コメント返信から始まる「資格を持つと何が変わる?」
配信は、前回の放送に届いたコメントの紹介から始まりました。川上さんが、届いたコメントを職場体験中の中学生に読み上げていきます。
1つは「初めて買ってもらったゲームにジェネレーションギャップを感じた」というコメント。送り主が初めて買ってもらったのはポケットモンスターの緑で、川上さんも同じくらいの世代だそうです。中学生が初めて遊んだポケモンを聞くと、ウルトラムーンやダイヤモンドという答えが返ってきて、世代の違いがはっきり出ていました。
もう1つは、前回話した「資格を持つと効率的に仕事ができる」という話をもっと掘り下げてほしい、というリクエストでした。送り主の職場では、資格を持つ職員より無資格のパートの方がよっぽど効率的だ、という実感も添えられていました。
資格持ちイコール効率化ができるということでしょうか。私の職場は資格持ちの職員より無資格のパートのお姉様の方がよっぽど効率的ですというコメントが来ております。
川上さんは、前回の話はあくまで「法的に資格があると、その仕事をやってよいことになる」という広い意味だった、と説明します。そのうえで、酪農の現場での具体例を挙げていきました。
たとえばフォークリフトやクレーン、玉掛けの資格があれば、人が一輪車で一生懸命運んでいるものを機械で一瞬で運べます。玉掛け ── クレーンなどで荷物を吊り上げるときに、フックにロープやワイヤーを掛けたり外したりする作業のこと。決められた資格や教育が必要になります。トラクターで種をまく機械も、手作業なら大変な作業をあっという間に終わらせてくれます。
ただし、資格があれば必ず仕事が早いわけではない、とも川上さんは言います。機械に乗り慣れているかどうかで速さは全然違い、車のペーパードライバーのように「免許はあるけど下手」という人も一定数いる、というわけです。
ペーパードライバーって車とかでもあったりするよ。免許持ってるけど下手くそみたいなのは、免許持ってるけど持ってるだけですよみたいな人もね、一定数いる。
そのうえで、資格には見えにくいメリットもあると川上さんは付け加えます。同じ仕事をしていても、資格を持っている人のほうが給料が高くなる場合がある、という点です。
フォークリフトやクレーンなど、その作業をやってよいことになる。手作業を機械で一気に片づけられる
同じ仕事内容でも、資格があるほうが給料が高くなることがある
牛のお尻に手を入れる?優しいコメントと中学生の反応
コメント紹介は続きます。「牛乳めっちゃ好きと即答してくれるのは嬉しい」という酪農家仲間からの声や、前回の「牛のお尻に手を入れる」体験に関する、あたたかいコメントが届いていました。
コメントの送り主は、牛のお尻に手を入れるのは慣れていない人には簡単なことではないと前置きしたうえで、こんなふうにエールを送っていました。人生でつまずいたとき、みんながやったことのない経験を自分はやったんだ、と自信の1つにしてほしい、というものです。
川上さんは「本当に酪農家のエゴですね」と笑いつつ、無理にやらなくていいと中学生に伝えます。すると中学生は、意外にも前向きな反応を見せました。
やっていいって言われたらやりたいです。
川上さんは、この3日間の職場体験の間にちょっとやってみようか、と応じていました。
そもそもライフプランシミュレーションって何をするの?
コメント紹介が終わると、この回の本題であるライフプランシミュレーションに入っていきます。川上さんは毎年、職場体験の中学生とこれをやっているそうです。
まず「ファイナンシャルプランナー」という資格を知っているか尋ねると、中学生は「聞いたことない」との返事。川上さんは、保険や銀行にいるお金の専門家で、人生のプランをシミュレーションしてくれる人だ、と説明します。
やり方はシンプルで、紙に人生の時間軸を1本引き、そこに進学・就職・結婚などの節目と、そのときにかかるお金を書き込んでいきます。過去はもう変えられないので、スタート地点は「高校か大学か」という進路選びから。中学生は「大学かな」と答え、18歳で大学に進学するところからシミュレーションが始まりました。
大学4年間でいくらかかる?奨学金と一人暮らしの初期費用
最初に計算するのは、大学にかかるお金です。川上さんが初期費用を尋ねると、中学生は「100万ぐらい」と答えました。
川上さんが示した平均額はこうです。大学4年間の学費の総額は、国立でおよそ243万円、私立文系で398万円、私立理系で542万円。今回は数字をわかりやすくするため、大学の費用を250万円として進めます。
ここで川上さんが投げかけたのが、この費用を「自分で払うか、親に払ってもらうか」という選択です。中学生は奨学金を使って自分で払う道を選び、資産にマイナス250万円と書き込みました。
さらに、進路の話にもリアリティがありました。中学生によると、都会出身のお母さんから「一回は都会に出たほうが絶対いいことがある」と言われているそうです。
母親の方が都会の方の生まれなんで、やっぱ一回は都会に出た方が絶対いいことあるって。多分都会で一人暮らしかな。
そこで、一人暮らしの初期費用も加わります。物件の契約費用や引っ越し代、家具・家電を合わせると、総額でだいたい40万円から60万円。住むところにこだわるかどうかで金額を選び、これも資産から引いていきます。
1日3食で食費9万円?一人暮らしの月々の生活費
続いて、一人暮らしの毎月の生活費を1つずつ見積もっていきます。中学生の最初の見当は「5万から8万、いや10万ぐらい」でした。
まず家賃。中学生は「2万円とか」と答えましたが、川上さんが示した平均家賃は5万3000円。水道光熱費は1万1000円が目安です。
食費のくだりは、この回でいちばん盛り上がった場面でした。川上さんが「今からお昼を買いに行くといくら?」と聞くと、中学生はカップラーメンなどで1000円くらいと答えます。それを1日3食、30日分で計算すると、なんと月9万円に。
1日3,000円かかります。かける30日したらいくらですか?
9万。
川上さんは中学生の「いい顔」に突っ込みつつ、食費の全国平均は4万2000円だと伝えます。ここで、外食やカップラーメン中心の暮らしがいかにお金を食うかが、数字で見えてきました。
さらに交通通信費が約2万円、遊びなどの娯楽費が2万円、美容室や服などの交際費・美容費が2万3000円、生活用品や医療などが1万2000円と積み上がっていきます。
これらを合計すると、月々の生活費は約25万5000円。それを大学4年間、48ヶ月分で計算すると、生活費だけで1224万円になりました。ここに奨学金の返済も乗ってきます。
初任給25万で赤字スタート。どこを削る?
大学を無事卒業し、22歳で就職するところに進みます。川上さんが「月給いくらもらえたらいい?」と聞くと、中学生はまず「500万」と答えて笑いを誘い、考え直して「25万」に落ち着きました。
川上さんが示した大卒初任給の平均は、厚生労働省の調査で約24万8300円。中学生は納得して月給25万円と書き込みます。ところが、ここで問題が起きます。
さきほど計算した月々の生活費は25万5000円。つまり、初任給25万円ではその時点で赤字なのです。
ちなみにさっきの計算した生活費が25万5,000円かかってるから。
赤字。
貯金をするどころか、そのままでは生活が成り立ちません。そこで川上さんは「どこを削る?」と問いかけます。中学生はまず美容費、次に娯楽費を削ることを選びました。友達に遊びに誘われても「ちょっと金がない」と断る、という具体的な想像もしながらの作業です。
いつも同じ服着てるのお前って。彼女とかおしゃれとかしたくなっちゃう年頃だよ。
削った結果、月々に残るお金は「1万円ぐらい」。初任給25万円は、そのまま暮らすと貯金がまったく残らないという現実が、数字で突きつけられました。
結婚式に130万。月1万円の貯金で間に合う?
次の人生の節目は結婚です。中学生は結婚する年齢を「32歳」に設定しました。大学卒業が22歳なので、そこから10年の猶予があります。
結婚にかかる費用の平均は、川上さんによると454万3000円。中学生は「盛大にやりたい」と言いつつ、現実的に「130万」あたりに落ち着けました。
ここで、さきほどの「月1万円しか残らない」が効いてきます。結婚費用100万円を月1万円ずつ貯めると、8年3ヶ月かかる計算です。10年あればギリギリ間に合いますが、それは奨学金の返済を別にした話でもあります。
奨学金返すから本来もうちょっとギリ。
わずかな金額の差でも、間に合うかどうかが変わってしまう。貯金のスピードと人生の節目のタイミングが、シビアに噛み合っていることが見えてきました。
出産・車・マイホーム。膨らんでいく費用
結婚の次は、出産、車、マイホームへと話が進みます。中学生には3人の兄弟がいて、「親と同じように兄弟がたくさん欲しい」という気持ちもあるようです。
出産費用について、中学生は「100万いくかいかないか」と予想しましたが、川上さんが示した日本国内の平均は全体で47万3000円。国の助成金や補助金で負担が軽くなっている面もあり、川上さんは「君たちの時代にはもう少し手厚くなるのでは」とも話していました。
車の初期費用も見積もります。車両本体価格に加えて、その1割から2割ほどの法定費用や諸費用が別途かかります。軽自動車で100万〜200万円、SUVやミニバンだと200万〜500万円が目安で、さらにガソリン代や自動車税、車検などの維持費もかかってきます。
そしてマイホーム。土地があれば3500万〜4000万円、なければ4500万〜5000万円が全国平均の予算です。中学生は40歳で家を持つプランを考えますが、月1万円の貯金では、どう考えても資金が足りませんでした。
家が買えないとなると、狭いアパート暮らしが続きます。川上さんはここで、親子の立場を入れ替えた寸劇のようなやり取りを差し込みました。子ども役に「家が狭いよ」「もっと大きい車が欲しいよ」「ゲーム機が欲しいよ」と言われる側になった中学生が、思わず親目線で返す場面です。
でけえの乗ってお前事故った時高いだろ。PSで我慢しろ。
費用を払う側に回ってみて初めて、親がどんな判断をしているのかが実感として見えてくる。シミュレーションが、ただの計算では終わらない瞬間でした。
仕事は何歳まで?老後にかかる4500万円という現実
最後に、働くのを何歳でやめるか、そして何歳まで生きるかを決めます。中学生は「70歳ぐらいまで、できれば定年まで働きたい」と答えました。
寿命はいったん「130歳」と冗談で挙げつつ、現実的に「80歳後半」に。ここで川上さんは、仕事を辞めてから亡くなるまでの生活費を計算します。
月々の費用は約25万円、1年で約300万円。仮に65歳で引退して80歳で亡くなるなら、その15年間で4500万円が必要になります。この4500万円の貯金がなければ、どこかでまた働き始めるか、電気や水道が止まってしまうような事態が起こりうる、というわけです。
四千五百万円の貯金がなければ、どっかで働き始めるか、もしくは命が消えるか、家がない、電気が払えない、水道が止まるみたいなことが起こり得ます。
この老後資金の話から、川上さんは年金の仕組みにも触れました。今の高齢者の年金は、若い世代が払う社会保険料でまかなわれています。しかし少子化が進むと、中学生たちが受け取る頃には年金額が少なくなる可能性がある、という話です。
だからこそ、新NISAのように自分でお金を増やす方法を国がすすめている、と川上さんは説明します。ペットの費用や、病気で働きたくても働けなくなる可能性など、シミュレーションに入れきれない不確定要素もあることに、中学生自身も気づいていきました。
親の人生も乗ってくる。シミュレーションが伝えたかったこと
川上さんは最後に、この時間軸には「自分の人生」しか書いていないけれど、実際にはそこに親や配偶者、子どもの人生も重なってくる、と話します。
たとえば、親の介護が必要になったとき、その費用を誰が出すのか。中学生が「親孝行したい」と口にすると、川上さんは「いい言葉だね」と受け止めつつ、マイホームや車のローンでお金に余裕がない現実も突きつけます。
そして、自分が子どものときにかかった費用は、今度は自分の子どもにも同じようにかかってくる、という点も指摘しました。奨学金を子どもに背負わせるのか、自分が出すのか。そうした判断が、この1枚の紙の上に次々と現れてきます。
いや、壮絶な人生だけど。
川上さんは、今の君たちのお父さんお母さんは、これを今やっている最中なのだと伝えます。壮絶に見えるこの計算を、多くの大人が実際に日々やっている、というわけです。
そのうえで川上さんは、進学のような節目で「実現できるのか、できないならどうするのか」を先にシミュレーションしておけば、「お金がなくなって人生が詰む」ことを避けられる、と締めくくりました。ライフプランシミュレーションはアプリやインターネットでも試せるので、ぜひ家で親にも聞いてみてほしい、と中学生に呼びかけています。
まとめ
島根の牧場での職場体験回は、大学進学から老後までの費用を紙に書き出す「ライフプランシミュレーション」を中学生と一緒にやってみる回でした。数字を1つずつ埋めていくと、初任給では赤字、貯金は月1万円、老後には4500万円という現実が見えてきて、中学生の「どうやってんだろう」という実感につながっていきます。
- 大学4年間の学費は国立で約243万円、私立理系で約542万円。奨学金か親負担かをまず選ぶところから始まる
- 一人暮らしの生活費は平均で月約25万5000円。初任給25万円ではそのまま暮らすと貯金が残らない
- 結婚は平均454万円、マイホームは土地なしで4500万〜5000万円と、節目ごとに費用が膨らんでいく
- 65歳引退・80歳で亡くなる想定でも、老後の15年間で約4500万円が必要になる
- 年金額が減る可能性もあり、新NISAなど自分でお金を準備する視点も欠かせない




