問いを生まないと改善は起きない?
本題のお便りに入る前に、しもちゃんは番組のコンセプトである「聞いた人の中に新しい問いが生まれること」が、今の職場でもすごく大事だと感じていると話します。
しもちゃんの考えでは、仕事はどれも「過去のものよりいいものを作っていく」点で共通しており、その出発点には必ず問いがあります。
問いが生まれないと改善ってしない。
ただし問いを生むには、会社でもプライベートでも、相手に踏み込んで話す必要があるとしもちゃんは続けます。上辺だけのやり取りでは納得も、いいものづくりも起きないという見方です。
「過去これまで会社がこうやったからどうせ変わらん」とか、上から言われたことを「はいはい」って言ってるだけやったら、上の人だけじゃ見えてない現場の温度感とかあるじゃないですか。
だからほんまにわからへんかったら、相手に一歩踏み込んで、「いや、それおかしくないですか?」とか、そういうのってめっちゃ大事やなって最近思うんですよね。
いなけんが「しっとりしましたね」と返し、アイスブレイクはここで締めくくられます。
シャトーブリアンはなぜ満たしてくれなかったのか
この回は久しぶりのお便り回です。声がいいと好評だという理由で、いなけんが読み上げ役を任されます。届いたのは、ラジオネーム「シャトーブリアンがおいしくなかった」さんからの相談でした。
最近、自分は何のために働いているんだろうと考えてしまいます。お金のためかと思って、少し奮発してシャトーブリアンを食べに行きました。でも正直そこまでおいしくなかったんです。その時お金が欲しいわけではないのかもと気づきました。
シャトーブリアンがおいしくなかった さんから
考えてみると、私が欲しいのは足りない感じがなくなることでした。満たされている感じをずっと持っていたいんだと思います。でも、それを仕事で手に入れられるのかがわかりません。お二人にとって仕事とは何ですか?お金と仕事は本質的にはつながっているものなんでしょうか。
シャトーブリアンがおいしくなかった さんから
しもちゃんは、こうした問いは20代中盤から30代前半に多いのではないかと推測します。いなけんは、お金のために働くと考えて奮発したものの、単発の消費では満たされなかったという相談だと整理しました。
消費ってさ、その時々で高いもの買って「やった」ってなる感覚はあるけどさ、あんま持続しないというかさ。
それをまた次の高いもの、高いものって、ぐるぐるそのために働くって、空虚だなって思ってしまうかもな。
いなけんは「いきなり結論めっちゃかもしれないけど」と前置きしつつ、高いものを追い続けるために働くことへの違和感を率直に口にしています。
フェラーリを買っても彼女ができない理由
いなけんの話を受けて、しもちゃんは問題を「何が欲しいか」に置き直します。欲しいものがわかっていないから、買っても満足しないという見立てです。
結局、欲しいものわかってないから買っても満足しないと思うんですよね。
しもちゃんが例に出したのは、彼女が欲しくてモテるために2000万円ほどかけてフェラーリを買う人です。乗ってはいるものの彼女はできず、それで満たされるかと言えば、おそらく満たされないとしもちゃんは言います。
目的
彼女が欲しい
手段
モテるために2000万円ほどでフェラーリを買う
結果
乗っているが彼女はできず、満たされない
いなけんはこの例を、目的と手段がずれていて結果につながっていない状態だとまとめます。そのうえで、彼女が欲しいという気持ちも、実はパートナーではなく「彼女がいるというステータスの自分」を求めている可能性があると付け加えました。
何かステータスが欲しいっていうことは基本ないと思ってます。そのステータスを使って何かをしたいが絶対に来るから。
いなけんもステータスは「出発点でしかない」と同意し、しもちゃんは、まず何が欲しいかを明確にすることが大事だと話を進めます。ただし、それが簡単ではないことは二人とも認めています。
欲しいのは「集中」。ガラスのコップで気づいたこと
いなけんが、しもちゃん自身の「欲しい」は何かと尋ねると、しもちゃんは即座に「集中」だと答えます。直前にプレステのような物が挙がった際も、しもちゃんはそれは「やりたいだけ」で別物だと区別していました。
しもちゃんがそう考えるようになったきっかけは、1〜2日前の小さな出来事でした。水を入れたガラスのコップの模様がいつもと違って見え、思わずじっと見入っていたことに、我に返ってから気づいたといいます。
集中しよう集中しようっていうのってコントロールしてる集中やから、結局雑念が湧くじゃないですか。
その時思ったんは、集中って生まれるもの。
しもちゃんは、集中できる状態は常にあると考えています。たとえば通勤電車の顔ぶれや、いつも見る人の顔にも昨日と今日で違う部分があり、そうした違いに気づいて「なんで違うねん」と思えるかどうかが鍵だという見方です。
しもちゃんによれば、周りの環境の違いと自分の興味関心のベクトルが合ったときに、集中は自然に生まれます。欲しいものの答えと、集中が起こる構造の仮説が、ここで一つにつながりました。
「欲しい」と「やりたい」はどう違う?疑問は仮説という見方
いなけんは、しもちゃんの答えが物ではなく「状態」の話になっていると指摘し、欲しいものとやりたいことの違いを改めて尋ねます。
(やりたいものは)手段に愛着を覚えてる状態じゃないですか。
しもちゃんの整理では、やりたいという感情が具体的な物に落ちると、それが「やりたいこと」になります。二人のやり取りから見えてきた区別を並べると、次のようになります。
物ではなく状態として捉えるもの。しもちゃんにとっての「集中」
手段に愛着を覚えている状態。プレステやゲームのように物に落ちたもの
ここでいなけんは軸を相談に戻します。相談者は、満たされている状態を求めながら、それが仕事で手に入るのかどうかがわからない。いなけんは、やりたいことの手段として仕事が合っているのかという問いだと解釈しました。
しもちゃんは、働き方も仕事の捉え方も人それぞれだと前置きしたうえで、そう思うなら「何か違うことをしてみたら?」と答えます。
しもちゃんの考えでは、仮説が出たのなら、あとは検証すればいいだけです。仕事とお金については「多くの場合つながっている」と認めつつ、白黒をはっきりさせるのではなく、全部を肯定する前提で考えればいいと話します。
一個の過去の自分が信じた前提だけを信じた上で、自分の疑問とか自分の仮説を覆い被せる必要なんてないと思うんですよね。
それが自分を信じることやと思います。
しもちゃんがこう考える背景には、自分より経験も知識も圧倒的にある人たちに囲まれて働いている状況があります。おかしいと思ったことを口にしなくても、後から「そもそもこれってどうだったっけ?」という発言が出ることがあり、自分の感覚はそれほどずれていないと感じたそうです。
ずれたとしても、言うまでそれの正否の判断できないから。なんか信じるしかないなっていう。
いなけんは、相談者が仕事とお金の関係に疑問を持てたことにまず拍手を送り、自分を信じて感覚に従って次に何が見つかるかにチャレンジしてみては、と回答をまとめました。
仕事とお金は本質的につながっているのか
しもちゃんに最近湧いた疑問を聞かれたいなけんは、相談の「お金と仕事は本質的につながっているのか」という問いに立ち返ります。「本質的に」を一旦置けば、往々にしてつながっているというのがいなけんの見方です。
ただし、いなけんは仕事の中身が一様ではないと指摘します。作業ベースのもの、頭脳労働的なもの、クリエイティブなものなど、さまざまなものを一緒くたに「仕事」と呼んでいるからです。
仕事の中には、趣味の延長のようなものも、やっていてピタッとくる楽しいものも、ブルシットジョブ ── 人類学者デヴィッド・グレーバーが提唱した概念で、働いている本人すら無意味だと感じている仕事のこと。「クソどうでもいい仕事」とも訳されますのようにやりがいを感じないものも混ざっています。いなけんは、自分の楽しい方がどちらかを自覚できることが出発点ではないかと話しました。
楽しいことなんて結局言葉にした瞬間から過去のものになるから。まあ変わること前提になるじゃないですか。
しもちゃんは、だから考えなくてもいいし、考えたければ考えればいいとも言います。これを受けて、いなけんはしもちゃんの「集中が欲しい」という答えに示唆があると話を戻しました。
一旦目の前のことに没頭してみるとさ、楽しいか楽しくないみたいな、その自分の感情のラベル付けを置いといてさ。
いなけんは、フロー状態 ── 心理学者チクセントミハイが提唱した、時間を忘れるほど目の前の活動に没頭している心理状態のことで時間を忘れて集中している感覚こそが、「楽しい」に近いのではないかと個人的に感じていると語ります。しもちゃんも「そうかもしれないですね」と応じました。
分業の中で全体が見えなくなるモヤモヤ
しもちゃんから、日常で抱いた具体的な疑問を改めて聞かれたいなけんは、会社の分業について話し始めます。2026年時点では、一人で物作りするより、会社に所属して誰かと共同で仕事をするのが多数派だという前提からです。
いなけんは、工場のA工程、B工程、C工程のように分業し、それぞれに特化させるのが全体として最大のパフォーマンスを出す一つの最適解だと認めます。そのうえで、関わる人が多い組織ほど全体が見えなくなると続けました。
そのA工程のプロフェッショナリズムを突き詰めることに、本当に自分のやりたいことって、このAを極めることなんだっけっていう疑念が生じるというか。
裏を返すと、いや、もっと全工程自分で、自分の意思でやりたいよなっていうのがすごい最近、ふつふつと思うことですね。
いなけんがもう一歩踏み込んで説明したのは、ボトルネックの問題です。工場の例で言えば、次のような構造で全体が変わらないまま残ってしまうといいます。
気づき
A工程の担当として、後工程を見るとA工程やB・C工程の構造を変えた方がいいと気づく
壁
A・B・Cそれぞれに工程のオーナーがいる
結果
A工程の一担当が言っても、全体のボトルネックは変わらない
だから自分の思い通りに仕事進まないってことでしょ。
絶対こうした方がいいのに、なんでそうなんないの?っていうのは、多分各々の正義のもと、最適解を積み上げていくと、誰かの最適解ではないというか。
しもちゃんは、会社のビジョンやミッションを軸に意思決定できる組織が理想的だとしつつ、規模が大きいと難しいと応じます。いなけんも二八の法則 ── 全体の結果の大部分が一部の要素から生まれるという経験則。「パレートの法則」とも呼ばれますを引き合いに、これは自分の環境に限らず多くの組織で起きていることだと話しました。
仮にこれでめっちゃめちゃ小さい会社入りましたってなっても、結局、もし成功して拡大するんやったら、今と同じような問題に大なり小なりぶつかると思うんですよ。
しもちゃんの見立てでは、いなけんのモヤモヤは、今の役割で意思決定できる領域が狭いことから起きています。その領域を何パーセントぐらい欲しいかで、働き方が決まっていくのではないかという提案です。
いなけん自身は、会社では難しいと割り切り、プライベートで意思決定の回数を自分のやりたいように積むことにしているといいます。本質ラジオのショート動画を勝手に作って上げているのも、その延長線だと話し、しもちゃんは「助かってます」と笑って応じました。
ストレングスファインダーが教えてくれた性分
話しているうちに、いなけんは「ハッとした」と言い出します。名前がなかなか出てこなかったものの、しもちゃんの助けで思い出したのはストレングスファインダー ── 米ギャラップ社が開発した才能診断ツール。質問への回答から、34の資質のうち上位にくる強みを示しますでした。
いなけんが学生時代、就活のタイミングで受けた結果では、執念心や着想といった資質が上位に来ていたそうです。ストレングスファインダーの結果は根本的にはあまり変わらないとも言われており、最近ふと思い出して答え合わせのような感覚になったといいます。
自分の思ったアイディアとか、こうだったらいいのにな、が思い浮かんで、それをアウトプットして誰かの反応を見るっていう一連のプロセスが、
多分だけどちっちゃい頃から、全てにおいて俺の一番気持ちが発火する瞬間で。
着想
こうだったらいいのに、というアイデアが浮かぶ
アウトプット
アイデアを形にして外に出す
反応
誰かの反応を見る
いなけんは、このプロセスの途中で止まり、アイデアはあるのに実行に移せないとなると、強い詰まりや消化不良を感じると振り返ります。分業の中で全体を動かせないモヤモヤも、この性分と重なっていることが見えてきました。
しもちゃんの反応が薄く、いなけんは「あんまり受け止めてくれてないな」とこぼします。しもちゃんは受け止めていると返しつつ、驚きがない理由を説明しました。
ストレングスファインダーでそんなん調べんくてもわかるやろうと思って。
最後にいなけんは、ストレングスファインダーやMBTI ── 性格を16タイプに分類する性格診断。外向・内向などの4つの指標を組み合わせてタイプを示しますなど世の中の性格診断を5〜6個受け、お互いに気になるところを掘っていく企画をジャストアイデアとして提案します。しもちゃんは「面白そうかもしれへん」と応じ、この回は締めくくられました。
まとめ
「何のために働くのか」という相談に対し、二人は欲しいものを物ではなく状態として捉え直し、湧いた疑問を仮説として検証することを勧めました。後半では、分業の中で自分で決められる範囲の狭さと、アイデアを実行に移したいという性分が、働くうえでのモヤモヤにつながっていることが語られています。
- 高い買い物の満足が続かないのは、欲しいものが明確でないまま手段で解決しようとするからかもしれない
- しもちゃんにとっての「欲しい」は集中という状態で、集中は環境の違いと興味関心が合ったときに生まれる
- 疑問は仮説であり、違和感を持ったら違うことを試して検証すればいい
- 組織の分業では全体が見えにくく、意思決定できる領域をどれだけ持ちたいかが働き方を左右する
- いなけんは、着想からアウトプット、反応までを自分で回せないと詰まる性分に気づいた




