リボンモデルとは何か
リクルートでおなじみのリボンモデル ── リクルートが提唱するビジネスモデルの図解。左右がリボンのように広がり、中央でサービスが両者を結びつける形で描かれますは、ビジネスモデルの図解として知られています。ただ、はりまさんはこれを「実質グラフだ」と見ています。
あれ、ビジネスモデルの図解として知られているんですが、実質グラフだと思うんすよ。
まずリボンモデルの形から。キティちゃんのリボンのような図で、リボンの羽の右側が特定の業界の会社を、左側がそのサービスを使いたいお客さんを表します。
そして真ん中に、その両者を結びつけるサービスがあります。今回の話では、それがリクルートというわけです。
企業と、サービスを探しているお客さんをマッチングするときに、この図がよく使われます。会話の中では、リボンの結び目の呼び方をめぐって「襟の部分」「一番リボンの部分」とやり取りが続き、二人の掛け合いがにじみます。
SUUMOで見るマッチングの仕組み
具体例としてはりまさんが挙げたのが、リクルートの住宅情報サービスSUUMOです。家を貸したい、借り手を探している会社が情報を掲載します。
一方でお客さんは家を探しています。SUUMOを見て良い物件があれば、不動産屋に連絡して成約に至ります。
つまり、お客さんを探している会社と、サービスを探しているお客さんをマッチングする。これがリボンモデルで説明できるビジネスの典型です。
なぜどんな業界でも同じ図で説明できるのか
リボンモデルがすごいと言われる理由の一つは、まったく違う業界でも同じ図で説明できてしまう点です。
いろんな全然違う業界のビジネスでも、この図でだいたい説明できちゃうというのが素晴らしい。
不動産探しも、求人探しも、旅行したい人探しも、だいたいこの図で説明できます。業界が違っても、左側と右側をどう結ぶかという同じ構造で見られるわけです。
さらにリボンの羽の部分は、左右それぞれをもう一段階、二分割できます。外側が「集める」フェーズ、内側が「動かす」フェーズ、そして真ん中が「結ぶ」フェーズです。
集める
需要側と供給側の両方を、まず数として集める段階
動かす
集めた人たちを具体的なアクションに移してもらう段階
結ぶ
両者をマッチングさせ、成約につなげる段階
この構造のおかげで、サービスがもっと使われてほしいときに、集める・動かす・結ぶのどこが弱いのかを可視化しやすくなります。
両方を集めなければ価値が生まれない
マッチング系ビジネスの難しさは、需要側と供給側の両方を集めなければならない点にあります。片方だけでは数が揃わず、価値が生まれません。
さらに、集めただけでは足りません。そこから具体的なアクションに移してもらえるかどうかが、次のステップに進めるかどうかを左右します。
この一連の流れをどれだけ多く回せるかが、マッチングビジネスの肝です。リボンモデルは、その部分をズバッとまとめている図だとはりまさんは話します。
これに対して、物を作って売るビジネスは基本的に片側だけの話です。リボンでいえば左半分、供給側だけにあたります。
リボンでいうと左半分だけ。
供給側だよね。
両方を回せるようになると、それが強力に働きます。プラットフォーム系のビジネスをやるなら避けて通れない考え方だ、というのがはりまさんの見立てです。
Amazonや楽天、両側から集める強さ
やーまんさんはAmazonや楽天もリボンモデルだと指摘します。出品する人と、物を買いたい人の両方を集めているからです。
物を売りたいっていう人たちと物を買いたいっていう人たち、両方を集めてますからね。
課金の仕方はサービスによって違います。両側から取るところもあれば、片方からしか取らないところもあります。リクルートの場合は、基本的にお客さん側からは取らないモデルだといいます。
大変だけどこのモデルすごい優秀やなと思います、ほんまに。マーケットを作ってますからね、需要と供給両方集めて。
需要と供給、どちらを先に集めるべきか
リボンモデルを実際にやるとき、需要側(お客さん)と供給側(企業)のどちらを先に集めるべきか。はりまさんがクイズを出します。
需要側と供給側、どちらを先に集めればうまくいきやすいか?
多くのサイトの失敗例からのデータでは、基本は左側、つまりお客さん(需要側)から集めるほうがうまくいきやすいとされています。
やーまんさんはパン屋を例に挙げ、店を増やすよりまず「パンを食べたい人」がいないとマーケットにならない、と需要側からと答えました。
まずはそのパン屋さんを増やすことよりも、パンを食べたいっていう人がいないとマーケットにならない。
ブログやQ&Aサイトも同じで、読みたい人や答えを知りたい人が十分いれば、あとは供給側が自然に集まってきます。両方同時に集められればそれが理想ですが、リソースが限られるなら基本は需要側からだといいます。
リボンモデルは「グラフ」だ
ここで話は、この回の切り口に戻ります。はりまさんがリボンモデルを取り上げたのは、これを「グラフだ」と見立てたからでした。
リボンには大きさがあります。リボンをいくつも並べれば、その大きさで市場全体の規模を比較できます。さらに市場の中でのプレイヤーの大きさもあり、これらを並べれば複数の軸を一枚で読み取れます。
リクルートはさらに一歩進めています。集める・動かすだけでは足りないとなれば、リボンの外側にサービスを追加していくのです。
もっとリボン大きくしちゃえと。
たとえば美容業界で困りごとがあれば、その運営をサポートするサービスまで作り、使ってもらう。こうしてロックインモデル ── 利用者が他のサービスへ乗り換えるコストが高くなり、そのサービスを使い続けざるを得なくなる状態を作る仕組みを築いているとはりまさんは説明します。
ホットペッパービューティーとロックインの実際
その具体例が、ホットペッパービューティー向けの予約管理システム「サロンボード」です。美容院向けに決済や顧客管理、カルテなどを一括で担っています。
あれを一度使い始めたら、他のに変えれないっていう。
一度使い始めると、乗り換えには蓄積した資産を失うコストがかかります。結果として、ホットペッパービューティーを使わざるを得なくなる、というわけです。
実際、散髪のときにホットペッパービューティーから検索する人は多く、検索結果でも上位に来ると二人は話します。男性ユーザーも意外と多いようです。
一方ではりまさんは、あえてホットペッパーに登録されていない床屋を最近見つけたと明かします。リクルートに払う分がどこかで消費者に回収されているのでは、という「リクルート税」への意識からでした。
ナイチンゲールのグラフとナポレオン遠征の地図
リボンモデルを「グラフ」として捉える話から、はりまさんは歴史的な図解を紹介します。まずはナイチンゲール ── クリミア戦争で活躍した看護師。統計とグラフを使い、衛生状態の改善が死者数を減らすことを示したことでも知られますが考案した「コウモリの翼グラフ」です。
ナイチンゲールは看護の傍ら、衛生レベルが上がれば感染者数が減るという統計を導き出しました。それを頭の硬い上層部に納得させるため、わかりやすい図にしたのがこのグラフでした。
それを説得するために分かりやすい図にせんと、あの上の奴ら頭硬えから絶対見ねえなと。
欠けた円グラフのような、大小のピザが円形に並んだ形で、ニワトリのトサカグラフとも呼ばれます。市場の大きさを表すリボンと役割が近い、とはりまさんは見ています。
もう一つ挙げたのが、ミナールの地図 ── ナポレオンのロシア遠征を描いた図。軍の人数や進路、死者数など複数の情報を一枚にまとめ、統計グラフの傑作と評されますです。ロシア遠征を描いた地図でありグラフでもあり、6つの軸を一枚で表現しています。
木の根っこや川の流れのような線の太さが軍の人数を表し、地図上に描かれることでルートもわかり、どれだけ死者が出たかも読み取れます。情報をわかりやすくまとめることが、人を巻き込み説得する場面で強力だと、はりまさんはリボン図から思いを馳せたと語ります。
デザイナーが語る「難しいことを簡単にする」力
やーまんさんは、こうしたインフォグラフィックを自分でも作ると話します。難しいことを簡単にするのは、デザイナーの醍醐味であり得意分野だといいます。
なんか難しいことを簡単にするっていうのは、もうデザイナーの醍醐味というか、一番得意としてる部分だと思ってる。
はりまさんは、図解では何を省略し、どこを諦めるかの線引きこそがスマートさだと指摘します。ミナールの地図も、かなり省略した部分があるはずだと見ています。
最近のデータ可視化の例としては、SNSでよく見る棒グラフレースが挙がりました。時価総額ランキングやGDPをアニメーションにして、順位が入れ替わっていく様子を見せるものです。時間軸を加えることで、今まで見えなかった変化が見えるようになる例です。
需要側のデータをどう見せるか
やーまんさんは、リボンモデルでいうと供給側のデータは集めやすいが、需要側のデータを集めるのは本当に難しいと課題を挙げます。
これに対しはりまさんは、スタートアップのピッチ資料で定番のTAM・SAM・SOM ── 市場規模を3段階で示す考え方。TAMは市場全体、SAMは自社がアプローチできる範囲、SOMはそのうち実際に獲得できる範囲を表しますを紹介します。市場全体から、アプローチできる割合、顧客にできる割合へと絞り込み、最終的にどれくらいのシェアを取れるかを示す手法です。
ただし、この数字はストーリーの書き方次第の面もあります。どこまで本当かは怪しいと見て、あまり重視しない投資家もいるといいます。
資料作りの壁と「スライドランド」
パワポ資料を作っていると、図解できそうな箇所を、わからないからとりあえず表で済ませてしまう。ここに図解力の差が出るとはりまさんは話します。
はりまさんは、スライドのまとめサイト「スライドランド」を参考にしていると紹介します。ピラミッドなど図解の種類別に探せて、大手企業の綺麗な資料が並んでいるといいます。
やーまんさんは普段イラレやInDesignを使うものの、後々のことを考えてパワポを触ってみたと話します。操作の難しさ以上に、情報をどの順番で伝えるかを考え出すと非常に難しいと感じたそうです。
AIに手伝ってもらうと、構造化されすぎて逆に難しくなる、とやーまんさんは言います。
もちろんこの通りにできると、そらそのおっしゃる通りなんですけど、だからこれを一言で言いたいんじゃんっていう。
はりまさんも、図解力の部分ではAIはまだ足りないと同意します。ロジックを作らせるのは得意でも、そのロジックを一目で伝わる形にするのが難しいという話です。
リボンモデルは自分たちの事業にも使える
話の終盤、二人はリボンモデルを自分たちの事業に当てはめて考え始めます。はりまさんは、教育系も意外とリボンモデルに近いと指摘します。ユーザーと、お金を払う人が別だからです。
つまり、サービスを使う子供と、お金を払う親という2者を、両方納得させないと結ばれません。片方に寄りすぎると、もう片方が離れてしまいます。
右側の言うことだけを聞いていると、左側がつまんねってなっちゃう。
さらにはりまさんは、「結び方」も重要だと話します。結び方によってはモデルがうまく回らないため、リクルートはKPI自体を変えることもあったといいます。
例として挙がったのがカーセンサーです。当初は自動車屋への送客数を最も重視していましたが、それでは足りず、お客さんが満足したものを買えたかまで追う必要があると気づきました。そのためにリボンの外側まで見られるよう、サービスを便利にしていったといいます。
大事なことはすべてリボンモデルが教えてくれる
はりまさんは、実践のポイントを整理します。まずは左、需要側から集めること。そして集める・動かす・結ぶの3フェーズをそれぞれモニタリングし、改善できるようにすることです。
片方のリボンだけがいびつな形にならないようバランスを取り、必要ならリボンを大きくしたり、結び方を変えたりする。大事なことはすべてこのリボンモデルが教えてくれる、とはりまさんはまとめます。
なるほど。いや、非常に参考になりました。
まとめ
リボンモデルは、需要と供給を一枚で結ぶビジネスモデル図であると同時に、市場規模や各フェーズの弱点を可視化する「グラフ」でもあります。マッチングビジネスの構造理解から、資料作りに欠かせない図解力まで、情報をわかりやすく伝える技術の大切さが語られた回でした。
- リボンモデルは左右で需要と供給を表し、集める・動かす・結ぶの3フェーズで構造を可視化できる
- マッチングビジネスは両側を集める必要があり、リソースが限られるなら基本は需要側(左)から集める
- リクルートはリボンの外側にサービスを足し、サロンボードのようにロックインモデルを築いている
- ナイチンゲールのグラフやミナールの地図のように、情報の可視化は人を説得し巻き込む強力な武器になる
- 図解力は何を省き何を残すかの線引きであり、AIでも代替しきれないビジネスの差になる



