そもそも牛乳の価格は誰が決めているの?
リスナーのせいさんから、お米と同じように牛乳にも適正価格の議論はあるのか、そして川上さんが売りたい価格はいくらなのか、という質問が寄せられました。
川上さんはまず、「適正価格って一体何なのか」というところから話し始めます。
100円が適正価格だよって思う人もいますし、いや、牛乳ってすっごい大変だから1000円でも適正価格だよっていう人もいますしね。
現在の牛乳の価格は、基本的に需要と供給のバランスで決まっているそうです。価格改定は年に1回ほど行われますが、交渉自体はずっと続いているといいます。
仕組みとしては、各地域にある酪農家の指定団体 ── 生乳の集荷や販売を一元的に担う酪農家側の団体。地域ごとに組織され、乳業メーカーとの取引価格交渉などを行う。と乳業団体が話し合い、地域ごとの価格を決めます。それを中央に持っていき、関西など中央の団体同士で改めて交渉して、最終的な値段が決まっていくとのことです。
需要と供給
牛乳が足りなければ増産のため値上げ、余れば減産のため据え置き・値下げの方向へ
地域での交渉
各地域の酪農家の指定団体と乳業団体が話し合い、エリアごとの価格を出す
中央での交渉
地域の価格を中央に持っていき、団体同士が交渉して最終的な値段が決まる
原価割れしても「その値段で決定」してしまう現実
この価格はあくまで交渉で決まるもの。だからこそ、酪農家にとって厳しい現実があると川上さんは話します。
資材費が高くなって経営が回らなくなっても、「牛乳が売れないから引き取れない」と言われれば、その値段で決まってしまうのだそうです。
今年の8月からは価格が改定され、農家さんの手取りで3〜4円ほど上がるとのこと。つまり牛乳は少し値上げになります。
いま議論されている「適正価格」は、餌代などの原価が割れてしまわないよう、政府も一緒に考えていきましょうという流れです。これはお米も野菜も果樹も、すべての農産物に共通しているといいます。
ただし今年からは、あまりに原価を割った生産価格での交渉には政府から指導が入るようになった、というのが現状です。川上さんはここに一つ注意を促します。
これは言えるようになっただけなので、高く売れるっていうわけではないです。
結局、需要があってこそ高く売れる。販売する農家さんに決定権はあまりないというのが、キャベツや卵など白物の農産物にも共通する今の現実だといいます。
川上さんが理想とする牛乳の価格と、直接応援のしくみ
では、川上さん自身が思う適正価格はいくらなのでしょうか。答えはシンプルで、高ければ高いほど嬉しい、というものでした。
高く買ってくれる人が買ってくれればいい。だからこそ、メンバーシップやクラウドファンディングなど、酪農家を直接支援できるしくみを試し始めているそうです。
牛乳の価格自体は安くてもいい。その代わり、別のかたちで酪農家を応援してもらえれば、牛乳を飲めない人でも応援に参加できる、という発想です。
具体的な価格帯についても、川上さんは自身の感覚を語ってくれました。
ただ、値上げした分がそのまま酪農家に入るわけではありません。乳業会社によるパック詰めや流通の手数料がかかるためです。
川上さんは、その手数料が少し高すぎるのではと感じる部分もあると話し、上げた分をそのまま酪農家に還元できるようにしてほしいと、個人的な思いを添えていました。
適正価格を揺さぶる「不安定」と、それでも品質は上がり続ける
さらに川上さんは、酪農家にとっての適正価格を動かす要因として、いくつかの不安定さを挙げます。
一つは労働力不足。賃金アップの流れがある一方、従業員を雇う牧場も増え、家族経営の現役世代は平均年齢が70歳ほど。彼らがどっと辞めれば、雇用に頼る牧場が増えていくといいます。
- 労働力不足と賃金アップの負担
- 船や原油、関税など国際情勢による餌の供給不安
- 猛暑や台風など気候変動による飼料不足と生産性の低下
こうした要因で適正価格は日々変わっていく。だからこそ、生産も販売もデータ化し、リアルタイムに変動を反映できるシステムがあればいいと川上さんは考えています。
質問には「値上げしたら品質を維持しますといった交渉はあるのか」という点もありました。これについて川上さんは、品質向上は交渉材料ではなく当たり前のことだと答えます。
生産の努力を続けるっていうのは、農家としてはもう当たり前のことなので、これは何もしなくても牛が品種改良でどんどん改良されていきますし。
牛乳の品質検査は年々厳しくなり、味もどんどん良くなっているとのこと。中身は変わっていないように見えても、実は美味しくなっているそうです。
さらに、メタンガスの排出を抑える取り組みも進み、トータルで見ればCO2を下げられるような牛も出てきていると川上さんは話します。8月以降の値上げ後も、ぜひ引き続き飲んでほしいと呼びかけていました。
まとめ
牛乳の価格は需要と供給のバランスと団体間の交渉で決まり、原価割れしても農家に決定権が乏しいのが現実です。川上さんは、価格そのものより直接応援のしくみで酪農家を支える道を模索しながら、品質向上は当たり前として続けていると語りました。
- 牛乳の価格は需要と供給のバランスで決まり、地域と中央の団体交渉を経て年1回ほど改定される
- 原価割れしても「売れないなら引き取れない」と言われればその値段で決まるのが現実
- 川上さんの理想は販売130〜200円ほどだが、高ければ高いほど嬉しく、直接応援のしくみも重視している
- 値上げ分が手数料で目減りする点や、そのまま酪農家へ還元してほしいという思いも語られた
- 品質向上や品種改良、メタン抑制の努力は当たり前として続いており、8月以降の値上げ後も飲んでほしいと呼びかけた



