味覚だけでは決まらない、ジャパン餃子大賞の審査基準
ジャパン餃子大賞は「本当にうまい餃子を決めよう」というコンセプトで、トライラーメン大賞 ── 講談社系のメディアが手がけるラーメンのアワード。ここでは餃子版の運営に同じ座組が関わっているという文脈で語られている。を作っている講談社BECと焼き餃子協会が取り組んでいるプロジェクトです。
美味しい餃子は人によって感覚が違うため、公平になるよう5人の餃子マニアと2人の専門家が、いろいろな視点で審査しました。
小野寺さんによると、この審査基準は食品の審査としては珍しいものだといいます。味覚審査で決める点数は60点で、味覚以外の部分に40点が割り当てられているからです。
付加価値の30点では、独創性や革新性、地域性や文化的背景、餃子への愛やストーリー性、持続可能性の取り組みなどを評価します。
小野寺さんは、付加価値を「その餃子を誰がどんな思いで、どんな場所で何を使って作っているのか」を点数にしたものだと説明しています。
体験価値の10点は、お店ならどんな体験ができるか、通販ならパッケージや調理方法のわかりやすさ、スーパーの総菜なら安心感や温め直しの簡単さと美味しさを見ています。
小野寺さんは、この審査基準こそがジャパン餃子大賞の一番大きな特徴だと話します。今おいしい餃子を決めると同時に、これから美味しい餃子が増えていくといいなという願いも、基準に込めているといいます。
通販は説明書どおり、総菜は温め直して。審査の舞台裏
昨年は審査員が飲食店を挙げ、お店に足を運んで審査していました。今年からは通販餃子とスーパーの総菜餃子を店側からエントリーしてもらい、書類審査を経て試食審査を行う形になったといいます。
試食審査の数は相当多く、通販餃子も総菜餃子もそれぞれ数十件ほど。2日間に分けて審査したそうです。
通販餃子は冷凍のものを送ってもらい、Jオイルミルズのシェフが説明書どおりに調理したものをすぐ試食して審査しました。作り手は来ないため、資料や動画を見て審査します。
動画の方が圧倒的に情報量がやっぱ多いですね。どんな人かって顔も見えますし、どんな思いでっていうのも感情も、文章より動画の方がすごくわかりやすい。
そのため、動画でエントリーしてきた店が上位に来やすい傾向があったと小野寺さんは振り返ります。
スーパーの総菜餃子は、店頭のパッケージを持ち込んでもらい、Jオイルミルズのキッチンで電子レンジやフライパンなど指定の方法で家庭のように再加熱し、それを審査しました。つまり一度冷めた餃子を温め直して食べる審査です。
番組の第120回でも触れているとおり、スーパーの焼き餃子は時間が経つと焼き目のパリパリ感も皮のモチモチ感も弱くなってしまいます。それでも美味しい餃子が増えてほしいという願いから、この部門を立ち上げたといいます。
「今日はこれでいいや」に寄り添えるか
小野寺さんは、スーパーの総菜餃子を買う人には「フライパンを出して調理するのは面倒、今日はこれでいいや」という気持ちの人が多いのではないかと見ています。
手軽に温め直して、それでいて美味しい餃子が食べられたら最高だという発想が、審査基準の背景にあるといいます。
さらに、通販も総菜も、原材料やアレルゲンが丁寧に書かれているか、どんな思いで作っているかがパッケージに出ているかを重視したそうです。
餃子は中身が見えない料理です。小野寺さんは、安心安全な料理だと証明するためにも、パッケージに情報がクリアに書かれていることは大切だと話します。大人だけでなく子供も食べる料理だという点も、消費者側の基準として重要だといいます。
最高金賞は青森から。ユニバの琥珀黄金ぎょうざ
総菜餃子部門の最高金賞は、青森県八戸市の株式会社ユニバースの「ユニバの琥珀黄金ぎょうざ」でした。大手スーパーもエントリーするなかでの受賞です。
最高金賞、なんと青森県なんですよ。これが餃子の面白いところですよね。
小野寺さんは、宇都宮や浜松のような餃子の大都市ではなく青森が最高金賞を取ったことに、美味しさだけで決まらないこの審査基準の面白さがあると話します。
皮は強力粉に米粉ともち米澱粉を配合した、しっかりめの13グラム。冷めて時間が経ってもモチモチを維持することを目指しているといいます。スーパーの総菜餃子の弱点である皮の劣化を克服する狙いです。
餡には青森県産のガーリックポークと岩手県産の短角牛のバラ肉を合わせ、豚肉と牛肉の美味しさを掛け合わせています。キャベツは乾燥キャベツで甘みを、フレッシュなキャベツで食感を出す2種類使いです。
仕上げは、蒸したものをラードで焼き上げて旨味と香りを閉じ込める工程。こうした思いを動画でプレゼンしたことが審査員に刺さり、最高金賞につながったといいます。
薄皮派か厚皮派か。金賞10商品の皮の設計
最高金賞以外に金賞は10商品あり、小野寺さんはいろいろな視点で紹介していきます。皮に注目すると、大きく薄皮と厚皮という2つの設計思想に分かれるといいます。
歯切れを重視。原信ナルス「四味一体!スタミナ焼餃子」は0.6ミリ、平和堂「あじわい豚使用」は7回プレス、カスミの野菜餃子は0.8ミリで経時劣化に強い口溶けを狙う
食べ応えを重視。いなげや「美味豚入りこだわりの大餃子」は高級中華麺用小麦粉、クイーンズ伊勢丹の澤園餃子は1個45グラムでタピオカ粉入り
薄皮では、新潟県長岡市の原信ナルスの「四味一体!スタミナ焼餃子」が、製麺機で5段階、成型機で2回圧縮して0.6ミリに仕上げています。麺線を餃子に対して横に入れると歯切れがよくなるという工夫も語られました。
厚皮では、東京都立川市のいなげやの「美味豚入りこだわりの大餃子」が、名前のとおりやや大きめ。スーパーでは大きい餃子は多くないなか、高級中華麺用の小麦粉を使った厚皮に仕上げているといいます。
小野寺さんは、薄皮は歯切れよく劣化にも扱いやすい一方、厚皮は食べ応えがあり油が皮に染みにくいメリットもあると整理し、どちらが正解ということはないと話します。
つづら製法と低加水。皮づくりの相反する工夫
大手のイオンリテールも、売場ブランド「絶賛」の「肉餃子」で金賞を受賞しています。この皮には「つづら製法」という名前がついているといいます。
小野寺さんは、皮の熟成時間を時間単位で管理できるのは、大量生産をする大手ならではのテクニックだと話します。
逆に東武ストアの「こだわり素材の焼き餃子」は、皮の原料を北海道産の小麦粉と食塩だけにシンプルにし、加水率を低く抑えています。手間はかかるものの、小麦本来の風味と食感を出す方向です。
小野寺さんは、大量に作っても味のばらつきをなくすという同じ課題に対し、各スーパーが違う工夫で応えていると感じたといいます。
黒豚×親鳥と酢胡椒。イオン九州のタレの発想
餡やタレにこだわる店もありました。イオン九州の「九州産黒豚×親鳥入り 皮がもっちり!にんにく焼き餃子」は、餡に九州産の黒豚と親鳥もも肉の2種類を6ミリの粗挽きで入れ、ジューシーさと肉の存在感を両立させています。
キャベツは国産を10ミリの大カットにして完全ドラム脱水し、通常は冷凍で運ぶところをチルド物流にして繊維を壊さず、シャキッとした食感を保っています。小野寺さんは、効率より美味しさを選んだこだわりだと評します。
そしてタレが酢胡椒です。親鳥もも肉と黒豚でパンチのある味に、塩麹の旨味も加わるため、酢胡椒がお肉の美味しさに深みを出しつつ、さっぱりさせて食べやすくしていると話します。
子供も食べる料理だから。ニンニクをどう扱うか
スーパーの餃子は家庭で子供も食べる点が重要です。そのためニンニクの扱いが商品設計の中心に入っていると小野寺さんは話します。
茨城県つくば市のカスミの野菜餃子はニンニク不使用で、食べる時間に気を使う必要がなくしています。ニンニクありとなしを分けている形です。
新潟の原信ナルスは、ニンニクの配合比を全体の1.16パーセントと控えめにしています。旨味は欲しいがニンニク臭は避けたいというバランスを細かく計算し、肉と野菜の味を感じさせる狙いです。
ニンニクは多少やっぱり入れた方が旨みがあるよね。それだけど、やっぱりニンニク濃すぎるとやっぱりニンニクっぽい匂いになっちゃうよね。
イオン九州は、ニンニクのアクセントを残しつつ塩麹でマスキングし、食べ飽きないようにしています。
小野寺さんは、番組の第121回でもニンニクの話をしたと触れながら、総菜餃子を買うのは平日夕方で翌日も仕事という人が多く、子供も一緒に食べるため、ニンニクをどう扱うかが商品設計のど真ん中にあると話します。
地元の名店と地元の食材。スーパーならではの強み
付加価値を大切にする審査基準に対して、スーパーの思いが乗った商品も金賞に選ばれています。
静岡県沼津市のスーパーカドイケの「手づくり餃子」は、沼津の人気中華店「手打ちラーメンとん平」が監修した本格町中華餃子です。小野寺さんは、地元の名店と地元のスーパーが組んだ餃子が全国に流行ったらいいと話します。
スーパーならではの強みとして小野寺さんが挙げるのは、精肉担当が美味しい肉を厳選でき、キャベツも市場から直送して時期のよいものを選べる点です。産地と季節に合わせて調味料も微調整できるといいます。
近畿大手の平和堂の「あじわい豚使用」は、自社の指定農場で育てた味わい豚に、滋賀県産の「みのりのかおり」をブレンドした皮を合わせ、小麦本来の甘みで餡を引き立てています。ソースをブロック状に入れて包み、焼くと溶けて旨味が溢れる独自レシピも使っています。
受賞11商品のうち4つが鶏肉。豚と鶏のバランス
餃子は豚肉をメインに使う店が多いですが、今回の受賞店には鶏肉を使うものが多かったと小野寺さんは指摘します。大量に作る大手では、豚肉だけに頼るのが難しいのではないかといいます。
相鉄ローゼンの「国産野菜使用!香味野菜香る餃子」は、豚脂は使うものの肉のメインは鶏肉で、国産鶏の胸とささみを3.2ミリで挽いて使っています。ニラやニンニク、生姜といった香味野菜が主役の、あっさりめの餃子です。
東武ストアは豚肉と鶏肉を配合してジューシーさと食べ応えを両立し、国産にこだわっています。カスミは鶏もも肉を5ミリ角で使い、さっぱりのなかにコクを出しています。イオン九州も九州産の親鳥もも肉を使っています。
小野寺さんによると、金賞を受賞した11商品のうち4商品が鶏を使っており、餃子は豚肉と鶏肉を使ってバランスを作る料理だと見える、と話します。
誰が焼いても美味しく。売場のオペレーション
スーパーの餃子は、中央でまとめて作り、店で焼いてパックして店頭に出すのが基本のオペレーションです。ここに工夫を凝らす店もありました。
カスミは自社工場で焼き上げ、油を敷いた状態で冷凍して各店に送り、バックヤードでは油を引かずそのまま焼けるようにしています。小野寺さんは、焼く人によって味が変わることを避ける思いが込められていると話します。
一方でユニバースは、店頭で蒸してから焼くという手間のかかる工程をあえて選び、そこに旨味を閉じ込める工夫を置いています。
今週のお取り寄せは大賞受賞餃子の食べ比べセット
今週のお取り寄せ餃子は、ニッポン餃子点心堂の「JAPAN餃子2026大賞セットvol.1」です。ジャパン餃子大賞を受賞した冷凍の通販餃子をイートアンドの冷凍倉庫にまとめ、そこから配送する仕組みだといいます。
一個一個買うより送料がめちゃくちゃ安いよってことですね。
このセットには5商品が入っています。最高金賞の宮崎「餃子の馬渡」のもっちり餃子が40粒、北海道「ぎょうざの宝永」の宝永チーズ餃子が約15粒などです。
| 商品 | 店・産地 | 粒数 |
|---|---|---|
| 馬渡のもっちり餃子 | 餃子の馬渡/宮崎(最高金賞) | 40粒 |
| 宝永チーズ餃子 | ぎょうざの宝永/北海道(金賞) | 約15粒 |
| しそ餃子 | 餃子屋ヒロ/神奈川(金賞) | 12粒 |
| 手包み大葉餃子 | 餃子屋はまだ/滋賀(金賞) | 12粒 |
| 特撰生餃子 | 金星食品/群馬(審査員特別賞) | 20粒 |
合計94粒で、送料込み8280円です。小野寺さんは、それぞれ通販で取り寄せると送料だけでかなりの金額になるのに、送料無料でこの価格は太っ腹すぎると話します。
我々審査員はぎょうざの馬渡さんのもっちり餃子を最高金賞と選んだんですけど、あなたにとっての最高金賞は、また違う商品かもしれない。
来年のジャパン餃子大賞はさらに熱い戦いに
小野寺さんは、ジャパン餃子大賞の目的は本当にうまい餃子を決めることだが、アワードを続けることで本当にうまい餃子が生まれてくることも期待できると話します。
その理由は、審査基準をはっきり明示して発表しているからです。それを研究すれば、スーパーや通販の餃子屋が「自分もいけるんじゃないか」と思える内容にしているといいます。
今年は準備の時間が足りなかった店や、様子見でエントリーしなかった店も多く、すでに来年に向けて準備している人もいるそうです。小野寺さんは来年はさらに熱い戦いになると期待を語ります。
9月15日発売の「おとなの週末」には餃子の写真だけでなく、作っている人たちの顔も載っています。小野寺さんは、餃子は作っている人によって味が違うという体験をしてほしいと話します。
作る人たちの思いが込められている、その作っている人たちが住んでいる地域の思いも込められている料理なんだ。
まとめ
ジャパン餃子大賞2026の総菜餃子部門は、味覚60点に加え付加価値30点・体験価値10点という基準で審査され、青森県のユニバースが最高金賞に輝きました。金賞10商品からは、皮の設計、ニンニクの扱い、地元の食材、鶏肉の活用、売場のオペレーションといった、スーパーごとの工夫が見えてきます。
- 審査は味覚60点・付加価値30点・体験価値10点で、舌だけでなく脳や心で感じる美味しさを評価する
- 最高金賞は青森県八戸市ユニバースの「ユニバの琥珀黄金ぎょうざ」。米粉ともち米澱粉で冷めてもモチモチを狙う皮が特徴
- 金賞商品の皮は薄皮派と厚皮派に分かれ、つづら製法や低加水など各社が異なる工夫を凝らしている
- 子供も食べる料理としてニンニクの扱いが商品設計の中心にあり、受賞11商品のうち4商品が鶏肉を使っている
- 今週のお取り寄せは「JAPAN餃子2026大賞セットvol.1」。5商品94粒を送料込み8280円で食べ比べできる


