水曜の牧場と、この日の配信テーマ
配信はまず、川上さんがこの日の様子を伝えるところから始まります。4月16日の水曜日、前日は嵐のような雨だったのに、この日は半袖でも過ごせる晴れ。
急な気温の上下は牛にとってもこたえるようで、子牛の体調や、産みそうな牛さんのことが気になると話されています。
この温度の上下だけはやめてほしい。子牛とかの調子が悪くならないか心配だったりしますけれども。
この日の仕事は、堆肥を1台運ぶことと、朝にあった繁殖検診の対応、そしてお昼のミーティング。そんな1日の合間に、この配信が収録されています。
そして今日のテーマは、リスナーから届いた質問への回答です。川上さんが口を開けばAI、AIと言っている、それを本当に仕事に使っているのか、という問いに答えていきます。
乳質はオールA、そして届いた質問
乾杯の牛乳を味わいながら、川上さんはうれしい報告をします。牛乳を溜めるタンク「バルク乳」の定期チェックで、菌の数を調べる検査項目がすべてオールAだったそうです。
体細胞数も9万台と低く、最近は乳質がぐんと良くなっているとのこと。この「品質が上がってきた」という実感が、のちのAIの話にもつながっていきます。
そのうえで、この日のお便りコーナーで取り上げたのが、SPOONというアプリに届いた、みずみずしいさんからの質問です。
川上さんはAIの話をよくされていますけれども、実務に利用されてたりしますか?
AIは仕事のどこまで入り込んでいるのか
川上さんの答えは、とてもシンプルでした。実務に使っているどころか、全てだと言っても過言ではないというのです。
僕が実際何に使っているのかっていうのは、もう全てだと言っても過言ではないのかなと思います。
たとえばこの配信の台本も、しっかりしたものではないものの、軽くAIに作ってもらっているそう。ほかにも用途は多岐にわたります。
並べてみると、AIが川上牧場のあらゆる発信に関わっていることが見えてきます。
- 音声配信の台本やタイトルの構成
- noteの記事の構成や書き出し
- 牛乳の日など企画イベントの登壇内容やスライド作成
- X・Instagram・YouTube・TikTokの投稿文の添削
- YouTubeショートの切り抜きと文字起こし
発信だけではありません。プライベートでも、子どもの勉強をサポートする「AI家庭教師」として使っているそうです。
子供たちに答えを教えるんじゃなくて、やり方とか勉強の仕方みたいなのをできるような、そういうやつとか。
さらに、中学3年生でこれから高校受験を迎える娘さんの、学校の進路相談のためのやり取りにも活用していると話されています。
車の中でAIと対話し、酪農の判断まで任せる
川上さんのAIの使い方で特徴的なのが、移動中の「対話」です。堆肥配達やおがくずを取りに行く車内で、AIと会話しながら考えをまとめていきます。
僕、今こういうことを思ってんだけど、AIと対話してどう思いますか?みたいな対話して、それをnoteの記事に変えたりとか、音声配信の台本に変えたりとか。
その対話の中身は、酪農の可能性を探すための本気のもの。頭に浮かんだアイデアをAICにぶつけ、記事や企画案へと形にしていくそうです。
判断の一部も任せています。雨や風が強い日に、牛舎の巻き上げカーテンを上げるか閉めるか。天気予報を見ればわかることでも、その手間が面倒だと感じるからこそAIに頼っています。
具体的には、毎日18時ごろに、夜から朝にかけての牛舎の風向きを調べてもらい、カーテンの開け閉めを判断するメールを送ってもらうタスクを組んでいるとのこと。
そして注目したいのが、乳質改善にもAICが関わっている点です。毎週届くバルク乳の検査項目をAIに入れると、餌や牧草についての提案が返ってくると話されています。
検査データを入力
毎週届くバルク乳の検査項目をAIに渡す
分析と予兆の指摘
飼料の分析や、今後起こりそうな予兆を提示
提案が返る
牧草の組み合わせや、キャッシュフローが増える営農計画を提案
牧草の価格表を毎月渡して、キャッシュフローが増えるような営農計画を出してもらうこともあるそうで、経営の相談相手にもなっているようです。
SNS分析と、AIが見た川上哲也という人物
AICはSNSの運用にも使われています。インプレッションなどの分析データを渡して、これからどう進めるかを一緒に考えているそうです。
どうやったらフォロワー増えますかみたいな。まあフォロワー増えるっていうか、届きたい人にどうやったら届くのかみたいなところを、僕は追求してますけど。
ChatGPTが話題になり始めてから1、2年、毎日10分から30分は確実に触り続けているという川上さん。AIアートも毎日描いています。
そこまで使い続けた結果、AIの中に「川上牧場の川上哲也がどういう人物か」というデータが蓄積されてきているといいます。
その蓄積を感じたのが、Xで流れてきたあるプロンプトでした。自分の会話スタイルをAICに分析してもらう指示文です。
私の会話スタイルについて説明してください。好んで話す話題、やりとりのパターン、言語的な特徴、そして私と話してあなたがどう感じるかを含めてください。正確に述べてください。お世辞は不要です。
この問いに対するAICの答えは、なかなか手厳しいものでした。川上さんはよく、話がわかりにくい、抽象的だと言われるそうです。
実際にAIにも、背景が多すぎて一発で処理できませんって言われましたね、これの回答で。
それでも川上さんは、その抽象的で多層的な問いを、いかに端的にAICへ伝えるかを毎日トレーニングしてきました。だからこそ、わかりにくい問いでもきちんと出力してもらえるようになってきたといいます。
道具ではなく相棒へ、AICとの関係の変化
川上さんは、AICがもはや脳の一部になっているような状況だと表現します。少し引かれるかもしれない、と前置きしながらも、その使い方は独特です。
多くの人は「こういうアイデアどう?」と聞くところを、川上さんはもっと踏み込んだ指示を出すそうです。
内容を台本にして、構成5分で作って、導入で感情を引き出して最後に問いを残して、みたいな、そういう感じの投げ方するんですよ。
この投げ方について、AICからは「人間の編集者に近いレベルで要求している」と返ってきたそうです。やり取りは真剣勝負で、多くのメモリを使うとも言われています。
ここまでAICを使う理由について、川上さんは「面白いから」を一番に挙げつつ、もうひとつの思いも語っています。
僕のデータを使って、僕の後から来る酪農関係で、AIを若い子は多分使っていくと思うんですよ。そういう人たちのデータになればいいなと思ってます。
自分が使ったデータがAICに学習され、また誰かの役に立つ。だからこそ新しい使い方を模索し続けたい、というのが川上さんの考えです。
これからやりたいこと、そして議事録の相談まで
今後やってみたいこととして、川上さんはAICと一緒に考えた酪農プロジェクトを挙げます。今までにないものを、と常に問い続けているそうです。
その根っこにあるのは、未来の子どもたちが牛乳を飲み続けられる、持続的な酪農のスタイルをどう作るかという問い。そして自分の子どもたちが、AIに自然に触れられる環境を用意したいという思いです。
「本当は胸の内にしまっておきたかった」と照れつつも、川上さんは正直に打ち明けます。
もう僕はもう脳の半分というか、業務の半分、僕自体の半分はもうAIが考えてくれてると思っても過言ではないかなと思ったりします。
空いた時間で自由に好きなことができている、というのが、AICを使いこなした先にある実感のようです。
リスナーから「会議にAIを導入してみようかな」というコメントが届くと、川上さんはZoomの活用法も紹介しました。
オンラインでなくても、リアルの会議でZoomを起動させておけば議事録を取ってまとめてくれるそう。さらに一歩進んだ使い方も提案します。
そのまとめた議事録を使って、じゃあ今後どういう会議にしていきましょうかっていうのを出力してくださいって頼むと、次回の会議までにやることみたいなことをタスクで作ってくれるんで。
活用している人はもうやっている、自分が変なわけじゃない、と笑いながら、川上さんは記録を残すことの大切さにも触れて、この日のAIの話を締めくくりました。
まとめ
リスナーの質問から始まったこの回は、酪農家がAICをどこまで実務に組み込めるのかを、生々しい実感とともに見せてくれる内容でした。台本や発信だけでなく、営農計画や日々の判断、家庭学習にまで広げていく姿からは、AIを道具ではなく相棒として付き合う一つの形が見えてきます。
- 川上牧場では、配信の台本からnote記事、SNSの投稿文、動画の切り抜きまで発信のほぼ全てにAIを活用している
- バルク乳の検査データや牧草の価格表をAIに渡し、飼料提案やキャッシュフローを踏まえた営農計画づくりにも使っている
- 移動中の車内でAIと対話し、記事や企画案へ形にする使い方や、牛舎カーテンの開閉判断の自動化なども実践している
- 毎日AIに触れ続けた結果、川上さんはAIとの関係を「道具ではなく相棒と未来を作るフェーズ」と表現している
- 自分の使い方が後進のデータになればという思いから、持続的な酪農や子どもたちの学習環境づくりにもAIを役立てようとしている







