新潟ライチョウ研究会の長野さんと、季節労働者としての調査
番組は二人のパーソナリティでお届けします。山好きのサラリーマンのグッさんと、新潟ライチョウ研究会代表の長野さんです。
長野さんはライチョウの生息状況を調べる活動をしています。ライチョウの繁殖地は長野県や岐阜県が中心ですが、新潟にも生息地があります。
ライチョウって、繁殖したり生息している場所は長野県とか岐阜県とか、あの辺が中心になってて。新潟だと火打山とか焼山とか、あと北アルプスの一部(が新潟)。メインは火打とか焼山のライチョウの生息状況を調べているという、細々とやっている団体です。
活動には季節のリズムがあります。鳥の繁殖期は春から夏が中心で、山は冬になると雪深く近づけません。
そのため調査は春から初夏に集中します。長野さんは自分を「季節労働者」と呼んでいます。
この閑散期というか、秋から冬にかけてはせっせと海外の論文を読んで勉強したりとか、新しい解析を試みてみたりとか。そういう頭脳労働に特化して、春から初夏にかけてはフィールドワークに勤しむという、そういう季節労働者です。
なぜポッドキャストを始めたのか
ここでグッさんが番組を始めた経緯を語ります。山に深く関わるなかで、自然環境の保護や保全の活動に触れる機会があったといいます。
そこで感じたのは、このままでいいのかという疑問でした。自然の研究や保全は行政や国、大学が中心で、民間で担う場が少ないと感じたそうです。
さらに、自然を守りたいと思ったときの働き口が少ないことも気になっていました。調査系の会社も、開発のための環境調査が多いといいます。
そんな折に、社会課題にリスナーの力を借りながら取り組むポッドキャストの事例を知りました。コテンラジオやティーチャーティーチャーです。
これ社会課題、まさに自然環境なんて社会課題だし、けどこれ金にならないから誰もやらないよなって思ったところで、このやり方やったら環境保全できるんじゃないかなって思って。
長野さんはこの経緯に共感します。日本の教育は暗記型になりがちだが、社会に出れば正解のない問題に知恵を出し合うことの連続だと話します。
なんか国が言ってるからとか、お偉い先生が言ってるから、ああそうですかって鵜呑みにしちゃって、そのまま事を進めちゃうって、なんか違うよなって思ってる。
長野さんは日々の調査でも、明らかにおかしいと思うことが進んでしまう場面が多いといいます。マスコミの報道では見えない現場の現実を伝えたいと語ります。
第六回目の大量絶滅時代とは何か
第一回のテーマは、いま地球で進んでいる大量絶滅です。長野さんによると、現代は地球の歴史で第六回目の大量絶滅の時代と言われています。
地球には過去に五回、生物が一気に絶滅した時代がありました。直前の第五回はおよそ六千六百万年前で、恐竜が絶滅した時代です。
その原因は、メキシコのユカタン半島付近に落ちた大きな隕石だとされています。塵が太陽光を遮り、植物が光合成できなくなったといいます。
その塵によって太陽の光エネルギーが遮られちゃって、植物は光合成できません。それに栄養源を依存している動物のものも栄養が取れなくなりという、負の影響があって。
一方で、今の第六回目は隕石ではなく人間活動が原因だと長野さんは指摘します。
生息地の破壊、地球温暖化、外来種の持ち込みなどが要因です。日本では里山に人の手が入らなくなったことも一因だといいます。
逆にってことですか、手が入らなくて。
人が手を入れて関わってきた環境で独特の進化を遂げた生き物も多く、手が入らないことで逆に絶滅の危機に瀕している生き物がいると長野さんは説明します。
もう一つの特徴が、絶滅のスピードです。恐竜の時代と比べても、いまはずっと速い勢いで生物が絶滅していると言われています。
もし仮に一年に一種類だけだった、第五回では。だったのが、今だともし一種類だったとしても、今だと百とか千とか、一年で絶滅してしまってるかもしれないと。めちゃくちゃやばいじゃないですか。
隕石の落下による塵で太陽光が遮られ、恐竜などが絶滅
生息地破壊、地球温暖化、外来種など、原因はすべて人間活動
身近な鳥にも表れる絶滅のサイン
絶滅は小さく目立たない生き物だけの話ではありません。長野さんは身近な鳥の例を挙げます。
スズメは全国的に数を減らしています。北海道のシマアジという美しい鳥は、日本ではほぼ絶滅したのではないかと言われるほどだそうです。
長野さんは秋の渡りの時期に、かすみ網で鳥を捕まえ、足環をつけて放す調査もしています。かつて大量に取れたカシラダカが、今はほとんど取れないといいます。
数減らしたでいいんですかね。例えば温暖化の影響でルートが変わっただけみたいな。
カシラダカはヨーロッパからユーラシア大陸に広く分布しますが、世界中の調査データを分析すると全世界的に激減しており、それが国際誌の論文として発表されていると長野さんは答えます。
名前を知られた鳥でさえこの状況です。まだ名前もついていない小さな昆虫やキノコなどは、記載される前に絶滅している可能性もあると長野さんは話します。
ライチョウはなぜ温暖化に弱いのか
話はライチョウに戻ります。ライチョウは周北極要素動物と呼ばれ、北極を取り巻く寒い地域に適応した鳥です。
ライチョウが日本に来たのは、最終氷期と呼ばれる氷河期です。海水面が今より百三十メートル以上低く、日本とユーラシア大陸が陸橋でつながっていた時代です。
日本とユーラシア大陸が、陸の橋って書いて陸橋っていうんだけど、地続きになってたところがあってさ。動物とか植物とかが移動分散できるような土地があった。
氷河期が終わって温暖化が進むと海水面が上がり、日本海で大陸と隔てられました。ライチョウは日本に取り残されます。
寒いところを好むライチョウが行き着いたのは、三千メートル級の高い山でした。高山植物とともに、日本のアルプスの高山帯に取り残されたのが通説です。
生息適地が0.4%にまで減るという予測
いま温暖化が進み、これまで高山帯に進出できなかった樹木や草本が山の上へ分布を広げていることがわかってきました。
そうなると、ライチョウに適した生息地がなくなるおそれがあります。この心配を裏づける推定があります。
2019年に森林総合研究所の研究者たちが、あと百年後の2080年から2100年にかけて、ライチョウの生息分布域がどれだけ減るかを推定しました。
前提として、今のライチョウの生息環境が最も適しているとし、今の温暖化のスピードと今の生息環境が続くと仮定した場合の推定です。
ライチョウの生息できる生息適地というのは、なんとですよ、今あるエリアのなんと0.4%にまで減ると。0.4%減少ではなくて、0.4%にまで減るという推測結果を出してます。
つまり、今ライチョウが生息している環境の99.6%が失われるという予測です。グッさんは、個体数も同じように大きく減る可能性があるのではと問いかけます。
長野さんは、数が少なくなるほど偶然に左右されやすくなると説明します。たとえば生まれた子がすべてオスだった場合、卵が産まれず一気に個体群が絶滅することもあるといいます。
だからこそ、この番組で最初にライチョウを取り上げたと長野さんは語ります。温暖化の影響を最も受けやすい、わかりやすい生き物だからです。
まとめ
第一回は、二人の自己紹介と番組を始めた経緯から、現代が第六回目の大量絶滅の時代であること、そして温暖化の影響を最も受けやすい生き物としてのライチョウの現状まで語られました。次回はライチョウがどんな生き物かを紹介する予定です。
- 番組は山好きのサラリーマンのグッさんと、新潟ライチョウ研究会代表の長野さんの二人で、環境保全という社会課題に一石を投じるために始まりました。
- 現代は地球の歴史で第六回目の大量絶滅の時代とされ、その原因はすべて人間活動に由来しています。
- 絶滅のスピードは過去の時代よりも速く、スズメやカシラダカなど身近な鳥にも減少のサインが表れています。
- 寒冷地に適応したライチョウは氷河期に日本へ渡り、温暖化で高山帯に取り残された経緯があります。
- 2019年の研究では、百年後にライチョウの生息適地が今の0.4%にまで減る可能性が示されています。
