三百万の見積もりと、月曜の朝からの重いテーマ
配信はいつもの牛乳での乾杯からスタート。今日は五月十二日の月曜日で、曇りのち晴れ、最高気温22度というちょっと肌寒い朝でした。
この日の仕事は、近くの製材所にカンナクズを取りに行って堆肥に混ぜること。そしてもう一つ、頭を悩ませる話題がありました。
三百万そこそこで出ましたね。見積もり三百万ですって。
先日壊れた堆肥車の見積もりが、なんと300万円ほど。農協に相談して、国の事業や融資がないか話をしてこようという状況です。
嫌です。でもやります。頑張ります。
そんな月曜日の配信テーマは、酪農業界のタイムラインでも話題になっていたという質問への回答。牛が病気になったとき、経済動物として命の判断をどう考えるか、という重たいテーマです。
「治す」と「見送る」の違いはどこにあるのか
今回届いたのは、Spoonという配信アプリのリスナー、ケチャライズさんからの質問。先日、川上さんが牛の手術の話をしたことがきっかけでした。
牛さんが病気になった際、お金をかけて治す場合と屠殺する場合があると思うのですが、その違いは何でしょう?例えばおばあちゃん牛、経産牛は治さないなど・・・
病気になった牛のすべてが「治療か屠殺か」の二択になるわけではありません。治る見込みがあれば、多くの酪農家は治療を選びます。問題は、その治療をどこまでやるか、という点にあります。
どこまでやるかという部分にこそ、命の判断が入り込みます。特に経営者は、その判断を避けて通れません。
自分の牧場で育てた牛だからこその思い入れ
川上牧場は、子牛を産ませて育て、その牛が大きくなったらまた子牛を産ませる、というサイクルを繰り返すスタイルです。
この方式は、川上さんのお父さんが経営していた頃から続いてきたもの。だから牛たちには、親父さんの代からの積み重ねが脈々と受け継がれています。
そのぶん、自分の牧場の牛には、他とはまた違う思い入れがあると川上さんは話します。歴史のような、牛の積み重ねのようなものがそこにあるんですね。
立てなくなる事故と、奇形の子牛
乳房炎や子宮炎、先日あった第四胃変位といった病気は、治療すれば大抵治るので大丈夫だといいます。
一方で、川上牧場でよく起きるのは飼い方の変化にともなう事故。育成子牛のときは牛が自由に歩けるフリーバーンで飼い、それをつなぎ牛舎に移したときに問題が起きることがあります。
環境が合わずに足を痛め、立てなくなってしまう事故が年に何回か起きるそうです。そうなると餌も食べにくく、搾乳しようにも立てない。治りが悪い場合は「廃用」という判断になることもあります。
また、生まれた子牛に足の形や内臓の奇形があった場合も、殺処分の判断を下すことがあると、川上さんは率直に語ります。
最高の牛が、絞る直前に事故に遭ったとき
そのなかでも一番難しいのが、と川上さんは声を落とします。
これだって思って、このお母さんとこのお父さんを組み合わせて最高の牛を作るぜって作って、生まれてめっちゃ良かった、最高だったって思ったやつが、やっと絞るぜってなった時に事故に遭ってしまう。
個人的には何とかして生かしていきたい。でも、夏場の暑い時期は、生きているだけでも牛が大きな体力を使います。
寝転んだままだと股ずれが起きたり、暑さでハアハアと苦しそうにしたり。このまま生かしておくのは、苦しませているだけではないか、という葛藤が生まれます。
さらに、その一頭に水をかけ、餌を細かく分けて与え、治療にかかりきりになると、他の牛たちの観察や飼育が疎かになってしまう。結果として他の牛の病気が増えることもある。だからこそ、経営判断をしっかりしなければいけないと川上さんは言います。
全力を尽くしてから下す判断と、心の整理
川上さんが屠殺の判断をするときのやり方は、はっきりしています。まずは全力で向かう、ということです。
先日生まれた双子の子牛は、難産のうえ低体温症で、生まれたときから呼吸もおかしい状態でした。
一輪車にお湯をためて体を温め、布団乾燥機でも温め、小さな哺乳瓶で初乳を少しずつ飲ませて。それでも命を引き取ってしまったといいます。
でも、そこまでやると「ここまでやったから仕方ない」という見切りができる。それは牛のためであると同時に、自分に対して心の整理をするためでもあるのかもしれない、と川上さんは振り返ります。
各牧場で命の重さは違う。正解も不正解もない
この判断は、牧場ごとにまったく違うものだと川上さんは強調します。家族経営か、従業員がいるか、規模はどれくらいか。経営スタイルによって牛への向かい方も変わります。
すぐ見切りをつけて屠殺しなければいけない牧場もあれば、頭数が少なく一頭失えば経営が傾く牧場なら、もっと長く治療に専念することもある。
各牧場で命の重さとか命の扱い方が違うっていうのを認識してもらうといいのかなと思ったりしますね。
消費者にはなかなか理解しにくく、酪農家自身も「これがこうだから」と明確に言葉にするのは難しい。それでも、こうした判断が日々行われている産業なんだと知ってもらえたら嬉しい、と川上さんは締めくくります。
重いテーマは伸びない。それでも現場の話を
最後はコメント欄に戻って、リスナーとのやり取りへ。月曜の朝からの重いテーマに、川上さん自身はテンションが上がって熱く答えてしまったそう。
ただ、こうした酪農業界ガチガチの話は、なかなか再生数が伸びないのが実情。牛乳やバターを美味しく食べる方法のほうが、やっぱり人気なんですよね。
自分的には酪農家目線で現場の話ができたらいいなと思ってるんで、ちょっと好き嫌いせずに聞いてよろしくお願いします。
七月まで祝日がないという週明け、無理せずぼちぼちやっていきましょう、という言葉で配信は終わります。
まとめ
牛が病気になったとき、酪農家は「治す」か「見送る」かの単純な二択ではなく、どこまで治療するかという線引きと日々向き合っています。その判断に絶対の正解はなく、牧場ごとに命の重さの扱い方も違う。今回の配信は、そんな酪農の深い部分を酪農家自身の言葉で聞ける回でした。
- 病気の牛は「治療か屠殺か」の二択ではなく、どこまで治すかの判断が問われる
- 川上牧場は自家育成のため、牛一頭一頭に代々の積み重ねと思い入れがある
- 最高だと思った牛が搾乳直前に事故に遭うケースが、判断として一番難しい
- 全力を尽くしてから見切ることには、酪農家自身の心の整理という意味もある
- 命の扱い方は各牧場で違い、その場の判断に正解も不正解もない




