わさび農家がコーヒーの祭典に出る、緊急配信のわけ
TOKYO WASABI RADIOの第12回は、予定になかった「緊急配信」として始まります。ひとしさんいわく、ここ最近のももさんは「コーヒーのことばっか考えてる」状態だといいます。
いやもう3ヶ月ぐらいずっとコーヒーのこと考えてるでしょ。
まだ本番じゃないのに、ちょっと疲れてきちゃった。
ももさんがコーヒー漬けになっている理由は、TOKYO WASABIが翌週に控えたSCAJ2026への出展です。ももさんはSCAJを、スペシャルティコーヒーの日本で一番大きなカンファレンスだと説明しています。
たっちゃんは「コーヒーにわさびが?」と驚いてみせますが、出展は本当です。ひとしさんは、準備のほとんどをももさんが一人でやっていると言っても過言ではないと話します。
書類はね、もうAIありがとうって感じ。
出展の書類づくりは特に大変で、ひとしさんも「(AIが)なかったらマジできてない」と応じています。ブースには仲間も合流し、いろいろなメニューを出す予定だといいます。
「出ようよ」と言い続けて3年、SCAJとはどんな場所か
そもそも、ももさんはSCAJに出展しようとは思っていませんでした。毎年「行く側」だったからです。出展を言い出したのは、ひとしさんでした。
そう、何回も言われてた。「出ようよ、出ようよ」って言って。
ももさんがSCAJに通い始めたのは、ニュージーランドから帰国してコーヒーの学校に通い、そこで紹介されたのがきっかけです。時期は2021年か2022年ごろで、コロナ後に縮小開催された年にも足を運んだといいます。
一方のひとしさんは、当時コーヒーに興味がなく、ももさんに「ちょっとついてってみよう」と同行したのが最初でした。行ってみて、イベントの規模の大きさに驚いたそうです。わさびブラザーズの2人も、客として2〜3回は訪れています。
ももさんによると、SCAJには豆を生産する国、抽出器具の会社、エスプレッソマシンのメーカーなど、コーヒーに関わるさまざまな人たちが集まります。会場には複数のステージがあり、競技会も開かれます。
- バリスタの大会
- ハンドドリップの大会
- 味を比べるカップテイスティングの大会
奥多摩でコーヒー焙煎をしているGotta Coffeeのガタさんも、焙煎やカップテイスティングの大会に出場してきました。今年も初日のカップテイスティングに出ると話していたそうです。会期は全4日間で、準備を入れると5日ほどになります。
そんなとこに、いや、このわさび農家がね、行っちゃっていいのかなみたいなね。
ももさんも「恐れ多すぎる」と応じます。ひとしさんは、コーヒーに詳しい人ほど出展には勇気がいるはずで、何も知らない自分だからこそ気軽に勧められたと振り返ります。ももさんは押しに押され、3年ほど寝かせたすえに出展を決めました。
苦い覚醒ドリンクから始まった、3人のコーヒーとの出会い
たっちゃんは、ももさんやガタさんが身近にいなければスペシャルティコーヒーを知らなかったと話します。それまでの基準はセブンイレブンのコーヒーで、コーヒーは苦い大人の飲み物、朝の「覚醒ドリンク」というイメージだったそうです。
(セブンイレブンのコーヒーは)水より味ついてるから面白いからっていうぐらいで。
たっちゃんが自分で買うのは主に牛乳かカルピスで、ももさんによれば、カフェラテに牛乳を足していたこともあるといいます。最近は牛乳をダースで買ったという話も飛び出しました。
ももさんのコーヒーとの最初の出会いは、高校時代のインスタントコーヒーです。勉強中の眠気覚ましとして飲んでいて、母親が飲んでいた影響もあったといいます。
実家には豆を入れて回すだけの手動ミルがあり、のちにコーヒーに興味を持ってから母親に聞くと、結婚当初はよく自分でコーヒーを淹れていたことがわかったそうです。ひとしさんは、家庭という一番小さなコミュニティの影響は大きいと話します。
ひとしさんの最初の記憶は、2010年ごろのニュージーランドです。ワーキングホリデー中、ラフティングの練習に行った先で、月3万円ほどで暮らそうとしていたため、無料で飲めるコーヒーをひたすら飲んでいたといいます。
全く苦い。なんか美味しいと思わないけど、でもなんとなくいい時間だなという、こうね、感じ。
ももさんがコーヒーをもっと知りたいと思ったのは、カナダでのワーキングホリデーのあと、ニセコの冬のカフェで1シーズン働いたときでした。カナダではトッピングのある甘いコーヒーを飲んでいましたが、ニセコの店は本格的なエスプレッソマシンを使い、ラテアートやミルクの泡立てに詳しい人がいたそうです。
ももさんのコーヒー遍歴は、次のような流れで語られています。
ニュージーランドではカフェで働いていたものの店が潰れてしまい、ツアーガイドに転じたため、コーヒーからは一度離れました。帰国後に時間ができたことで、コーヒーの学校に通い始めたといいます。
わさびコーヒーは、苅込さんのメニューから生まれた
ひとしさんは、ももさんのおかげで飲食や飲み物全般に興味を持つようになったと話します。わさびを育てていて、コーヒーも好き。その組み合わせで何かできないかという発想が、わさびコーヒーにつながりました。
ももさんは最初、フードトラックで一緒に出したいという話から生まれたと記憶していましたが、話しているうちに、レシピの元は苅込さんが先に出していたメニューだったと思い出します。
苅込さんはGotta Coffeeの豆のアドバイザーで、ブラジルの豆の鑑定士の資格も持つ人物です。苅込さんがGotta Coffeeに出張で淹れに来た際、TOKYO WASABIのわさびを使った「わさびコーヒー」をメニューとして出していたといいます。
それまではうちらはオリジナルブレンドぐらいしか多分出してなくて。
ももさん自身もGotta Coffeeで出張バリスタを手伝い、ひとしさんも会計で何度か手伝いに行っていたそうです。ももさんは「振り返るの大事」と笑いながら、わさびコーヒー誕生の背景を確かめていました。
SCAJで出す試飲ドリンクの豆は、わさびに合うものをGotta Coffeeと苅込さんが選んでいます。最終調整にはみんなで出向き、生豆の段階から香りが違うことや、同じエチオピア産でも豆によって違うことを実感したといいます。
ブラジルの豆
エチオピアの豆
ひとしさんは「浅煎りといえばエチオピア」というイメージを持っていて、それはももさんに刷り込まれたものかもしれないと笑います。TOKYO WASABIが普段出しているコーヒーにも、浅煎りのエチオピアがあります。
GEEKSTILLと作ったわさびソーダのモクテル
SCAJでの試飲は、わさびコーヒーと、わさびのノンアルコールカクテル、つまりモクテルの2種類です。モクテルには、新しくできたわさびソーダを使います。
わさびソーダがめっちゃ美味しいんだよね、実は。
わさびソーダは、ひとしさんたちが大好きなGEEKSTILLと作りました。GEEKSTILLは主に2人で運営するジンの醸造所で、ひとしさんは世界でも最小人数の醸造所ではないかと話しています。代表は岸川さんで、坂本裕子さんも頑張っていたといいます。
来場者の反応について、ももさんは「未知すぎて」わからないと話します。たくさん来るのか、全然来ないのか。ひとしさんは、どちらにしても奥多摩のわさびを知ってもらえる機会だと受け止めています。
ひとしさんは、わさび農家としての出展はおそらく初めてではないかと言い、ももさんも、農家として出ているのはコーヒー豆の農園の人くらいではないかと応じます。わさび農家という切り口でコーヒーの世界に入れることが、知ってもらうチャンスだというわけです。
話は「モクテル」という言葉にも及びました。ひとしさんは最近までこの言葉を知らず、ももさんもここ数年で見かけるようになった気がすると話しています。
出展テーマは「水」。わさび田から東京湾へ
わさびとコーヒーを組み合わせるにあたり、出展のテーマも考えました。2人が口をそろえたテーマは「水」です。
そう、わさびを育ててくれてる水、コーヒーを入れる時の水。
ひとしさんは、奥多摩の森から湧き出た水が集まって目に見えるようになる場所がわさび田であり、わさび田は山と川のつなぎ目のような存在だと語ります。その水は川となって東京湾まで流れ、会場のビッグサイトにも届くというイメージです。
奥多摩の森
山から水があふれ出る
わさび田
水が集まり、目に見える形になる接続部
川
わさび田の水が川となって流れる
東京湾・ビッグサイト
その水が会場のある湾岸まで届く
ひとしさんは、この流れがすべて東京の中にあることがすごいと話します。ビッグサイトのあたりは「ほぼ千葉」かもしれない、と笑いを交えながらの締めくくりでした。
当日の見どころは、かき氷と海外からの来場者
たっちゃんは、SCAJが違う刺激や出会いの場になりそうだと期待を語ります。来場者の3分の1ほどは海外の人ではないかという話も出ました。たっちゃんは会場のモニターで流す動画を任されていて、その場でコーヒーのお絵描きをすることも考えています。
準備の日数は少なくバタバタですが、手伝いに来てくれる仲間も何人かいるといいます。ももさんが楽しみにしているのは、海外の人がどれだけ興味を持ってくれるか、そして来場者とわさびの話ができることです。
(来場者の)反応はちょっと楽しみでもあり不安でもあり。
ビジネス向けに売り込む商品を問われると、ももさんはまずわさびソーダを挙げ、数量は限られるもののわさびパウダーも出せるかもしれないと答えます。ひとしさんは、今回の出展が次のステップや海外出張につながる可能性に期待を寄せています。
締めに入りかけたところで、ももさんが伝え忘れに気づきます。試飲のほかに、仲間と一緒に試食のかき氷も出すのです。シロップはコーヒーベースとわさびベースの2種類で、ブラジルでも出そうとしているものだといいます。
ももさんとひとしさんは、このかき氷を来年の夏の特別メニューとして、工場でテイクアウト販売できたらとも話しています。
SCAJ2026は10月14日から16日まで、東京ビッグサイトの南1・2ホールで開かれ、ブース番号は2612です。ブースには「TOKYO WASABI」か「LIFE EXPERIENCE」の名前が書かれているそうです。
最後にひとしさんは、わさびはいろいろなものとコラボできると話し、何と合わせたら美味しいかを考えてみてほしいと呼びかけました。アイデアはInstagramのDMで受け付けるとのことです。
まとめ
毎年客として通っていたSCAJに、ひとしさんが3年言い続けた末、TOKYO WASABIはわさび農家として初出展します。わさびコーヒーは苅込さんのメニューから生まれ、出展テーマの「水」がわさびとコーヒーを奥多摩から東京湾までつなぎます。
- SCAJ2026は10月14日〜16日、東京ビッグサイト南1・2ホールのブース2612で出展
- わさびコーヒーはGotta Coffeeの豆アドバイザー・苅込さんのメニューがきっかけ
- 試飲はわさびコーヒーと、GEEKSTILLと作ったわさびソーダのモクテル。試食にかき氷も
- テーマは、わさびを育て、コーヒーを淹れる「水」
- わさび農家という切り口で、奥多摩のわさびを世界へつなぐ一歩と位置づけている





