トヨタが福島で始めたバイオエタノールの正体は?
この日のニュースは、8月28日のNHK福島のウェブニュース。トヨタ自動車が、他社と共同で次世代のバイオ燃料を高い効率で生産する手法を開発したという内容です。
バイオエタノールは植物を原料にした燃料で、ガソリンに混ぜて使うことで、車から出る二酸化炭素を実質的に減らせると期待されています。
今回トヨタが注目しているのが、ソルガムという食べられない植物。日本ではタカキビ、地域によってはモロコシとも呼ばれます。暑さや痩せた土地に強く、成長も早いのが特徴です。
舞台となるのは福島県の大熊町。原発事故の影響で農地利用が難しくなった土地を活用し、地域再生と脱炭素の両立を目指す取り組みです。
草を燃料に変える「酵母のパワー」とは?
ただ草を発酵させれば燃料になるわけではありません。植物にはセルロースという分解しにくい糖がたくさん含まれていて、普通の酵母ではうまくエタノールにできないんです。
そこでトヨタが開発したのが、独自の酵母「ザイロエース」。普通の酵母が苦手とするキシロースという糖もエタノールに変えられます。
しかも発酵を邪魔する物質にも強く、変換率は95%以上。これは世界トップレベルの技術だと紹介されています。
この技術には、トヨタをはじめエネオスやスズキ、マツダなど7社が集まった「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合」が関わっています。
福島の研究施設では、ソルガムの収穫から発酵、エタノールの蒸留まで一貫して行い、最終的にはガソリンに混ぜて使う実践テストまで予定されているそうです。
2025年からはこの燃料を使ったレースカーも登場予定で、まずはスポーツの世界から社会実装の足がかりを作る計画だといいます。
海外のバイオ燃料には、どんな落とし穴がある?
世界ではすでにさまざまなバイオ燃料が作られています。話の中では、地域ごとに原料が違うことが紹介されました。
| 地域 | 原料 | 特徴 |
|---|---|---|
| アメリカ | トウモロコシ | 食用作物を原料にする |
| ブラジル | サトウキビ | ガソリンに27%混合が当たり前 |
| タイ | キャッサバ | 食用作物を原料にする |
特にブラジルでは、ガソリンに27%もエタノールを混ぜるのが当たり前で、エタノールだけで走る車まであるそうです。
ただし、海外のやり方には課題もあります。食べられる作物を燃料にすることで、食料と燃料が競合してしまうという問題です。
その影響でトウモロコシやお米の価格が上がったり、畑を増やすために森林伐採が進んでしまうこともあるといいます。
だからこそ、トヨタのように食べられない植物で燃料を作る方向が注目されている、というのが今回の話のポイントでした。
酪農家から見た「循環する農業」の可能性
ここから話は、酪農家である川上さん自身の視点に移ります。ソルガムは川上さんにとっても馴染みのある植物なんだそうです。
輪作障害で畑が使えない時にソルガムを植え、刻んで畑を起こして窒素を地中に戻す。そんな緑肥作物として使われたり、牛の餌にもなったりするといいます。
そのソルガムを、世界のトヨタがバイオエタノールに変えていく。川上さんは、これが耕作放棄地の解決につながるのではと期待を寄せます。
農業に占めるCO2の排出量の割合って結構大きいんですけど、それを農業すればするほどCO2が削減できるみたいな現実にもなってくるんじゃないかなと思って、本当に楽しみな技術ですね。
川上さんは、ゲノム編集を進めるコミュニティ「JBCN」にも所属しています。そこでは、多収米からバイオエタノールを作るプロジェクトも話し合われてきたそうです。
海外の燃料に依存している日本が、逆にエネルギーを他国に輸出できるところまで持っていけたら面白い。そんな話もされていると紹介されました。
牛も加わる「本当の循環」を目指して
川上さんが特に力を込めて語ったのが、牛まで含めた循環のイメージです。
お米から作ったバイオエタノールには搾りかすが出ます。その搾りかすを牛の飼料にすれば、本当に循環するというのが川上さんの描く姿です。
作物を育てる
ソルガムやお米を畑で栽培する
燃料を作る
発酵させてバイオエタノールにする
搾りかすを餌に
残った搾りかすを牛の飼料にする
糞を畑に戻す
牛の糞を肥料として畑にすき込む
牛が食べて、その糞をまた畑に戻し、そこからソルガムやお米を作る。そこまでできるといいなと話されています。
一方で、こうした取り組みは消費者の理解がなければできないこと。川上さんは、ぜひ応援してほしいと呼びかけました。
バイオ燃料は、電気だけでは解決しにくい分野にも有効だといいます。重機や船舶、農業機械などの脱炭素です。
一次産業の現場では、いきなり全部をEVにするのは無理な話。液体燃料のまま脱炭素できるのは、とても現実的だと語られました。
川上さんは9月上旬に茨城の試験圃場を見に行く予定で、共有できることがあればまた話したいとしています。
まとめ
今回は、トヨタが福島で進める食べない植物ソルガムを使ったバイオエタノール開発のニュースを、酪農家の視点から読み解く回でした。食料と競合しない燃料作りが、耕作放棄地の活用や農業の脱炭素、さらには牛を含めた資源の循環につながるかもしれない、という期待が語られました。
- トヨタは食べられない植物ソルガムを原料に、変換率95%以上の酵母技術でバイオエタノールを開発した
- 舞台は福島県大熊町で、地域再生と脱炭素の両立を目指す取り組みになっている
- 海外では食用作物を燃料にすることで食料と競合する課題があり、食べない植物を使う方向が注目されている
- 川上さんは搾りかすを牛の餌に、糞を畑に戻す「循環する農業」の可能性に期待を寄せている
- こうした技術の普及には消費者の理解が欠かせないと呼びかけられた





