コンビニは高いのに、なぜ吸い込まれるように入ってしまうのか
今回のテーマは「安くないのに売れるコンビニの正体」。企画を持ち込んだYujiは、コンビニが好きで、空腹でなくてもふらっと入って買ってしまうと打ち明けます。
Yuji自身も、コンビニがスーパーより高いことはわかっているといいます。それでも足が向いてしまうという矛盾が、この回の出発点です。
別になんか空腹じゃないんだけど、なんとなく(コンビニに)入っちゃって、なんとなく買っちゃったりとか。
一方でSeiyaは、コンビニをむしろ控えようとしている派だと話します。理由は、なんとなく高いイメージがあることと、添加物や塩分が気になることでした。
俺やっぱコンビニちょっとこう控えようみたいな気持ちあるわ。
ただ、そう言うSeiyaも家のすぐ近くにコンビニがあり、時間がない昼ご飯は結局コンビニで買っているといいます。控えたい気持ちと利用実態が食い違っているのは、2人に共通していました。
値上げの中でコンビニの売り上げが伸びているという事実
Yujiはニュースを調べて、円安と物価高で値上げが続く中でも、コンビニの売り上げが伸びていると紹介します。
Yujiが挙げたのは2026年3月のデータで、大手3社の売り上げは前年比で平均3%ほど伸びているといいます。
ただし内訳は一様ではありません。客単価は3社とも上がっている一方で、セブンイレブンだけは客数を公表しており、その客数は1%下がっているとYujiは説明します。
人(客数)は増えてない。けど、単価は上がってるっていうことが言える。
背景として、Yujiは2026年4月の飲食料品の値上げが約3000品目、平均の値上げ率は14%というデータも補足します。生活の価格に敏感な時代であることは大前提だと確認しました。
値上げの実感として、2人はお菓子やおにぎりの価格を挙げます。Seiyaは、以前100円ほどだったチョコレートが180〜190円になったと驚きます。
おにぎり、納豆巻き今いくらか知ってます?俺納豆巻きよく買ってたんですけど。
Yujiによれば、以前は100円台前半だった納豆巻きが、今は198円。ほぼ倍近い水準です。ここまで上がっても売れているという事実が、次の問いにつながります。
安さだけで買っていないなら、人はコンビニの何に価値を感じているのか
Yujiは、これだけ値上げしても売れているなら、人は安さだけで買っているわけではないと整理します。では何に価値を感じてお金を払っているのか、とSeiyaに問いかけます。
つまり安さだけじゃどうやら買ってなさそうだと、人は。じゃあ何に人は価値を感じてこのお金を払ってるのかと。
Seiyaがまず挙げたのは「場所」、つまり利便性でした。本当はスーパーに行きたくても、歩いてプラス10分かかるならコンビニを選んでしまうといいます。
まあ歩いたらプラス10分かかるしなとか踏まえて、俺はコンビニを選んで、まあ利便性っていう感じかな。
Seiyaはさらに、いつでも空いている時間の使いやすさや、「何かしら食べられるものがあるだろう」という選択肢の安心感も挙げます。近くの弁当屋だと営業を確認する手間があり、その天秤でコンビニに流れると話しました。
Yujiは、こうした要素を便利さ・時間・手間の少なさ・安心感として受け止めます。安心感は、どの店に入っても一定のクオリティが得られるフランチャイズならではの価値だと補足しました。
俺結構海外よく行ってますけど、やっぱマックとスタバの安心感って激しくありますもんね。
そしてYujiは4つ目の価値として「気分転換」を挙げます。アイスやスイーツといったご褒美、一番くじのような特別感も、コンビニで買っているものの一部ではないかと考えます。
雑誌を眺め、新商品を探す。コンビニが果たしている「メディア」の役割
Seiyaは、自分がコンビニに行く理由の1つに、近くの店にまだ雑誌が置いてあることを挙げます。帰りに寄って翌朝の朝食を選びつつ、雑誌を眺めるのがルーチンになっているといいます。
今流行ってる、あ、じゃあブルータスで、あ、こんな特集やってんだとか、(略)ジャンプで、あ、宇宙兄弟終わるんだとか。
Yujiも、コンビニは最新の商品が一番最初に並ぶ場所だと感じています。たけのこの里ときのこの山を合体させた商品のように、SNSで話題になったものを実際に手に取りに行くことがあるといいます。
Seiyaはここから、コンビニの「メディア化」という見方を持ち出します。インスタで見ていた「大人男子ラボ」のヘアケア用品がファミリーマートに並んだことに、大衆化を感じたと話します。
コンビニに出しました。コンビニの全国のファミリーマート1900店舗にみたいな。のを見て、(略)コンビニに置かれるんだっていう話。
Yujiは、ネットで流行っているものと接触できる場所が、地方でも都会でもどこにでもある点に注目します。コンビニがトレンドと生活者をつなぐ接続ポイントになっているという見立てです。
Seiyaは、これをマーケティングの視点で流通の話として捉え直します。人にどう見てもらい、どう接続するかを考えると、コンビニやドラッグストアをどう押さえるかが重要になると話しました。
第2回で扱ったナイキの話とも重なると、Yujiは指摘します。お菓子や小物のような消費財は、接点を作ろうとするとスーパーやコンビニになりやすく、メーカーにとって直接の接点になっているのではないかと考えました。
値上げと人口減の中で、コンビニ各社は「買う理由」をどう作っているのか
話は企業側の視点に移ります。Yujiは、値上げが続き人口も減る中で、企業は「買う理由」をどう作るかを常に考えているはずだと述べます。
Seiyaは、マーケティングでいう「誰に何を」の難しさに触れます。コンビニは利用者が多すぎて誰にが見えづらく、ブランドとして作りたい世界観との距離をどう詰めるかを考える必要があると話しました。
Yujiは、通常のマーケティングがターゲットを絞るのに対し、来る人が万人であるコンビニはどう絞っているのか、と問いを整理します。Seiyaは、コンビニは手段の1つと置いたうえで、ブランドとしてどうありたいかとどう見られるかを行き来して着地点を作るのが重要だと応じました。
ここからYujiは、大手3社の最近の施策を1つずつ見ていきます。まずセブンイレブンは「ライブミール」を進めていると紹介します。
セブンイレブンのライブミールは、出来たてと食事感をテーマにしたもの。ベーカリー導入店舗を全国8000店から1.8万店へ、2026年度中に拡大予定だといいます。便利さだけでなく、出来たて感や満足感まで取り入れる狙いです。
2人は、過去にセブンイレブンが手がけたドーナツを思い出します。施策としてはチャレンジしたものの、商品性の低さでうまくいかなかったのではないかとSeiyaは振り返りました。
その施策としてはチャレンジしたものの、商品性の低さでダメだったって話よな。
量を盛り、話題を作る。ローソンの「盛りすぎチャレンジ」の設計
続いてYujiは、ローソンの「盛りすぎチャレンジ」を紹介します。パスタやパン、おにぎりの量を150%増量するなど、お得感を目に見える形にした施策です。
Yujiは、値引きよりも量を大きくするほうが体感しやすく、お得感が伝わりやすいと指摘します。SNSでインフルエンサーが取り上げやすく、話題になりやすい点も特徴です。
体感しやすさってあるね。値引き、その値引きより、コスパっていうのかね、盛った方がいい可能性があるっていうことよね。
さらにYujiは、量を150%にしても原価が150%増えるわけではないと説明します。器などのコストも含まれるため、たとえばパスタの量を増やしても、原価自体は倍にはならないという構造です。
Yujiは、増量が来店動機になってついで買いが起き、話題性や好感度にもつながることで、回り回って利益が出る構造になっていると整理します。
Yujiは、この施策の背景にコストカットへの逆張りがあると見ています。サンドイッチの見える部分にしか具が入っていない、容器の底を上げて盛って見せる、といった話題が先にあったといいます。
そうした流れの後に「ちゃんと中身があるよ」と示す盛りすぎチャレンジが出たとすれば、タイミングとしてよくできたキャンペーンだとYujiは評価します。Seiyaは、写真より中身が多いコメダ珈琲の卵サンドを、逆張りで話題を作った例として挙げました。
日常の食卓へ入り込むファミマと、「選ばれる理由」の作り方
3社目としてYujiは、ファミリーマートの「日常の食卓へ入り込む」施策を紹介します。毎週火曜と金曜の「生活応援割」で、野菜やハム、卵、納豆といった生活必需品を多めに置いて割引の対象にしているといいます。
冷凍食品も対象になっており、Yujiは「スーパーに行ってまで買いたくないけれど、足りないものをコンビニで買える」というコンセプトに寄せていると見ます。
Seiyaは、ここでマーケティング理論を思い出します。選ばれない理由をなくしたうえで、差異を作るという考え方です。
Seiyaは、カフェを例に説明します。快適さやコーヒーの提供は満たして当然で、そこが欠ければ選ばれない。そのうえで、コメダのようにたくさん食べられるといった違いを作るのが勝負どころだといいます。
もう結局その差がない状態を作った上で、何で勝負するのかみたいな。
Seiyaは、これは仕事でも同じだといいます。デザインの質や納期は満たして当然の状態にしたうえで、どんな思いでやっているかといった違いでどう選ばれるかを考える必要がある、という話でした。
安いから選ばれる時代ではなく、納得できるから選ばれる時代
Yujiは3社の施策を整理します。セブンは食事感などの体験価値、ローソンはお得感や話題性、ファミマは生活のインフラや日常を狙っているという見立てです。
共通して言えるのは、安さそのものでは勝負しておらず、買ってもいい理由の作り方がそれぞれ違うことだとYujiはまとめます。
ライブミールで出来たて感・食事感といった体験価値
ローソンは増量によるお得感と話題性、ファミマは生活必需品の割引で日常への入り込み
Yujiは、人は節約したくても、ただ安いものが欲しいわけではないと述べます。高くても納得できる理由があれば買う、という点が大事だといいます。
そのうえでYujiは、コンビニは物を売っているように見えて、実は「買ってもいい理由」を売っているのだと結論づけます。安いから選ばれる時代ではなく、納得できるから選ばれる時代だという見方です。
Seiyaは、この話を明日からどう生かすかを問い直します。買う側が体験を求めるようになっているなら、提供する側は何が価値になっているのかに立ち返ってサービスを設計する必要がある、と改めて感じたといいます。
Yujiは、これは以前から言われてきた「物ではなく事を売る時代」そのものだと応じます。富裕層が豪華なものより、やったことのない体験を求めるという話とも一致すると付け加えました。
最後に2人は、考えているうちに目的と手段が入れ替わってしまう危うさに話を広げます。没頭するほど、いつの間にか本来の目的から外れてしまうことがあるという実感でした。
なんかAかBかCかみたいな選んでますけど、そもそも目的的にはどれでもないんですけどみたいな。
Seiyaは、目の前のことから一度離れて「なんでやっているんだっけ」と問い直すことの必要性を語ります。目的と手段の入れ替わりを自覚しておきたいというのが、2人の共通した気づきでした。
まとめ
値上げが続く中でもコンビニが売れ続けるのは、安さではなく「買ってもいい理由」を各社が違う切り口で設計しているからだ、という回でした。生活者が納得や体験を求める時代に、提供する側は何が価値になっているかへ立ち返る必要があります。
- コンビニの売り上げは値上げ下でも伸びており、客単価上昇が支えている。安さだけで選ばれているわけではない
- 人がコンビニに感じる価値は、利便性・速さ・手間の少なさ・安心感・気分転換など複合的である
- コンビニはトレンドと生活者をつなぐ接続点となり、消費財メーカーにとって直接の接点にもなっている
- セブンは体験価値、ローソンはお得感と話題性、ファミマは日常への入り込みと、買う理由の作り方が各社で異なる
- 安いから選ばれる時代ではなく納得できるから選ばれる時代であり、没頭するほど目的と手段の入れ替わりに注意が必要


