リスナーが投げかけた「物語で売る」への問い
今回の配信は、前日の放送に届いたコメントがきっかけです。STAND.FMネームのセイさんから、消費者目線で深く考えられたお便りが寄せられました。
内容は、黒毛和牛のようにランクで売る方法と、ブランディングやストーリーで売る方法についての問いかけです。
高品質、高価格、当たり前。物語でそれ以上の価値、もしくはイメージ戦略。いや、これは難しいというコメントが来ております。
セイさんは、地元にブランド牛乳やブランド牛肉があっても、購入層の多い東京などに送られてしまう現状を指摘しています。
頭数が少ないため買い占められ、名前が売れているので物語がなくても高い価格と需要がある、という観察です。
A2でもブランドを名乗れば量的な解決はしそうですし、低等級のものは輸出して、高等級のものは観光でしか食べられないブランディングをしても良さそうな気がします。
さらに「需要があるのだから牧場に出資してほしい」という提案まで。川上さんは、ここまで考える消費者は珍しいと驚きます。
ブランドの正体は「記号」と「物語」
川上さんは、この消費者目線の問いに対して、生産者の視点で答えていきます。まず整理するのは「ブランドの本質」です。
ブランドには2つの側面があると話します。ひとつは格付けのような「記号」、もうひとつは誰がどんな思いで作ったかという「物語」です。
A5和牛は、いわば「記号」。どこで育ち、どんな人が、どんな環境で育てたかというのが「物語」にあたる、という整理です。
東京の高級レストランが欲しがるのは、単なる肉質の良さだけではないと言います。
東京のレストランとか高級レストランとかが欲しがるのは、単に肉質の良さだけではなく、名前で語れる安心感。
牧場名や個人名、地域名がついた肉には、「そこで買えば一定の品質が保たれている」という安心感があります。
A5が美味しいと信じられているのも、格付けが日本に浸透してきた過程があったからだと川上さんは付け加えます。
規格外でも語れば価値になる
続いて話は、品質がすべてではない、という論点に進みます。ブランディング次第で規格外のものにも価値がつけられる、という考え方です。
例えとして出てくるのがワインです。格付けが低くても、地元の風土や小規模生産というだけで評価されることがあります。
A5じゃないけど、この牧場でしか味わえない、そんなブランド作り、我々現場がもっと意識すべき時代に来ていると感じます。
ここで整理されている、記号と物語の違いを図解にするとこうなります。
A5などの格付け。すでに評価が浸透し、名前だけで品質の安心感が伝わる
誰がどんな思いで、どんな環境で作ったか。規格外でも価値を生み出せる語り
需要があるなら、お金の流れを変える
セイさんの「出資してほしい」という提案にも、川上さんは共感します。需要があるのに供給が追いつかない理由のひとつは、資金不足だからです。
これまでは銀行や行政に頼るしかありませんでした。でも、そこにファンが出資する選択肢が加われば状況は変わる、と話します。
すでにクラウドファンディングや出資の形をとる牧場もあります。川上さんが理想と考えるのは「需要から逆算する生産」です。
先に支援者の方がお金を出してから生産を始めるという形、これの方が、継続、持続性がある農業じゃないかなっていうのは個人的には思ったりしますね。
「ただ作って売る」から「どう伝えるか」へ
ここまでの話を、AIがひとつの記事としてまとめてくれた、と川上さんは紹介します。
ブランドは物語で磨かれる。規格外でも語れば価値はある。需要があるなら資金の流れを変えるべき。
ただ作って売るだけでなく、どう伝えるか、どう関わってもらうかまで考えることが、これからの酪農の希望になる、というまとめです。
一方で、川上さんには生産者としての複雑な思いもあります。SNSでストーリーだけで大きく売る人が増える現状への戸惑いです。
組合やJAが築き上げてきたものが、一瞬で持っていかれるように感じることもある、と率直に語ります。
それでも、消費者が欲しいものを作り、食べてもらわないと作れないという現実は変わらない、と受け止めています。
これからの畜産は二極化する
最後に川上さんは、これからの畜産がどう変わっていくか、自身の見立てを話します。
でも二極化するでしょうね、多分ね。大量生産で安定的に高品質なものを作る大きい牧場と、小頭数でブランディングで売っていく牧場と、そうなっていくんじゃないかな。
消費者にできることとして、「推しの農家」を作ることもすすめています。推し農家づくりを掲げる農家グループやECサイトもあるそうです。
夏休みには、収穫体験や田植え体験ができる農業現場に足を運んでみるのもいい、と締めくくります。
まとめ
消費者からの鋭い問いをきっかけに、格付けという「記号」と、思いを伝える「物語」という2つのブランドのあり方を、酪農家の目線で語った回でした。作るだけでなく、どう伝え、どう関わってもらうかが問われる時代だと感じさせてくれます。
- ブランドには「格付け=記号」と「思いや過程=物語」の2つの側面がある
- A5が美味しいと信じられるのも、格付けが浸透してきた過程があったから
- 規格外でも、風土や小規模生産といった物語があれば価値をつけられる
- 需要があるなら、ファンの出資で資金の流れを変える選択肢もある
- これからの畜産は、大量生産型と小頭数のブランディング型に二極化していく


