日本語学習に一番役立ったのはアニメ?
前々回から日本語をテーマに話している二人は、今回、日本語を勉強するためのツールを取り上げます。ダイキさんは、日本の漫画やアニメが海外で人気になり、そこから日本語を学ぶ人も多いのではないかと話を切り出します。
個別の教科書名には触れず、ジャンルでざっくり話すという前提で、ダイキさんはソビアさんに使ったツールを挙げてもらいます。ソビアさんの答えは、教科書、アプリ、そしてアニメの3つでした。
どれが一番良かったかと聞かれたソビアさんは、日本語の「ベース」を作るという点ではアニメが良かったと答えます。
全く知らない言語を、教科書とか本で勉強するんだったら、もちろんできるのはできるけど、でも結構難しくなると思うよね。
ソビアさんによると、エンターテインメントは印象に残りやすく、勉強のつもりで見ていなくても、聞き続けるうちに発音や言葉に慣れていくといいます。
でも、どんどん聞いたらその言語に慣れていくじゃん。その言語の発音とか、いろいろ言葉も入ってくるよね、自然に。
「私」や名前のような基本的な言葉がアニメで自然に入っているので、その後で真面目に勉強を始めると、最初のレベルがすぐにわかるようになるというのがソビアさんの実感です。ソビアさん自身もそうだったと振り返っています。
最初に見た『進撃の巨人』は、わかりやすかった?
ソビアさんがアニメを見ていたときは、日本語の音声に英語の字幕という組み合わせでした。ソビアさんは、勉強のためなら最初はわかりやすいアニメを見たほうがいいと話します。
ところが、ソビアさんが最初に見たのは『進撃の巨人 ── 諫山創さんの漫画を原作とするアニメ。巨人と人類の戦いを描くダークな作品で、海外でも高い人気があります』でした。ダイキさんに「わかりやすいのか」と聞かれ、ソビアさんは即座に否定します。
(進撃の巨人は)全然わかりやすくないです。
ソビアさんは、まったく知らない言語の作品でストーリーを追うこと自体が難しいと説明します。字幕を見ても、どれが名前でどれが普通の言葉なのか区別がつかず、声や発音にも慣れていないため、ストーリーに集中できなくなってしまうといいます。
ただし、ソビアさんは日本語の勉強のためにアニメを見ていたわけではなく、人気作だったから見ていただけだと付け加えています。
次に見た作品はさらに難しかったそうです。ソビアさんが挙げたのは、略称で「俺ガイル」と呼ばれる『やはり俺の青春ラブコメは間違っている』です。学校生活が舞台の日常系アニメですが、大人っぽく、哲学的な話がメインだったといいます。
しかもね、この二つ(のアニメ)ともね、私自分が見たいから見てるわけじゃなくて。妹が自分の好きなアニメをすごい見せさせて。
ソビアさんの最初のアニメ体験は、妹さんのおすすめに付き合う形で始まったことがわかります。
勉強向きのアニメと、最初は避けたいアニメ
俺ガイルの後にソビアさんが見た作品として挙がったのが、京アニ ── 京都アニメーションの略称。丁寧な作画で知られるアニメ制作会社で、日常系の作品を多く手がけていますの『中二病でも恋がしたい!』です。ソビアさんは、こうしたアニメやワンピースは最初の一本として結構いいと話します。
ダイキさんは、自分の世代の感覚では、海外で有名な日本のアニメといえばワンピースやナルトだと言います。ソビアさんは、それらにも深い話はあるかもしれないとしつつ、少年アニメなので誰にでもわかりやすいと評価します。
だからもちろん深いのは深いかもしれないけど、でも使ってる言葉とか話し方とかさ、日常のコミュニケーションになるから。
一方で、俺ガイルのような作品は、アーティスティックでセリフも複雑だとソビアさんは言います。本当に言いたいことは何なのかを視聴者に委ねるタイプのストーリーは、日本語の勉強が目的なら最初は見ないほうがいいというのがソビアさんの考えです。
ソビアさんが挙げた2種類のアニメの違いを整理すると、次のようになります。
オーソドックスなストーリーで誰にでもわかりやすく、日常会話に近い言葉や話し方が使われている
セリフが複雑でアーティスティック。意味の解釈を視聴者に任せるため、最初の一本には向かない
ギャグアニメの『斉木楠雄のΨ難』も、ソビアさんはおすすめしにくいといいます。日本語でだけジョークになるパンチラインがあるため、日本語をまったく知らない人には、どこが面白いのかわかりにくいからです。
ダイキさんも、文化的な背景を知らないと笑えない部分があると同意します。二人が今見ているアメリカのシットカム ── シチュエーション・コメディの略。決まった舞台と登場人物で展開する、笑い声入りの連続ドラマ形式のコメディです『フレンズ』でも、わからないところがたまにあるそうです。
ソビアさんが話していた『氷菓』についても、日本語としてはいいものの、アニメに慣れていない視聴者には難しく、俺ガイルと同じタイプだとソビアさんは話します。結局、最初は本当に人気のある少年アニメのほうがいいのでは、という結論になりました。
ダイキさんは、ドラえもんのようにヒンディー語版がありネパールのテレビでも放送される作品では、日本語に触れる機会になりにくいと指摘します。そのため、日本語でしか見られない作品となると、少しニッチなアニメになるのかもしれないと話しています。
漫画は英語で、教科書はレベル別に
漫画について聞かれたソビアさんは、日本語の漫画は読まないと答えます。英語版の日本の漫画なら、少女漫画などロマンチックな作品を読んだことがあるそうです。日本語が読めない人には、日本語の漫画はさすがに無理だといいます。
続いて話題は教科書に移ります。ソビアさんが挙げた教科書の利点は、レベル別に分かれていて自分でフィルターしなくていいことでした。
(教科書は)自分でフィルターしなくていいからね。このレベルの本から始めたらそれでいいかな。
ダイキさんも、ネパールでも日本でも、日本語学校では教科書をベースに「今日はこのチャプター」と進めていくはずだと話します。
そのうえで、アニメの役割をソビアさんはあらためて限定します。アニメを見るだけで日本語ができるようになるわけではまったくなく、あくまでベースのためだといいます。
アプリは続く?無料と有料の差
アプリについてソビアさんは「結構いい」としつつ、最近は昔と比べてプレミアム版を買わないといけないアプリがとても多いと話します。
だって(自分は)学生じゃん?まだ。だからね、ちょっと毎月その何千円払うのはちょっとね、まだきついと思う。だからそれだと本買った方がいいと思う。
ソビアさんがすすめるのは、教科書を軸にしつつ、単語とその意味を載せた辞書のようなアプリを併用する方法です。毎日いくつか単語を覚える使い方なら、アプリは役に立つといいます。
実際にソビアさんのスマホには、今も日本語学習アプリがたくさん入っているそうです。ただし、プレミアム版が必要なものが多く、ほとんど使っていないといいます。
- Duolingo:サブスクライブしなくてもいろいろ勉強できる
- 調べ辞書:ゲーム要素はないが、辞書として意味を調べるのに便利で課金も不要
- 忍:漫画のようなシーンのセリフを一語ずつ学ぶ形式で、プレミアムが必要
ソビアさんは、忍のような教材について、どのレベルから始まっているのかがわかりにくく、まだ完成度が十分ではないと感じているようです。
ダイキさんが、アプリだけでN1 ── 日本語能力試験の最上位レベル。幅広い場面で使われる日本語を理解できる水準とされていますまで行けるのかと問うと、ソビアさんは長く続けたことがないのでわからないと答えます。二人とも、続けるのは相当な意欲がないと大変だという点で一致しました。
ダイキさんは、日本に来れば日本語学校など勉強する環境があり、周りに日本人もいるので、わざわざアプリで勉強する人は少ないのではと話します。日本人がアメリカに留学した場合でも、ドラマを見ることはあっても単語アプリまでは使わないだろうと例えています。
毎日頑張っていかないと(アプリは)ルーティンにならないよね。
最後のピースは「日本人と話す」こと
ダイキさんは、ここまでの話をまとめ、アニメで耳を慣らし、教科書できちんと勉強し、アプリを補助に使うという流れを確認します。そこにソビアさんが付け加えたのが、日本人と普通に話すことでした。
本当に話さないと自分からそのスピーキング練習とかならないじゃん。
二人の話から見えてくる日本語学習ツールの使い方は、次の順番に整理できます。
次回は、この「日本人と話す」というテーマを掘り下げ、恋人が日本人だった場合に日本語の能力が上がるのかを話す予定だと予告して、今回は締めくくられました。
まとめ
ソビアさんの経験では、アニメは日本語を勉強する道具というより、日本語の音に耳を慣らすための入口でした。本格的な学習は教科書で進め、アプリは単語を覚える補助として使い、最後は日本人と話すことが欠かせないと語られています。
- アニメは日本語のベース作りに役立つが、見るだけで日本語ができるようになるわけではない
- 最初は日常会話に近い少年アニメが向いており、哲学的な作品やギャグアニメは難しい
- 教科書はレベル別に分かれていて、自分で教材を選ぶ手間がかからない
- アプリは有料化が進んでおり、学生なら辞書型の無料アプリと本の組み合わせが現実的
- スピーキングを伸ばすには、日本人と実際に話すことが必要




