結果は全13社中8位。89人が下した通信簿
この回は、TOKYO WASABIがICCサミット福岡に出展した後編にあたります。前編の続きとして、プレゼンを終えて奥多摩の山へ戻り、結果と向き合う振り返り回です。
気になる最終順位は、収録中にたっちゃんがSlackで確認し、その場で発表されました。
結果発表。8位です。
イエーイ。
結果は、全13社が入った中での8位でした。ひとしは、初めての出展としては健闘した順位だと受け止めています。
初めてにしてはね。
ただし、この順位はあくまで平均点で出たものです。ひとしは、平均点の強さは認めつつ、点数の中身までは見えないもどかしさを口にします。
10と1の平均と、10がこう5個、1が5個、7が10個と全然違うと思うんだよね。
審査は5つのカテゴリーそれぞれに点数がつき、総合得点も出る仕組みでした。TOKYO WASABIは、その大半のカテゴリーで平均的な評価だったといいます。
審査員の人数について、たっちゃんは89人ほどと説明します。オーディエンスも含めると1000人規模になるとのことです。
審査員は89人ぐらいですね。
審査の方法は、3、4人のグループが各ブースを回り、5分間でプレゼンと試食をして評価するというものでした。
覚悟を感じた出展者たち
ひとしが今回まず感じたのは、周りの出展者たちの熱量の高さでした。
周りのところの熱量も結構すごかったよね。うちらもまあ熱量あるけど、周りも結構やっぱり全員が全員すごいから。
出展すること自体が覚悟のいることだ、とひとしは言います。特に一次産業の人にとっては、畑や家畜の世話がある中で会場に立つこと自体が負担になるからです。
従業員ね、ほんと数名しかいないよみたいなとこも結構来てるから。
ひとしは、4日目に見た社会課題のカタパルトからも、出展者たちの覚悟を強く感じたと振り返ります。
たっちゃんは、事業を始めたきっかけをよく聞かれたと言います。それは、事業をやり抜く力が測られているからだと感じたそうです。
共にやっぱ広がるために、競争の(=共創の)イメージを共有しないと共感はしてもらえないっていうか。
ひとしも、他の出展者のストーリーを聞くうちに、自分たちがなぜわさびをやっているのかを改めて考えさせられたと話します。
審査基準とのズレと、貫いたタンクトップ
ひとしは、審査の基準に乗っていかないと難しい、という点が今回の課題だったと整理します。
審査の基準に乗っていかないと難しいよねっていう点数だと。
たっちゃんは、食の体験そのものを体現しようとしてブースにツアー形式を持ち込んだ結果、新しいカテゴリーの創出になってしまったと振り返ります。
もともと、5つの評価項目に沿ってわかりやすく説明するようアドバイスされていました。たっちゃんは、それをあえてやらず、自分たちの方向性でらしさを出したと話します。
元々アドバイスされてたのが、その5つの評価項目に沿ってわかりやすく説明してっていうアドバイスだったから。
一方で、そのやり方には手応えもありました。たっちゃんは、ふらっと来た人でも入りやすい没入感のある伝え方だったと評価します。
今回のやり方は没入感で聞く、ふらっと来た人とかはあのやり方は入りやすいやり方だなって。
ももは、審査員から5分間の時間をもらえること自体が貴重だとひとしが話していたことを持ち出します。
あの審査員の人の時間を5分ももらえるなんて、この貴重な機会はなかなかないからって言ってたじゃん。
ひとしも、普段は多忙で会えないような人たちが、何も言わずに思いを聞き、手書きの紙でフィードバックをくれる場だったと振り返ります。
F1のカウントダウンと、緊張のプレゼン
ひとしが一番いいと感じたのは、キックオフイベントの演出でした。会場が暗くなり、画面にF1マシンが映し出され、カウントダウンが始まる仕掛けです。
一番あそこがその後の1分間スピーチが緊張するって。
その演出の緊張感を、プレゼンを担ったたっちゃんも肌で感じたといいます。
演出から緊張しちゃいますよね。そういう雰囲気を作ってるから。
いつも緊張しがちだというたっちゃんは、本番で言葉が飛んでしまったと明かします。それでも素直に緊張を伝えてリカバリーした点を、ももは評価します。
言葉飛んで何も言わない。まあまあ面白いけど、もう緊張しちゃいましたって素直に言って。
たっちゃんは、あの舞台に立つだけで経験値が大きく上がったと話します。ひとしも、その経験は何にも変えられないと羨ましがりました。
伝わらなかった、という気づき
たっちゃんは、奥多摩の魅力をもっと伝えられたはずだ、という手応えのなさを口にします。
奥多摩の魅力もっと伝えられたなって。
情報が多い時代だからこそ、伝え方を勉強しないと広がりは出にくい、とももは考えます。会場に集まっていたのは、伝えることの大切さを一番わかっている人たちだったからです。
相手へ伝える。まず認知してもらえなきゃ選ばれないから、そこをやっぱ理解してる人がこういうイベントに。
ひとしは、自分たちが良いと思っている点、社会が良いと思う点、相手が良いと思う点にズレがあることに気づいたと話します。
ちょっとズレが生じてるんだなというのが。
ひとしは、自分たちのわさび田に人が来れば魅力は伝わるが、その環境に依存しているのではないかと指摘します。あの場所以外でも、言葉でわさび田を再現できるようになりたいと考えています。
あのワサビ田を話で再現できるっていうか。
たっちゃんは、それこそが東京にこんな場所があるのか、と奥多摩に来たくなる話につながると言います。
あ、あいつらのとこ行ってみたい、奥多摩行きたい、東京にこんな場所あるの?っていう。
目を引くタンクトップと、その負担
目立ったのは、たっちゃんが貫いたタンクトップ姿です。出落ちのようでも嫌でも目に入ると話します。
タンクトップだけで目には嫌でも入ってきちゃいますよね。
想定外だったのは、隣の隣のブースの漁師もタンクトップだったことです。たっちゃんは、下につなぎを着た漁師感に驚いたといいます。畑の人でタンクトップはなかなかいない、とももも付け加えます。
ひとしは、タンクトップを1年中、寒い時期も貫くたっちゃんの真面目さを認めつつ、見た目だけでなく中身と向き合う必要があると話します。
今回のICCとか出てると、別にそこはもう全然誰も触れないというかさ。
ひとしは、家族としてタンクトップの体への負担を心配しています。その疲労を、もっと事業のパワーに使ってほしいという思いです。
内臓がちょっと心配だからね。
たっちゃんは、8位という結果を今の現在地として誇らしく受け止めています。代表としてプレゼンしたのは自分だが、他の2人が出れば順位は変わっただろうとも話します。
もものマネジメントと、4人目の存在
ひとしは、今回の反省としてプレゼン内容の準備不足を挙げます。本気で向き合い始めたのが前々日ごろだったからです。
本気が出た。やってやっては来たけどね。薄っぺらく。
一方で、プレゼン以外のマネジメントはももが担い、スケジューリングをこなしたといいます。ひとしは、その働きを副キャプテンや添乗員のようだと表現しました。
ももさんいなかったら泊まれてないですね。
ひとしは、プレゼンする人がホテルやバスの心配をせず集中できる環境の大切さを実感したと話します。人手が足りなければ予算も時間もオーバーしていくからだ、とももも補足します。
さらに大きかったのが、鹿児島から駆けつけた4人目の存在、かわちゃんでした。ももの親友であり、ニュージーランド時代のガイド仲間だといいます。
喋るのも得意。なんでもできるから、本当に。
かわちゃんは、コロナ禍でももと一緒に帰国し、奥多摩で隔離生活を共にした間柄です。わさびのことも知っており、心強い存在でした。
いなかったらできてないですね。
本人は有給を取って手伝いに来てくれたため、ひとしは、副業禁止の会社もありうることを考えて名前をかわちゃんにとどめておこうと配慮します。
1日目の結果を受けて話し合えたこと
ひとしは、出展企業同士で採点し合うプレ審査では総合2位や3位に入っていたと振り返ります。それだけに、1日目の本番の採点結果を見て手応えとのギャップを感じたといいます。
それでも諦めずに集まって対策を話し合えたことに、ひとしはICCらしさを感じたと話します。
一生懸命やりきるとかさ。
ここでもかわちゃんの存在が生きました。ももは、普段わさびと向き合っている自分たちに、外部からの視点でアドバイスをくれたと言います。
その方が分かりやすいかもとか。こここうした方がいいかもみたいなの。
ひとしは、自分の言いたいことで攻めがちなたっちゃんに対し、わさび業界の外にいる普通の感覚に近い人の意見が効いたと話します。その結果、プレゼンは1日目と2日目で大きく変わりました。
サインと悔しさが生んだやる気
振り返りの正直な感想として、ひとしは悔しさが強かったと明かします。同時に、周りに思いを持つ仲間がいることでやる気も湧いてきたといいます。
ひとしは、翌日は朝4時に目覚め、アドレナリンで散歩に出てしまったと話します。
朝からもう湯船浸かっちゃったから。体冷えちゃって。外に行ったらさ、思ったより外寒いみたいな。
気持ちを大きく上げた理由の一つが、会いたかった人からサインをもらえたことでした。世界一のプロデューサーを名乗る川原卓巳さんです。片づけコンサルタントのこんまりさんの夫でもあります。
こんまりさんの旦那さん。
ひとしは、たまたまトイレに向かう途中で川原さんを見かけ、思わず声をかけて仲間のブースに呼んだといいます。持参していた本にサインをもらいました。
東京のわさびで世界を変えろ、川原卓巳って書いてくれて。
その言葉を受けて、ひとしは本当に世界を変えようと思ったと話します。川原さんは、わさぶらのお兄ちゃんと覚えていてくれたそうです。
奥多摩と、これからの一歩
ひとしは、前向きな空気に触れて、奥多摩のわさび業界全体でもっと手を取り合えるのではないかとモヤモヤした思いを抱いたといいます。
たっちゃんは、1000人を超える起業家に奥多摩という場所を発信できたことを収穫として挙げます。わさびに限らず、奥多摩には熱量のある事業者がいるからです。
まずは遊びに来て。そういうのもね、知っていただけたらすごい面白いなっていう。
ももは、そもそもわさびがあること自体を知らない人が多い中で、それを知ってもらえたことに意味があると話します。
わさびがあるっていうことを知らない人の方が多いから。
ひとしは、ほとんどの人が奥多摩を知らず、東京でわさびを育てていることも知らないと重ねます。トレイルランで来た人が数人いたのが数少ない接点でした。
最後にひとしさんは、一緒に出展した13社や協力パートナーとも現場で会って関係を深めたいと締めくくります。次回は、なぜわさびを選んだのかを話す予定です。
まとめ
ICCサミット福岡での8位という結果は、平均的な評価という現在地を示すと同時に、審査基準とのズレや伝え方の課題を突きつけました。3人は、悔しさとサインの言葉を原動力に、奥多摩のわさびを世界へ届ける次の一歩を探ります。
- 全13社中8位。評価は大半のカテゴリーで平均的で、審査基準に沿わなかった点が課題として残った
- 自分たちの魅力が「伝わっていない」という気づきが、伝え方を見つめ直すきっかけになった
- もものマネジメントと、鹿児島から駆けつけたかわちゃんの外部視点がチームを支えた
- 川原卓巳さんの「東京のわさびで世界を変えろ」というサインが、悔しさをやる気に変えた
- 1000人超の起業家に奥多摩という場所を発信できたことが、次のつながりへの手がかりになる




