「廃棄ゼロで完売」は本当に良いことなのか
『ローソン』さんが、AIを使って需要を読む新しい仕組みに取り組まれています。
私たちも小売業をやっているので、この話はすごく「なるほどな」と感じたんです。
たとえば、おにぎりが全部売れて廃棄ゼロだったとします。閉店間際に売り切れたのなら、それがベストかもしれません。
でも、お昼ぐらいに売り切れてしまったらどうでしょうか。
記録に残るのは「全部売れました」という数字だけです。ただ、そこから閉店までの間に、買いたかったのに買えなかったお客様がいたかもしれないんですよね。
この部分を、ローソンさんは仕組みでうまく改善したというわけです。
営業でも同じことが起きている
実はこれ、小売店だけの話ではなく、営業でもまったく同じことが言えるんじゃないかと思っています。
お客様から「相談したいです」と言われて、日程を調整するとします。そこで提示する日程候補が少なくて、結局予定が合わずに相談につながらなかったとしたら。
お客様に相談したい気持ちがあっても、入り口で止まってしまうことになりかねません。
売り上げを作るのはもちろん大事です。ただ、それ以上に、時間を使ってお店まで来てくださったお客様の期待に沿えないことは、やっぱり良くないんじゃないかと思うんです。
なので今日の結論は、売り逃しを減らすことと、需要を読んでお客様の期待に沿えるように準備すること。この2つをセットで仕組みにするのがいいんじゃないか、ということです。
具体的には、次の3つをセットでやるイメージです。
- 需要を読む:小売ならどの商品が求められているか、営業ならどの曜日・時間帯に希望があるかを調べる
- 準備する:小売なら適切に仕入れる、営業なら商談枠をあらかじめ確保する
- 伝える:入荷状況や入荷予定、申し込める日時をわかりやすく案内する
新商品や人気商品が出たときに、従業員の皆さんに「もっと売り込みましょう」と言うだけでは、売り切る・回すのはなかなか難しいと思います。
だからこそ、この流れを仕組みにしておくことで、ちゃんとお客様に価値を届けられるんじゃないかと考えています。
営業であれば、直近1ヶ月分のアポが取れた曜日と時間帯を調べてみると、自社の傾向が見えてくるかもしれません。お客様が製造業か飲食業かでも、きっと差があると思います。
そのうえで、お客様が一番ミーティングしやすい時間枠をなるべく多く確保する。これはAIがなくても、集計や分析、ルールを作っておけば、そこまで難しくなくできると思います。
ローソンの『AICO』がやっていること
決算説明会の資料によると、ローソンさんは今年の3月から8月の推移で、客数が前年対比100.5%と、0.5%上がったそうです。
売上増加につながったのは、マーケティング施策と、『AICO』というAI発注システムによる品揃えの適正化だと説明されていました。
いろんな取り組みがあるので、AICOだけの成果とは言い切れないとは思います。ただ、実際に成果につながるやり方だろうなと感じています。
AICOは、天気や販売実績などを見て、品揃えや発注数、値引き金額を提案してくれるもののようです。品揃えを準備して発注し、在庫やロスが残らないように値引きしていくところまでできる訳です。
これを私たちのお店に置き換えると、たとえばコミックの仕入れです。
テレビなどのメディアで話題になると、お客様が買いに来られます。そこで仕入れが少なくて売り切れていたら、やっぱりもったいないんですよね。
天気や気温でお客様の来店や、来てくださる年代も変わると思います。需要の兆しを受け取ることで、いろんな準備ができるようになるんです。
ただ多く準備すればいいわけではない
じゃあ売り上げを上げるために、商品も商談枠もとにかく多く準備すればいいのか。これがまた難しいところで、バランスが大事だと思っています。
私たちは古着屋さんとリユースをやっているので、中古商材を扱っています。買取がないと販売する商品がないので、いまも買取に力を入れています。
以前、買取の金額や件数を評価とつなぎ合わせたKPIにしてしまったことがありました。
すると、買取件数も買取金額も増えました。ただ、原価率が上がって粗利率が下がり、売上は上がったのに営業利益が下がる、ということが起きてしまったんです。
そういうところも加味しながら、需要を見て商品を揃えていく。それをAIでより精度高くできるようになってきている、というのが今の現状じゃないかと思います。
AIに何を渡すかと、身近なチャンスロス
ただ、AIに需要予測をしてもらうとしても、分析してほしいデータをちゃんと渡せているかが肝になってくると思います。
渡したのが自社の販売データだけだと、そもそも在庫があったのか、途中で売り切れたのか、メディアで紹介された時期だったのか、といった売れた理由・売れなかった理由を考える材料がないんです。
なので、どんな情報をAIに渡すと最も成果が出るのかを見極めて、その情報を整備する。この情報の環境整備までをセットで考えることが大事になってきます。
ローソンさんは、おそらく『POS』システムなどで、どの時間帯にどの商品が買われたかという膨大なデータを持っていたと思います。
それを分析することで、今まで店長さんやベテランの方が感覚でやっていたことを、AIがアシストしてくれる世の中に変わってきているなと感じています。
とはいえ、AIがないとできないかというと、意外とそうでもないんです。過去の記録があれば、ある程度の仮説を立てて実行できます。できるところからやるだけでも、成果につながる可能性は大きく上がるんじゃないかと思います。
ぜひ、売り逃している部分、いわゆるチャンスロス ── 本来得られたはずの販売機会を、品切れや準備不足などで逃してしまうことが、どこで起きているのかを少し考えてみてください。
細かいことを言えば、メールやチラシを送る曜日や時間帯もそうです。業界の大きなイベントの日に情報を届けても、皆さんイベントに参加されているので、なかなか反応できないこともあると思います。
そういうチャンスロスを、データを取りながら1つずつなくしていく。それが売り上げの最大化につながってくるんじゃないかと思います。
ローソンさんの仕組みを一段階抽象化すると、需要を読み、適切に準備し、それを伝えるというサイクルです。これを私たちがいつもお伝えしている報告・決定・実施・チェックという決定サイクルに則って回せば、リピーターのお客様も増えていくんじゃないかと思います。
私も最近、家の近くのローソンに『無印良品』さんの商品が並ぶようになって、よく行くようになりました。商品戦略やマーケティング戦略を支える部分にAIをうまく使えば、まだまだ伸びしろがあるなと私自身感じたので、私たちもできるところから手を入れていこうと思っています。
また、私の方で『松田幸之助の仕組み化実践会』という経営者コミュニティと、中小企業の経営者様向けの『AI実践会』という2つのコミュニティを運用しています。仕組み化とAI化を掛け合わせることで、お客様により喜んでいただき、組織を強くできると確信していますので、興味がございましたらぜひチェックしてみてください。
それではまたお会いしましょう。さようなら。
まとめ
「全部売れた」「予約が取れた」の裏には、買えなかったお客様や日程が合わなかったお客様が隠れているかもしれません。私は、需要を読み、準備し、伝える流れを仕組みにすることが、売り逃しを減らす近道だと考えています。
- 昼に売り切れた「廃棄ゼロ」は、買えなかったお客様というチャンスロスを隠している
- 需要を読む・準備する・伝えるを小売でも営業でもセットで仕組みにする
- 多く準備すればいいわけではなく、買取KPIの失敗のように利益とのバランスを見る
- AIに渡すデータの整備が肝だが、AIがなくても過去の記録から仮説を立てて始められる





