうえで、先月ごろに見たテレビ番組でのP&Gの調査を例に挙げます。
P&Gじゃないですっていう、P&Gとは名乗らずにご自宅まで行って、どんな生活してるかみたいなのをチームと社長がいまだに行ってますみたいな。
実際に商品を触るエンドユーザーのところまで見に行くことの大切さを、Yujiはこの事例から感じたと語ります。
Seiyaは、以前Yujiが話していた「企画をどう作るか」という話も、物はなくても体験設計を考えたうえで企画するという意味では、同じ考え方だと気づいたと振り返ります。
Yujiは体験設計を、商品を手に取ったお客さんがどんな行動をしてどんな感情を抱くか、そしてどう抱かせたいか・どう行動させたいかまで考えることだと言い換えます。
ただしウェブの場合は、目の前でお客さんが触っているわけではないため、想像でやらないといけない場面が多いとYujiは補足します。
そこで手がかりになるのがヒートマップです。ウェブサイトのどこを触っているかを可視化するもので、Seiyaは意図しないところがクリックされていると気づくことがあると話します。
3Dプリンターで何十パターンも試した容器デザイン
Seiyaは実物を持ち込もうと、門司港とサンキュ!ドラッグを見に行ったものの、置いていなかったと報告します。エリアに届いていないのか、増産中でないのかは分からないままでした。
容器の形状についても説明されます。上部が猫耳のようになっていて顔が描かれ、スティックのりを少し大きくしたような大きさだといいます。
この容器は、3Dプリンターで何十パターンも作り、ドラッグストアの売り場を見て、どういうものが使われやすいかまで確認して作られたとSeiyaは紹介します。
Seiyaは、本当に動かしたい人の状況まで見に行くことが必要なのだと、この事例から受け取ったポイントをまとめます。
いつ日焼け止めを「塗り始める」のか
Yujiは、化粧水よりも日焼け止めのほうが、特に男性で使っている割合が少ない気がすると指摘し、塗り始めるタイミングはどこなのかと問いを立てます。
Yuji自身は幼少期から母に塗るよう言われ、早くから塗っていました。中高でもちゃんと塗っていたといいます。
一方でSeiyaは、ある体験がきっかけになったと語ります。2026年3月に日焼け止めを塗り忘れて1日サッカーをし、翌日に肌の状態を鏡で見たのです。
わ、なんか結構老けて見える。見えた。肌がボロボロの状態を見せるのは申し訳ないなみたいな。
この「人に見せるのは申し訳ない」という感覚が、Seiyaが日焼け止めを塗る理由になっていました。ここから、塗り始めるきっかけには本人のハッとした瞬間や親の影響など、いくつかのパターンがあることが見えてきます。
肌への意識を左右する「時代と年代」
Yujiは、年齢が上がるにつれて匂いや見た目を気にしてケアを始める人が多いと話します。日本では誰かに迷惑をかけたくないから始める、というパターンが多いのではと分析します。
Seiyaも、自分が日焼け止めを塗る理由や、白髪染めを始めた理由が同じだと共感します。会社員時代、後ろを通る年上の女性たちに「白髪すごいことになってる」と言われたことがきっかけでした。
(白髪を)気にさせるのもなんか、余計なコミュニケーションかなみたいな。
一方でYujiは、10代20代では違う理由があると指摘します。K-POPの影響もあり、色黒がダサいという価値観が広がっているというのです。
一番はやっぱその服が似合わない。着たい服に色が黒いと似合わないなって思って、めっちゃ塗ってたんですよ。
Yujiはモード系やサーフ系の服との相性から日焼け止めを塗っていたと振り返ります。テニス部時代には女子と一緒に塗っていたとも語り、Seiyaはその意識の高さに驚きます。
Seiya自身は、大学生の頃までは焼けているほうがかっこいいという感覚があったと話します。夏に海へ行く前に、5月ごろから外で軽く焼いていたそうです。
Yujiは、こうした違いは「時代」が大きいと結論づけます。自分の大学時代には韓国系が入ってきていて、白くて細い男子の肩身の狭さがまだ残っていたといいます。
Seiyaも、かつてのメンズファッション誌に代表される流行を思い出し、時代とメディアの影響を受けていたことに納得します。
商売をするうえで、こうした時代や年代の変化をちゃんと捉えなければならない。Seiyaは、考えることが多く、商売はとても難しいと実感を口にします。
デザインの敗北と、日焼け止めの「大勝利」
話は「デザインの敗北」というネットで語られる言葉に移ります。おしゃれさを優先しすぎた結果、わかりやすさという本来の機能が損なわれてしまう現象を指します。
Seiyaは例として、スタイリッシュにデザインされたコンビニのコーヒーマシンを挙げます。サイズ表記がRとLだけでは分からず、店側が「ホット・レギュラー」などと貼り紙で補っている状況です。
もう一つの例として、Seiyaはジェンダーレストイレの案内も挙げます。おしゃれなマークだけでは伝わらず、ラミネートした紙で行き先の案内が貼られていたといいます。
おしゃれに見せようとしすぎたが故に、元の目的であるわかりやすさみたいな機能性のところがもう機能してないと。
作っている現場では「これかっこいいじゃん」と進んでいても、受け手の捉え方は人によって様々で、結果として機能しなくなることがある。Seiyaは、その捉え方こそが重要になると話します。
そのうえでSeiyaは、今回の日焼け止めはむしろ「デザインの大勝利」だと位置づけます。説明しなくても伝わり、やりたくなるデザインだからです。
見た目を優先しすぎて、サイズや行き先が伝わらず、貼り紙で補う必要が出てしまう
説明なしで押す場所や使い方が伝わり、面倒な行為を自然にやりたくさせる
うんこ漢字ドリルとキャラ弁に共通する軸
Yujiは、この商品を聞いて「うんこ漢字ドリル」を連想したと話します。ただ辛いだけの漢字ドリルに、うんこのイラストでゲーム性やコミカルさを足して大ヒットした事例です。
あんまりやりたくないことを面白くさせてやってもらうみたいな。軸は一緒なのかなって思いました。
嫌なことをやりたくなるように面白くするという点で、日焼け止めとうんこ漢字ドリルは同じ軸にある、というのが2人の見立てです。
この話を受け、Seiyaは自分自身が「嫌なことでもやるのが美徳」という昭和の部活的な感覚を持っているかもしれないと気づきます。人に動いてもらうには、楽しさや愛着を作る必要があると考えを改めます。
(自分は静かにやったらいいけど、)人に動いてもらおうと思ったらそういうのは必要だよなっていうのはちょっと思ったな。
さらにYujiは、身近な例として主婦が作るキャラ弁を挙げます。弁当を全部食べてほしい、苦手な食べ物を食べてほしいという思いから、料理に工夫を凝らす行為です。
Seiyaは、アンパンマンの形のポテトを母親が選んでいたことを思い出します。子供が楽しんで食べられるように、という設計がそこにあったと振り返ります。
世の中は愛に溢れているのでは
Seiyaは、こうした事例を並べると、思ったより世の中は愛に溢れているのではと感じたと語ります。
一方でYujiは、企業側からすればただ消費させたいだけかもしれない、と冷静な視点も添えます。
世界の捉えようとしては、その愛が多いみたいに見ていくのは一つでいいのかもしれない。
どちらの見方もあるうえで、世界を「愛が多い」と捉えることも一つの選択肢だ、というところに2人は着地します。
最後にSeiyaは、正しさややった方がいいというだけでは物事は続かず、人は動かないと改めて整理します。習慣化には楽しさと愛着が必要で、説明しなくても人の行動を変えられるデザインを意識するとよいと話します。
まとめ
面倒な行為を楽しい体験に変えたビオレの子供用日焼け止めを起点に、正しさだけでは人は動かないこと、そして体験や捉え方の設計がヒットを生むことが語られた回でした。SeiyaとYujiは、日焼け止めを塗る理由が時代や年代で大きく変わることや、身近なキャラ弁にも同じデザインの発想があることに気づきます。
- 日焼け止めを塗るという面倒な行為を、肉球スタンプで親子が楽しめる体験に変えた設計がヒットの核になっている
- 習慣化には正しさだけでなく、楽しさと愛着が必要で、子供がやりたくなれば親の負担も減る
- 3Dプリンターや動画解析で、実際に動かしたい人の状況まで見に行くことが商品設計を支えている
- 日焼け止めや白髪染めを始めるきっかけは、時代や年代、そして「人に見せるのは申し訳ない」という心理に左右される
- うんこ漢字ドリルやキャラ弁も、嫌なことを面白くしてやってもらうという同じ軸を持つ



