社長が作ったのに説明できない「スキル」とは
この回は、加藤がClaude Codeで作った「スキル」を、上田が改めて問い直すところから始まります。
加藤がこれまでに作ったスキルは2つ。研修動画を自動で作るものと、音声から文字起こしをするものです。加藤自身、その内容を思い出しながら少し照れくさそうに答えます。
しょぼいやつしか作ってないなっていう、なんか恥ずかしなってきた。
上田が「スキルとは何か」と尋ねると、加藤は手順を覚えさせて毎回指示を出さなくても実行してくれるもの、と説明します。
こういう手順でこれをやってね、みたいなやつを覚えさせて、毎回毎回その指示出さんでも実行してくれるっていうスキル。
では普通にプロンプトを打つのと何が違うのか。加藤は「毎回打たなくて済む」という手間の削減として捉えていました。
これに対して上田は、その認識だとスキルの利点をほとんど活かせていない、と切り出します。ここから、スキルの中身を掘り下げる展開になります。
(手間が省けるという認識)だと、多分スキルの利点をほとんど活かせていない感じになるんで。
加藤は実際の使用感として、動画編集で毎回少し違う仕上がりが出てくること、そのつど修正すると次から反映してくれることを挙げます。
まあほんま部下みたいなもんですよね。良かれと思ってやってもらったけど、これは違うよね、こうしといてくれた方がいいんやねみたいな。
上田は、使い方としてはその通りだとしたうえで、なぜ細かく修正し続ける必要があるのかは、スキルの中身がわかると見えてくるはず、と話を進めます。
スキルの正体はプロンプトとプログラムの詰め合わせ
上田はまず、スキルの正体をひとことで言い切ります。
プロンプトとは要は指示のことです。こういう手順で作業してくれ、という指示書があるから、AIはその通りに動いてくれる、と上田は説明します。
ただし指示書があるだけなら、以前は各自がプロンプトをメモ帳に貼り付けて管理し、そのつどコピペして使っていた状態と変わりません。加藤も、つい最近までそうしていたと振り返ります。
当たり前になってるけど、この間まで俺それしてたで。
この「スキル」という仕組み自体が新しいものである点も、2人は驚きをもって話しています。
アンソロピックはね、去年の10月に発明したんですよ。[[Anthropic::Claudeを開発しているAI企業。書き起こしでは「アンソロピック」と発音されている。]]
上田は、スキルの指示書には、作業を抽象化した自然言語の手順が書かれていると説明します。加藤が口頭で指示したことがそのまま残るわけではないため、意図したポイントが抜けることがあります。
口語でやってるからね。
そして、その抜けた部分こそ加藤が重視していたことだった、という事態が起こります。だからこそ何回も修正するうちに精度が上がっていく、というのが繰り返しの正体です。
もう一つの要素がプログラムです。上田は、AIの出力には毎回ぶれがある一方、プログラムは入力に対して必ず同じ出力を返す点が違うと整理します。
毎回同じ指示でも、返ってくる内容に揺れが生じる
手順が厳密に決まっていて、同じ入力には毎回同じ出力を返す
上田は具体例として、入力した数字に9を足して返すプログラムを挙げます。1を入れれば必ず10、2を入れれば必ず11が返る、ミスのない処理です。
動画編集などをAIに頼むと、AIが自分でこうしたプログラムを書いて処理していることがあります。加藤が感じていた「毎回微妙に違う」感覚とも重なります。
ただしAIが毎回プログラムを書くと、そのぶんトークンを大量に消費します。一度書いた良いプログラムを再利用できれば安く済む、と上田は説明します。
つまりスキルは、指示書と、再利用するプログラムをまとめたものだと整理できます。さらに上田は、3つ目の要素として参照資料を挙げます。
毎回参照したいデータベースや資料も一緒に入れておける、というのがその中身です。ここまでを上田は次のようにまとめます。
この3つが合わさった詰め合わせパックがスキルであり、AIの判断が挟まる部分だけが少し揺れる、というのが加藤の実感とも一致していきます。
スキルはChatGPTやGeminiでも使えるのか
加藤は、このスキルという仕組みがChatGPTでも使えるのかを気にします。上田は、スキルは基本的に3者共通だと答えます。
(スキルは)三者共通です。
Anthropicが作った仕組みでありながら、なぜChatGPTやGeminiでも使えるのか。上田は、スキルが指示書とプログラムと参照資料だけの、シンプルすぎる構成だからだと説明します。
(スキルは)指示書とプログラムと参照資料だけなんで、シンプルすぎてもうこれ以上なかったんですよ。
指示書が自然言語で書かれている点も、他のAIでそのまま使える理由です。加藤が使っている月3000円ほどのプランでも、ChatGPTのCodexで使えると上田は答えます。
一方で加藤は、リアルバリューの合宿でのAI研修を脱線として持ち出します。堀江らと3人グループで同じ課題に取り組み、それぞれ普段使いのAIで解いたところ、Claudeが群を抜いて良かったと振り返ります。
(3人の中で)一番性能良かったのがClaudeがもう群を抜いてた。
加藤は、写真を読み込ませた解析も速く、会話の流れや文脈を踏まえた推論も速かったと話します。今回の課題では情報量が限られており、無駄な推論が不要だった点も上田は指摘します。
話を戻すと、GeminiだけはChatGPTと事情が異なります。上田は、Geminiはチャットではまだスキルをうまく使えず、開発者向けに入り始めた段階だと説明します。
さらに上田は、公式発表ではないとしつつ、Geminiのカスタム機能である「Gem」が10月以降たたまれるらしい、というリーク情報を紹介します。
(Gemは10月以降)畳みます。
GoogleとしてもGemからスキルへ移行していく方向らしく、だからこそスキルを作っておけば、今後Geminiが対応してもChatGPT・Claude・Geminiのいずれでも使えるはずだ、というのが上田の見立てです。
ただし完全に同一とはいかず、上田はClaude特有の機能にも触れます。サブエージェントを立てて並列作業をさせるなど、微妙な仕様の違いでできること・できないことはある、と補足します。
加藤は、メーカーをまたいでも各AIが従順に協力してくる点を面白がります。ChatGPT用に整えてと頼めば応じ、他のツールも紹介してくる、といった具合です。
みんな従順やわー言うて。「わかりました」って。「浮気していいですよ」みたいな。ちゃんと言ってくるから。
一度組めば持ち運べる「ポータブル」なスキル
上田は、スキルの利点はポータブルになることだと整理します。一度組んでしまえば、そのまま他人にも渡せる仕組みです。
(スキルの利点は)ポータブルになるってとこですよね。一回組んでしまえば。
具体例として上田は、自分が使っているニュース収集のスキルを挙げます。決めたテーマでニュースを集め、評価して学習し、より好みに合ったニュースを毎日集め直してくれるものです。
このスキルは人が導入できる形にしてあり、加藤にそのまま渡すこともできます。導入時に興味のあるテーマを質問してくれるところまでスキル化されている、と上田は説明します。
使う中で加藤が評価を付けていくと、スキルの中身は少しずつ加藤用に書き換わっていきます。もとは上田のスキルでも、中身はどんどん加藤色に変わっていく、というわけです。
スキル自体はちょっとずつ書き換わっていくわけですよ。
出力先も柔軟に変えられます。上田自身はターミナルやMarkdown形式のファイルを使っていますが、加藤には馴染みがないため、WordやNotion、メール、Slackなどへの出力に変えることもできると説明します。
導入
上田が作ったスキルを渡し、興味のあるテーマを質問して初期設定する
運用
毎日ニュースを集め、加藤が評価を付ける
最適化
評価に応じてスキルの中身が加藤用に書き換わっていく
出力先の変更
WordやNotion、メール、Slackなど、使いやすい形に出力先を変えられる
この話を受けて加藤は、スキル作りは大変そうと身構えるのではなく、対話でやれるのだからハードルを低くして踏み込むのがよい、とまとめます。
とりあえずこうハードル低く足を踏み込んでみるっていうのが一番いいかなって思いますよね。
使えば使うほど賢くなる、自分専用のAI
上田は、使ってみないとわからないだけでなく、使うほどにClaude Codeが自分に最適化されて賢くなっていく、と話します。
Claude Code[[Claude Code::AnthropicのClaudeを、コード作業などに使える形で提供する開発向けツール。]]とか使ってると、Claude自体が賢くなっていくというか、自分に最適化されていく。
ここで上田は、モデル自体が賢くなるわけではない、と念を押します。Claude 5.1が出れば賢くなるとしても、5が5のまま賢くなるわけではありません。
賢くなる正体は、使う中で加藤のパソコンに蓄積されていくメモリのファイルです。「これをやったらこう言われた」といった知見が溜まり、モデルが更新されても引き継がれていきます。
(知見を)蓄積してからどんどん賢くなっていってるんですよ。それは5から5.1に変わっても。
加藤は、これはパソコンの価値そのものが変わる話だと受け止めます。データの載せ替えが、単なる移行から、自分の思考や経験を学んだ相棒の引き継ぎへと意味を変えていくからです。
俺の15年間の思考であったり、考えであったりを、その載せ替えのこの相棒みたいになるわけよ、下手したら。
だからこそ、加藤はバックアップの重要性を強調します。かつては新しいプログラムを買い直せば済んだものが、失えば取り返しのつかない蓄積になるからです。
今まではただのデータ移行やってん。もう一回なくなったら、もう取り返しのつかない15年返せよみたいな感じなわけ。
AI時代に価値が残るのは新品ではなく歴史と経験
話は資産の話へ広がります。上田は、AIが新しいものをどんどん作るため、新品そのものの価値はなくなっていくと予測します。
新しいものはガンガン作ってくれるから、新しいものに多分もう価値はなくなるんですよ、このうち。
AIがフィジカル化して工場も動くようになれば、物は溢れて飽和し、新品には価値がなくなる。逆に古いもの、歴史性、経験の側に価値が寄る、というのが上田の見立てです。
例として上田は、何千万もするストラディヴァリウスのバイオリンや、10年ためたデータを挙げます。いずれもAIには作り出せない、歴史や積み重ねの価値です。
加藤は、これは芸術家など本物のプロフェッショナルの価値が上がる時代でもある、と受け止めます。技術そのものより、その人自身に価値がつく、という発想の転換です。
その人に価値がつくんですよね。
上田は、AVEXの松浦会長がnoteに半生の記事を投稿し、後からAIで書いたと明かして炎上した件を引きます。ただし食わせたのは松浦本人の数十年分のデータであり、書いたものは松浦の歴史だと指摘します。
同じ理屈で、AIが出した文章をどう判断して直すかは、その人の経験から来るものだと上田は続けます。自分がOKを出すのと村上春樹がOKを出すのは全く違う、という例で説明します。
AIを使って、もし仮に村上春樹がなんか小説を書いたとしても、そこには村上春樹の経験って入ってくるわけじゃないですか。
加藤は、自分が見た映像や感激した経験をデータとしてためておけば、それ自体が価値になる、と受け止めます。作るのはAIでも、価値はためたデータの側にある、という理解です。
労働が消えた先にある創作と人権の問い
最後に2人は、人間の労働が不要になった先を想像します。上田は、労働がいらなくなれば人間は遊んでいればよくなる、と話します。
加藤も、ヒューマノイドが掃除から料理まで生産をこなす世界を挙げ、奪い合う必要も働く必要もなくなると応じます。そうなれば人は創作活動に向かう、という展望です。
ただし上田は、そこに影があるとも指摘します。労働力が必要だからこそ国は人権を保障している面があり、それが不要になったときの危うさです。
そうなると人権とかがなくなる可能性があって怖いですけどね。労働力が必要だから、国としては人権を保障したりするわけじゃないですか。
この問いは今回は結論を出さず、また別の話として置かれます。スキルの解説から始まった雑談は、AI時代の資産と人間の価値をめぐる話へと着地しました。
まとめ
今回は、加藤が作った「スキル」の中身を上田が解き明かし、そこからAI時代に価値が残るものは何か、という話へ広がる回でした。仕組みの理解が、AIとの付き合い方や資産の考え方にまでつながっていきます。
- スキルは指示書(プロンプト)・プログラム・参照資料の詰め合わせで、AIの判断が挟まる部分だけ出力が揺れる
- スキルは自然言語ベースでシンプルなため、Claude・ChatGPTでそのまま使え、Geminiも対応を進めているとされる
- 一度組めばポータブルに渡せ、使う中で評価を重ねると自分専用に書き換わっていく
- モデルではなく手元に溜まるメモリの知見が賢さの正体で、バックアップの価値が高まる
- 新品の価値が下がる一方、歴史・経験・その人自身に価値が残るという見立てが語られた




