仕事がAIに奪われる不安に、どんな物差しを持つか
わたあめ職人が語るには第9回のテーマは、「キャリアは時代の波と時の試練のバランスで考えよう」です。ごうさんは、香川県三豊市に住んでわたあめ職人になった立場から、キャリアの考え方を話します。
ごうさんがこのテーマを選んだのは、今の仕事をこのまま続けていいのか悩む人や、自分の仕事がAIに奪われるのではと不安になる人が多いと感じているからです。そうした場面で使える、考えの物差しやコンパスのような話をしたいといいます。
今の仕事をこのまま続けていいかっていう風に悩む人、そもそもこの仕事、AIに奪われるんじゃないか、なくなるんじゃないかなと不安になる人も多いと思います。
ごうさんの話の全体像は、まず伸びている分野や業界を見て、そこで試してみることです。ただし、今の仕事や歴史の長い業界とのバランスを取りながらキャリアを作っていく、という流れになっています。
成長産業を選ぶのは、上りのエレベーターに乗ること
キャリアの方向性としてよく言われるのが、成長産業や成長分野を選ぶという考え方です。ごうさんはこの定番の話を、数字を使って説明します。
ごうさんによると、総務省の統計では、ITやソフトウェアなどの情報サービス業 ── ソフトウェア開発や情報処理、システム構築などを担う業種の区分。いわゆるIT業界の中心にあたる分野ですは年平均5.9%の成長率です。同じ期間で、不動産は0.5%の成長、建設業は0.7%の減少だったといいます。
業界ごとに成長率が違うと、同じ努力をしても、収入の伸び方が業界の勢いによって変わりやすくなります。ごうさんはこの差をエレベーターにたとえます。
上りのエレベーターで上るのを頑張るのか、下りのエレベーターに乗って登ろうとするのかみたいな。
ごうさんは、伸びている業界に身を置いて追い風に乗るほうが効率がよいと話します。新しい分野が生まれるタイミングに立ち会えるなら、そこに飛び込むのもチャンスだといいます。
新しい業界に飛び込む利点として、ごうさんは経験者の有無を挙げます。古い業界では経験者が圧倒的に強い一方で、新しい業界では周りもみんな未経験なので、頭一つ抜けるチャンスが大きいという見立てです。
その業界での経験者がめちゃくちゃ強く、未経験者は差をつけにくい
周りもみんな未経験なので、頭一つ飛び抜けるチャンスがある
こうした理由から、ごうさんは伸びている業界や新しい業界が、キャリアを積み上げて加速させる「一番王道の道」になるのではないかと考えています。
伸びる業界の「激しい波」に乗り続けられるか
成長産業にはデメリットもある、とごうさんは続けます。伸びている業界は、業界内の動きもめちゃくちゃ激しいという点です。
ごうさんが特に例に挙げるのはAIです。毎週、毎日の単位で新しい技術が登場し、昨日まで有効だったやり方が明日から役に立たなくなるような極端な例も珍しくないといいます。
昨日までは有効だったやり方も、もう明日から全く役に立たなくなるみたいな、そういう極端な例も全然珍しくない。
こうした激しい波に乗り続けることの難しさを、ごうさんはスポーツ選手の課題に重ねます。今は波に乗れていても、年齢を重ねても同じ乗り方ができるかというと、難しいのではないかという見方です。
そのため、ごうさんは、今は波に乗る働き方で大丈夫でも、どこかで違うキャリアの積み上げ方を考えるタイミングが来るはずだと話します。だからこそ、今のうちから少しずつ考えておいてもよい、という提案です。
「時の試練」とリンディ効果、長く続くものは強いのか
成長産業という攻めの要素に対して、ごうさんが天秤のもう片方に置くのが「時の試練」です。長い時間を経ても残っている過去の名作を、時の試練を経た作品と呼ぶことがあります。
ごうさんは、この考えに近い概念としてリンディ効果 ── 本や技術、アイデアなど腐らないものは、これまで存続してきた期間が長いほど、この先も長く存続する可能性が高いとする経験則ですを紹介します。長く生き残ってきた本や芸術は、最近生まれた作品や技術よりも、この先も長く続く可能性があるという考え方です。
本、映画、音楽、そういったもので時間を長く生き残ってきた。これが、じゃあ来年、再来年なくなるかっていうと、あんまりそういうことって考えにくいじゃないですか。
ごうさんは、この考え方を業界にも当てはめます。歴史の長い業界は時の試練を経てきた分野であり、成長率が低く中の波が穏やかでも、激しい分野よりは今後も続く可能性があるのではないかといいます。
そこで、波の激しい成長業界と、昔から続く業界の要素を掛け合わせ、両方のいいとこ取りをするのが、ごうさんが今回紹介する考え方です。
長く続いた業界も、技術の進化で一瞬で消える
ただし、ごうさんは歴史の長い業界にも落とし穴があると話します。長く続いた業界でも、技術の進化によって一瞬でなくなる可能性があるという点です。
ごうさんによると、作品などのコンテンツではこうした消滅は起こりにくい一方で、業界単位では起きやすくなります。例に挙がるのは紙の新聞で、ネットが広がり、みんながスマホでニュースを読むようになって発行部数が大きく減っているといいます。
ごうさんはもっと古い例として、車ができて馬車がなくなったことも挙げます。技術の発展で消えた業界の例は少なくない、という指摘です。
こうしたリスクを踏まえると、従来の業界にとどまるだけでは危うく、ある程度はその枠の外に出ざるを得ない構造があるのではないか、とごうさんは考えています。
攻め8割か守り8割か、パレートの法則で決める比率
ごうさんは、成長分野で可能性を取りに行く「攻め」と、長く続いてきた安全・安定の「守り」のどちらを主軸にするかで、キャリア戦略のプレイスタイルが決まると話します。
比率を決めるときにごうさんが使うのが、以前の回でも紹介したパレートの法則 ── 全体の成果の大部分(約8割)が、一部の要素(約2割)から生まれるという経験則。「80対20の法則」とも呼ばれます、いわゆる2対8の法則です。
攻め8割・守り2割。攻めながらも万一に備える
守り8割・攻め2割。守りながらもワンチャン大きく跳ねる
ポイントは、10対0ではなく8対2で要素を混ぜることです。そうすることで、リスクとリターンのいい塩梅が取れていくのではないか、とごうさんは話します。
わたあめ8割・AI2割、ごうさん自身の配分は?
ごうさんは、ここまで業界という切り口で話してきた考え方を、「今のキャリア」と「次のキャリア」に置き換えて具体例にします。まず挙げるのは、ごうさん自身のケースです。
ごうさんの今の仕事の中心は、わたあめ事業です。自分がやりたい仕事でもあり、今のところ大きく変えるつもりはないため、軸足を置く仕事だといいます。
ごうさんによると、機械で作るわたあめは1897年、今からおよそ130年前にできた技術とされています。一時的な流行のお菓子ではないので、3年後に新しい技術が出て誰も食べなくなるようなことはほぼ起きないだろう、という見立てです。
3年後に何か新しい技術が出て、綿飴もう食べる人いなくなりますよね、みたいなのってほぼほぼ起きないと思っていて、起きないでしょう。
つまり、ごうさんにとってわたあめ事業は、時の試練を経た守りの性質が強い分野です。一方で、毎日のように触れているAIの進化にまったく触れないのはナンセンスだという予感もあるといいます。
そこでごうさんは、時の試練を経たわたあめ事業を8、時代の波としてのAI活用を2の割合にして、キャリアを積み上げていくのがよいと考えています。わたあめとAIをどう両立させるかは、また別の機会に話したいとしています。
本業8割・AI副業2割から始めるリスクヘッジ
ごうさんは、リスナーにも当てはめやすい例として、本業を8割にして、残りの2割でAI関連の副業を始めてみる形を挙げます。
この形なら、今の仕事を続けながら、当たれば大きい新技術にも関われます。さらに、新技術側に軸足を移した後でその業界が吹っ飛んだとしても、2割で残していたこれまでの経験を復活させる選択肢が残る、とごうさんは話します。
ごうさんは、こうした状態をリスクヘッジが可能なバランスの良いキャリア戦略と表現します。
本編の結論として、ごうさんは2つの点をまとめます。攻めたいか守りたいかで8対2の比率を決めること、そして今伸びているものと長く続くものを掛け合わせると、リスクとリターンがちょうどいい塩梅になりやすいということです。
お便りはAIが書いているって本当?
後半はお便りのコーナーです。この番組では、お便りはそうそう来ないと考えたごうさんが、AIに質問を作らせて答えています。匿名質問サービス「マシュマロ」に人間から届いた質問はAI質問に混ぜられ、ごうさんはどちらか知らないまま読んでいきます。
1通目は、この仕組みそのものについての質問でした。
GOさん、お便りは大体AIが書いているって本当にそうなんですか?番組の説明にそう書いてあったので、34歳の自分にちょっと驚きました。
未送信のメール さんから
ごうさんの答えは「本当にそうです」でした。ごうさんはGenspark ── 文章作成や調べものなどを行えるAIサービスの一つ。指示に応じて複数のタスクをこなすAIエージェント型のツールですというAIを使い、ランダムなラジオネームとラジオに届きそうなお便りを1日5通作るよう指示しているといいます。
ごうさんの指示には、マシュマロから人間の匿名質問が来たら、ラジオネームはランダムに生成したまま、その5通の中に人間のお便りを混ぜるという内容も含まれています。
人気の配信者みたいに、毎回何通も質問やお便り来れば全然いいんだけれども、一般人にはそんな世界っていうのはまあまあありえない。
ごうさんは、お便りが来るまでこのコーナーをやらないのは寂しいと感じ、来なくてもやりたいと考えてAIに作らせることにしたそうです。答えに困ったらAIで回答する案も思いついたものの、AIの質問にAIが答える意味のない時間になるのでやらないだろう、と笑いを交えて話します。
意味がわからない相談と、映画館で泣く話
2通目は、銀行で働く人からの子育ての相談でした。
41歳、銀行で働いています。長男が最近将来何するの?とよく聞いてきます。職業の名前を先に出すとまだ決まっていないと正直に言うとどちらがいいのか迷っています。GOさんならどうしますか?
窓口の番号札 さんから
ごうさんはこの相談文を読み直して内容を整理しようとしましたが、日本語が難しく途中で迷子になったといいます。最終的に「全く意味がわからないので飛ばします」と、この相談には答えずに次へ進みました。
自分、たまに映画館に行くと暗いところで泣いちゃうタイプです。GOさんは映画見に行きますか?28歳です。
座席の暗がり さんから
ごうさんは、東京にいたころは映画を結構見に行っていたものの、香川に移ってからはなかなか行く機会がないと答えます。仕事も含めて時間の使い方が大きく変わり、映画を1本がっつり見る時間を取れていないものの、見たいとは思っているそうです。
続かないなら、続けざるを得ない状況を作る
4通目は、自分で始めたことが続かなかった経験についての質問でした。
この番組最近ようやく1から聞き直しました。67歳です。GOさんは自分で始めたけど続かなかったことありますか?仕事でもよその話でも。
書斎のラジオ さんから
ごうさんは、始めても続かなかったことだらけで、基本的に続かないタイプだと答えます。そのため、続けざるを得ない状況を自分で作っているといいます。
続かないので、続けざるを得ない状況を作っています。
ごうさんが例に挙げるのは、わたあめの仕事と、強制力は弱いもののこのラジオです。続かなかったと思っても、またやろうと思ったときに復活させたり、別のことをやればいい、とごうさんは話します。
「この先どうするつもり?」と聞かれたら
5通目は、母親と二人で暮らす人からの、家族のお金についての相談でした。
先月、母にこの先どうするつもりと聞かれました。母親の年金と自分の給料で2人で暮らしています。GOさんはご家族のお金のことをどんな風に話し合っていますか。
茶の湯芸 さんから
ごうさんはまず、誰でも聞ける公共の場で、自分の家庭のお金の具体的な部分をすべて開示するのは難しいと前置きします。そのうえで、相談者の給料が少なくて母親が心配しているのかもしれないと推し量りつつ、前提が少なく答えにくいと話します。
(この先どうするつもり?と聞かれたら)いや、こうするつもりですよって答えればいいと思っています。
ごうさんは、その問いに答えられないのならプランがないということなので、プランを考えましょう、とシンプルに答えます。コーナーの最後には、今回生成された質問はいつもと比べてあまりドンピシャな感じがしなかった、と振り返りました。
台本生成AIとの格闘と、有楽町マルシェの告知
エンディングでごうさんは、初回からずっと台本を生成するAIを作っては修正する作業を毎日続けていると話します。クオリティは徐々に上がっているものの、一発でOKの台本にはならないのが現実だといいます。
当初はパパッとできるものだと思い描いていたものの、AIが作った案にたくさん突っ込む日々が続いているそうです。それでも、ゼロから自分で台本を作るよりは全然やりやすいといいます。
突っ込みの土台があるだけで、すごい頭が、思考が進む感覚がある。
ごうさんは、最初の案の叩き台をAIに作ってもらうやり方が自分に合っていると感じているそうです。
最後の告知は、東京・有楽町で開かれる「瀬戸内香川三豊マルシェ」への出店です。11月22日の11時から16時、JR有楽町駅中央口を出てすぐの有楽町駅前広場に、三豊のフルーツを使ったわたあめ「三豊ふわりと」を持っていきます。ごうさん本人は行けず別のスタッフが担当しますが、試食もできるそうです。
まとめ
ごうさんは、成長産業の「時代の波」と、長く続く分野の「時の試練」を天秤にかけ、攻めと守りを8対2で組み合わせるキャリア戦略を提案しました。自身もわたあめ事業8割・AI活用2割という配分で、変化への備えと安定の両立を図っています。
- 成長産業は上りのエレベーターのように努力が報われやすいが、業界内の波が激しく乗り続けるのは難しい
- リンディ効果のように長く続いてきた業界は続く可能性が高いが、新聞や馬車のように技術の進化で消えることもある
- 攻め重視なら攻め8割・守り2割、守り重視ならその逆と、パレートの法則で比率を決める
- 本業8割・AI副業2割から始め、うまくいけば比率を入れ替えることで、元のキャリアに戻る選択肢も残せる
- お便りコーナーでは、続かないことは「続けざるを得ない状況を作る」、将来を聞かれたら「プランを考える」とシンプルに答えた



