PHP脆弱性の緊急対応で何が起きていた?
本題に入る前に、2人は前の週に起きたPHPのセキュリティ脆弱性をめぐる騒動について話しています。小野さんは体調不良などで前週の収録を休んでおり、自身の担当ではこの脆弱性への対応はあまり発生しなかったといいます。
一方の吉田さんは、担当案件の多くにこの問題が直撃したと話します。吉田さんによると、今回の問題の核心は脆弱性そのものではなく、対策版のリリース前にPHP内部の人が情報をリークしたことでした。
やっぱ今回の問題って、その脆弱性があったことに対してじゃなくて、PHP内部の人がその脆弱性を対策したバージョンがリリースされる前に情報をリークしたことで。
リークによって、どんな脆弱性があるのかを悪意のある人も知れる状態になりました。それでも修正版はまだ出ていないため、対策のしようがありません。吉田さんは、親が子どもの位置を把握できるアプリがメンテナンスモードに入った例を挙げ、多くのサービスがアクセスを止めるしかなかったと説明します。
吉田さんの担当案件では、セキュリティパッチを当てたPHPのバージョンが23時にリリースされると決まっていました。そこで吉田さんたちは、次の順番で対応を進めたといいます。
サイト停止
23時のリリースまでに、アクセスできないようサイトを全部落とす
リリース内容の確認
23時に、どのバージョンが出て、どこまで対策されるかを確かめる
影響調査
PHPが古い案件ほど最新版への更新は影響が大きいため、自分たちの案件への影響を調べる
最短での復旧
止めたサイトをどう戻すかを考え、できるだけ早く復旧させる
調査が23時から始まったのは、どのバージョンまで対策されるのかがその時刻まで誰にもわからなかったからです。吉田さんは、PHPのバージョンが古いほど最新版にする影響が大きいと補足しています。
緊急対応は「運が良かった」経験?
大きな被害を受けた人がいることを前置きしたうえで、吉田さんはWebに関わる人間としてこれほど大きな問題はこれまでなかったと振り返ります。そのうえで、PHPの緊急対応を経験できたことを前向きに受け止めています。
それを経験できたっていうのは正直、まあポジティブに考えるなら運が良かったなって思ってますね。
小野さんは、脆弱性が次々に見つかる状況でWeb自体が大丈夫なのか心配しつつ、そのときに考えるしかないと話します。吉田さんは、Xで名村名村さんが言っていたことにも触れ、インターネットの根本的な何かが変わる未来しかないと考えているといいます。
変化の方向として吉田さんが挙げたのは、通信をすべて暗号化し、抜き取られても手元の解除方法がなければ読めない状態にすることです。今それができないのは、瞬時に暗号化して解読する処理がまだ難しいからだと説明しています。
ABCを使ったこの方式の暗号化で、そのABCがわかってないと何も紐解けないみたいな。
もう一つの方向は、防げないと割り切ってデータを何も残さない形です。吉田さんは以前「結局HTML、CSSが最強」と言っていたと振り返ります。データを持たない静的ファイルなら、ハッキングされても見られるのは誰もが見られる内容だけだからです。ただしWebアプリケーションではそうはいかない、という点で2人の意見は一致しました。
差し込みが入ると、なぜ元の作業に戻れない?
ここから本題です。小野さんは、タスクAの最中に人から話しかけられてタスクBをこなし、Aに戻るときに思考の切り替えにとても時間がかかると打ち明けます。何をやっていたか、次に何をすべきかを思い出すのが遅いというのが悩みです。
小野さんの場合、メールが届くだけでも思考が持っていかれるといいます。タスクは並行して動くため、別のタスクに動きがあると「このタスクって何をしないといけなかったっけ」と考え始めてしまうのです。
吉田さんが「両方とも手に負えなくなるのか」と尋ねると、小野さんは作業自体はできるもののパフォーマンスが落ちると答え、パソコンのRAMにたとえて説明しました。
本当に言ったらRAM、パソコンのRAMあるじゃないですか、メモリ。
メモリの容量が圧迫されるんですよ。
小野さんのたとえでは、別のタスクが割り込まなければ考えられる容量、つまり作業テーブルの広さはずっと広いままです。割り込みのたびにそのテーブルが狭くなり、考えるスピードが落ちるという感覚です。
頭を使う作業は営業時間の外へ
吉田さんは最初、タスクチェンジを減らす方法を話しかけて、小野さんの問いとずれていることに気づき、回答し直します。再集中にかかる時間そのものを短くすることについて、吉田さんの答えは率直でした。
僕、タスクチェンジは再集中するまでにめちゃくちゃ時間がかかるので、今僕はどうにももうできないなって思ってるんですよ。
吉田さんによると、タスクチェンジはメンバーからの質問やお客さんからの連絡がきっかけで起き、それは営業時間中に集中します。そこで吉田さんは、超集中して取り組む長い作業を、人が帰り始めたりお客さんがいなくなったりする夜に設定しています。
営業時間中のコアタイムには、細かく分けられる短いタスクを回すようにしているそうです。吉田さんはこれを、タスクチェンジでパフォーマンスが落ちることへの、自分が今できる対策だと位置づけています。
吉田さんは、再集中のしやすさには人それぞれの癖があるとも話します。吉田さん自身は、差し込みが入ったときに目的を明確にするとすぐ没頭できるといいます。それでも集中できないときは、朝や夜にやるしかないそうです。
小野さんも、指示出しやチェックのようにゴールがすぐ見える作業なら集中できると応じます。苦手なのは構成案を考えるような長い作業の途中で切り替わることで、そうした作業は朝など誰にも邪魔されない時間にやるしかないと納得します。
切り替えで落ちるのは「考える作業」だった
吉田さんは、切り替えでパフォーマンスが一番下がるのは考える作業だと指摘します。たとえば構成案を考えるのとは違い、構成案を複製するだけの作業なら、差し込みのあとでもすっと続けられます。
小野さんも、コピペや「AをBにする」ような脳を動かさなくていい作業は切り替えに時間がかからないと同意します。時間がかかるのは、いろいろなことを考えなければならないタスクです。
構成案を考えるなど、頭を使う長いタスク。再集中に時間がかかる
構成案の複製やコピペなど。差し込み後もすっと再開できる
この整理から吉田さんが導いたのが、作業の時間帯による配置です。
小野さんはこれまで、優先度だけで1日のタスクを決めていたと振り返ります。考えるタスクは朝晩、コアタイムは手を動かせば進むタスクという采配がまだできていない可能性が高い、と自身の課題に気づいた様子でした。
そもそも差し込みを頭に入れない工夫
吉田さんは、最初に言いかけた「タスクチェンジをなくす」対策にも話を戻します。吉田さんの考えでは、対策はタスクチェンジをなくすことと、来ても大丈夫にすることの2つに分かれます。
タスクチェンジを減らすための吉田さんの工夫は、次のようなものです。
吉田さんがメールを閉じても困らないのは、本当に急ぎの連絡はSlackやお客さんとのメッセージツールから来るはずだからです。それでもメールは時間を区切って確認しているといいます。
小野さんは、考える作業が最近増えてきたなかでパフォーマンスが落ち、メンタルが少しブレ始めていたと明かします。メールのタイトルを見ただけで気になってしまうのが、小野さんの悩みの具体的な姿でした。
タイトル見たら、あ、何の案件だ、ちょっと本文ちょこっと見ようみたいなんで見て、あ、これってこれやらないといけなかったよなみたいなのを思い出して。
小野さんはそのままBacklogを開いてコメントを打ち、作業してしまうといいます。元の作業に戻ると、また考え直しになるわけです。
「やばいか、やばくないか」だけで聞く
小野さんの話を受けて、吉田さんはタスクチェンジはやはり難しいと認めます。超上級者なら次々と切り替えられるかもしれないものの、普通はいかに切り替えずに済ませるか、必要なら効率よく切り替えるかを自分なりに考えるしかないと話します。
吉田さんは最近、自分の型がはまり、余計なことを考えずに目の前の作業に集中できるようになったそうです。その核心として挙げたのが次の一言でした。
吉田さんは、社内の人から声をかけられたとき、最初はあまり脳を使わず「やばいか、やばくないか」だけで聞いているといいます。やばくなければ「OK、見とくわ」と脳を使わない返事で済ませます。
吉田さんは「これ、よくないかな」と気にしますが、小野さんは優先度の高いものに思考を向けるのは大事だと肯定しました。
出社とリモートで切り替えは変わる?
小野さんは、人から話しかけられる場面があること自体をうらやましがります。入社以来リモートで一人で作業している小野さんにとっては、優先度の低い情報をどう制限し、目につかないようにするかという、別の角度の工夫が必要になりそうです。
さらに小野さんは、もしフル出社になって職場の人に話しかけられたとき、うまくタスクを切り替えられるのかという不安も口にします。吉田さんは、いつもやっていないことは最初はうまくいかないものだと答え、自分の失敗談を明かしました。
あの、上長の人に「吉田君は顔に出てるよ、話しかけないでって」(と言われて)。
それでも吉田さんは、話しかけにくい雰囲気は作るべきではないと考えているそうです。出社すればさまざまなフラストレーションが出てくるのは避けられない、とも付け加えています。
リモートの孤独を雑談でほどけるか
小野さんは、吉田さんの悩みを「チームで仕事をしている感じがあって、人がいてこその悩み」と表現します。そのうえで、リモートは孤独の戦いになり始めていると打ち明け、吉田さんはテーマから外れることを断ってこの話を掘り下げます。
小野さんによれば、チームメンバーはいい人ばかりで、定期的なミーティングもあり、一体感はあるといいます。足りないのは、隣で頑張る人を見て自分も頑張ろうと思えるような、その場の雰囲気です。
(リモートだと)疲れたなって思った時に、疲れたなでしかないんですよ。
吉田さんがそれを「雑談があるかないか」と言い当てると、小野さんは本当に雑談がしたいと応じます。吉田さんは、対面ほどではないにしてもリモートでも雑談はするべきだと考えています。
吉田さんの案件メンバーには、遠方に住んでいて1回ほどしか会ったことのない人もいます。その人とはよくDMで雑談をしていて、ある日「今日のミーティングで顔がすごく疲れていましたよ」と送られてきたそうです。
やっぱそういうところ気づいてくれるのいいですよねみたいな。
吉田さんは、こうした雑談があるだけで「この人のためなら頑張ろう」と思えるかどうかが変わると考えています。雑談はSlack上でも十分に意味があるというのが吉田さんの見方です。
雑談で脳の「不純物」が抜ける
小野さんが雑談を求める目的は、案件に関わっていない人とざっくばらんに話すことにあります。小野さんは、東京で吉田さんと一緒にタバコを吸いに行ったときに案件の悩みを話し、フラットな目線で意見をもらえた経験を挙げます。
吉田さんも、遠方のメンバーから「風邪を引いているんですか、大丈夫ですか」とメッセージが来たとき、溜まっていたものがすっと抜ける同じような感覚があったと話します。
吉田さんは小野さんに、困ったことがあればどんどんDMしてほしいと呼びかけます。「DMってそのためにあるんすよ」と言う吉田さんに小野さんは「絶対違う」と返しつつ、悩みを抱え込みがちな自分はDMを送ってみると約束しました。
中断前に要点をまとめるという処方箋
話の振り返りとして、小野さんは前半の結論を整理します。タスクの切り替えを速くする以前に、長時間思考が必要なタスクはコアタイム以外の朝か夜にやり、そもそも切り替えが起きないようにするという対策です。
さらに小野さんは、会社の代表から受けたアドバイスを紹介します。それは、中断する前に元のタスクの要点を瞬時にまとめておくという方法です。
要点をまとめる
話しかけられたら、元のタスクで大事なポイントを瞬時に整理する
話を聞く
差し込みの相談や作業に対応する
要点を思い出す
元のタスクに戻ったとき、まとめた要点を手がかりにする
作業を再開する
何をしていたか、次に何をすべきかをゼロから考えるより早く思い出せる
タスクに戻った時に、その要点を思い出して、そこをきっかけにどんな作業をしてたかとか、次何やらないといけなかったかみたいなのを(思い出す)。
2人とも「めっちゃむずい」と認めつつ、できれば確かに速くなりそうだと意見が一致しました。吉田さんは、身につけるには反復練習だと話します。
小野さんは、要点を瞬時に捉える力はお客さんの言いたいことをまとめる場面などでも役立つとし、思考の構造化はディレクターにとって重要な能力だと考えています。
次回はリモートのモヤモヤを深掘りへ
締めくくりに吉田さんは、小野さんのモヤモヤを解消したいものの今回のテーマからずれすぎると話し、次回以降のテーマ候補として「リモート固有の話題」が挙がりました。入社以来ずっとリモートの小野さんにとっては話しやすいテーマです。
小野さんが「リモートはやれる人とやれない人がいる」と漏らすと、吉田さんは得意か不得意かではなく、どうやってやるかを考えるしかないと応じます。小野さんも、まずは課題を洗い出すことからだと前を向きました。
最後に小野さんは、リスナーに向けてタスクの切り替えを速くする自分なりの工夫があれば、お便りで教えてほしいと呼びかけています。
まとめ
タスクの切り替えを速くする特効薬は簡単には見つからないものの、作業の置き方と中断の仕方を変えるだけで影響は小さくできる、というのがこの回の結論です。あわせて、リモートで溜まるモヤモヤには雑談が効くという気づきも共有されました。
- 差し込みで再集中に時間がかかるのは主に頭を使う作業で、手を動かすだけの作業はすぐ再開できる
- 構成案作成のような重いタスクは朝や夜に回し、営業時間中は細かく分けた作業を回す
- 優先度の確認、カレンダーブロック、通知の遮断で、差し込みをそもそも頭に入れない
- 中断する前に要点をまとめておくと、戻ったときの再開の手がかりになる
- リモートでもDMやSlackでの何気ない雑談が、気づきとモチベーションを生む






