名前だけで判断すると危ない新商品
本編で井上さんが取り上げたのは、eMAXISシリーズから新しく設定される投資信託です。2025年8月26日付でプレスリリースが出ていました。
正式な名前は「高配当全世界株式(オールカントリー)配当払い出し型」で、愛称は「オルカン高配当」。9月30日から運用開始されると案内されています。
名前を聞くと、多くの人が知っている「オルカン」の配当が出るバージョンだと思いがちです。ですが井上さんは、割と僕らが知っているオルカンとは中身が違うと注意を促します。
めっちゃ売れると思うんですけど、名前がオルカン高配当なので、「いやオルカン買ってる」っていうふうに思うかもしれないんですけど、割と注意しないといけないなと思っている。
連動する指数がそもそも違う
一般的な「オルカン」は、MSCIオールカントリーワールドインデックスに連動するインデックスファンドです。
一方の「オルカン高配当」は、MSCIオールカントリーワールドインデックス高配当利回り指数という別の指数に連動します。名前は似ていますが、追いかけている指数そのものが違うのです。
この高配当利回り指数は、いわば親であるオルカンの指数から、いくつかの条件で銘柄を絞り込んで作られています。
絞り込みの一つが配当利回りで、親指数の平均配当利回りの1.3倍以上であることが足切りラインになっているといいます。それに加えて、配当が持続しているかや財務の質なども見て選別されると説明されました。
この絞り込みの結果、銘柄数はオルカンの約3割にまで減ります。オルカンが約2500銘柄あるのに対し、オルカン高配当の指数は約700銘柄だと紹介されました。
銘柄が絞られる分、高配当のETFや投資信託に共通する弱点として、セクターの偏りがどうしても出てしまうと井上さんは指摘します。
なぜ「めっちゃ売れそう」なのか
井上さんは、この商品がよく売れるだろうと繰り返します。理由の一つは、窓口での説明のしやすさです。
これ、銀行窓口とかで多分売るんやったら、絶対「これオルカンっていう、もう今人気の商品の高配当バージョンなんです」って説明する方が絶対早いんですよ。
指数の違いを丁寧に説明するより、人気のオルカンの高配当版だと伝えるほうが早い。だからこそ売れると考えられます。
もう一つの理由が、オルカンというブランド力です。井上さんは、指数そのものがブランドになっていると話します。
似たような指数はたくさんあっても、みんなが知っているものに人気が集まる勝者総取りの世界だといいます。オルカンはすでに広く認知されたワードなので、指数や銘柄数の違いまで踏み込んで考えない層に届きやすいという見立てです。
毎月分配型ブームと若い世代の存在
売れそうな背景として、井上さんは毎月分配型の投資信託が今売れている点にも触れます。同僚のたけかわさんが書いたコラムを引き合いに出しました。
そのコラムでは、2026年4月の日経新聞をもとに、毎月分配型への資金流入が9年ぶりに1兆円を超えたと紹介されていたそうです。
買っているのは高齢者だけではありません。井上さんが意外だと感じたのは、若い世代の保有率の高さでした。
70代が44パーセントなのに対し、20代の保有率が34パーセントもある。井上さんはこれを、今お金を使いたいけれど投資もしなければという、ちぐはぐさの表れではないかと見ています。
「何買ってるの?」「いや、俺オルカン買ってるよ」って言っておきたいところって正直あると思うので、二十代とか若い人とかはめっちゃくちゃ買うんじゃないかなと思います。
オルカンと比べると見えてくるリターンの差
井上さんは、通常のオルカンとオルカン高配当を数字で比べると違いがはっきりすると言います。高配当のほうはテック系がほぼ入っていない点が特徴です。
ファクトシートを見ると、過去10年の株価上昇率、つまり配当を除いたキャピタルゲインは、通常のオルカンが年率10.41パーセントでした。
これに対してオルカン高配当は年率5.6パーセント。倍とまではいかないものの、結構な差があると話します。
一方で配当利回りは、オルカン高配当が約3.27パーセント、通常のオルカンが約1.6パーセントで、配当はおよそ倍出しています。
約2500銘柄。株価上昇率は年率10.41%、配当利回りは約1.6%。テック系も含む
約700銘柄。株価上昇率は年率5.6%、配当利回りは約3.27%。テック系はほぼ入らずセクターが偏る
配当と値上がりを単純に合わせると、通常のオルカンが12パーセントほど、オルカン高配当が10パーセントほど。2〜3パーセントほどの差があると整理されました。単純な足し算で語るものではないと断りつつ、セクターの違いで相場によってリターンが変わってくると話します。
井上さん自身は買わない立場です。配当はいらないと言い続けてきたといいます。
自分で売りゃいい作業を代行してもらってるだけだし、高配当に絞るってことはセクターが偏るのでいらないですね。
いらないと言いつつ、高配当を否定しない理由
井上さんは、高配当そのものを悪いとは思っていないと補足します。むしろ、必要以上に投資しすぎている人もいると指摘します。
そこまで投資しなくても老後のお金に困らない人であれば、配当金を受け取って使うほうが豊かな場合もある、という考え方です。
ライフプランなんだったら、むしろ配当金使って旅行行ってる方がよほど豊かだと思う。
井上さんは、自分はお小遣いを使い切れないタイプだと明かします。一方で、お金があればあれもこれもしたいという人もいます。そういう人にとっては、配当を今楽しく使う形も合理的だと話します。
たとえば月3万円の積立で余裕がある人が、5万円積み立てられるとします。その場合、2万円分の配当が出る商品を買い、その配当を今使うという選び方もある、という具体例が挙げられました。
ただし井上さんは、オルカンやS&Pを買ったら次は高配当だ、というレベルアップのような発想には疑問を示します。次のステップという理屈はよくわからないと話します。
名前に引きずられず「別物」と理解する
最後に井上さんは、この回の要点をあらためて整理します。オルカン高配当は名前こそオルカンですが、対象の指数そのものが違い、いわゆるオルカンとは別物だと理解しておく必要があるということです。
高配当を狙うと、ヘルスケアなどのセクターが主になり、偏りが出るのは仕方のないところだといいます。名前に引きずられず、中身を見て判断してほしいという着地でした。
まとめ
「オルカン高配当」は名前こそオルカンですが、連動する指数も中身も別物です。井上さんは、ブランド力と説明のしやすさから売れると見つつ、目的と手段が合っているかで選ぶべきだと話しました。
- 「オルカン高配当」はMSCIオールカントリーワールドインデックス高配当利回り指数に連動する、通常のオルカンとは別の商品
- 親指数から配当や質の条件で絞り込み、銘柄数は約2500から約700へと3割程度に減る
- 高配当ゆえにセクターが偏り、株価上昇率は通常のオルカンより低めで、単純比較でリターンは見劣りしやすい
- 毎月分配型が20代でも保有率3割超と売れており、オルカンのブランド力もあって新商品も売れそうだと予想
- 高配当自体は否定されないが、目的と手段が合っているかが判断の基準になる




