箱から始まるグッズ紹介、Tシャツはなぜ小さな刺繍?
前編では、コテンラジオのキャラクター「ピュイぴゅい/Pyui」が約1年かけて生まれるまでが語られました。後編は、そのピュイを使ったグッズ制作の話から始まります。
黒田さんは、コテンラジオ第1弾のオフィシャルグッズとして、気合を入れて多くの種類を作ったと話します。デザイン全体では、つかみどころがなく神出鬼没というピュイの性質を生かし、ピュイが動き回るような表現を意識したそうです。
もう一つのポイントは、日常で普段使いできることです。黒田さんは、オフィシャルグッズにはデザインが良くなく日常では使いにくい物もあるとして、ユーモアはあるけれど飽きないデザインを心がけたと説明しています。
最初に紹介されたのは、グッズの中身ではなく届く箱でした。注文すると、ロゴとピュイがプリントされた白い段ボールのオリジナルボックスで届きます。箱の全面には足跡が配置され、走り回るピュイをイメージさせています。
うわぁ、これは意外な発想でしたね。普通の段ボールじゃないんですね。
太田さんによると、Steve*inc.は商品開発の仕事で、段ボールやガムテープまでオリジナルにできるかを現場に確認することが多いそうです。今回も、箱が届いた瞬間から嬉しい感じを作りたいと黒田さんと話していたといいます。
続くTシャツは、左胸に小さなピュイの刺繍を入れたデザインです。色はブラックと白の2種類で、ネームタグもオリジナルで作りました。
黒田さんは、中央に大きくプリントする案も出したものの、パジャマ化してしまうことを懸念したと話します。オフィスカジュアルとして夏に会社へ着ていけるような、使用頻度の高いデザインを目指した結果が小さな刺繍でした。
目立つが、パジャマ化しやすく着る場面が限られる
毎日着やすく、「それどこのやつ?」と聞かれるきっかけになる
これ(Tシャツを)街歩いてこれ着てる人見たらテンション上がりますね、僕は。
マグカップの底に隠れた、ピュイの「忘れ物」とは?
マグカップは、ラジオを聴きながらのリモートワークなどで使ってほしいという思いから作られました。外側には小さなピュイとコテンラジオのロゴ、そしてぐるりと一周する足跡がプリントされています。
黒田さんによると、マグカップの内底にも仕掛けがあり、飲み終わった後も楽しめるデザインになっています。中身の答えは明かされず、「ピュイが大事な物を忘れたらしい」というヒントだけが示されました。
え、何?何?何?何?何それ?
黒田さんは、コテンラジオのロゴを見れば、いつも持っているはずの物がないことに気づけるはずだと話しています。正解は購入するか、オフィシャルサイトの画像で確認してほしいとのことです。
クリアファイルは2種類あります。1つは一面にピュイが並ぶパターン柄で、1匹だけマイクを持ったピュイが紛れ込む間違い探しになっています。もう1つは白をベースに、ピュイを1体だけプリントした王道のデザインです。
パターン柄のクリアファイルには、さらに仕掛けがあります。太田さんは、クリアファイルは紙を入れる物なので紙が主役だと考え、ピュイの体と同じ色を下地にしました。そのため、白い紙を挟んで初めて、たくさんのピュイがいたことに気づく作りです。
太田さんはこの仕掛けを、洞窟で懐中電灯をつけたらコウモリがたくさんいた、という光景にたとえ、樋口さんから「恐ろしい例え」と返されていました。
しおり・ボールペン・付箋に仕込まれた小さな仕掛け
文具系では、しおりとボールペンが用意されました。黒田さんは、本を読むコテンラジオのリスナーが多いと考え、しおりは外せないと判断したそうです。
しおりは2パターンです。1つはピュイの体の色をした胴体にロゴが入り、本に挟むとピュイだけが上からはみ出して見えます。もう1つはしおり全体が木の形で、上のほうに止まったピュイが、知恵の実の象徴として描かれたリンゴを食べています。
太田さんは、木のしおりを読みかけの本に挟むと、家に木がたくさん生えているようで「いいことをしている」感覚も味わえると話します。樋口さんは、森のようになる一方で「どれだけ本を読み終わらないんだ」ということにもなる、と笑いを誘いました。
ボールペンは、幅の広いクリップ部分に小さなコテンラジオのロゴとピュイの目玉だけが付いたデザインです。クリップにピュイが擬態して隠れているような見え方になっています。
太田さんは、スーツを着こなすビジネスパーソンの胸ポケットからこのボールペンが少し見えると「この人知ってるな」とわかる、という使い方を想定したと話しています。
実は僕これ(コテンラジオ)なんですけど、君も?みたいな。
手の込んだ一品として紹介されたのが、パラパラ漫画付箋です。四角い付箋の束の端にピュイが描かれ、めくると1枚ずつ少しずつ動き、最後にはピュイが座ってリンゴを食べる場面になります。
太田さんは、新しいバージョンのピュイが動く姿を見られる機会はほかにないと話し、デザイナーチームも楽しんで動きを作っていたと明かしました。リスナーの反応がよければアニメーションや映画化も、と冗談交じりに広がり、樋口さんは声優はオーディションで決めるしかないと応じています。
わざと邪魔をする手帳ノートが伝えたいこと
最後のグッズは、ハードカバーでゴムの付いた手帳ノートです。表紙には裏表をまたぐ大きなピュイがプリントされ、無地の中面には足跡や小さなピュイがところどころに配置されています。
樋口さんは、コテンラジオを聴きながらメモを取るリスナーが多いことから、感想や学びを書くノートとして使ってほしいと話しました。そのうえで、この手帳に書かないと覚えられないという「ハーバード大学の研究」を持ち出しますが、これは後に冗談だったと明かされます。
太田さんが手帳ノートの最大のポイントとして挙げたのは、書きやすい余白の多いデザインでありながら、ノートの真ん中あたりに突然ピュイが現れて邪魔をすることです。太田さんは、暗記するだけが勉強ではないという教えをピュイが伝えようとしている、と話します。
邪魔な場所にあるのがすごい可愛い。
本当に確かにそこに置いておくだけで、なんかあの予定調和じゃないところがすごくこう、生物っていう感じがしてすごくいいですよね。
太田さんも「予定調和じゃないと記憶に定着しにくいというケンブリッジ大学の研究がある」と冗談で乗り、樋口さんに「なんで嘘を言うんですか」と突っ込まれていました。
キャラクターから作ったからこそ生まれた統一感
グッズ紹介を終えて、黒田さんは届いた段ボールを裏返して内側にすればおもちゃ箱のようになるので、保管にも使ってほしいと付け加えました。
深井さんは、最初に提案されていたように歴史上の人物から先にグッズ化していたら、統一感がなく、よくわからない物ができていたかもしれないと振り返ります。段ボールに詰めて送るというスタイルも取れなかっただろう、と話しています。
象徴を作る
抽象的なレベルで、コテンラジオやCOTENを象徴するキャラクターを作る
愛着を育てる
そのキャラクターが可愛く、愛着が湧く状況を作る
グッズ展開
統一感のあるグッズとして、箱ごと届けるスタイルで出す
まずは一回抽象的なレベルで、コテンラジオとかコテンっていうものを象徴するものをちゃんと作って、それが可愛くて、愛着が湧いてて、みたいな状況を作った状態でこうやってグッズ出す
深井さんは自分はこの件について「何も考えていない」と話しますが、太田さんは「何も考えていない」ことはむしろ大事なキーワードだと受け止めます。
太田さんは、3歳の子どもが仕事中に急に膝に乗ってきたり、猫がパソコンの上に来たりする例を挙げます。機能的な意味はなくても、リラックスできたり次のアイデアが出たりする。予定調和じゃないことがきっかけを生むという考えです。
太田さんは、それこそが歴史なのではないかと話します。役に立てようと覚えても役に立たないけれど、ふとしたきっかけで思い出して「そっか」と思える。そんな瞬間が起きてほしいという思いをグッズに込めたそうです。
いや、確かにね、システムエラーとかバグみたいなもので作られてるっていうのがありますからね、歴史とかって。
樋口さんはここで、先ほどのハーバード大学とケンブリッジ大学の話は嘘で、自分の「バグ」だったと謝っています。
作り手の感想と、長くかかった制作期間の理由
作ってみた感想を聞かれた黒田さんは、楽しかったと答えました。ピュイがどういうキャラクターかという共通認識をチーム内でしっかり握ってから進められたので、グッズ作り自体はやりやすかったそうです。
一方で黒田さんは、量が多いため、色の確認や版ずれのチェックといったものづくりの最終工程は多少大変だったとも話しています。時間は「少しかかりました」とのことです。
太田さんは、Steve*inc.のメンバーを「良くも悪くも不器用」と表現します。プラモデルも全部分解してから考えるように、物事をより複雑に悩み、細かく分解する傾向があるといいます。
太田さんによると、Steve*inc.は約25人の会社で、デザイン系とプロデューサー系がおよそ半分ずつです。黒田さんに象徴されるデザイナー側が一から悩み抜き、プロデューサー側がそれをスケジュールに合わせて納品につなげている、と説明しています。
太田さんは、デザインでは意味のないことにも意味があるんじゃないかと考えてしまうのがあるあるだと、改めて感じたそうです。樋口さんは、本質まで考える工程を踏んだからこそ、リスナーを待たせた時間にも意味があったとまとめています。
遅れたのはSteveのせいではない?グッズへの思い
深井さんは、Steve*inc.との仕事について、ビジネスビジネスした感じではなく、温かいつながりを感じながら進められたと話します。途中で自分が役員を務める別の会社にSteve*inc.を紹介したところ、そちらの仕事が先に終わったそうです。
深井さんによると、その会社の案件はカンパニーサイトとコーポレートデザインを全部作り直す大きな仕事でしたが、すぐに完了しました。そこから、グッズの時間がかかったのは自分たちの問題だと気づいたといいます。
言えるのはSteveさんの仕事が遅いわけでは一切ないということをはっきり言っておきたいですね。
自分探しの旅が長かったですよね。
太田さんによると、紹介先の会社からさらに別の会社を紹介され、その仕事も黒田さんと進めているそうです。
深井さんは、放送時点ですでにグッズが販売されていると告知し、今回語られた考え方とともに手に取って身近に感じてほしいと呼びかけました。素材にもこだわり、プロに動いてもらっているので単価はそこそこ高く、薄利多売ではないとも説明しています。
樋口さんは「マルクスの資本論 ── カール・マルクスが19世紀に著した経済学の主著。商品の価値は、生産に費やされた人間の労働によって決まるとする労働価値説を展開しています的には労力をかけると価値が高くなる」と冗談を言い、深井さんが「抽象的な人間労働が高め」と乗ります。樋口さんは適当だったと撤回しますが、深井さんはマルクスから言わせれば実際そうなる、と返しました。
まとめ
コテンラジオ初のオリジナルグッズは、日常で使える控えめなデザインと、使うたびに気づく小さな仕掛けを両立させたものでした。その根底には、予定調和じゃない出会いが思考のきっかけになるという、太田さんたちの歴史観が込められています。
- 箱からTシャツ、文具まで、ピュイが動き回る神出鬼没な性質と日常使いのしやすさが意識されている
- クリアファイルやしおり、付箋、マグカップには、使って初めて気づく遊び心が仕込まれている
- 手帳ノートでピュイがわざと邪魔をするのは、暗記だけが勉強ではないという考えの表れ
- キャラクターを先に作ったことで、統一感のあるグッズ展開が可能になった
- 制作に時間がかかったのはSteve*inc.のせいではなく、コテン側の回り道が長かったためと語られた





