半年で「別世界」、経営者2人のいまのAIの使い方
この回は「どうする?経営と生成AI活用2026秋」がテーマです。宇尾野彰大は、半年前の春に同じ企画をやったこと、さらにその前は第45回で生成AIの走り出しを話したことを振り返ります。
池原真佐子は、この半年での変化の速さをこう表現します。
もう半年経つと、全く別世界が見えてきましたね、この領域。
池原真佐子自身の使い方も、かなり踏み込んだものになっていました。目的ごとにサービスを使い分けつつ、コードを書くことにハマったと話します。
一時ですね、結構コードを書くのにハマって、ClaudeCodeとかを、セキュリティがわからなかったのでプランを自費で使っていて。
さらに使いこなしたくなっちゃって、自費で家庭教師みたいな人を探して、マンツーマンで自分好みのClaudeちゃんに仕上げるようなコードを書いて、結構自動化今できてますね。
宇尾野彰大の使い方も近く、仕事のつながりをできるだけAIに回す「ループ化」を進めていると言います。具体例として挙げたのが日報の自動生成です。
日報も自分のカレンダーから取ってきてもらって、会議の議事録の音声データもストックしてもらって、そこから毎日8時とかに「今日はこんなでしたね」ってまとめてもらう。
それを私が最後見て、みんなに発信する。そこだけ最後自分でやってるんですけど。
ただし、宇尾野彰大も池原真佐子も、AIに任せるのは意思決定の前段までだという点で一致していました。
AI使ったとて、意思決定は人間じゃないですか。意思決定するためのプロセスは、絶対省くと事故になるので省けないんですけど。
作業の置き換えで止まる会社と、フロー全体を設計する会社
AIを新しい仕事の起点に据える会社も出てきていると、宇尾野彰大は紹介します。何か新しい仕事を発想したら、まずAIに置き換えられないかから考える構図です。
新しい仕事を発想したら、基本的には全部AIに置き換えるっていうことから、AIに依頼するぐらいな感じの構図で全部をAI化させる。
池原真佐子は、こうした使い方が大きく2つに分かれていると整理します。1つは作業単位の置き換え、もう1つは業務フロー全体の設計です。
リサーチや誤字脱字チェックなど、フローの中の1作業をAIに任せる。8分の作業が5分になるイメージで、多くの会社はここで止まっている
会議→音声データ→日報→配信のように、仕事が流れる工程全体をAIで設計する。宇尾野氏が話す日報自動化はこちらに近い
そのフロー全体の設計がどこまでできるかっていうのは、結構もう今その領域に来てますよね。
この差の大きさゆえに、宇尾野彰大は経営者との会話で最初の問いが難しいと言います。AIを前提に話せる組織もあれば、そうでない組織もあるからです。
AIがあってより発展した会社と、「AIって何でしたっけ?」という会社と。この幅が結構広いんで、今どこにいるのかを会話しながら探索することが多くて。
人事・組織の話とAIは、もう不可分になった
宇尾野彰大がAIに詳しくなった背景には、人事・組織の話とAIの話が重なってきた事情があります。経営者や人事責任者とフリーで1時間話すと、ほとんどがAIの話になると言います。
人事とか組織の話とAIの話がもうかなり不可分というか、重なるところが大きいので、経営者や人事責任者とフリーで1時間話す時間があったら、ほとんどAIの話なんですね。
相談内容は、他社の使い方から始まり、社内への推進の仕方へと移っていくことが多いようです。経営者本人は使えているのに、社員が同じように使えないという悩みも出てきます。
採用や人事制度の運用、トレーニングといった人事機能そのもののAI化を、部分的に試したいという相談も増えてきたと宇尾野彰大は話します。
キーワードは「オントロジー」。人もAIも同じ意味で扱う共通言語
宇尾野彰大が今後のキーワードとして挙げたのが「オントロジー」です。組織の哲学や共通言語を、人が読んでも、AIが読んでも同じ意味として扱える形に言語化する考え方だと説明します。
宇尾野彰大は具体例として、「お客様が最も大事」という哲学を挙げます。この変数があれば、売上を優先するか、社内の育成を優先するかといった分岐でも、判断の拠り所になると言います。
お客様が最も大事であるっていうことが哲学として変数が出てくると、売上を優先すべきか、社内の育成を優先すべきかみたいな選択肢になった時に、どっちの判断を取りますかっていうのを判断できる。
こうした判断基準を分岐まで含めて言語化し、AIにも人にも読ませる。すると、AIが自律的に回り、人を増やさずに運用できる状態に近づくと宇尾野彰大は話します。
池原真佐子は、これを経営者の脳内をAIに同期させる動きだと受け取ります。
経営者の脳内をAIに同期させると、経営者と同じ動きをする、あるいは会社の重要なものを判断して動いていくっていうところになるんですね。
宇尾野彰大は、少し前に流行った「社長AI」との違いも語ります。社長がよく言う言葉を統計的に返すQA的なbotではなく、オントロジー自体が再学習して発展していく設計だと言います。
CXOエージェント5体の疑似経営会議と、AI活用の2つの型
宇尾野彰大は、実際に画面を見せてもらった会社の事例も紹介します。役割を持たせたエージェントが、疑似的な経営会議を行っている構図です。
CXOエージェントみたいなのが5体ぐらいいて、この人たちが疑似経営会議みたいなのをやってて、そこで出てきたものを社長が見て、これに対してどうするかをインプットする。
この事例を踏まえ、宇尾野彰大はAI活用には大きく2つの方向があると整理します。業務を効率化する「スリム化」と、人の能力自体を引き上げる「付加価値化」です。
今まで人が100やっていた業務のうち20をAIが担い、残り80を人がやる。分担を進めて業務プロセスを軽くしていく
人間だけでは出せない結論をAIに出してもらい、人のパワー自体を100から150、200へ引き上げる
この話の面白さに、2人はしばらく盛り上がります。
いや、めちゃくちゃ面白いですね。なんかずっと喋ってたい感じがしますね。
技術者がいらなくなった現場と、リスキリングセンターの相談
池原真佐子は、AIの影響が現場に及んだ具体例として、ある人事責任者からの相談を紹介します。技術者が大量にいる会社で、その技術がAIによって不要になってしまったという話です。
技術者の方がね、大量にいる会社なんですよね。ただ、AIによっていらなくなってしまった、その技術が。
長年その技術を深めてきた人たちに、いまさら新しい技術をと言っても受け入れてもらいにくい。そこでリスキリングセンターを立ち上げたいという相談だったと言います。
池原真佐子は、この相談内容そのものに衝撃を受けたと振り返ります。奪われないと言われてきたエンジニアの現場でこれが起きている事実に、危機感を覚えたようです。
一方で宇尾野彰大は、この変化を逆手にとる視点も示します。地方や職人の現場では人が足りず、フィジカルな仕事はこれから増えていくため、人の移動が起きると見ています。
仕事がなくなる不安から、ワクワクへ。宇尾野の心境の変化
宇尾野彰大は、自身の心境の変化も打ち明けます。年末にAIの波が来たときは、自分の仕事がなくなると本気で不安だったと言います。
年末、自分自身のAIの波が来た時に、本当に自分の仕事なくなるんだろうなと思ってたんですね。超不安というか。
しかし今は、オントロジーやリスキリングといった動きを逆手にとって、社会の構造が変わる瞬間に携わっていること自体を面白いと感じるようになったと話します。
この半年から1年での気持ちの変化は、宇尾野彰大だけのものではないだろうと言います。AIを使うことで生まれる感情の波は、多くの人が経験しているという見方です。
とはいえ、AIは冷静なんで、適切な依頼すれば適切なアウトプットが出てくるので、そこをうまくデザインできるっていうのは面白いなと思ってますね。
AIには「間」がない。知識は増えても思考は深まらない
池原真佐子は、メンター派遣の仕事の立場から、AIでメンタリングはできるのかという問いに答えます。できる部分もあるが、決定的に違う部分もあると言います。
その違いとして池原真佐子が挙げたのが、人間同士のような「間」がないことです。
人間同士のような間がない、AIって。入れた瞬間、秒ぐらいで返ってくるから、それ見てわかった気になっちゃう。
知識は入っても、自分の思考は深まらない。内省や思考の内的空間が広がるというメンタリングの作用は、AIとのやり取りでは起きにくいと池原真佐子は整理します。
宇尾野彰大も、AIの処理速度と人間の認知負荷のずれに触れます。速く出されても追いつけない人にどう寄り添うかは、まだ議論の余地がある領域だと話します。
人間が持つ認知負荷、そんな早く出されても追いつけないですみたいなところにどう寄り添えるか。
議事録もマネジメントメモも。宇尾野の自動化と「アラート」構想
宇尾野彰大は、自身の経営者としての使い方を改めて具体的に語ります。基本方針は、自分たちの思考ややっていることをすべてデータ化することです。
必ずオンライン会議には議事録のAIを入れて、まとめたものを一日ごとに処理する別のバッチが動いてて、「この一日こんな判断したよね」っていうのをストックしていく。
もう1つが「マネジメントメモ」の構想です。なぜこの会社を作ったのか、どうしていきたいのか、どこで悩んでいるのかを言語化し、AIに組み込む取り組みだと言います。
この構想の要は、経営者の判断とずれた何かが起きたときにアラートを出す仕組みです。まだ完全には一致できていないと前置きしつつ、宇尾野彰大はこう説明します。
その判断に合ってない何かが発生した時にアラートを出すみたいなのを、まだ完全に一致できてないんですけど、やろうとしていたりしますね。
宇尾野彰大は、この仕組みが人事評価や採用の判断、最終的には人の配置まで一気通貫でつながるはずだと展望します。自社で試し、いずれ顧客にも提案できたらと話していました。
まとめ
この回は、経営と生成AIの2026年秋の現在地を、宇尾野彰大と池原真佐子が経営者2人の視点で整理した内容でした。作業の置き換えで止まる会社と、業務フロー全体を設計する会社の差、そして人もAIも同じ意味で扱う「オントロジー」という共通言語が、これからの焦点として語られました。
- AIを使っても意思決定のプロセスは省けない。省くと事故になるという点で2人は一致
- AI活用は「作業の置き換え」で止まる会社と、「フロー全体の設計」まで進む会社に分かれ、その幅は大きい
- 今後のキーワードは「オントロジー」。組織の哲学を人もAIも同じ意味で扱える共通言語にする考え方
- AI活用には業務を軽くする「スリム化」と、人の力を100から150に引き上げる「付加価値化」の2方向がある
- AIには「間」がなく即答するため、知識は増えても思考は深まらない。メンタリングによる内省とは別軸






