台本なしの番外編、評価の時期に何を話す?
MiraQラジオの番外編は、名倉さんの「ここからは台本がありません」という宣言で始まります。前回は中村さんが先に帰り、名倉さんと末松さんの女子2人だけで番外編を収録していました。
中村さんによると、その女子だけの番外編は、何人かのリスナーから「番組がリニューアルしてから一番面白かった」と言われたそうです。
えーみたいな。こんなに頑張ってやってるのにみたいな。
末松さんは「自由気ままが良かったのかもしれない」と受け止め、今回は中村さんのリードで、リラックスしつつも少し硬い話をすることになります。
中村さんが持ち出したテーマは人事評価です。この番外編が放送される頃は、多くの会社が上半期を振り返って評価をつける時期で、中村さんは10月、11月に評価をつける会社が多いのではないかと話します。
名倉さんが「ボーナスにつながる評価」と確認すると、中村さんは、一般的にはそういう理解だろうとしつつ、番組として伝えたい評価の意図はそれとは少し違うと切り出します。
「明日までに書いとけ」だった前職の評価とは?
中村さんは末松さんに、入社前と入社後で評価への認識に変化があったはずだと話を振ります。末松さんは、前職での評価の体験を語り始めます。
前職の評価が、評価時期になったら上司に呼ばれて、「明日までやから書いとけ」みたいなって言われるやつだったんですよ。
末松さんは前職で営業職でした。ボーナスは営業成績の数字だけで決まり、評価シートの結果はボーナスにつながっていなかったといいます。
その上司も上に提出しないとダメだから、早く書いてくれみたいな感じだったんですよ。なんで、何のために行われているかわからないパフォーマンスだけの評価。
末松さんの前職では、評価を使った面談もありませんでした。自己評価は急かされるので適当に丸をつけて提出し、上司がどう評価したのかは一度も見たことがなかったそうです。
末松さんは、上司自身も評価の目的をわかっておらず、言われたから急いでいただけだったのではないかと振り返ります。名倉さんは、お金のためなのか、成長のための査定なのか、評価が何につながるのかを知りたいと話します。
評価は「どう働いていくか」を考えるツールになる?
一方、現在の会社での評価について、末松さんは「自分が今後どうしていきたいか」を考えるきっかけになっていると語ります。なお、評価制度は現在リニューアル中だといいます。
末松さんによると、苦手なことまでこなさないと上のステージに上がれない仕組みだと苦しくなります。今の評価では、自分が伸ばしたいところを頑張るほどステージが上がり、さらにフィードバックももらえるそうです。
お金どうこうとか評価されるどうこうじゃなくて、今後どう働いていこうっていうのを考える一つのツールだと思ってるんですね。
中村さんの補足では、実際に評価をつけるのは年2回で、その間も定期的に面談をしながら確認しています。名倉さんは、フィードバックがあることの大きさに注目します。
頑張ろうという気持ちが一人で走っちゃってて、私この道で合ってるんやろうかって思うタイミングってあるじゃないですか。
末松さんは、上司に「これをやれと言われているけれど、本当はすごく嫌だ」とは普段なかなか言えないと話します。面談は、そうした本音や方向のずれを話し合い、「もっとこうしたらええんちゃう?」と助言をもらえる機会になっているといいます。
前職では評価シートを急かされて提出するだけ。面談もフィードバックもなく、ボーナスは営業成績の数字だけで決まっていた
現在は、自分が伸ばしたいところを頑張るほどステージが上がり、定期的な面談でフィードバックももらえる
評価制度を作っても不満が消えないのはなぜ?
中村さんは、評価には多くの人がモヤモヤを抱えているのではないかと前置きし、人の心理の面白さとして、評価制度づくりの現場で見てきた話をします。
評価制度がない会社では「評価の仕組みがないから頑張りがいがない」という不満が出ます。中村さんは、頑張りを認めてもらう機会はあった方がいいと考え、社員の声を聞きながら制度を作っていくそうです。
制度作ったら作ったでまた文句言うんですよね。なんかちゃんと評価されてる感じがしないですとか言って。
制度がない
「評価の仕組みがないから頑張りがいがない」という不満が出る
制度を作る
社員と話しながら、頑張りがやりがいにつながる制度を作る
制度ができる
「ちゃんと評価されている感じがしない」と、また不満が出る
中村さんは、評価は永遠に課題が尽きないと感じながら考え続けた末に、自分の中で腹落ちしたことがあるといいます。その出発点は、評価とは何なのかを考え直すことでした。
ボーナスのための評価は、車の査定と同じ?
中村さんはまず、評価の目的のひとつとして、賞与の金額を決めるための「査定」を挙げます。それも必要なことだとしつつ、査定を受けてみんなが幸せそうな顔をしているかといえば、不幸せな顔の方が多いと話します。
中村さんの見方では、査定とは「値決め」です。誰もが自分の尺度では頑張っているのに、その頑張りを「とどのつまりいくら」と値決めされても嬉しくはありません。
中村さんは、これを車の買取にたとえます。エンジンから変な音がしないか、ボディに傷はないかといった査定項目を順に判定し、最後に買取額が出る仕組みです。
お金を決めるためにやっている評価って、すなわちこれ(車の査定)と一緒やんねみたいな。
名倉さんは、出てきた金額が自分の働きに見合っているのかどうか、そもそもわからないと応じます。中村さんも、そのもやっと感はなくならないと話します。
だからそれってもう永遠の課題で、なんかそこにフォーカスすればするほど泥沼やなと思ったんですよ。
評価は「被評価者」ではなく「上司」のためにある
査定の泥沼から抜け出すために、中村さんは評価に対するものの見方を変えるべきだと気づいたといいます。一般的には、評価は評価される人、つまり被評価者 ── 人事評価において評価を受ける側の人のこと。評価をつける側の上司などは「評価者」と呼ばれますのためにあると思われています。
中村さんは、評価される人のために評価があると考えると、どこまで行っても「評価される」という受け身になってしまうと話します。そのうえで、評価の本当の目的を次のように語ります。
実は評価って、あなたの頑張りがどうだっていうことを判定していくことが大事なんじゃなくて、何を目指してこの間やろうかっていうことを、上司と部下がお互いが理解し合うことが大事なんじゃないかなと。
中村さんによれば、上司の仕事には部署の結果を出すことと同じくらい、次の世代を育てることが含まれます。ところが、社長から「次の世代を育てておけ」と言われても、どう育てればいいかの指針がありません。
なのに言われるんですよ。ちゃんと育ててないって。
そこで中村さんは、上司が指導の目安にできる指針を作れば、上司はどれほど救われるだろうと考えました。評価制度を、評価する側が指導しやすくなるツールとして作るという発想です。
評価される人が納得する基準を探し、頑張りを判定して値決めする
上司と部下が目指すものを共有し、上司が指導しやすくなる基準を作る
名倉さんが「全社員に同じ項目でいいのか」と尋ねると、中村さんは立場ごとに目安が必要だと答えます。入社して基本を覚えている段階と、経験を積んで中心になるべき段階とでは、求めることが変わるからです。
30年かけた知識を2年で受け取っていいのか?
名倉さんは、自分たちはまだ評価する側に立つ年代ではないと末松さんに話を振ります。末松さんは、入社当初から評価制度のプロジェクトで中村さんの考えを聞いてきたと語ります。
私まだこの業界入って4年ぐらいなんですよ。中村さんも30年近くやってるわけじゃないですか。何十年やってきて、ようやく違うって気づいたじゃないですか。
末松さんは、中村さんが何十年もかけてたどり着いた考えを、まだ何もわかっていない2年目ぐらいの自分が聞いてしまっていいのかと感じていたといいます。
名倉さんは、聞いているだけの段階と、実際に評価する立場になったときに「こういうことか」と気づく段階は別だろうと話し、「いつかお前にもわかる時が来る」という意図なのではと冗談めかします。
しかし中村さんは、その受け止め方とは感覚が違うと返します。どの分野も突き詰めると深く、30年探求してきた到達点も通過点にすぎないというのが中村さんの考えです。
中村さんは、同じことに30年かけるのは時間がもったいないので、自分のやってきたことはとっとと吸収して、その先へ進んでほしいと話します。
「苦労したんだから教えない」では社会は進まない?
中村さんは、社会もこうした知恵の受け渡しによって成熟してきたと考えています。先人が知恵を絞ってたどり着いた到達点があるのに、次の世代に同じ苦労を求めていては進歩がないという考えです。
「お前らも俺らがこんなに苦労したんやから、お前らも同じだけの苦労してから次のことせえよ」なんて言ってたら進歩がないじゃないですか。
名倉さんは、大きな目で見ればその通りでも、小さなコミュニティではまだ「簡単には教えない」ということが多いはずだと指摘します。末松さんも、中村さんがそう思わないことに感心すると話します。
驚いたことに、中村さん自身にもかつては「教えるならお金をもらう」と考えていた時期があったといいます。
膨大な時間と労力をかけて自分の中で探求してきたわけじゃないですか。それをなんかぺろっと簡単に舐めただけでわかったような気になんなよみたいな。
名倉さんは、それは普通の反応で、書籍出版やオンラインサロンもそういうことだと応じます。それでも中村さんは、ある時「そうじゃない」と行き着いたと語ります。
一度も満足しない探求心は、スキーにも及ぶ?
中村さんが考えを変えた理由のひとつは、探求には終わりがないという実感です。これまで多くの案件に携わってきたものの、一度も満足したことはないといいます。
もっとなんかできたんちゃうかとか、もっとこういうことを入れたらどうなんねやろうとか、もうずっとそこを考えちゃうんですよね。
中村さんのこの性分は遊びでも同じです。スキーが大好きな中村さんは、雪のシーズンには行かない週末がないほど毎週通い、帰り道は毎回反省会になるそうです。
あそこのコブ、もうちょっとこうやっていっちゃったらどうやったかな。
末松さんと名倉さんは「そんなに考えます?」「楽しかった、だけ」と驚きます。中村さんは、楽しさの反面、まだ到達していない未完の領域があるのだと話します。
中村さんは、あまり領域を広げないよう気をつけているといいます。明確にやっていないのがゴルフで、仕事柄お誘いは多いものの、のめり込むのが自分でわかっているので「危険なんでやらない」と話します。
止まると死ぬマグロは、知恵をどこへ持っていく?
名倉さんが「死ぬまで考え続ける人」と言うと、中村さんは、周囲からよくマグロにたとえられると明かします。
もう止まると死ぬよね。
ただ中村さんは、自分の年齢になると人生の終わりを強く意識するようになり、知識を抱えていても仕方がないと考えるようになったといいます。
中村さんによれば、自分のノウハウを抱え込んだまま終わりを迎えれば、積み重ねてきたこと自体がなくなります。だったら残した方がいい、というのが中村さんの結論です。名倉さんも、誰かに少しでも残れば生きた証として意味があると応じます。
中村さんは、30年分の全てをバトンとして末松さんに渡したとしても、受け取った側が「私はすごいんだ」で止まってしまったら面白くないと話します。名倉さんは、その重いバトンをどこまで運べるかだと表現しました。
末松さんは、その領域に行くには自分の成長も必要で、中途半端な人に渡すわけにはいかないということだと受け止めます。中村さんも、渡す相手の見極めも大事だと話します。
評価制度は、上司の到達点を部下に受け継ぐ場になる
中村さんは、話が脱線したと笑いながら評価の話に戻ります。脱線したスキーやマグロの話は、ここで評価制度の話とつながります。
その評価ということを通して、上司がそれまで体験してきたことの、その時点での到達点と課題感っていうのが、部下の方に伝わって、それをまた部下の方が受け継いでいってくれたら、すごいいい会社になるやろなみたいなね。
中村さんにとって評価制度は、上司が積み重ねてきた知恵を部下へ渡すバトンの役割も持っています。末松さんは「ここが繋がってるのがね」と、話のつながりに感心します。
名倉さんと末松さんは、中村さんの1日を動画にしたい、頭の中を見てみたいと盛り上がります。中村さんは、漫画のように考えていることが吹き出しで出てきたら、恥ずかしくて街を歩けないと笑います。
なぜこの看板はこの色?考えることが止まらない頭の中
中村さんは、街を歩いているだけでもいろいろなことを考えてしまうといいます。考える対象は評価制度に限りません。
この看板ってなんでこの色なんやろ?とか。
看板がなぜそこに付いているのか、前を歩く人がなぜそんな歩き方なのか、と中村さんの頭の中は忙しく動き続けます。一方の末松さんは、歩くときはほぼ無だと話します。
名倉さんは、その様子を「あれ何?これ何?」と聞く2歳児にたとえます。中村さんはこの日も、末松さんと天神橋筋商店街を歩きながら、店がずいぶん変わったという話をしていたそうです。
名倉さんは、中村さんに密着してYouTubeにしようかと冗談を言い、中村さんは疲れるからやめようと返しながら話の締めに向かいます。
当たり前を疑う「考える習慣」がヒントを見つける
最後に中村さんは、この回で伝えたかったのは「どういう評価制度を作るか」ではなかったと語ります。伝えたかったのは、1つのことをこだわって考えてみる面白さです。
中村さんは、「そんなもんだ」と当たり前に思っていることを考え直す習慣が、見過ごしていた気づきにつながるかもしれないと話します。当たり前を疑って考える習慣こそが、この番外編の着地点です。
名倉さんも、考えることは本当に大事だと応じ、「脳みそが焼き切れそうですが、考える習慣をつけます」と宣言します。末松さんは、前回の番外編からガラッと変わって真面目な話になったと振り返りました。
次回の番外編はもう少しソフトな話にする予定で、冬休みの予定や社員旅行の話などが候補に挙がっています。
まとめ
評価の時期をきっかけにした今回の番外編は、評価制度を「部下を査定するもの」から「上司が部下を育てるためのツール」へと捉え直す話から始まりました。そこから、30年かけた知恵を次世代にショートカットして渡すこと、そして当たり前を疑う「考える習慣」へと話が広がりました。
- ボーナスのための査定は「値決め」であり、どんな結果でももやっと感が残る泥沼になりやすい
- 中村さんは、評価制度は上司と部下が目指すものを共有し、上司が指導しやすくなるためにあると考えている
- 末松さんは、面談とフィードバックがある評価を「今後どう働くかを考えるツール」と受け止めている
- 30年かけた知識は抱え込まずにショートカットして渡し、受け取った側がその先へ進むことが大切だと語られた
- 「これって本当はどうなのか」と考える習慣が、見過ごしていたヒントに気づくきっかけになる





