NextFinanceTechの徳力さんとは何者か
今回のクリプトークは、NextFinanceTechの徳力創一朗さんを迎えたゲスト回です。番組ホストの西山直也さんは「知らないことをどんどん聞ける」と話し、大塚雄介さんも「学べる立場なので楽しい」と続けます。
徳力さんはまず、自身の経歴を簡単に紹介しました。大学院卒業後にゴールドマン・サックスへ入り、そこで3年ほど働いた後、同級生のエンジニアとNextFinanceTechを創業したという流れです。
もともと大学院を卒業して、ゴールドマン・サックスに入りまして、そこで3年ぐらい働いた後に、その時の同級生のエンジニアとNextFinanceTechという会社を作りました。
当初はブロックチェーン関連で幅広く手がけていたものの、最終的に決めたのがステーキングでした。暗号資産の利息を生み出すインフラを作り、その顧客が暗号資産の交換所だったことから、コインチェックに見つけられます。
(ステーキングのインフラを)作っていて、お客さんが暗号資産の交換所さんだったので、それをコインチェックさんに見つけていただいて、去年コインチェックグループに買収いただいて、一緒に今仕事をやっている、そんな人間です。
なぜカルチャーの相性が買収の決め手になったのか
大塚さんは、暗号資産というテクノロジーから始まったものが、既存の金融の人たちとここ数年オーバーラップしていると指摘します。そうした局面で、既存の金融も暗号資産も両方やっている徳力さんの存在は助かる、という文脈でこの回が始まりました。
大塚さんと徳力さんのつながりは、ゴールドマン出身という流れにあります。大塚さんは、自分たちの中ではマネックスの松本さんのほうが近いのではないかと説明しました。
最初から「これ買収じゃね?」という感じで会っていたのか。
大塚さんによれば、そうではありません。暗号資産の交換所を運営する上で必要な機能は常にウォッチしているものの、グループ化で重要なのは今後の未来を一緒に見ていけるか、カルチャーが一緒かどうかだと話します。
お金出して買って、じゃあおしまいって、別にそういうことをお互いやりたいわけじゃない。多分話しててカルチャーの相性が良かったので、じゃあ一緒にやっていきましょうと、そんな感じになってると思います。
大塚さんは、同じ暗号資産でも「お金儲けのためだけの金融」として見ている相手とは、どこか合わないと感じることがあると話します。暗号資産をどの角度で見ているかは人それぞれで、そこの相性が今回は合ったのだろう、という見立てです。
一イーサを一点一イーサに増やすステーキングの仕組み
ここで、そもそもステーキングとは何かが具体的に説明されます。徳力さんは、資産運用に近いイメージだと前置きしました。
たとえばコインチェックでイーサリアムを買うと、そのイーサリアムはコインチェックで保管されます。多くの人は「1イーサが何円上がるか下がるか」を期待しますが、ステーキングはそこに別の価値を足すものです。
この1イーサを、さらに1.1イーサに増やすことが実はできるんですよね。それが僕らが作っているステーキングのインフラを使ってもらうと達成できる。
これは暗号資産のインカムゲイン、いわば利息のようなものを作る仕組みです。西山さんは「価格が上がったら嬉しいのに、量自体も増える」と驚き、大塚さんは「クーポンがついてくるみたいな感じ」と表現しました。
NextFinanceTechの顧客は、コインチェックをはじめとする暗号資産をたくさん持つ交換所です。何万イーサ、何十万イーサ規模の資産を、裏側で運用しているのが同社だと徳力さんは説明します。
うちのインフラを使ってもらうと、1イーサを1.1イーサに増やせる。何万イーサ、何十万イーサとあったりするので、それを裏側で運用しているのが我々です。
大塚さんの側から見ても、預かっているイーサリアムに対してステーキングサービスを提供すれば、顧客も喜び、事業も伸びるという勝算がありました。一緒になったら多分すごいんじゃないかという直感があったと振り返ります。
国内で1社しか残らなかった理由
西山さんは、ステーキングは領域として「ど真ん中すぎて競合が多いのでは」と問いかけます。しかし徳力さんの答えは意外なものでした。
国内は実はですね、我々1社しかいなくて。交換所という法の規制の下でビジネスをされている方々向けに、インフラを提供できているのは実はうちしかいない。
過去には大企業もステーキング事業に参入しようとしたものの、人材を集められなかったり、暗号資産交換所と組めなかったりして撤退していきました。その結果、気づけば競合がいなくなったといいます。
徳力さんは、これは革新的なことをやったわけではないと強調します。グローバルで流行っているものを、メイドインジャパンで作ったほうがいいと考えて日本で作っただけだ、という説明です。
鍵になったのは安心感でした。交換所は金融規制の中でビジネスをするため、コンプライアンスやガバナンスの観点で密に安心して取引できるかが重要になります。外資のプレイヤーもいる中で、国内の業者として安心感を提供できている点が強みだと話します。
大塚さんは、この事業が成り立つには2つの能力を両立させる必要があると補足しました。
グローバルの最先端の情報を仕入れ、ブロックチェーンを技術的に理解して運用できる
金融規制を理解し、金融機関やコンプライアンス担当と対等に話せる
伝統金融が暗号資産を見る2つの文脈
大塚さんは、既存の伝統的な金融の人々が、クリプトやステーブルコインをどう見ているのか、徳力さんの実感を尋ねます。徳力さんは、大きく2つの文脈があると整理しました。
1つ目は「アセットクラス」としての注目です。ビットコインを資産運用のポートフォリオに入れるべきかという観点で、株式・債券・不動産に並ぶ投資対象として、個人だけでなく機関投資家からも興味を持たれています。
ただし日本は整備の面で遅れています。アメリカではすでにビットコインETFが売られており、伝統的な金融機関が今までのポートフォリオ管理のやり方でビットコイン投資ができる体制が整っている、と徳力さんは説明します。
日本については、2028年1月に暗号資産ETFが解禁される予定だといいます。これを機に、個人投資家だけでなく機関投資家も参入していける、というのが交わりのポイントの1つ目です。
2つ目は「技術としてのブロックチェーン」の見直しです。徳力さんはブロックチェーンを、簡単に言えばデータベースだと捉えていると話します。
現状
株の売買を記録する台帳と、日本円を記録する台帳が完全に別々で管理されている
課題
2つの台帳が合っているか突合・確認する必要があり、資産の移動に手間がかかる
オンチェーン化
株・債券・現金をトークン化して同じ台帳に載せ、1つのブロックチェーンで取引する
効果
台帳が1つなので確認の手間が減り、同時に決済ができる
もう一個の台帳にしちゃえばいいじゃん、それブロックチェーンでやってみたらいいじゃんっていうのが今の発想。金融機関のローレベルの台帳をブロックチェーンにしちゃおうっていうのが今起きている話です。
この動きをオンチェーン化と呼びます。徳力さんは、グローバルではすでにどんどん進んでいて、これがアセットクラスの話と技術の話という2つの側面から、伝統金融と暗号資産が交わろうとしているタイミングだと話しました。
オンチェーン化は誰を幸せにするのか
西山さんは、オンチェーン化ができると金融機関はそんなに嬉しいのか、と率直に問いかけます。徳力さんは、データベースが1つになることで確認のコストが半分になると答えました。
さらに、時間のかかっていたグローバルな決済も短縮でき、資金効率がどんどん良くなるといいます。つまり狙いはコスト削減がメインだ、という説明です。
オンチェーン化はエンドユーザーにも関係するのか。
徳力さんは、エンドユーザーはそれほど変化を感じないかもしれないと答えます。IPOのトークン化のような派手な話ではなく、金融機関のオペレーションが楽になるという、いわば裏方の話だからです。ただしその規模は世界中で何千兆円規模になるといいます。
日本とアメリカのギャップについて、徳力さんは「大体日本は2、3年ぐらい遅れて全部来る」と話します。根本原因はシンプルで、英語ができないために新しい情報をつかめないことにあるのではないか、という見立てです。
徳力さんは、完全なオンチェーン化まで行くかはわからないとしつつ、50%、80%という部分的なオンチェーン化は発生していくと見ています。
なぜ「怪しいと思われている前提」で話すのか
大塚さんは、ゴールドマンでのキャリアもあった徳力さんが、なぜオンチェーンの世界に来て、今どこに楽しみを感じているのかを尋ねます。
起業のきっかけは2021年ごろ、ビットコインやイーサリアムが盛り上がっていたタイミングにありました。徳力さんが会社でその話をしても、誰もその重要性を知らなかったのです。
名前は知ってるけど、グローバルで盛り上がってるすごい重要な技術なんだってことをみんな認識していなくて、単にお金の価値が上下する認識しかなかった。
一方、グローバルではそれをどう取り込むかという議論がすでに進んでいました。「これはそのうち日本にも来る」と感じたことが、起業の大きなきっかけになったといいます。
徳力さんは、今でも日本の金融機関の人の大半は暗号資産をまだ怪しいと思っている、と率直に語ります。そしてその感覚を知っていることが、むしろ強みになっていると話しました。
数年前に予想した「クリプトと伝統金融が交わる時代」がようやく来た、という実感が今のモチベーションです。大塚さんは「まさに接合点を自分がやれていて、歴史を作っている感じがある」と応じました。
徳力さんは、その歴史をNextFinanceTech単体で作るのは厳しかったと振り返ります。ライセンスがあり、金融機関と話せるプロダクトリソースのある大きな会社にいるほうが圧倒的に強い、それが去年の買収を決めた理由でもあると話しました。
12年やってきて気づいた「未来をやっていた」感覚
大塚さんは、2014年ごろから暗号資産に関わり、2026年で12年になることに触れます。自分では非常に成熟してきたと感じていた一方で、最近ある気づきがあったといいます。
既存の金融の方々から見ると、フューチャー、未来っていう感覚とか、今後来るオンチェーンって感じで、認識にギャップがある。あ、俺ら未来のことをやってたんだって最近気づき始めた。
取引所というビジネスモデル自体は成熟しても、そこで培った堅牢なシステムやレギュレーションへの対応が、未来に向けた資産になっている。大塚さんは、それに改めて気づいたと話します。
徳力さんも、交換所は今かなりの分岐点に来ていると応じます。リテール向けに暗号資産の売買を提供するだけでは厳しく、培ってきた技術・資産・ライセンスを使って金融機関側とビジネスを作れるかがポイントだ、という認識です。
大塚さんは、コインチェックが早い段階でエンタープライズ向けのCryptoasaServiceに経営リソースをシフトしてきたことを振り返ります。アメリカの3年後に日本がなるという読みから、先回りして舵を切ってきたわけです。
経営が数年前ぐらいにやったのが今効いてくるみたいな、ちょっと長丁場にはなってるなとは思います。
レギュレーション対応も、最低限で済ませずに上場して信用を得た上でやる、といった選択が今効いてくると大塚さんは話します。アーリーステージのようにすぐ跳ね返ってはこないものの、後半の仕事はインパクトが大きい、と自分に言い聞かせているそうです。
金融機関と対等に話すために「毎日勉強する」
徳力さんは、金融出身だと1つのビジネスが長く、1、2年売上が立たなくても「時間がかかるもの」と捉える感覚があると話します。起業家としては危ういものの、金融と絡む上ではその感覚が大事だといいます。
西山さんは、若手起業家が大きな金融機関と話すと目線が合わない話をよく聞くが、実際はどうかと尋ねます。徳力さんは、そうした感覚はあると認め、若く見られないように意識していると答えました。この時、徳力さんは今年で40歳になるといいます。
象徴的なのが服装です。徳力さんは基本的にスーツで通しています。理由は、話す相手が金融機関ばかりだからで、スーツのほうが相手も安心する、というものでした。
話をする方が金融機関の方ばっかりなので、基本的にスーツになる。スーツ着てる方が安心する。
大塚さんは、こうしたマインドセットを持つ人が必要だと語ります。もともとリテール向けをやっているメンバーでは、すぐに結果が出ない事業は優先順位が下がってしまうからです。
大御所の金融関係者と話すコツについて、徳力さんは前職と今の違いを挙げます。前職では新人として「いかに可愛がってもらうか」でしたが、今は暗号資産・ブロックチェーンの専門家として、知識やノウハウをきちんと伝えられることが重要だといいます。
今はちゃんと知識を伝えられる、頭のいい話ができるっていうところが重要なので、賢くないとダメなんですよね。なんで毎日勉強してます。
徳力さんは、グローバルな情報を仕入れ、ブロックチェーンにも詳しく、それが金融の目線でどう当てはまるかまで埋め合わせる必要があると話します。ただし金融は公開情報を作っていく世界で、皆が同じことをやるため、面白さは情報そのものより実行の難しさにあるといいます。
「本を書くべき」――権威と伝え方の話
大塚さんは、徳力さんは本を書いたほうがいいと強く勧めます。本には権威をつける力があり、読んでくれた人からさまざまなオファーが来る、という実感からの助言です。
大塚さん自身、起業した際に流れで本を書いたところ、それが売れて講演などのオファーが増えたといいます。最近も本を読んだ行政のトップ層が、暗号資産を学びたいとわざわざ訪ねてきたそうです。
60ぐらいのシニアの方が、すごい付箋を貼って読まれてきて。本の価値はめちゃくちゃでかい。
大塚さんの著書は最新改訂版まで3冊出ており、韓国語にもなっているといいます。今は既存の金融の人が知りたがっているタイミングだからこそ、話した内容をそのまま字面にするだけでも成り立つ、と大塚さんは語りました。
本の作り方についても具体的なアドバイスがありました。今ならAIに喋り続けて文字起こしする方法もありますが、大塚さんがより重視するのは編集者の存在です。
僕らが喋るのは一人称になっちゃうから、読者の視点で編集の人がちゃんと構成してくれないと、読み手が読みやすくならない。
このポッドキャスト自体も、伝える手段の1つと位置づけられています。官僚系の真面目な人が「全部聴いています」と言ってくれることもあり、そうした層に情報を届けたいという狙いがあると大塚さんは話しました。
金融からクリプトへ来る人の「怖さ」をどう超えるか
大塚さんは、金融からクリプトへ移ることに興味を持ちつつ怖さを感じる人に向けて、どう乗り越えればいいかを尋ねます。徳力さんは、その怖さの原因を日本特有の入り方に見ています。
日本の多くの人は、ビットコインやイーサリアムに触れる時、価格が上がるか下がるかしか見てきませんでした。一方アメリカやグローバルでは、まず技術が作られ、その表象としてビットコインがある状態なので、本質的な技術のすごさを知っているといいます。
徳力さんは、日本でもオンチェーン化が進み、技術としてのブロックチェーンが見直されれば、金融機関の人が「すごいじゃん」と入ってくる可能性があると話します。そこを知ってもらえればハードルは超えられる、という見立てです。
徳力さん自身も、起業時は完璧に理解していたわけではなく、若干のノリもあったと明かします。技術をきちんと理解していたエンジニアのパートナーの存在が大きかったといいます。
そのパートナーは新卒同期で、関西出身という共通点もあり、もともと仲が良かったそうです。「最近この新しい技術があるよ」という話から、半年か1年後に一緒にやることになりました。大塚さんは、その半年ほどの期間が重要だと応じています。
AIにマイナーが流れてもオンチェーンは別軸
西山さんは、Xでよく見る「クリプトオワコン論」を持ち出します。電気代がAIに食われ、マイニングのリソースがAIデータセンターに持っていかれている、という説の真偽を尋ねました。
大塚さんは、マイナーは収益が高いものを求めるため、リスクマネーが集まるAIデータセンター側にシフトしている面はあると認めます。ただし、これは一時的な揺り戻しだという見方です。
AI側は高くなりすぎていて、あのままでは耐えられない。宇宙で太陽の力を使う話などで問題が解決されていくと、平準化されてまたマイナーがビットコインに戻ってくる。
重要なのは、こうしたマイナーのリソース配分の話と、徳力さんが手がけるオンチェーンの領域は基本的に離れている、という点です。大塚さんは「離れているところだと思う」と整理しました。
大塚さんは、暗号資産が何かでダメになる可能性はもちろん事業をやる上で考えるものの、AIの進化やそのデータセンター問題からリスクが生じるとは思いもしなかった、とこの技術の面白さを語ります。量子コンピューターの話も同じだといいます。
機関投資家はまだ動いていない――日本の課題
西山さんは、ビットコインETFに関して機関投資家は流通量がないと入ってこないと聞くが、温度感はどうかと尋ねます。徳力さんは、ここはグローバルと日本で大きな差があると答えました。
グローバルでは、機関投資家がポートフォリオの一部に暗号資産を入れています。一方、日本は土台が整っておらず、現状で機関投資家が持っているケースはほぼありません。投資の制約、法律の制約、知識など、理由はさまざまです。
日本の投資家が今後持つには、ETFがきちんと作られ、既存の管理方法で投資できる体制が整う必要があります。加えて、暗号資産と金融の両方に詳しい事業者もほぼいないため、そこを作っていく必要があると徳力さんは話します。
今のフェーズは、金融機関にブロックチェーンや暗号資産をキャッチアップしてもらう「エデュケーション期間」だといいます。徳力さんは金融出身のため、金融の言葉で説明すると理解してもらいやすいと話しました。その知見をもとに技術へ落とし込む動きは、年内には始まるイメージだといいます。
コインチェックグループに集まる「覇気」ある仲間
大塚さんは、徳力さんと一緒にやっているコインチェックグループのCEO、パスカルさんを紹介します。カナダ人でエンジニア出身、発話のパワーがすごい人物だといいます。
パスカルさんはもともと3IQの社長でした。3IQは海外の機関投資家向けに暗号資産のETFを組成してきた会社で、実際に実現してきた人が話すからこそ、その言葉に覇気があると大塚さんは語ります。
徳力さんは、パスカルさんは世界中を飛び回っており、ミーティングのたびにタイムゾーンを確認しないといけないほどだと明かします。話すと常にパワーが出てくる人物だといいます。
大塚さんは、パスカルさんの強みを2つの面から評価しました。
グローバルの機関投資家と直接接し、暗号資産ETFを実現してきた経験がある
エンジニア出身で組織を率いてきたため、プロダクトやテクノロジーサイドも理解している
西山さんは、創業者の和田さんとは全然違うタイプではないかと尋ねます。大塚さんは、和田さんとは全然違うと認めつつ、上場やマネックスグループ入りを経て、もはや「俺と和田の会社」ではなくなったと語りました。
大塚さんは、オーナーシップが離れていく気持ちの整理は大変だったとしつつ、それが正しい成長だと捉えています。自分と和田さんだけで続けていたら、リテールから金融側へ舵を切れなかったかもしれない、という見立てです。
買った側と買われた側が対等でいられる理由
大塚さんは、コインチェックやマネックスの話ばかりになるがと前置きしつつ、どこに属しているかはあまり気にしないと語ります。そこで重要になるのがM&Aのカルチャーです。
大塚さんは、M&Aで「買った側が偉くて買われた側が負け」という関係がないことが極めて重要だと話します。お互いの良いところを尊重し、足りないところを補い合うカルチャーがある、という説明です。
徳力さん側から見ても、常に自立を求められるといいます。買ってもらった側は甘えてしまいがちですが、自立を前提にした上で自由も責任もあり、そのバランスが良いと感じているそうです。
自立しましょうよって話が前提にあって、その代わり自由もあるし責任もあるので、そこのバランスがすごくいい。
大塚さんは、これはマネックスの松本さんの思想が強く反映されていると見ています。M&Aには社名もブランドも統一する形と、それぞれが自走する形があり、マネックスは後者の連邦制だといいます。
買った側に従わせ、社名・オフィス・ブランドを1つに統一していく
それぞれが自走する自由度を与え、必要があれば助け合い、必要ならマージする
西山さんは、大きな組織に入ってコンプライアンスがつらくならないかと尋ねます。徳力さんの答えは逆で、むしろ厳しい目を向けてもらえるのがありがたいというものでした。金融機関とビジネスをする上でそこは勝負の分かれ目になり、それができるかどうかがグローバルでも明暗を分けるといいます。
徳力さんは、暗号資産やブロックチェーンはもともと規制から離れようという概念で生まれたため、金融とは相性が悪いはずだと指摘します。それを割り切り、金融とつながるためにやるべきことをやれるかが大事で、金融出身の自分は足並みをそろえやすい感覚がある、と締めくくりました。
まとめ
コインチェックがステーキング事業者NextFinanceTechをグループに迎えた背景には、事業の伸びだけでなく、暗号資産と伝統金融が交わる未来を一緒に見られるかというカルチャーの相性がありました。徳力さんの語りからは、技術と金融規制の両方を理解する人材が、この交差点でいかに重要になっているかが浮かび上がります。
- ステーキングは、保有する暗号資産を1イーサから1.1イーサへ増やすように、利息を生み出すインフラである
- この事業は「英語とテック」と「レギュレーションと金融」の両面が揃わないと成り立たず、国内では1社しか残らなかった
- 伝統金融との交わりには、アセットクラスとしてのビットコインETFと、技術としてのオンチェーン化という2つの文脈がある
- 日本はグローバルより2、3年遅れており、機関投資家が入るにはETFの整備とプロの暗号資産金融機関が必要になる
- マネックス由来の連邦制カルチャーが、買った側と買われた側が対等に自走できる関係を支えている




