なぜ社長の見た目が「企業戦略」になるのか
今回のテーマは「社長の見た目も経営戦略」。宇尾野さんは、経営者の見た目のコントロールが広がっていると切り出します。
宇尾野さんによれば、昨今はプレゼンテーションの技術や声の出し方まで含め、全体をボディメイクするように見た目をコントロールする経営者が増えてきたといいます。
具体例として挙がったのが、NVIDIAのCEOの革ジャン、ジョブズの黒いタートルネック、そして食べチョクの秋元さんのオレンジのTシャツです。
つい最近ニュースになってましたが、NVIDIAの社長がいらした時も、いつも革ジャン着て、あのグレーのヘアの素敵な感じ。
あだ名が革ジャンらしいですから。
ジョブズの黒いタートルネックについては、意思決定を減らすために着続けていたという話も出ました。
池原さんは、女性リーダーや部長以上を対象にセルフブランディングやプレゼンスの研修を行っている立場から、その意義を説明します。
池原さんが伝えているのは、美しくしたいという個人的満足の話ではなく、リーダーの見た目や立ち振る舞いがチームを代表するものになるという点です。
見た目とイメージが一致すると、カルチャーの体現になり、覚えてもらいやすくなると池原さんは話します。投資家や採用候補者に覚えてもらうことは、経営者にとって重要だからです。
TPOと「ビューティーペナルティ」、動きのスピード
見た目のデザインには前提があります。池原さんが大前提として挙げたのが、TPOにふさわしい立ち振る舞いです。
たとえ一風変わったプレゼンスを出したくても、露出の多すぎる服など場にふさわしくないものを着ると、逆効果になると池原さんは指摘します。これを「ビューティーペナルティ」と呼ぶそうです。
もう一つ池原さんが意識しているのが、動きのスピードです。これはイギリスでのトレーニングで学んだといいます。
人間って早くペコペコ動いたり、まばたきパチパチしたり、肩をすくめたり、息継ぎが短かったりすると、格が下って見られてしまうことがあるらしいんです。
そのため人前で話すときは、ゆっくり大きくボディランゲージをするよう意識していると池原さんは話します。
宇尾野さんも、声のスピードや低さの大切さに触れます。とある研究では、CEOの業績と声の低さに相関があるという話もあるといいます。
宇尾野さんは、相関の強さそのものは別として、どう見せるかは科学されつつある領域だと整理します。ただし状況や場に合わせて作ることが大事だと付け加えました。
同化しすぎず外しすぎない。場に合わせた見せ方
宇尾野さんは、自分のプレゼンスで意識していることとして「場に同化しすぎず、外しすぎない」塩梅を挙げます。
私自身はなるべく場に同化しすぎないようにっていうところと、逆に言うと外しすぎないようにっていうのは結構意識してます。
宇尾野さんは、1対1で会うときは相手によって調整し、広い場では来る人の傾向を見立てて位置づけを考えるといいます。戦略的というより、自然とそうしていると話します。
池原さんも、相手のコミュニティによって見せ方をチューニングしていると語ります。
池原さんによれば、女性同士のコミュニティでは親近感や共感性、少し尖った要素が強みになりやすい一方、男性の会社員が多い場では浮きすぎないトンマナを意識するといいます。
一方で、池原さんは自分らしさを絶対に手放さないとも話します。柄物はあまり着ず、着るときは色を抑えるなど、自分なりのエレガンスの追求があるそうです。
保守的な組織に行く時は、よりシンプルなデザインで、でもちょっとアクセサリーだけは工夫するっていう、ちょっと地味なことをやって自分らしさを出してます。
メラビアンの法則と、ブランドの「表記ゆれ」
見た目と言葉の関係について、宇尾野さんはメラビアンの法則を引き合いに出します。
宇尾野さんが強調したのは、言語的な内容と非言語の見た目が食い違うと、受け手が不協和を感じ、混乱してしまうという点です。
池原さんは、その不協和をあえて逆手に取るブランディングもあり得ると補足します。頭が良くて真面目なのにいつもアロハシャツ、といった例です。ただし意識してやらないとブランドにはならないといいます。
さらに池原さんが挙げたのが「表記ゆれ」という考え方です。昨日はアロハ、今日はスーツ、明日はギャル風、と日によってバラバラだと、一人の中でブランドが揺れてしまうという指摘です。
自分のブランドの表記揺れは起こさない。多少表記が違っても、あ、でもこのテイストねっていう繋がりは結構大事かもしれないですね。
宇尾野さんも、ばらつきが大きいと「あの人はいつも違う服」という印象すら覚えてもらえなくなると応じます。YouTubeなど経営者個人の発信が増える中で、見た目のデザインはより重要だと二人は話します。
池原さんは、ここへの投資が会社のイメージやブランド戦略に直結すると整理します。洗練されて見えるのか、クリエイティブに見えるのかで、会社の印象は変わるからです。
フィラーを取り、声を鍛える。話し方のトレーニング
話題は見た目から話し方へ移ります。宇尾野さんは、メンバーと一緒にプレゼンや合意形成、ファシリテーションをする機会が多く、話し方が非常に大事だと語ります。
宇尾野さん自身が意識しているのは、「あのー」「えー」といったフィラーの除去くらいだといいます。
池原さんは、フィラーを徹底的に取ることを普段から意識していると話します。これはコンサル会社時代に受けたトレーニングが元になっているそうです。
フィラーがあると、聞きにくいとか、自信がなさそうとか、耳障りになる。だからそこは飲み込むようにしてます。
池原さんによれば、フィラーを取るトレーニングは、だいたい1週間ほどでだいぶ取れるようになるといいます。取る方法は、自分が喋っているのを聞くことだと話します。
自社の営業メンバーにも、商談でフィラーが多いときは取るようフィードバックしているそうです。営業こそ堂々と話すプレゼンスが必要で、声の小ささや細さも課題になると池原さんは指摘します。
声については、池原さんは「腹から出すしかない」と話し、営業向けに声や喋り方のプロを招いたトレーニングも検討中だといいます。
宇尾野さんは、Podcastを始めたきっかけが、ある人からの「音声が相性いいんじゃない」というさりげない一言だったと明かします。自分の声を良くする努力は比較的しているそうです。
後天的に変えられる「経営者の制服」
池原さんは、ここまでの話をこう整理します。社長やリーダーの見た目は自分の満足を超えて組織への影響に関わり、しかもその多くは後天的に変えられる、という点です。
宇尾野さんは、この一貫性を「経営者としての制服」という言葉で表現します。どう思ってもらいたいか、そのためにどんなブランドの記号を持つかが重要だといいます。
話の終盤、池原さんは自身の1冊目の著書『魅力の正体』を思い出します。まさにセルフブランディングやプレゼンスをどう高めるかを扱った本だといいます。
池原さんによれば、この本は服の設計だけでなく、身振り手振りや人とのコミュニケーションの設計まで、後天的に何ができるかを考察した内容です。
その出発点は、女性が地位やキャリアを上げていくときに、戦略を知らないと「か弱く頼りない女性」というイメージのままになってしまう、という社会的認知への問題意識でした。
最後に宇尾野さんは、会社がリブランディングするときは社長自身もリブランディングが必要だと述べ、まずは社長個人から変わっていく会社もあると締めくくりました。
まとめ
社長やリーダーの見た目・声・話し方は、個人の好みではなく企業ブランドに関わる戦略であり、そのほとんどは後天的に設計・改善できるというのが、この回の核心です。
- リーダーの見た目や立ち振る舞いはチームを代表するもので、個人の嗜好を超えた企業戦略になる
- TPOを外すと「ビューティーペナルティ」となり、動きのスピードが速いと格が下がって見えやすい
- 言語と非言語が食い違うと不協和を生むため、メッセージと見た目を一致させ、ブランドの「表記ゆれ」を避ける
- フィラーの除去はおよそ1週間で効果が出るなど、話し方や声は後天的に鍛えられる
- どう見られたいかから逆算した「経営者の制服」を設計することが、会社のブランドにもつながる




