番組リスナーだった開発者が、ゲームを作る側になるまで
この回のゲストは、育成レースゲーム『わびさび寿司ダービー』を手がけるゅゆゆさんです。実は番組の古参リスナーでもあり、パーソナリティのHARUとこへいにとっては念願のゲスト出演でした。
わびさび寿司ダービーを開発しているゅゆゆと申します。よろしくお願いします。
ゅゆゆさんが番組を聴き始めたのは、2019年に開催された最初のファンフェスタの直前でした。当時は過去回をさかのぼって聴いていたところで、告知されたオフ会が「先週だった」と気づいたエピソードを振り返ります。
(オフ会に)生き逃したっていうのがスタートでしたね。
7年前から聴いていたことになり、HARUとこへいは「最古参に近い領域」と驚きます。ただし、その当時のゅゆゆさんはまだゲームを作ったことがなく、一人のゲームプレイヤーでした。
そうですね、ゲームを作ってないですね。作ったこともない時期ですね、まだ。
テラリアからサンドストリーまで、開発者の遊びの傾向
どんなゲームを遊ぶのかを尋ねられたゅゆゆさんは、ノンジャンルで何でも遊ぶタイプだと答えます。中でもプレイ時間が長いのはシミュレーション系で、テラリアは1100時間ほど遊んだといいます。
テラリアが多分一番長くて1100時間ぐらいやってて。
ドラクエビルダーズやシムズも数百時間単位で遊んでおり、ビルダーズでは村人の動線が思った通りになるかを見るのが好きだと話します。システムが整っていく様子にロマンを感じるタイプのようです。
村人がこうちゃんと思った通りの動線で歩いて、トイレ行って食事して働いてっていうのができてるかっていうのを見るのが結構好きだったりしますね。
現在遊んでいるのは、砂を掘って換金するサンドストリー ── 地下を掘り進めて砂や砂金を集め、コンベアで運んで加工・換金していくインディー系のシミュレーションゲーム。書き起こしではアルファ版と紹介されているというインディーゲームです。賞を取ったインディータイトルを一通り触ってみることも意識しているといいます。
むしろ、なんかその賞を取ったタイトルとかを一通り触ってみてとか、やってますね。
メタルギアと酒が進む「ムービーを見る夜」
アクションゲームの話題になると、ゅゆゆさんはメタルギアソリッド4 ── 小島秀夫監督によるステルスアクション『メタルギアソリッド』シリーズの4作目。長いムービーシーンで知られる。近年マスターコレクションなどで再収録されたを今やり直していると答えます。こへいもちょうど3を遊んでいて、話が盛り上がります。
もう昨日もちょっと寝る前に1時間やろうかなと思ったら、ほぼ全部動画だった。
1時間コントローラーを握っていたのに、ずっとムービーを見ていただけ、という感覚に3人で共感します。ムービー中に×ボタンを押す仕掛けがあるため、微妙にコントローラーを離せないのも「あるある」でした。
こへいは、ムービーを見る夜に缶チューハイを飲んでいると、想像以上に酔ってしまうと打ち明けます。手が暇でずっと飲んでしまうためで、HARUは「映画を見てる感覚」と表現します。
想像以上に酩酊するのよ。なんか飲みすぎて。
HARUは4を遊ぶ前に、時系列上あとの5やピースウォーカーもやるべきかと悩み始めていると語ります。全部やらないと「やったことにならない」気がしてしまう、嬉しい悲鳴でした。
寿司が走る、その一点から始まったゲーム
ここから本編に入り、『わびさび寿司ダービー』そのものの話になります。このゲームは大阪インディーゲームサミット2026に出展されることが決まっており、現地でも遊べます。
このゲームは、もともとダビスタをベースに作り始めていました。しかし馬ではコアな層にしか刺さらないと考え、交配させてレースで競えるモチーフを探し続けたといいます。
交配させられてレースで競えるものなんだろうっていうのをずっと考えてて。
モンスターのレースを試作したものの手応えがなく、たどり着いた答えが「寿司」でした。回転寿司を家族で食べているとき、横を流れる寿司を見て「寿司走るじゃん」と気づいたのが起点です。
寿司にした瞬間に決まったのが、鮮度が落ちるとステータスが劣化するという設定です。こへいは「天才か」と驚きますが、ゅゆゆさんは食べ物である以上、腐らせず最後は必ず食べさせたかったと説明します。
一応食べ物なので、最後は絶対食べるっていうのは徹底したくて。
生鮮食品という性質から、高速に育成を回していくゲームスタイルになることも当初から決まっていました。寿司という題材が、そのままゲームのテンポを規定していたのです。
食べられても救いがある、無常の設計
『わびさび寿司ダービー』では、育てた寿司がレース中に注文されて食べられると即座に脱落します。ただし食べられた後には、その寿司を食べた客の感想が表示される仕組みです。
若い頃に食べたお寿司の味を思い出しました。六十八歳女性みたいな。
客はカップルやサラリーマン、インフルエンサー、食材評論家などさまざまで、食べログのような長いポエムが途中で切れている演出もあります。これにより、脱落がショックだけで終わらず、どこか救われる読み物になっています。
当初の企画書では、食べられた瞬間に真っ暗な画面で醤油皿に波紋が落ちる演出だったといいます。しかし悲しすぎるため、食べられてよかった感を出す方向に変えられました。
もうちょっと食べられてよかった感を出そうっていうので、あれはちょっと企画書から変わったとこですね。
一方で、負けかたには納得感を持たせています。ダッシュにあたる応援ボタンを押すタイミングを誤ると食べられてしまうため、負けた理由が理不尽にならないよう設計されています。
なぜ負けたかがちゃんと理不尽じゃないよっていうのを伝えたくて。
寿司には名前を付けられ、マウスオーバーするとハートが出るなど、愛着を持てる工夫もあります。愛でさせておきながら、最後は食べられる。その落差がこのゲームの手触りを作っています。
初めて完成させたゲームが、なぜ次々と賞を取ったのか
驚くべきことに、ゅゆゆさんが製品として仕上げたゲームは『わびさび寿司ダービー』が初めてです。開発期間は構想からおよそ3年で、2023年秋に講談社と契約しています。
一応まあちゃんとして、製品として仕上げたのは今回が初めてですね。
講談社に持ち込んだのは、パブリッシャーを探すためというより、客観的な意見が欲しかったからでした。自分たちは面白いと思っているが本当に大丈夫なのか、という不安があったといいます。
ちょっとやばいこと言ってるかもしれないと思って、アドバイスが欲しくて持ち込んだって感じですね。
契約はトントン拍子で進み、OKが出た2週間後が東京ゲームショウの開催日でした。まだゲームは未完成でしたが、出展者パスが渡され、まず見に行くだけになったといいます。
OKいただいた2週間後が確かTGSの日で、いきなりTGSのチケットを出展者パスをもらってしまって。
開発の中では、最初の1ステージだけを1年半ほどかけて作り込んでいました。スキルを寿司ごとに足しては面白さを確認する作業に、およそ2年を費やしたといいます。
最初のステージを多分一年半ぐらい作ってたような気がするんですね。面白さを確かめるっていうのをずっとやってて。
後半は「そろそろ終わらせなさい」となり、8コースほどを一気に仕上げたそうです。ゲームの根本となる面白さを固めるまでに、時間の大半がかかっていました。
コントローラー対応と、価格が710円である理由
開発で意外に苦労したのがコントローラー対応でした。もともとキーボードとマウス向けに作っていたため、Switch版に向けてUIを一から直す必要があったといいます。
コントローラー対応が実は一番つらかったところはあって。
スキル発動はマウスクリックから十字キーへ変更するなど、レイアウトの修正に数か月かかりました。ゅゆゆさんは「最初から考えとけばよかった」と振り返ります。
Switch版が出ることには特別な喜びがあったといいます。子供にプレイしてほしいこのゲームにとって、最も手近なハードだからです。
起動して自分のゲームの画面が出てきた瞬間、やっぱかなりゾワッと来ましたね。
HARUが気になったのは、価格が710円という半端な数字である点でした。理由は日本円ではなく、5ドルという海外基準の価格設定にありました。
多分五ドルにしたいんだと思います。
海外のリリースでは「カリフォルニアロールより安い」と評されたといい、この回でも繰り返し登場するフレーズになりました。寿司という題材は、はじめから海外を意識して選ばれています。
最強はどの寿司か、系譜とスキルの奥深さ
寿司には系譜があり、勝ち星を重ねると次の寿司が解放されていきます。こへいはマグロで2000ほど勝つと次が解放される、というテンポの良さを挙げます。
カリフォルニアロールは、その系譜に至るまでの寿司のスキルを継承しているため、最初からフル装備状態の強さを持ちます。こへいとHARUは「違う世界から来た」と評します。
そこ(カリフォルニアロール)を握るに至った経緯を握るやつのスキルを継承してるみたいな形になってますね。
HARUがクリアに使ったのは、リアルでも好物だというしめ鯖でした。ダッシュ用のゲージにあたるお茶を継ぎ足せるスキルが便利で、狙われた瞬間に回避できたといいます。
ただし継ぎ足しても完全回復にはならず、微妙に届かないことがあります。ゅゆゆさんはブーストを2回にしなかったあたりが「意地悪」だと自認します。
あれも素直にブーストを二回にしないあたりがこう、なんか意地悪だなとは思ってます。
一方で、系譜を埋めていくと難所も見えてきます。HARUはイカタコ系のホタルイカ解放が最難関だったと語ります。タコとイカ限定の「縄張り坊主」というレースに勝つ必要があるためです。
これだけもう出場者がタコかイカ限定っていう。
このレースは回転寿司のレーンを逆走する設定で、ダッシュしても前に進みにくく、注文の箸に取られやすくなっています。ゅゆゆさんは、実績のためのデバッグを自分でこなすのに苦労したと明かします。
デバッグのためにそれを自分も解除しなきゃいけなくなって。
プレイヤーによって思い入れのある寿司は異なり、最強と考える寿司もばらばらです。中でも再生数が伸びたのは、スキルを持たないコーンだけでクリアする動画だったといいます。
一番なんかバズってた、視聴数が伸びてたのはコーンで最後までクリアするっていう。
可愛くて、食べられる。そこに宿る複雑な感情
こへいは、このゲームの手触りをうまく言葉にしようとします。育てた寿司が無表情のまま箸に運ばれていくのを見送るとき、なんとも形容しがたい気持ちになると語ります。
食べられる瞬間が複雑な気持ちになるゲームだなとかすぐ感じたんですよ。
こへいはその感覚を、藤子・F・不二雄の短編「ミノタウロスの皿」に重ねます。食べられることを幸せだと思って死んでいく存在を、素直に喜べないまま見送る感覚だといいます。
この「どちらに感情移入すればいいのか分からない」感覚こそが、このゲームの妙味だと2人は語り合います。ゅゆゆさんは、寿司の表情に強いこだわりがあったと明かします。
食べられて嬉しい顔をさせたくなかったため、基本の表情は悲しくもなく、食べられまいとしている様子で統一されています。笑顔が現れるのはエンディングだけだといいます。
開発者仲間からは、単に食べられるだけのゲームではここまで話題にならなかっただろう、と言われたそうです。可愛くて愛でられる存在が食べられるからこそ、味が出ているという指摘です。
可愛くて愛でられて、それが食べられるっていうことで、多分初めてこのゲームの味が出ているとは言っていただいてて。
もっとも、ゲームのテンポが速いため、その感情も置き去りにされます。プレイヤーはすぐに次の寿司を握り、心が麻痺していく体験そのものが、このゲームらしさになっています。
グッズ、対戦、そして次回作への構想
寿司ネタのビジュアルは単純に可愛く、こへいは「グッズ商売やりたい放題」と評します。実際にグッズを求める問い合わせも多いといい、ガチャガチャなどの案で盛り上がります。
対戦要素を求める声も多いものの、ソロ用に設計してしまったため、マルチ化は容易ではないといいます。それでもゅゆゆさんはやりたい気持ちがあると話します。
ただ一旦ソロでもう設計して作ってしまって、ここからマルチはちょっと持っていくのが難しいので。
ホタルイカの、全員のスタミナをゼロにするスキルは、対戦で映えそうだと3人は想像します。マリオカートのように足を引っ張り合う遊びや、一人だけ客役になって注文を出す非対称対戦の案も出ました。
話題は次回作へ移ります。ゅゆゆさんはすでに新作のモックを作り、面白くなるかを確認している段階だといいます。ゲームを作る際、まず何を重視するのかという問いに、明確に答えます。
モチーフを選ぶ際も、特定の国でタブーになりかねないものは外していくといいます。アートのセンスで思いつきに頼るのではなく、論理を組み立てて作るスタイルです。
そのため寿司ダービーにも強いメッセージ性はなく、ストーリーは最後に付け足されました。宇宙人が地球の寿司を食べに来るという設定は、一通り作った後の後付けだといいます。
一通り作った後で、これ設定どうしようかって話になって。なんで食べられるんだっけ?みたいな。
和牛はなぜ、どの系譜にもつながらないのか
HARUが面白がったのが、寿司の中で和牛だけがどの系譜にもつながっていない点です。理由は、系譜を生物の分類で結んでいるためでした。
種類で全部繋いでいるで、あいつだけ哺乳類なんで。
イカタコは頭足類、貝は貝といったように分類ごとに系譜が組まれており、哺乳類である和牛だけは意図的に単独に置かれています。ウニも貝でもイカタコでもないため、単独扱いです。
ハンバーグや豚肉など他の哺乳類ネタもある中で、和牛だけが孤立している。その一貫したこだわりが、かえってプレイヤーの話題を生んでいます。
なぜ和牛だけソロって思って。
寿司ネタの選定は、系譜図として3つ揃うか、海外からどれだけ理解されるか、見た目のインパクトがあるかといった基準で決められています。エビフライは尻尾を活かした物理系のスキルにまとめられています。
ゅゆゆさんのお気に入りはホタルイカです。見た目がエイリアンっぽいことを逆手に取り、思いきってエイリアン化させ、全員のスタミナをゼロにする凶悪なスキルを与えたといいます。
いっそもう思いっきりエイリアンにしてしまえという悪ノリでああいう形になってて。
すべては「ゲームは作ってもいい」と気づいた瞬間から
ゅゆゆさんは、この番組を聴いていなければこのゲームは作られなかったと語ります。配信を聴いて「ゲームって作ってもいいんだ」と思ったのが出発点でした。
その段階から、賞を重ねる完成度のゲームに至ったことに、HARUとこへいは驚きを隠せません。HARUは、自分たちが「ポッドキャストできるんじゃね?」と思い立った感覚に近いのではと重ねます。
こへいは、ポッドキャストをやってサラリーマンでは考えられない人付き合いが生まれたと語り、思いつきでもやってみると何かが起きる、と話します。
なんか思いつきでもやってみるとなんか起きるよねとは思うんですよね。
ゅゆゆさん自身も、受賞者の飲み会でとんでもない人たちに囲まれるなど、3年前からは想像もつかない状況になっていると振り返ります。
ほんと三年前から想像つかないことをやってますね、今。
HARUは、寿司ネタの画像の作り込みや、カイワレ大根といった飾り付けの遊びに「センスの良さ」を感じたと伝えます。ゅゆゆさんは謙遜しますが、2人は当たるべくして当たったと評します。
ああいうとこ俺はすごいツボだったんですよ。なんでここにそんな大判のドット絵と思って。
ほんのり狂気のある、次回作の予感
次回作は育成レースではなく、経営アクションになる構想だといいます。こへいは、そのアイデアの一端を語り始めます。
新入社員が働く会社にプレイヤーがコンサルとして入り、仕事を振ったり会議をしたりして売上を上げつつ、適切な距離を保ってマネジメントするゲームにできないか、という構想です。
いいな、なんか。なんか寿司ダービーに通じるシュールさある。
パソコンを持ち上げて投げつけて仕事を振る、といった過激な描写もあり、HARUは配信で音を伏せることを勧めるほどでした。寿司ダービーと同じく、ほんのり狂気のある方向性が見えます。
ほんのり狂気があるんだよね。
この構想は講談社にも食いつかれ、隔週でやりとりが続いているといいます。ただ可愛いだけではない要素が、寿司ダービーから一貫した個性になっています。
最近はAIで短期間にゲームを作れる時代になりつつあります。だからこそ、設計や細部のこだわりといった人間の個性が差になっていくのでは、と3人は語り合います。
いくらAI使っても、そのそもそもの設計だったりとかっていうのは、やっぱり人間がやらないと個性が出ない。
まとめ
番組の一リスナーだったゅゆゆさんが、「ゲームは作ってもいい」と気づいた瞬間から生まれた『わびさび寿司ダービー』。可愛さと無常、テンポと納得感を両立させた設計と、和牛の系譜のような細部へのこだわりが、初の完成作を数々の受賞へと導きました。売れることを前提に論理を組み立てる開発姿勢と、ほんのり狂気のある次回作の構想まで、開発者本人ならではの言葉で語られた回でした。
- 『わびさび寿司ダービー』はダビスタを起点に、回転寿司で「寿司が走る」と気づいたことから生まれた育成レースゲーム
- 鮮度で劣化し、いずれ食べられる設定が、高速な育成テンポと「可愛くて食べられる」独特の感情を生んでいる
- 価格710円は5ドルという海外基準の設定で、題材の寿司もはじめから海外受けを意識して選ばれている
- 系譜は生物の分類で結ばれ、哺乳類の和牛だけが単独になるなど、細部のこだわりが話題を生んでいる
- 番組リスナーだった開発者による初の完成作が数々の賞を取り、次回作は経営アクションが構想されている







