「リスク」の正体、説明できますか?
今回の『わたあめ職人が語るには』第11回は、やってみたいことがあるのにリスクが怖くて一歩を踏み出せない人に向けた回です。テーマは「リスクは怖さじゃなくて掛け算で見る」です。
ごうさんはまず、「リスク」は仕事でも暮らしでもよく使う言葉なのに、その定義を言える人はあまりいないと指摘します。リスクを正しく把握していないと距離感を誤り、結果的に損をするケースも少なくないといいます。
じゃあそのリスクって何?って。リスクってつまりどういうこと?って聞かれた時に、意外と答えに詰まると思うんですよ。
ごうさんがこの話題を選んだのは、わたあめ職人になる前の10年間、会社の中で企業法務の仕事をしていたからです。職業柄リスクについて考える場面が多く、その中で自分なりの答えを見つけたといいます。
リスクの定義として、ごうさんはISO 31000 ── 国際標準化機構(ISO)が定めたリスクマネジメントの国際規格。業種を問わず、組織がリスクを管理するための原則や枠組みを示していますという国際規格を紹介します。そこではリスクが「目的に対する不確かさの影響」と定められています。
(定義は)聞いてわかんないし、台本で読んでいてもピンとこないんだけど、つまりどういうことかっていうと、思っていたのとずれること、これがリスクです。
ごうさんによると、リスクのずれ方を測る軸は2つあります。どれくらい起きそうかという「起こりやすさ」と、起きたときにどれくらい困るかという「影響の大きさ」です。この2つを掛け合わせたマトリックスの上で、怖いと感じているリスクがどこに位置するかを考えます。
傘を忘れて濡れることも、雷に打たれることも、同じ「リスク」という言葉に含まれますが、性質はまったく違います。ごうさんは、ここまで分解すれば、ただ怖がるだけでなく「じゃあ自分はどうするか」へ思考を進められると話します。
取る・取らないの二択ではなく、リスクのサイズを変える
ごうさんはここからを今日の本題と位置づけます。リスクを起こりやすさと影響の大きさに分けたら、次は「自分が引き受けられる大きさか」と「取った先のリターンに見合うか」のバランスで、取るかどうかを判断します。
つまり判断の基準は、怖いかどうかではなく、引き受けられるかどうかです。
ごうさんはさらに、リスクの大きさそのものは変えられると話します。影響を小さくする工夫もできるし、前もって準備することで起こりやすさを下げることもできます。
会社を辞めて、準備ゼロで起業する。あまりにも無謀
会社を続けながら、まず副業で小さく試す。目指す先は同じでも、失敗したときの影響が全然違う
リスクって取る取らないの二択じゃなくて、取れるサイズにしてから取りに行くというものなんですね。
ISO 31000にも、取っていいリスクと取ってはならないリスクを先に決めておく、という似た考え方があるといいます。ごうさんは、個人も同じように自分なりの線引きを念頭に置きながら、リスクのサイズを小さくしていくのがよいと考えています。
「何もしない」はリスクゼロなのか?
ごうさんは、怖くてリスクを取れず、結果的に何もしない人は多いと見ています。けれど、何もしないことも1つの選択であり、そこにもリスクがあると指摘します。
例として挙げるのは、「今の仕事このままでいいかな」と思いながら転職に踏み切れず、ダラダラと続けるケースです。一見リスクを取っていないように見えても、その間に時間は進み、やりたいことを試す時間は減っていきます。
会社の外で通用する力が育たないかもしれない。で、あの時やっておけばが積み重なっていくじゃないですか。
現状維持にも、起こりやすさと影響の大きさを持つリスクが含まれています。ごうさんは、やるリスクとやらないリスクを並べて比べたうえで、どちらに進むかを1つずつ決めていく必要があると話します。
転職や起業など、行動したことで思っていたのとずれる可能性
時間が進み、試す時間が減り、社外で通用する力が育たず、「あの時やっておけば」が積み重なる可能性
わたあめ職人への転身は、本当にハイリスクだったのか?
ごうさん自身は、東京で企業法務を長く続けたあと、香川県三豊市に移住し、会社を辞めて起業し、わたあめ職人になりました。そこだけを切り取れば、とても大きなリスクを取ったように見えます。
しかしごうさんの移住と起業は、実際には影響を小さくする工夫を重ねたうえでの選択だったといいます。
企業法務として僕と一緒にやりたいって言ってくれる人が5人ぐらいいる状況が保てれば、もし綿あめ職人の仕事がダメでも、5人のうち1人ぐらいは僕をまた法務として雇ってくれるんじゃないかな。
ごうさんは、事業や移住が失敗すること自体はもちろん怖いと認めます。そのうえで、怖さを消したのではなく、失敗しても受け入れられるサイズまで影響を小さくしてから、1つずつ選んできたと振り返ります。
避けるべきなのはどんなリスク?
ごうさんは注意点として、だからといって不必要に大きなリスクを取る必要はないと強調します。あくまでリスクとリターンのバランスを、自分が受け入れられるサイズで取っていく考え方です。
ごうさんが避けるべきとするのは、まず取り返しがつかない影響が出るリスクです。起こりにくくても起きたら終わりなので、影響があまりに大きいものは極力取らない方向で考えたほうがよいといいます。もう1つは、リターンが小さいのに影響が大きいリスクです。
まとめとしてごうさんは、リスクは起こりやすさと影響の大きさの掛け合わせで決まり、この2つの物差しで測れば、なんとなく怖かったものが対処可能な課題に変わると話します。何もしないなら、反対の選択と比べたうえで選ぶことも改めて確認します。
本当はね、(リスクは)遠ざけるものじゃなくて、大きさを測って手に持てるサイズにして取りに行くというものです。
店長の打診は、独立への遠回りか?
後半はお便りのコーナーです。この番組では、ごうさんがAIに質問を作らせ、匿名質問サービス「マシュマロ」に届いた人間の質問も混ぜたうえで、どちらかわからないまま答えていきます。
美容師として雇われて7年目になります。最近名指ししてくれるお客さんも増えてきたところで、オーナーから店長やらないかと言われました。いつか自分の店を持ちたいんですが、店長になるとハサミを持つ時間がかなり減りそうです。店長の経験は自分の店に生きるのか、遠回りになるのか迷っています。ゴウさんならどう考えますか?
夕方のシャンプー台 さんから
ごうさんはまず、店長の経験が自分の店に生きるかについて「生きる一択」と答えます。そのうえで、なぜ自分の店を持ちたいのかを自分の中でしっかり言語化したほうがよいと勧めます。
独立すると、それまでのお客さんを自分の店に移すのが難しいケースもあり、物件探しや工事、営業活動でハサミを持つ時間はむしろ減ります。ごうさんは、ハサミを持ちながらキャリアアップしたいなら、今の店の店長がいい塩梅になると考えます。
今店長をやった方が、この後、夕方のシャンプー台さんが取れる選択肢が増えるかなというふうに思いました。
店長をやってみて合わなければ、オーナーに相談していちスタッフに戻ることもできます。逆に今断ると、あとで店長をやりたくなったときに機会がない可能性がまあまああるというのが、ごうさんの見立てです。本編の「選択肢を残す」という考え方とも重なる答えです。
録った声は聞き返す? ボツになる味の基準は?
前回の文字起こしの回を聞いて、帰りの車でその日の仕事のことを声で録るようになりました。1週間続いたんですが、自分の声が恥ずかしくてまだ一度も聞き返していません。ゴウさんは録ったものを自分の耳で聞き返していますか?それとも文字にして読むだけですか。
帰り道の録音ボタン さんから
ごうさんは、ポッドキャストの収録はAIに編集させたあと、最初から最後まで通して聴いていると答えます。ノイズが残っていたり、カット位置がおかしかったりすることがたまにあるためです。
自分の声が恥ずかしいのはめちゃくちゃわかるけれども、なんか慣れます。
ごうさんの場合は、恥ずかしがる暇もないほど毎日収録することで慣れたといいます。ただし、仕事の内容や気づきを記録するのが目的なら、声を文字起こしして要約させ、文字で残すだけで十分だとも話します。
三豊のわたあめの新しい味ってどこでボツが決まるんですか?規格外のフルーツを使っていると面白くて、美味しくても綿あめにすると形にならない味もあるのかなと気になりました。
支度のさら さんから
ごうさんのわたあめは、果汁を絞ってわたあめ専用の飴に加工して作っています。その加工で味がぼやけてしまうものは難しいといいます。
もう1つの理由は、原料の果汁飴に最低ロット ── メーカーに製造を依頼するときに、1回で発注しなければならない最小の数量のこと。少量だけ作ることができないため、売れる見込みが立たない商品は作りにくくなりますがあることです。美味しくてもマイナーすぎる味は商品になりにくく、ごうさんは三豊近辺のキウイといちごを並べたら、キウイはいちごほど売れそうにないと例を挙げます。いつかはそうした味も作れる規模に事業を広げたいと話しています。
友人とのキッチンカー、本気度の差はどう埋める?
去年の春、友人と2人で週末だけのキッチンカーを始めました。最近、友人が平日も出したい、会社を辞めてもいいと言い出しました。自分は会社員を続けるつもりで、正直そこまでの覚悟はありません。GOさんなら一緒に始めた相手との本気度の差をどう話し合いますか。
週末の鉄板 さんから
ごうさんは、二択ではないものを二択で考えているのが間違いではないかと指摘します。平日は友人に任せ、休日は2人で、あるいは自分が出る、という形も十分ありうるといいます。
そのうえで、友人がキッチンカーをメインの仕事にしたいなら、最終決定権は友人のほうに持ってもらうのが自然だと考えています。
友人と一緒に事業を始めるのはあまりお勧めできません。なぜならこういう本気度の差っていうのが出やすい。
本人の気持ちの移り変わりに加え、ライフステージの進み方の違いで、本人の意思と関係なくずれていく状況も出てきます。ごうさんは、決定権がフィフティーフィフティーだと「次どうする?」の話すら進まない可能性があるとして、最終決定権はどちらかに寄せておくことを勧めます。
北海道から香川へ、意外だった違いとは?
北海道生まれの人が香川で綿あめ作ってるって改めて考えるとすごい移動距離ですよね。GOさん三豊に来てから北海道の感覚のままやってあれ?ってなったことありますか?
雪の匂い さんから
ごうさんは、日本で一番大きい都道府県から一番小さい都道府県への移動で、まあまあな環境の変化だと答えます。北海道生まれのごうさんが香川で「あれ?」となったのは、道の幅だったそうです。
北海道は道が広い一方、香川では「このサイズで県道や国道なんだ」というケースもあって面白いといいます。もっとも北海道でも、冬にドカ雪が降って除雪した雪を脇に寄せると、夏は広い道が実質1車線になることがあると話します。
お便りコーナーの最後には、ごうさんが「今日の回の生成された質問、今までで一番良かった」と喜ぶ場面もありました。
2026年10月31日の収録は月末だったため、人間からの質問の答え合わせも行われました。マシュマロを開いたところ、今月の人間からの質問はゼロで、これまで読んだ質問はすべてAIが作ったものだったと明かされます。
エンディングでは、前回「ポッドキャストで情報を出しまくれ」と話した件の補足もありました。ごうさんは、雑談すぎるものや挨拶だけの配信は無駄なのでやらなくていいとし、思考や思いの「原液」を出すイメージだと説明します。
喋った内容が多少綺麗に整理されてなくても、その思いだったり考えの原液さえあれば、その先AIっていう素晴らしいツールがちゃんといい感じにまとめてくれたり、整理してくれたりして、その先に広げることができるよ。
最後は告知です。11月22日(日)11時〜16時、東京・有楽町駅前広場で開かれる、瀬戸内・香川・三豊のマルシェに出店し、フルーツの味が濃いわたあめ「三豊ふわりと」の販売と試食を行います。ごうさん本人は行けず、別のスタッフが対応するそうです。
まとめ
ごうさんはリスクを「思っていたのとずれること」と捉え、起こりやすさと影響の大きさの掛け算で測ることで、漠然とした怖さを対処できる課題に変えられると語りました。自身の移住と起業も、影響を小さくする工夫を重ね、引き受けられるサイズにしてから選んできたといいます。
- リスクは「起こりやすさ×影響の大きさ」で分解すると、性質の違いが見えてくる
- 判断の基準は怖いかどうかではなく、引き受けられるか、リターンに見合うか
- リスクは二択ではなく、副業や二拠点生活のように取れるサイズにしてから取りに行ける
- 何もしないことにもリスクがあり、やるリスクとやらないリスクを比べて選ぶ
- 取り返しのつかない影響が出るリスクや、リターンが小さく影響が大きいリスクは避ける





