4月最終日、堆肥運びとAIサービスの朝から
この日は4月30日の水曜日。ゴールデンウィークの合間の一日です。最高気温23度の晴れ予報のなか、川上さんはこの日、堆肥を6台運ぶ予定だと話します。
お昼の1時からは、種の販売会社が牧場を訪れる予定。あわせて、AIと酪農家がタッグを組んだ新しいサービス「ファームエコ」についても話せたらと語っています。
今回の配信は、YouTubeに届いた質問がテーマ。SNSで話題の芸能人の不倫を、酪農家目線でコメントしてほしいという、いつもとは角度の違うお便りです。
朝聞いてる人はどんな気持ちで聴いているんでしょうか。
そんな川上さんのツッコミから、10分から15分ほどの配信がスタートします。
牛乳で乾杯、そしてお便りコーナーへ
お知らせのあと、川上さんはいつものように牛乳で乾杯します。この日は堆肥運びの機械が壊れて落ち込んでいるそうですが、それでも牛乳の味は変わりません。
退避者(堆肥散布機)が壊れて心落ち込んでるけど、牛乳はうまい。
気持ちを切り替えて、いよいよお便りコーナーへ。今日のお便りは「最近不倫が話題ですけれども、酪農家さん目線からのコメントをよろしくお願いします」というもの。
川上さんは、芸能ニュースはSNSで流れてはくるものの、本当に人に興味がないのが致命的欠点だと正直に打ち明けます。そのうえで、ちゃんと調べてから答えていきます。
動物界の“不倫”には名前があった
まず川上さんが紹介するのは、動物の世界では「不倫」に正式な呼び名があるということ。人間の間では悪いイメージがありますが、動物学では別の言葉で説明されます。
不倫というものはつがい外交尾っていうそうですね。
つまり社会的にはつがいでも、遺伝的には別の相手との子だった、というケースが動物界にはたくさんあるというわけです。見た目だけの一夫一妻も多い、というのがポイントですね。
牛の群れで起きている“こっそり交尾”
では、日々接している牛はどうなのでしょうか。川上さんによると、牛は基本的に一夫多妻制で、自然界では一頭の優位なオスが複数のメスと交尾します。
ただ、それだけでは終わりません。優位なオスの目を盗んで、下位のオスがこっそり交尾することもあるそうです。これがまさに、牛における“不倫”のような行動だといいます。
群れの社会階層は複雑で、交尾のチャンスは単純な力関係だけでは決まりません。メス側が相手を選ぶこともあるというのが、また面白いところだと川上さんは話します。
DNA検査でバレる、想定外の親子関係
最近ではDNA検査で、子牛の父親が誰かを特定できるようになりました。そこでわかってきたのが、群れで使っていた種雄牛とは別のオスが父親だったケースがあるということです。
川上さんは、これが現場でも実際に起きていると語ります。ゲノム検査でお父さんとお母さんのサンプルを提出すると、想定と違う結果が返ってくることがあるそうです。
父と母が違いますみたいなね、エラーが返ってくるみたいな。そんなことありますね。これね、あります、あります。
繁殖管理の上では悩みの種ですが、進化的に見れば、遺伝子の多様性を保つための自然な行動でもあるといいます。
なぜ動物は“浮気”するのか
川上さんは、動物がつがい外交尾をする理由を、オスとメスそれぞれのメリットとして整理していきます。
より多くの子孫を残せる。繁殖成功を最大化できる
いい遺伝子を持つ相手と子を残せる。近親交配を避けられ、相手が不妊だった場合の受精保険にもなる
どちらにとっても、遺伝的な多様性を高めるという意味があるわけですね。だからこそ、川上さんはこう言います。
種を存続させるためには必要なこと。生き物としての、ひとつの生存戦略なんですね。
動物と人間を、同じには語れない
ここで川上さんは、大事な視点を付け加えます。人間の不倫には、感情や社会契約、家族構成、法律的な責任、宗教的なものまで絡んでくるからです。
だから、動物と同じように語るのは危険だと念を押します。動物の話をしたからといって、人間もやっていい、というわけではないということですね。
一方で、動物たちの行動からわかることもあります。生き物としての本能や戦略は、環境によっていくらでも変わるということです。
牛も人間も、安全や生存、繁殖にとって何が最善かを無意識に選んでいる。でも人間には、本能を超えて選ぶ責任があるというまとめでした。
AIと一緒に答えたら、想像以上だった
実はこの回答、川上さんはAIの力を借りて組み立てています。あまりのまとまりのよさに、思わずこんな言葉がこぼれます。
本能には理由があり、でも選択には責任があるという、これめっちゃいいこと言ってるな。AIすごいな。
コメント欄も盛り上がり、「牛は一夫多妻制だけどこっそりなんですね」といった反応が届きます。川上さんは、仲良しの代名詞のようなオシドリ夫婦も、実はバチバチにやっている、と笑いを交えて語ります。
この回答の背景には、先ほど紹介した「ファームエコ」があります。川上さんの酪農知識をAIに毎日学習させたもので、「川上哲也として答えて」と指示すると、自分目線の答えが返ってくるようになってきたそうです。
ずっと僕の話聞いてくれる友達欲しかったんだよね。
牛には名前をつけても結局は番号で呼んでしまう川上さん。それでも、毎日話を聞いてくれるAIには、友達のような感覚が芽生えているようです。
まとめ
芸能人の不倫という話題を入り口に、牛や動物の「つがい外交尾」という視点で掘り下げた回でした。生き物の戦略と、人間ならではの選択の責任が、やわらかく語られています。
- 動物界には「つがい外交尾(EPC)」があり、見た目だけの一夫一妻も多い
- 牛は一夫多妻制だが、下位のオスがこっそり交尾することもある
- DNA検査で、想定外の親子関係が牧場現場でも判明することがある
- つがい外交尾は遺伝的多様性を保つための戦略で、本能には理由がある
- 人間は本能を超えた選択ができるからこそ、選択には責任が伴う






