テストは多いほど安心なのか?
たいちさんによると、AIにアプリを作らせると、AIはアプリのテストも大量に書くといいます。バグを直せば再発防止のテストを、機能を修正すれば新しい観点のテストを足していくため、AIがコードを書くたびにテストはどんどん増えていきます。
では、テストは多ければ多いほどよく、全部通っていれば安心なのでしょうか。たいちさんの答えは「ノー」です。
テストにおいて最も重要な点は、機能が壊れた時に気づけるかです。
この点(壊れた時に気づけるか)さえ守れていれば、テストが多かろうが少なかろうがどちらでも良いです。
たいちさんが紹介するテスト監査スキルは、壊れた時に気づけるかというテストの価値を最大限重視して設計されています。無駄なテストは削り、削ると壊れた時に見逃してしまうテストは残す、という方針です。
OpenClaw製作者が作ったスキルで何が起きたか
テスト監査スキルの製作者は、現在はOpenAIの開発チームに参加しているピーター・シュタインバーガーさんです。シュタインバーガーさんは、半年ほど前にOpenClawの開発者として一躍有名になった人物だと紹介されています。
たいちさんの説明では、OpenClawは、自分の仕事を丸ごと任せられる万能な秘書のようなAIエージェント ── 人の指示を受けて、調べものや操作などの複数の作業を自律的に進めるAIの仕組み。単に質問に答えるだけでなく、道具を使いながら仕事をこなす点が特徴ですです。半年前には、OpenClawを常時稼働させるためにMac miniを買う人が続出し、品薄になったほどだったといいます。
そんな彼(シュタインバーガーさん)が作ったテストスキルなら実践的なものに違いないと思い、僕も試してみることにしました。
たいちさんが自分のプロジェクトをこのスキルで監査させたところ、テストから無駄なコードが約3割削られました。しかも闇雲に削ったのではなく、実際に本番のコードにバグを埋め込んで検証し、そのテストがないとバグを見逃すものはきちんと残したそうです。
テストの削減が効くのは、テストが多いほど管理コストがかかるからです。たいちさんは、テストが多いと実行に時間がかかること、AIが少しコードを直すだけで関連テストをすべて見直す必要が出てトークン消費も増えることを挙げています。
コードを書くたびにテストが追加される
バグ修正や機能修正のたびに、AIが新しいテストを足していく
テストの総量が膨らむ
テストの実行に時間がかかるようになる
小さな修正でも見直しが広がる
関連するテストをすべて見直す必要があり、トークン消費が増える
テスト監査スキルはどんな手順で選別するのか
テスト監査スキルの仕組みとして、たいちさんはまず「台帳」を用意する点を挙げます。すべてのテストに対して、残す・直す・まとめる・消すのいずれかのラベルと、その根拠を1行ずつ書いていきます。
そのうえで、この台帳に対してさまざまな観点から順序立てて、そのテストが機能の壊れた時に本当に気づくきっかけになるかを検証していきます。
詳細な手順はかなり専門的なので、詳しく知りたい場合はAIにスキルの内容を直接聞くのが早い、とたいちさんは話しています。テスト監査スキルはGitHub ── ソースコードを公開・共有するためのサービス。多くのオープンソースのツールや設定がここで配布されていますで公開されていて、誰でも使うことができます。
OpenClaw専用のスキルを自分のプロジェクトに導入するには?
ただし、このテスト監査スキルはOpenClaw専用に作られているため、個人で使うときは自分のプロジェクト用に最適化する必要があります。
たいちさんは、スキルの導入と最適化をClaude Code ── Anthropicが提供する、ターミナル上でコードの読み書きや実行を任せられるAIコーディングツールですに任せました。スキルのリンクを渡し、次のような指示を出したといいます。
この指示だけでテスト監査スキルはすぐに使える状態になり、実際に使ってみると、たいちさんのテストコードは約30%削減されたそうです。
導入後はどう使う?自動呼び出しと「刈り込み」
導入したテスト監査スキルは、必要に応じて自動で呼ばれるようになっています。AIがテストコードを書くときや、「このテストは必要ですか」といったテストに関する質問をしたときに、スキルが自動で使われます。
そのため、スキル導入後に書かれるテストは、すべてテスト監査スキルで最適化された状態になるとたいちさんは説明しています。
既存のテストを直すときは、「◯◯のテストを刈り込んで」と指示すると、特定の領域のテストを丸ごと監査して直してくれます。データベース、フロントエンド(画面)、認証認可といった領域を、1回の監査で1つずつまとめて見てくれる形です。
複数の領域を一気に監査させないほうがいい理由
たいちさんは、フロントエンド、データベース、認証認可など複数の領域をまとめて監査させるのはおすすめしないと話します。
複数の領域を複数の観点で一気に見るのはAIでも難しく、ミスにつながる可能性があります。
もう1つの理由は、コンテキストウィンドウ ── AIが一度に扱える入力と会話の分量の上限。上限に近づくと、前の情報を正確に踏まえにくくなりますがいっぱいになることです。たいちさんはこれを「AIの記憶領域」と言い換え、こちらもミスの原因になると説明しています。
たいちさんの締めくくりの呼びかけも、まず1つの領域のテストを刈り込むことでした。無駄なテストを大量に削除して運用コストを減らし、本当に必要なテストだけを残してくれるはずだ、と話しています。
まとめ
AIはコードを書くたびにテストを増やしがちですが、テストの価値は数ではなく「壊れた時に気づけるか」にあります。ピーター・シュタインバーガーさんのテスト監査スキルは、この観点でテストを選別し、たいちさんのプロジェクトではテストコードを約30%削減しました。
- テストは多すぎると実行時間やトークン消費などの管理コストがかさみ、少なすぎると壊れた時に見逃す
- テスト監査スキルは台帳で全テストに「残す・直す・まとめる・消す」を付け、バグを埋め込んで検証する
- 導入はスキルのリンクをAIに渡し、自分のプロジェクト向けの最適化と日本語化を頼むだけ
- 導入後は新しいテストに自動で適用され、既存テストは「◯◯のテストを刈り込んで」で見直せる
- 既存テストの監査は、1つの領域ずつ行うのがミスを防ぐコツ





