餃子をラーメンや日本酒と並ぶ食文化に
番組の冒頭で、小野寺さんは自身の夢を語ります。焼き餃子を、ラーメンや日本酒と並ぶ日本の食文化の一つにしていきたいという願いです。
多くの人は、餃子もラーメンもお腹を満たせればいいと思っている。それは小野寺さんも理解しています。それでも、もっと美味しい餃子を食べたい、餃子の自由さや可能性を知ってほしいと話します。
ただし、新しい美味しい餃子が生まれても、消費者が受け入れなければ消えてしまいます。だからこそ、作る側だけでなく消費者のセンスも変えていく必要があると指摘します。
そのうえで小野寺さんは、餃子の食文化を高めるための課題を3つ挙げていきます。
課題1 「焼き餃子は中国の食文化」という思い込み
1つ目の課題は、焼き餃子が中国の食文化だと思われていることです。餃子のルーツが中国にあるのは事実で、ラーメンも餃子も、もともと日本では中華料理として認識されていました。
しかし今のラーメン専門店に、中華料理のイメージはほとんどありません。むしろ紹介の際に中国っぽいBGMが流れると、違和感を覚えるほど脱中華が進んでいると小野寺さんは言います。
一方で焼き餃子は、テレビで紹介されるときに今もチャイナ風のBGMが流れがちです。ここに小野寺さんは違和感を感じています。
まだ世の中的に日本の食文化だと思われてなくて、中国で愛されている焼き餃子を日本人も食べているんだみたいな風に思われているような気がします。
だからこそ小野寺さんは、細かいことではあるものの、いろいろな場で「焼き餃子は日本の食文化なんです」と語り続けているそうです。
課題2 味の多様性が育っていない
2つ目の課題は、味の多様性がまだ育っていないことです。作る側が提供しきれておらず、消費者も受け入れきれていないと小野寺さんは考えています。
ここでも手本になるのがラーメンです。最初は中華そばのように似たものだった。そこから作る側が努力を重ね、消費する側のセンスも磨かれ、今の多様なラーメン文化が生まれたと振り返ります。
ラーメンには醤油、塩、豚骨などのベースがあり、麺の太さや具のバリエーションも広がっています。さらにつけ麺、油そば、冷やしそばと、それぞれがスタンダードとして定着しています。
それに比べ餃子は、皮の厚さや大きさ、肉と野菜のバランス、味付けの濃淡くらいで、基本的な味のバランスは似ていると言います。
個性の差はスパイスや調味料の違い程度で、大きな差にはなりにくい。そのため、餃子を紹介しても「さっきの餃子と何が違うのか」と受け取られやすいのが実情です。
もっと大胆に餃子の味のスタンダードが分かれてもいいんじゃない?ラーメンが塩味と醤油味があるように、大きく分かれてもいいんじゃない?
ただ、いざスタンダードと違うものが出てきても、消費者がなかなか受け入れず、結局売れないから作るのをやめてしまう。そうしたことが実際に起きていると小野寺さんは明かします。
その裏づけとして、スタンダードな餃子と変わり種を並べて売ると、売れるのは8割がスタンダードだと言います。ニラやニンニクをたっぷり効かせた程度なら手に取ってもらえますが、それ以上の変わり種は定着しづらいのが現状です。
並べて売ると約8割を占める。安定して選ばれる
最初は面白がられても定着しにくく、作る側が撤退することも
見た目はスタンダードでも食べると個性的、という餃子もときどきあります。それでも変わり種が一つのジャンルとして確立するには、まだ道のりが遠いと小野寺さんは話します。
課題3 餃子職人がリスペクトされていない
3つ目の課題は、餃子職人がまだ十分にリスペクトされていないことです。工場で大量生産されるイメージが強く、家庭でもゼロから作れてしまうため、職人のすごさが伝わりにくいと小野寺さんは見ています。
中華の達人はいても、餃子の達人はなかなか評価されない。ラーメンがミシュランの星を取る一方で、餃子はビブグルマン止まりだといった例も挙げます。
主食ではなくおかず扱いであることや、家庭で作れることが、餃子職人の評価されにくさにつながっているのかもしれないと小野寺さんは考えます。
比較として挙がるのが寿司職人です。誰でもできそうに見えて、極めるとちょっとした違いが大きな差になる。そうした高度な技術を持つ職人というイメージが、寿司にはあります。
餃子にも、店で客と向き合う職人や、工場で作る熟練の職人がいます。しかし、その存在が世の中に広まっておらず、数が少なすぎると小野寺さんは指摘します。
そして、たとえ「餃子の鉄人」が世に出ても、その違いを見いだしてもらえない。ここは消費者側の課題でもあると言います。
例えば餃子の王将でも、焼く人によって味が違うよねみたいなことを考える人って、まだまだ少数派だったりしますけど。
こうした細かな違いを感じる人が増えれば、作る側の多様性も認められやすくなり、餃子職人が評価されるようになる。小野寺さんはそう見通します。
時間をかけて世の中を変えていく
焼き餃子が日常に親しまれた料理であることは、とても良いことです。ただ、それゆえのバイアスもあり、新しいジャンルが定着しにくく、作り手も表に出てきにくいと小野寺さんは整理します。
消費者が違いを感じる
焼く人による味の差など、細かな違いを楽しむ人が増える
多様性が認められる
変わり種や新しいジャンルが受け入れられやすくなる
餃子職人が評価される
作り手のセンスや技術がリスペクトされる
作る側と消費者の熟成には時間がかかります。それでも、多くの人の力を借りて、焼き餃子協会として世の中を変えていきたいと小野寺さんは語ります。
番組の最後に、小野寺さんはリスナーへ「あなたの考える餃子の常識」を教えてほしいと呼びかけ、概要欄のご意見フォームへの投稿を案内しています。
なお、番組の締めに流れる中国っぽいと言われがちな音楽は、実はタイトルが「Japanese Temple」なのだそうです。
まとめ
焼き餃子を日本の食文化にするために、小野寺さんは3つの課題を挙げました。ラーメンの歩みを手本に、作る側と消費者が時間をかけて成熟していくことを目指しています。
- 焼き餃子は今も「中国の食文化」と思われがちで、その意識を変えることが第一歩
- 味の多様性が育っておらず、変わり種は売上の約2割にとどまり定着しにくい
- 工場生産や家庭でも作れるイメージから、餃子職人の技術が評価されにくい
- 消費者が細かな違いを楽しむようになれば、多様性と職人の評価につながる
- 焼き餃子協会として、時間をかけて食文化としての地位確立を目指す
