ラブブから始まる「ブラインドボックス」の話
番組は、最近流行したキャラクター「ラブブ」の話から始まります。ウサギのような見た目のフィギュアで、津田さんも佐々木さんも持ってはいないものの、街で見かけた記憶はあると話します。
流行の発端は、BLACKPINKのリサさんが持っていたことだと津田さんは説明します。さらにSNSやショート動画の開封動画によって爆発的に広まったといいます。
その売り方が「ブラインドボックス」です。中身が見えない箱で複数種類を販売し、開けるまで何が出るかわからない方式だと津田さんは説明します。
もっとも佐々木さんは「手法的には新しくない」と指摘します。カードゲーム、ガチャガチャ、アイドルグッズなど、ランダム販売は昔からありました。
誰のグッズが来るかわかんないから、SNSとかで「何々を五枚ぐらい引いたんですけど、誰か何々を持ってる人と交換できませんか」みたいな。推しが違うじゃん。
そこで津田さんは、平成に生まれて平成のうちに消えたブラインド商品として、ペプシのボトルキャップを取り上げると宣言します。
ペプシとコカ・コーラの因縁と「青コーナー」
ボトルキャップは二千年代前半に流行した、ペットボトルのキャップの上にフィギュアが乗った商品です。その火付け役がペプシのおまけでした。
前提として、ペプシはコカ・コーラとずっと競い合っており、長く劣勢だったと津田さんは語ります。「コーラといえば」で思い浮かぶのはコカ・コーラのほう、という印象も共有されます。
転機は千九百九十七年です。日本におけるペプシの事業がペプシコからサントリーへ譲渡され、日本に特化したマーケティングが始まりました。
翌九十八年、コカ・コーラへの対抗心を込めたキャッチコピーが打たれます。それが「青コーナーペプシ」でした。
正解のキャッチコピーはですね、「青コーナーペプシ」っていうキャッチコピーですね。ボクシングとかそういう。
赤いイメージのコカ・コーラを王者に見立て、青いペプシが挑戦者として挑むという構図です。佐々木さんは「主人公っぽい」とその巧みさに感心します。
ペプシマンからスターウォーズへ、爆売れのボトルキャップ
売り上げを上げるため、ペプシはおまけをつける戦略を選びます。フィギュアを複数種類作り、中身が見えないブラインド方式にすることで、コレクション要素とワクワク感を狙いました。
一本言うて百何十円じゃん。だから、なんだろう、ランダムにしても。一個二千円とかだったらそんな何個も買えないじゃん。安いものにつける前提の戦略なんだね。
当時はおまけ文化そのものが流行していました。津田さんはシャー芯についていたピクミンのフィギュアを集めていたと振り返り、チョコエッグなどの食玩の流行にも触れます。
最初のフィギュアに選ばれたのは、自社キャラクターのペプシマンでした。ペプシマンは日本で生まれたキャラクターで、アメリカではほぼ使われていないと津田さんは説明します。
第一弾はスポーツをするペプシマンの「スポーツアンドアクションシリーズ」でした。佐々木さんは、キャラクターの浸透とコレクションを同時に狙える点を「何重にもうまい」と評価します。
翌九十九年、他社作品とのタイアップが始まります。その代表がスターウォーズでした。ちょうど新三部作エピソードワンからスリーの公開時期と重なっていました。
スターウォーズはもちろん知ってて、こういうドームっぽいロボと全身金ピカの人型がいるなっていうのは覚えてたけど、名前をボトルキャップで覚えたかも。こいつがR2-D2かみたいな。
キャラクター数の多いスターウォーズとの相性は抜群で、ボトルキャップは爆売れします。この結果、ペプシの日本での売り上げがコカ・コーラを大きく上回りました。
おまけ戦争の勃発と、両社のタイアップ合戦
ペプシの躍進を受け、コカ・コーラも動きます。第一弾がファイナルファンタジーのフィギュアでした。ボトルキャップではなく台座付きのフィギュアだったといいます。
これを皮切りに、ペプシとコカ・コーラのおまけフィギュア戦争が過熱していきます。両社は当時流行していた作品と次々にタイアップしました。
スターウォーズ、スヌーピー、猿の惑星、アディダス、ガンダム、スパイダーマン2、マリオ、イチローなど
ファイナルファンタジー、ルパン三世、歴代サッカー選手、ドラゴンボール、週刊少年ジャンプ連載作品など
ペプシのイチロー単体シリーズには工夫がありました。バットのスイングを一体ずつ切り取り、全部並べると連続したスイングになるコレクション要素です。
なんでこんないっぱい振ってんだろうと思ったけど、そうか、スイングの途中になってるのか。構えてバットをチェックして、力んで打つところまで。どういう発想だよ。おもろ。
ペプシマンのフィギュアも、P・E・P・S・Iの文字を体で表現し、集めると文字が完成する仕掛けになっていました。おまけ戦争は二千五年ごろまで続きます。
ブームを終わらせた「あいつ」の正体
あんなに流行っていたボトルキャップは、二千五年に突然終焉を迎えます。津田さんは、その原因を「あいつ」と表現してクイズを出します。
正体は公正取引委員会でした。二千三年にペプシが行っていたガンダムのキャンペーンの手法に対し、注意を行ったのです。
問題は手法の一つひとつではなく、その組み合わせでした。おまけをつけること、ブラインド方式、フィギュアのクオリティの高さ。これらが重なった結果、注意を受けたと津田さんは説明します。
ここで景品の種類が整理されます。運の要素が絡む「一般懸賞」と、購入者全員がもらえる「総付景品」です。
くじなど偶然性や優劣で景品を提供するもの。中身が見えないブラインド方式もこちらに当たると判断された
抽選や運の要素なしに、購入者全員に提供される景品
サントリーは、全てのペプシにおまけをつけているので「総付景品」だと考えていました。しかし公正取引委員会は、中身が見えないため運の要素が絡む「一般懸賞」に当たると判断します。ここに認識のズレがありました。
一般懸賞自体は問題ありません。ただし提供できる景品の金額に制限がありました。
精巧なフィギュアを三円で作るのは不可能です。そのため注意を受けました。ただし罰則を伴う状態ではなかったと津田さんは補足します。
透明パッケージ化と、ビックリマンやラブブとの違い
注意を受けた後、各飲料メーカーは運の要素が絡まないよう、中身が見える透明なパッケージで売るようになりました。これにより完全な総付景品となり、高クオリティでも制限にかからなくなります。
しかし透明になると弊害が生まれます。コンプリートのために大量に買う人がいなくなり、箱買いが減ったのです。
透明で中身が見えるパッケージになると、箱買いしなくなるよね。六種類だと六本買えばいいから。あれ持ってるやつと持ってないやつが交換しようみたいなトレーディング性も失われるしね。
こうしてボトルキャップのおまけは売り上げにつながらなくなり、ブームは終焉を迎えました。
では、なぜラブブは今もセーフなのか。津田さんは、ラブブは商品自体にランダム要素があり、おまけではない点を挙げます。遊戯王カードも同じで、ランダム性そのものを買っているためセーフです。
佐々木さんはビックリマンチョコを引き合いに出します。こちらはシールがおまけにあたるため、金額制限に合わせてシールの素材やクオリティを調整して対応したといいます。
透明パッケージにして中身を見せ、総付景品にすることで制限を回避
シールの素材を安くしてクオリティを下げ、金額を制限内に収めて対応
この仕組みがわかると、フエラムネのおまけのクオリティが控えめな理由も見えてきます。そもそもおまけにかけられる金額に制限があるからだ、と津田さんは腑に落ちた様子で話します。
まとめ
平成に生まれたペプシのボトルキャップは、おまけ文化とキャラクタービジネスの隆盛を背景に爆発的に流行し、コカ・コーラとのおまけ戦争を巻き起こしました。しかし複数の手法が重なったことで景品の金額制限に触れ、公正取引委員会の注意を機に透明パッケージ化が進み、ブームは静かに幕を閉じました。
- ペプシのボトルキャップは、サントリーによる日本特化のマーケティングと、スターウォーズとのタイアップで爆発的に流行した
- ペプシの躍進を受けてコカ・コーラも参入し、両社のおまけ戦争が二千五年ごろまで過熱した
- ブームを終わらせたのは公正取引委員会で、ブラインド方式が一般懸賞と判断され、景品の金額制限に触れたことが原因だった
- 透明パッケージ化で総付景品にすることで制限を回避したが、箱買いやトレーディング性が失われ、ブームは終焉した
- ラブブや遊戯王は商品自体にランダム性がある、ビックリマンは素材を調整するなど、対応の違いで生き残り方が分かれている
