「途中までは面白かった」ドラマは、なぜ謎解きで冷めたのか
しもちゃんは、いなけんに薦められて見ていたドラマ「Tシャツが乾くまで」が最終回を迎えたことを受け、冗談半分・本音半分で辛口の感想を切り出します。
途中まで面白かったですよ。途中まではね。
しもちゃんが「Tシャツが乾くまで」に冷めたきっかけは、登場人物が帰ってこない理由が失踪癖という症状で説明されたことでした。
全てのロジックの括り方が雑すぎる。そういう症状とか病的なものにした瞬間に、全部の因果がそこに内包されるじゃないですか。
薦めた側のいなけんも、自分が薦めたのは謎が解け始める前の段階で、その後の展開には同じ感想を持っていると認めています。
しもちゃんの説明では、「なんで帰ってこないのか」がわからない予測不可能な状態こそが面白さでした。ところが失踪癖という一言で説明がつくと、どんなイレギュラーも「どうせ失踪癖だから」で片づき、次の展開がすべて予測できてしまいます。
なぜ帰ってこないのかわからず、何が起きるか予測できない状態を楽しめていた
失踪癖という説明がつき、何が起きても「失踪癖だから」で予測できてしまう
いなけんが「ワンピースもワンピースの正体が明かされたらどうなるかわからない」と返すと、しもちゃんはワンピースも覚醒などの設定を継ぎ足して物語を伸ばしている面があると話しました。
VIVANTの「AIハヤト」は、物語の何を壊したのか
しもちゃんは、放送中のVIVANT第2期も見なくなっていると明かします。VIVANTにも「Tシャツが乾くまで」と似た現象が起きているというのが、しもちゃんの見立てです。
いなけんはVIVANTのシーズン1をほとんど見ておらず、シーズン2開始に合わせて1話を見たものの長さに挫折し、シーズン2の初回はリアルタイムで見たものの、今は追っていないそうです。
しもちゃんが問題にしたのは、VIVANT第2期に登場するAIハヤトの扱いです。以前は海外ロケで大規模に撮影していたのに、今は一室でAIハヤトに頼んでほぼ完結する場面が多いと感じています。
とりあえずもうAI通すから。もうほんまに。一番あかん仕事の仕方してる。
いなけんは、VIVANTの描き方がAIとの関わり方を悪い意味で世間に浸透させているのではないかと受けます。しもちゃんはさらに、AIが何をどこまでできるのかが曖昧なまま万能に使われ、脚本の穴を埋める道具になっていると指摘しました。
犯人の居場所をなんかようわからへんロジックでペペペって特定したりとか、なんかね、もう雑。ほんまに雑。
いなけんはこれを、1話ごとに山を作ることが主眼になっていて、全体を通した1本の芯が薄いという指摘だと整理しています。
ジブリやハンターハンターにあって、VIVANTに足りないもの
しもちゃんは、VIVANTとの対比としてジブリ作品を挙げます。ジブリは世界観が統一されていて、細かいロジックまで世界の前提に沿って通っているというのが理由です。
しもちゃんによれば、VIVANTも「AIでこう解析した」という仕組みが世界の前提から説明できれば納得できます。しかし、諜報機関がある世界という舞台の前提が、ときどき外れてしまうと感じています。
しもちゃんはハンターハンターの念能力も例に出します。強化系なら得意な能力があるという、最初に示された念の前提が壊される瞬間が多いと、物語の説得力がなくなるという話です。
だから面白くない。「なんやねん、なんでもありやんけ」ってなる。
面白くないのに、なぜVIVANTは流行るのか?
ここでいなけんは話を裏返します。しもちゃんにとって面白くない作品でも、VIVANTのように面白いという声がある以上、マスに受けている理由があるはずだという問いです。
いなけんは、刺激を求める視聴者に向けたドパガキ ── ドーパミンを求める子どもを指すネット上の俗語。短い刺激や快感を次々に求める人を揶揄的に表す言い方です向けの作りがあるのかも含めて、しもちゃんに考察を求めました。
それはめっちゃシンプルな話で、他に代替する面白いものがないからじゃないですか、人生に。
しもちゃんの説明は構造的です。映画でもドラマでも絵を描くことでも、人は自分が取れる選択肢の中で一番楽しいものを選んでいるので、VIVANTを見る人にとってはそれに勝るものがないだけだといいます。
そのうえでしもちゃんは、VIVANTには1話ごとに山が多く、その間をAIで効率よくつなぐ作りがあると補足しました。さらに、視聴率が話題になる作品は、会社などで共有しやすい話のネタになるという観点も挙げています。
自分がいいじゃなくて、みんながいいと思ったからそれを見るみたいな。
いなけんが「それは今に始まったことではないのでは」と返すと、しもちゃんは、自分がドラマの良し悪しを判別できるようになった時期と重なっているから強く感じるのかもしれない、と認めています。
『ラヴ上等』が2話で止まったのは、作るほうが面白いから?
いなけんは話題を変え、しもちゃんに薦められた恋愛リアリティ番組『ラヴ上等』のシーズン2が2話目の途中で止まっていると明かします。シーズン1は配信直後に見ていたそうです。
いなけんは、『ラヴ上等』が止まった理由を、しもちゃんの「選択肢の比較」の話に当てはめます。『ラヴ上等』より面白いものが他にあるから、時間を割けないという整理です。
いなけんの場合、その「他に面白いもの」はAIでした。ほどほどにしていたゲームもしなくなり、空き時間はAIを触っているといいます。
今何にドーパミンが出てるかというとさ、逆にそのコンテンツを作る楽しみに何か脳が発火してるというかさ。
いなけんは、絵が下手でもAIでそれっぽい絵が描けることを例に挙げ、コンテンツは消費するより作る側のほうが面白いと感じています。実際には、自分の生活を便利にするアプリや、本質ラジオのウェブサイトを作っているそうです。
VIVANTや『ラヴ上等』など、与えられたコンテンツを見る
AIを使ってアプリやウェブサイト、絵などを作る
AIを使う欲は、眼鏡やチートと同じなのか?
しもちゃんは、いなけんとは逆に、AIで何かを作る欲がまったくなくなったと話します。そこから二人の話は「欲とは何か」という定義の確認に入ります。
しもちゃんは辞書的な定義を挙げつつも、言葉の定義より構造で見るべきだと話し、歯磨きのような習慣にも、それを続けようとする欲がわずかでも働いているはずだと主張しました。
いなけんは、自分が言いたいのはワクワク感のようなものだと整理します。一方でしもちゃんは、仕事でAIを使い、一時期は歌詞にAIで曲をつけることもしたうえで、最近は「AIゼロのほうがいい」と感じるようになったと明かしました。
いなけんは、AIを使う感覚を眼鏡にたとえます。眼鏡の発明で視力の壁が越えられたように、AIによって「本当はやりたかった」ことが拡張されるという感覚です。
いなけんはさらに、ゲームのチートツールであるプロアクションリプレイ ── ゲームのデータを書き換えて、所持金を最大にするなどの改造ができる周辺機器。いなけんの世代で流行ったといいますにもたとえ、できなかったことにバフをかける感覚だと説明しました。
自分の頭にあるものを、具現化するのにワクワクしてて、それを最もスピーディーにやる手立てが、AIの進化によってできるようになった。
しもちゃんは、感覚としてはわからないとしつつ、いなけんの話を「自分がしたいことを実現するための万能な道具として使っている」とまとめています。
AIの提案より強いのは、一次情報を持つ現場
しもちゃんは、特に思考面では、結局自分で答えを出したほうが良いことが多いと感じています。AIによる効率化は、ワークフローを動かす部分にとどまるのではないかという見方です。
いなけんも、2026年時点ではAIの提案は味付け程度だと同意します。ただしいなけんが「もっと進化したらわからない」と言うのに対し、しもちゃんは、客側も同じものを出せるようになり情報の非対称性がなくなるので、進化してもAI任せの提案は通用しないと返しました。
しもちゃんは、一次情報のかたまりである製造業のような現場こそ、AIを使えば化けると見ています。一方で、ノウハウだけを持つ支援会社は、ノウハウの陳腐化によって相対的に弱くなっていくと考えています。
いなけんはこれを「攻略本を買っただけではゴールにたどり着かない」とたとえます。しもちゃんはさらに、ゲームと現実の違いを変数の多さで説明しました。
人が作ったもので変数が極端に少なく、ボタン操作の手順まで攻略本に書ける
関わる人が多く、変数を捉えきったころには別の変数に変わっている
しもちゃんの結論は、現場の人が前提情報を一番よく知っており、一次情報を持つ人が壁打ちして作った戦略に勝るものはない、というものです。
実家を出たい理由は「一人遊び」が好きだから
一次情報が大事だから体験をしたい、という流れから、しもちゃんは引っ越しを考えていると明かします。東京のシェアハウスには友達が住んでいて家賃は払っているものの、住んではおらず、関西で一人暮らしを始めるつもりだそうです。
しもちゃんが実家を出たい理由は、最近あらためて一人遊びが好きだと気づいたことにあります。親が設計した家の物の置き場所や生活ルールに従う以上、極端に言えば自分の家という感覚が持てないという説明です。
しもちゃんは一人暮らし、同棲、シェアハウス、実家暮らしを経験したうえで、一人で暮らしていた時が一番心地よかったといいます。自分で決めた生活ルールの土台に乗って暮らすほうが、気分が良かったそうです。
前提はやっぱり一人遊びがその根底になかったら楽しめないなってことを気づいたし、俺はやっぱり一人遊びが好きだなっていう風に気づいた。
しもちゃんによると、誰かと遊ぶこと自体が目的になると、行き先やトイレのタイミングまで相手を尊重する必要が出てきます。自分が一人で楽しんでいることを土台に誰かと一緒にやるのならOKだという考え方です。
エンディングで「今日の本質」を振られたいなけんは、ドーパミンから離れて自然の中を一人で散歩するのがいいのでは、と締めます。しもちゃんは、本編で一切触れていない話で幕を閉じると笑って回を終えました。
まとめ
謎が明かされて冷めたドラマの話から始まった今回は、予測不可能さと世界の前提の大切さ、見るより作る楽しさ、AIより一次情報の強さ、そして一人遊びを土台にした暮らし方へと、二人の本音がつながっていく回でした。
- しもちゃんは、失踪癖やAIハヤトのように「なんでも説明できる設定」が、物語の予測不可能さを奪ったと感じています
- 面白くない作品が流行る理由として、他に代わる面白いものがないことや、話題を共有しやすいことが挙げられました
- いなけんは、コンテンツを消費するよりAIで作るほうに楽しさを感じ、AIを眼鏡のような能力の拡張と捉えています
- しもちゃんは、AIでノウハウが陳腐化するほど、一次情報を持つ現場が強くなると考えています
- 一人遊びを土台にすると、人と過ごす時間も楽しめるというのが、しもちゃんの最近の気づきです





