そもそも「檀家データをAIにどこまで渡すか」問題から始まった
今回の話のきっかけは、よし坊さんがスレッズというSNSに投稿した、お寺運営とDXについての内容でした。
投稿のテーマは、DX化が進むにつれて必ず問題になりそうなこと。それが、ご門徒様(檀家様)のデータをAIにどこまで渡すのかという問題です。
お寺は、名前や住所だけでなく、故人様の法名や命日、家族構成など、かなりセンシティブな情報を持っています。こうしたデータをスプレッドシートやNotionのようなデータベースに入力している場合、AIに渡すと便利なことができるとよし坊さんは言います。
たとえば「2027年の初盆の法要の方を抽出して一覧を出してください」といった作業も、AIならこなせます。ただ、便利だからといってAIに全部読ませてしまうのは、ちょっと危ないところがあるとよし坊さんは話します。
一方で、その個人情報があるから、AIは(お寺で)扱うのはやめた方がいいというのもちょっと極端だと思うんですよ。
大事なのは、使うか使わないかではなく、どうやって線引きをしていくのか。便利さを求めつつ、守るべきものも一緒に考えていく——そんな内容の投稿に意外と反応があり、興味を持つ人が多いとわかったそうです。
そこで今回は、お寺の運営とDXの、もっと入り口の部分を話してみようという流れになりました。
そもそもDXって何?お寺の事務は今も「手書き」が多い
まずよし坊さんは、そもそもDXとは何なのかというところから話し始めます。調べてみると、日本でDXという言葉が言われ始めたのは2018年ごろだそうです。
DXの正式名称はデジタルトランスフォーメーション。デジタル技術をうまく活用して、業務や組織、ビジネスモデルを根本から見直し、新しい価値を生み出していきましょう、という意味だと説明されています。
要は、いろんな技術が進化してきたから、それに合わせてもっと効率よく仕事をしていきましょう、という意味だと理解すればいい、とよし坊さんは言います。
では、これをお寺の運営でどう考えればいいのか。お寺は昔からある存在で、江戸時代に檀家制度が始まったころから、お寺と門徒様との関係が続いてきました。
お寺の仕事を考えてみると、門徒様との台帳データや予定表が、手書きの帳面や手帳で管理されているのが一般的な事務のあり方でした。その後パソコンで管理する流れも出てきましたが、お寺には昔の名残が色濃く残っているとよし坊さんは指摘します。
(お寺は)昔の名残が色濃く残っていると思うんですよ。特にこの事務に関して。
今でも帳面や予定表を手書きのカレンダーで管理しているお寺は結構あるといいます。よし坊さんの自坊も、住職であるお父さんがパソコンを使えないため、帳面も予定表もすべて手書きなのだそうです。
まず「手書きをデジタルに置き換える」ことがDXの第一歩
ここでよし坊さんは、DX化の第一歩は決して難しいことではない、と話します。いきなりAIをゴリゴリ使って自動化・効率化する話ではなく、まずデジタルに置き換えてみることが最初の一歩だといいます。
具体例として挙げられたのは、身近で始めやすいものばかりです。
- 紙で書いていた予定管理をGoogleカレンダーで代用する
- 毎回手作業で作っていた年忌表を自動で作れるようにする
- 自坊のウェブサイトを作り、より多くの人に知ってもらう
- お寺のLINE公式アカウントを作る
今まで人が時間をかけていた作業を、デジタルによって少し楽にしていく。よし坊さんは、これがとてもシンプルな考え方だと話します。
つまり、お寺の仕事を今の時代に合ったやり方へ少しずつ変えていくということ。ここで大事なのは、AIを使うこと自体が目的ではない、という点です。
DXの本当の目的は「お坊さんにしかできないこと」に時間を使うこと
よし坊さんが強調するのは、DX化の本当の目的です。それは、お坊さんがお坊さんにしかできないことに、もっと時間を使えるようにすることだといいます。
お坊さんにしかできない仕事とは、ご門徒様と話すことや、法話を考えること、仏教や自分の宗派の勉強を深めていくことなどです。そうした時間を増やすために、事務作業を効率よくやって時間を捻出していく、という考え方です。
事務作業をデジタル化
手書きの台帳や予定管理をデジタルに置き換える
時間を捻出する
今まで作業にかけていた時間を減らす
本来の仕事に使う
門徒様との対話や法話づくり、仏教の学びに時間を回す
時間の捻出こそが、お寺運営のDX化の大きな目的になってくる、とよし坊さんはまとめています。
変えるのは怖い。でも一歩を踏み出す価値はある
とはいえ、昔から馴染んだやり方を変えるのは勇気がいるし、しんどい作業でもあります。便利になるとわかっていても、なかなか踏み出せない気持ちがあるのも自然なことです。
今のままでいいかなとかね、パソコンとかAIとか触ったことないし、変えていくことが怖いという方もおられると思うんですよ。
その気持ちはよく分かります。でもね、ここはやっぱり、勇気を出して一歩を踏み出してみる価値はあると思うんですよね。
よし坊さん自身はまだ住職ではなく、今はお父さんがお寺を運営しています。ただ、自分の代になったら、こうしたものを全部変えていこうと考えているそうです。
もう一つ大事なこととして、デジタルだけに頼るのも怖いところがある、とよし坊さんは付け加えます。パソコンでもデータが消えてしまうことはあるので、物理的な形でも残しておくことが必要だといいます。
物理的なものとしても残していく。例えば門徒様の台帳データをプリントアウトしておくとか、そういったことは考えていくべきかなとは思いますね。
一人が不安なら「仏陀央」というお坊さんのコミュニティも
最後に、よし坊さんはサポートの場を紹介します。一人でやるのは不安だという人も多いだろう、という前提からの案内です。
よし坊さんは「仏陀央」という、宗派を超えたお坊さんのコミュニティを運営しています。そこでは寺院運営のDX化についてもがっつりサポートしているそうです。
このコミュニティは無料で参加でき、月額や年間の費用も発生しません。お寺の運営に役立ちそうなAIの活用方法も伝えているとのことです。
よし坊さんの普段の発信は、総じてお寺のDX化を推進する内容だといいます。興味があればスレッズやYouTube、ポッドキャストなどをフォローして情報を追ってほしい、と呼びかけて回を締めくくりました。
まとめ
寺院DXの第一歩は、AIを使いこなすことではなく、手書きの作業をデジタルに置き換えて時間を捻出することにある、という回でした。その先の目的は、お坊さんにしかできない仕事により多くの時間を使うことです。
- 寺院DXの入り口は、手書きの台帳や予定管理をデジタルに置き換えること
- Googleカレンダー、年忌表の自動化、ウェブサイト、LINE公式アカウントなどが始めやすい例
- DXの目的はAI活用そのものではなく、門徒様との対話や法話づくりに使う時間を捻出すること
- デジタルだけに頼らず、台帳のプリントアウトなど物理的な備えも残しておく
- 一人での取り組みが不安なら、無料コミュニティ「仏陀央」でのサポートも活用できる





