なぜ今、ジブリをそっとマーケティング視点で眺めるのか
第4回はSeiyaの企画で、スタジオジブリを取り上げます。ふとXでジブリが目に入り、国民的な作品がどう生まれるのかを改めて眺めたくなったことがきっかけだと話されています。
今まではこう金曜ロードショーでやってるとか、映画やったら見に行くとか、それぐらいだったけど、改めてそっとマーケティング的に眺めるとどうなんだろうっていうので取り上げてみたいなと思いました。
Xでは金曜ロードショーの放送時に投稿が急増し、「バルス」の同時投稿でサーバー落ちが懸念されるほどの盛り上がりが起きることも話題に上がりました。
今回に向けて、Seiyaはスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが各作品の生まれ方をまとめた本を、一部ピックアップして読んだと語っています。
熱いね、ジブリ。ジブリの作られ方というか。こんな熱い思いを、みたいな。
千と千尋ももののけ姫も。数字で見るジブリの強さ
Seiyaはジブリの興行収入を紹介します。歴代の上位に、千と千尋の神隠しやもののけ姫が入っていると整理されました。
具体的な数字として、鬼滅の刃が上位で約400億円、千と千尋の神隠しが316億円、もののけ姫が214億円だと挙げられています。最近公開された「国宝」は207億円で、もののけ姫の下につけていると話されました。
海外でも人気は高く、千と千尋の神隠しは約400億円規模。君たちはどう生きるかが294億円、ハウルが235億円、もののけ姫が212億円、崖の上のポニョが205億円だと紹介されました。
Yujiが「興行収入はどのくらいでヒットと言えるのか」と尋ねると、その場で調べて10億円が一つの基準だと確認されました。
この辺の上位に入ってくるものって言ったら、もう基本的には名前知ってるもんね。
Seiyaは、出版でのベストセラーが10万部あたりと言われることと並べ、10億円と10万部という数字感を一つの目安として挙げています。
興行収入だけでは語れない。世代を超えて残る資産
Seiyaは、となりのトトロのように公開当時の興行収入だけでは語れない作品があると指摘します。テレビ放送やグッズ、親から子への共有を通じて、時間をかけて国民的な記憶になっていくと話されました。
短期のヒットではなく、長く愛される資産がつくられている点がジブリの特徴だと整理されています。
さらにSeiyaは、子供の頃と大人になってからで作品の見え方が変わることにも触れました。子供の頃は冒険やファンタジーとして楽しみ、大人になると働くことや家族、孤独、自然との距離感といったテーマが見えてくると語っています。
もののけ姫とぽんぽこ。好きな作品から見える魅力
Seiyaが一番好きな作品にもののけ姫を挙げると、Yujiは子供の頃によく見ていた作品として平成狸合戦ぽんぽこを挙げました。
ちっちゃい時は平成狸合戦ぽんぽこ、めっちゃ見てた。
Yujiは、ぽんぽこで狸が金玉袋を使って人間と戦う場面が衝撃だったと振り返ります。人間が森を壊し、住む場所を失った狸たちが人間世界に化けて馴染んでいく物語だと説明されました。
一方でSeiyaは、もののけ姫を公開当時に一度見たあと、比較的最近に見直したときの体験を語ります。自然との関係を描いていたことに改めて気づき、考察も見るようになったと話しました。
なぜ人はジブリを見たくなるのか。深いストーリーと一貫したタッチ
Seiyaが「ジブリを見たくさせる魅力はどこにあるか」と問いかけると、Yujiはまずストーリーの深さを挙げました。
メッセージが一個とはちょっと思えない。考察する人いっぱいいるじゃないですか。
Yujiは、宮崎駿の好みや裏ネタを読み解く考察が多く、普通のアニメより哲学的なメッセージ性を感じると話します。Seiyaも、宮崎駿の切り抜き発言からその深さが垣間見えると同意しました。
続けてYujiは、絵のタッチの独特さも魅力に挙げます。知らない作品でも「これはジブリかな」と思わせるほど、絵に一貫性があると指摘しました。
そこに一貫性があるというか、ブランドとしての、想起させるものっていうかね。
トトロのカンタのような顔立ちのキャラクターや、天空の城ラピュタの「3分間待ってやる」で知られるドーラのような登場人物が、作品をまたいで現れることも例に挙げられました。
Seiya自身の魅力の語り方は、大切なことを言っている気がするから見たくなるというものでした。作品に触れると、いろいろなことが思い出される感覚があると話しています。
子供にも大人にも届く二層構造。立ったキャラクターたち
Yujiは、子供の頃はメッセージを理解していなくても面白いと思って見ていたと振り返ります。ここから、子供でも大人でも楽しめる二層構造の話になりました。
子供でも見れるし、大人は大人で深く見れるみたいな。
Seiyaは、誰が見てもわかる素敵な部分と、そうではない部分があると整理します。そうではない部分とは、作品に込められたメッセージ性や想いだと語られました。
Yujiはさらに、キャラクターの立ち方にも触れます。千と千尋の神隠しのように多くのキャラクターが出てきても、カオナシや坊、湯婆婆など、観客がしっかり覚えていることが指摘されました。
ポスターの余白と静かなコピー。ジブリが売っているもの
Seiyaは、ジブリの魅力の要因として空気感、余白、ストーリー性を挙げ、その象徴としてポスターに注目します。ビジュアルと静かなコピーの組み合わせが印象的だと話されました。
具体例として、もののけ姫の「生きろ。」、天空の城ラピュタの「ある日、少女が空から降ってきた……」、千と千尋の神隠しの「トンネルの向こうは、不思議の街でした。」が挙げられ、余白があり考えさせられるコピーだと語られました。
そのうえでSeiyaは、この回の核心となる問いを投げかけます。
世界観で選ばれるもの。ダリ、ディズニー、LUSH
世界観がどうつくられ、信頼や愛着を生むのか。この問いから、Yujiの好きなブランドへ話が広がります。まずYujiが挙げたのは、現実では起きえない世界を描く画家サルバドール・ダリでした。
過去でも未来でもない、異次元みたいな世界観をすごいパッと浮かんだ。
ここからYujiは、実はプロダクトではなく世界観が好きで選んでいるものがあるのではないかと投げかけます。ディズニーも、ミッキー単体ではなくその世界に浸りに行くものだと語られました。
Seiyaは、ディズニーランドに時計がなくトイレに鏡がないという有名な話を挙げ、来場者が現実に戻らず世界に浸れるようにする工夫だと補足しました。
Yujiは前日に通りかかった石鹸ブランドのLUSHも例に挙げます。色とりどりの石鹸、明るい店内、匂い、店員の元気な実演が、通るだけで楽しい空気感の世界観をつくっていると話されました。
一つの価値に整える。ブランドを守るための決め事
Seiyaは、以前読んだブランディングの本の一節を思い出します。届けたい価値を一つ決めたら、それに向けてすべてを整えることがブランディングだという内容でした。
ある一つの届けたい価値を決めたら、それに向けて全てのことを整えることだ。
ジブリ、ディズニー、LUSHは、いずれも一つの価値を決めて全体を整えているように見えると整理されました。
Yujiは、ミッキーには公式のキャラクターデザインマニュアルがあり、決められた通りに描ける人が世界に数名しかいないという話を紹介します。世界観を守るために描き方が厳密に管理されているのです。
Seiyaは、2023年のゲーテの記事で読んだ、ジブリがキャラクター商品の陳腐化を防ぐために売上に上限を設けているという話を挙げました。売上上限を100億円程度に決め、それ以上は売らないという方針だと紹介されています。
3年、10年という制作。企画がブレることの意味
話題は制作にかかる時間へ移ります。Seiyaによると、ジブリの作品は企画だけで3年ほど、作り始めから公開までを含めると10年以上かかることもあるようです。一度考えた企画を寝かせ、数年後に再び動き出す進め方もあると話されました。
Yujiは、ジブリの考察で知られる岡田斗司夫の話として、制作期間が長いために宮崎駿の当初のメッセージがブレていくという指摘を紹介します。
最初に宮崎駿さんがこれを作りたい、これをメッセージにして作りたいって思い始めるらしいんですけど、やっぱブレるらしいんですよ。
これに関連してSeiyaは、千と千尋の神隠しの原型となった「煙突描きのリン」という1年ほど温めた企画が、鈴木敏夫プロデューサーの意見で作り直された経緯を紹介しました。
当時ヒットしていた1998年の踊る大捜査線 THE MOVIEが現代の若者を等身大に描いていたことを踏まえ、鈴木プロデューサーは宮崎駿に「作るべきものは子供のための映画ではないか」と提案し、方向転換が決まったと語られました。
なぜ手放せたのか。愛着と時間を捨てる決断
Seiyaは、企画から数年、手を動かしてからも1年以上温めた作品を手放すことの難しさに注目します。愛着や気持ち、お金、時間が積み重なったものを途中でやめるのは容易ではないと語られました。
Yujiは、家を建て始めた後に「やっぱりマンションに住む」とやめるような状況にたとえます。ここまで作ったものをどうするのか、という問いが残るからです。
Seiyaは、映画制作では関係者が家づくりよりはるかに多く、取引先を含めれば何十人、何百人規模になると指摘します。全関係者が「せっかくここまで作ったのに」と感じる中で方向転換する重さが語られました。
そのうえでSeiyaは、目の前のことから離れて判断する勇気や決断力が、いいものを作るためには必要なのだと受け止めています。
剣豪の戦いのような制作現場。バチバチが生む作品
Seiyaは、千と千尋の神隠しの制作でアニメーターの安藤さんとの間に大きな衝突があったエピソードを紹介します。安藤さんはもののけ姫の制作を終えた頃、アニメーションのスタイルの違いを理由に退職を申し出ていたそうです。
鈴木プロデューサーは「全部任せるから」と伝えて安藤さんを引き留めます。実際の制作では、安藤さんが作ったものを夜更けに宮崎駿がチェックし、朝までに安藤さんが直すという、剣豪の戦いのようなやり取りが繰り返されたと語られました。
それでこう生まれていったのが千と千尋。物作りの姿勢というか、すごい学びになるなっていう。
関連してYujiは、前年に行った久石譲のライブと、過去のジブリ大規模コンサートの映像に触れます。宮崎駿と鈴木敏夫が花束を渡す場面で涙する様子を見て、この二人の間にもバチバチがあったのではと想像したと話しました。
Yujiは、世界観をつくっているのは宮崎駿の側であり、久石譲はその期待に応える形だったのではないかと整理しています。最終的な決定は宮崎駿にあったのだろうと語られました。
ブランドが弱くなっても。良い作品に向き合い続ける姿勢
Seiyaは、ジブリのマークがもののけ姫あたりから使われ始めたと紹介します。千と千尋の神隠し以降は、ブランドが弱くなったと言われることもあったそうです。
東映の担当者から興行成績の低下を指摘され「宮崎さんも終わりですね」と言われたこともあったといいます。それでも宮崎駿は、良い作品づくりに集中していて興行成績はあまり考えていなかったと、魔女の宅急便の頃に語っていたと紹介されました。
自分たちが思いを乗せて作れるものを作り続ける姿勢が、ジブリの一貫した特徴だとSeiyaは受け止めています。
Yujiは、今後の展望として、韓国ドラマやK-POPが世界に広がるなかで、日本のアニメ文化も重要な柱だと語りました。ジブリの作品がさらにグローバルに広がってほしいと話しています。
めっちゃ広がっていってくれたら嬉しいですよね。
いいものを続けた先に。ブランドになるということ
締めくくりとして、二人はこの回を通じて感じたことを話します。Yujiは、まだ見ていないポニョやハウルがあると打ち明け、次に見たい作品として挙げました。
Seiyaは、ジブリのブランド化の過程を調べて感じたことを語ります。マーケティングとして意図的に発信するやり方もある一方で、ジブリは良い作品を作り続けた結果としてブランドになったように見えると話しました。
これを受けてYujiは、最初からいいものができたのではなく、いいと信じたものを続けた先に本当にいいものになるのがブランドではないかと応じます。
今作ってるものややってることを信じて、軸はぶらさず、筋は通して、やり続けることで、最終的にいいブランドになるんじゃないですか。
まとめ
ジブリが長く愛される理由を、興行成績、制作の裏側、そして世界観づくりの視点からそっと眺めた回でした。売っているのは物語ではなく世界観であり、良い作品を真摯に続けた先にブランドが生まれるという視点が語られました。
- ジブリは短期のヒットではなく、テレビ放送やグッズ、世代間の共有を通じて長く愛される資産をつくっている
- 子供にも大人にも届く二層構造と、絵のタッチやキャラクターの一貫性が、ジブリらしい世界観を支えている
- 届けたい価値を一つ決めて全体を整えること、そして陳腐化を防ぐ売上上限のような決め事が、世界観を守っている
- 企画に3年、制作全体で10年以上をかけ、愛着や時間を手放してでも方向転換する決断が、良い作品を生んでいる
- ブランドは意図してつくるより、いいと信じたものを軸をぶらさず続けた先に、周りがつくり上げていくもの


