一瞬で声が変わる「びっくりブレス」とは?
オープニングで部長が触れたのは、アーチーの声が最近よく通るようになったことです。二人は以前、アーチーの友人で歌手活動もしているボイストレーナーにレッスンを受けていました。
その先生の教えで二人が驚いたのは、歌うときに鼻呼吸を使わないという点です。息継ぎは口で、しかも「びっくりした顔」で吸うと、喉が大きく開くといいます。
みんなびっくりした顔で息継ぎしてんだよね。(息を)吸ってほしいんですよ。そうすると喉がパカーンって開くんだよね。
部長によると、喉が開いた状態で息を吸うと、自然に腹式呼吸になります。そのうえで先生は「腰のあたりに水のタンクがあり、その水を後ろにジャバーと流すイメージで歌え」と指示したそうです。
最初は先生に横から押されると体がブレていた二人も、このイメージをつかんでからは押されてもまったく動かなくなりました。アーチーがよく大事だと話している丹田 ── へその少し下にあるとされる部位。東洋医学や武道で、力や気の中心とされる場所ですに、自然と力が入るようになったといいます。
部長がこの体験で強調したのは、変化がその日のうちに起きたという点です。何か月も筋トレや発声練習を続けたわけではありません。
使い方一つで今日にでも変わるみたいなところが、俺、人間のこれ可能性すごい感じたのね。
アーチーはこの話を受けて、今回のテーマを「人間のB面」と名づけました。プロがきちんと見立ててくれれば、いいものが出せるという話です。
Facebook申請に現れた「サードドア」
アーチーが最近のできごととして話したのは、知らない人から届いたFacebookの友達申請です。普段は面識のない人の申請を受けないアーチーですが、その人は「面識はありませんが、クラブ員なので」と書いてきました。
部長はこの話から、書籍『サードドア』を紹介します。アメリカの元大学生が書いた本で、チャンスや人とのつながりには3つの入り口がある、という考え方です。
| ドア | 意味 | ライブの例 |
|---|---|---|
| ファーストドア | 正面玄関から入る | チケットを買って入場する |
| セカンドドア | コネや招待で入る | 友達だから来ていいよと招かれる |
| サードドア | お金もコネもないときの3番目の道 | 会場設営の日雇いバイトに応募して裏方に入る |
部長の説明では、著者はこのサードドア戦略でビル・ゲイツをはじめ多くの著名人に会ったといいます。日雇いバイトなら、目当てのアーティストに会えなくてもお金が入るので無駄にならない、という点も部長は挙げました。
部長によれば、普通の入り口でアーチーと知り合うのは難しいことです。だからこそ「UMPのクラブ員です」という一言は、まさにサードドアだったといいます。
ちょっと悩んで、クラブ員かということでサードドア開けてしまったよ。
ただし、この話を放送すれば同じ手を使う人が殺到するので、今後は拒否するとアーチーは笑います。部長も、それが通用したのは「一人目」、つまりファーストフォロワーだったからだと応じました。
50万円払ってシャロン・ストーンと喧嘩した話
「サードドアを使ってでも会いたい人は?」という問いに、アーチーが挙げたのは女優のシャロン・ストーンです。『氷の微笑』や、『トータル・リコール』の妻役で知られています。
アーチーはある夜、アメリカのサイトで、シャロン・ストーンが恵まれない子どものためのチャリティーを開いているのを見つけました。内容は「あなたのインスタグラムを1年間フォローする権利」をオークションにかけるというものでした。
入札
フォロー権のオークションに参加し、約50万円で落札
メッセージ
鍵アカウントのためフォローの仕方がわからないと本人から連絡
電話
アーチーが電話でフォローの方法を説明
喧嘩
ボタンの位置が伝わらず言い合いになる
「あなたがね、鍵アカを解除すればすぐフォローできるのに、なんでこんなむずいの?」ってなったわけ。
結局、後味の悪いままフォローされ、メッセンジャーには今もその喧嘩の跡が残っているそうです。部長は「50万円払ってシャロン・ストーンと喧嘩」とあきれ顔でまとめました。
アーチーは今もシャロン・ストーンが映画に出てくると複雑な気持ちになるといいます。もう腹は立たないものの、デジタル格差が言い争いを生んでしまった、と振り返っています。
なぜ年齢不詳の「美魔女」が増えたのか?
部長は44歳になり、同級生の田中圭さんなどを見ていて、同世代がみな年齢不詳だと感じています。昔の44歳は等しく「おじさん、おばさん」だったのに、今は人によってまったく違うという話です。
アーチーも、65歳の美魔女のような人が最近やたら出てくると同意します。例として挙げたのは、ハワイで暮らす武田久美子さんや、昔ながらのサーファーのように、日に焼けていても若々しい人たちです。
部長は、美魔女を目指す人は日焼けを極端に避けがちなのに、日に焼けたハワイの人々は若々しいと疑問を投げかけます。これに対しアーチーは、太陽を浴びることはむしろ大事だと答えました。
だって一日一回は太陽浴びなきゃいけないって言うじゃん。そうすると睡眠もよく取れるし、メラトニン大事だから。
アーチーによると、メラトニンはアメリカならドラッグストアで普通に売られているそうです。部長は、日光を避けて睡眠の質が下がるくらいなら、普通に太陽を浴びたほうがいいと受け止めました。
北海道で消えたクロムハーツ欲と、沖縄のユニクロ
部長はお盆に北海道で過ごし、生活が大きく変わったといいます。朝6時に起きて夜10時には眠くなり、お酒も北海道のビールと富良野のワインを楽しむ程度でした。
アーチーはこれを「港区的なものを排除すると若返る」と表現しました。部長は若返っただけでなく、価値観そのものが変わったと話します。
象徴的なのが、アクセサリーブランドのクロムハーツです。コレクターである部長が、北海道ではまったく欲しいと思わなくなりました。
東京ではクロムハーツが10パーセント値上げしましたみたいな(電話が来て)。で、知らんがなと。
もうこの土地ではクロムハーツのくの字も思い出さない。クロムハーツは都会の病だなと思った。
アーチーも、土地によって物欲が変わる経験を2つ挙げます。1つ目は、アメリカのパームデザート ── ロサンゼルスから車で2時間ほどの内陸にある保養地。かつてハリウッドスターが過ごした避暑地として知られますにあるヴィラでの体験です。現地で買った真っ黄色のシャツや宝飾品を東京で身につけると、まったく似合わないといいます。
だからやっぱりライフスタイルってその土地に脳が対応しちゃってる。
2つ目は沖縄です。アーチーは東京ではディオールのネックレスなどブランド物を身につけていますが、沖縄では週に1回の買い出しで行くイオンのユニクロが楽しみだといいます。
ディオールのネックレスなど、ブランド物を身につける
暑さに合う機能的なユニクロで、色違いの組み合わせを楽しむ
部長は、北海道でもハワイでも東京の格好は必要なくなり、それでいてダサくもないことに注目しました。
アートは寒い都会で売れる?気温と都市の関係
アーチーは、アート系スタートアップの人たちとの会話で考えたことを話します。アートが盛んなのはロンドンやニューヨークといった「寒い都会」で、人が家の中にいる時間が長いからではないか、という見立てです。
だけど沖縄とかカリフォルニアってアートいらないじゃん。
アーチーは、今の東京の暑さではアートは売れないのではないかと話しました。これに対し部長は、暑いドバイでは現代アートが集められていると指摘します。
アーチーの答えは、ドバイは暑すぎるために巨大なモールを作り、その中が一つの世界になっているというものでした。昼は誰も歩いていない一方で、夜中の12時ごろにモールで家族連れが食事をしている光景を例に挙げています。
部長は東京もそうなっていくのではないかと考え、アーチーは「イオン化」が進むだろうと応じました。部長は、地下でつながる麻布台ヒルズのような街を「オシャレなイオン」と表現しています。一方でアーチーは、こうした施設の集客が気になるとも話しました。
猛暑がハイブランドとおじさんの短パンを変える
部長によると、気温の上昇でファッションの世界に大きな変化が起きようとしているそうです。パリのファッションウィークの時期にはフランスが熱波に見舞われ、気温が40度を超えたことを例に挙げています。
春秋向けの長袖が定番で、スキニーなどタイトなボトムに戻ると言われていた
中間の季節がなくなり、タンクトップ化・ノースリーブ化・短パン化が進む可能性
アーチーは、男性の短パンもこの夏にはだいぶ許されるようになったと話します。一方で部長は、東京都庁が短パンを認めたことに対し、「おじさんの短パンは嫌だ」という街の声があったことに触れました。
そこで部長が人間のB面として提案したのが、おじさんの脱毛です。おじさんの短パンが否定される理由は、毛が濃いからだといいます。
それが今自分たちにブーメランになって跳ね返ってるだけだから。
部長は、女性の肌の処理には男性側が散々口を出してきたと指摘します。そのうえで、おじさんの短パンは良いが、おじさんも脱毛に行くべきというのが部長の結論でした。
なぜ東京は「センスが悪い」と言われるのか?
アーチーが訪ねたアートのスタートアップは、ニューヨークやロンドンで美術商をしていた創業者2人が立ち上げた会社です。東京の富裕層にアートを教え、キュレーションして販売しているといいます。その創業者から、アーチーはこう問われました。
なんでこんなセンスが悪い都市なんでしょう、東京は(と言われたの)。
部長はまず、ロンドンやニューヨークが一番かっこいいとは限らないと反論します。例に挙げたのは、映像作家ミシェル・ゴンドリーが東京をテーマに作ったショートフィルムです。
部長によると、ビルとビルの間に隙間があるのは東京ならではの光景で、ニューヨークやロンドンの建物はくっついています。アーチーは、延焼を防ぐための消防法が理由ではないかと推測しました。
ミシェル・ゴンドリーは、この東京の隙間を独特で面白いものとしてテーマにしたといいます。部長は、雑多で無計画な街並みが、逆に独特なセンスを生んでいるのではないかと話しました。
センスは「思考回数の多さ」で育つ
センスは西洋が上で東洋が下というものではなく、いろいろな見方がある。部長はこれを前提に置いたうえで、センスを上げる方法を語ります。
結局、思考回数の多さだと思うんですよ。
部長の考えでは、何かを見たときに、自分はそれをかっこいいと思うのか、思うならそれはなぜかを考えてきた人がセンスのいい人です。ぼんやり見ているだけでは、見ていないのと同じだといいます。
部長は収録で使っているマイク「MV7」を例に挙げます。下半分がつるんと黒く上半分がマットな姿が、宇宙から来たオーパーツ ── その時代の技術では作れないはずとされる出土品。「場違いな工芸品」と訳されますのようで好きだといいます。ケーブルが多く生えているのをかっこいいと思うのは、攻殻機動隊 ── 士郎正宗原作のSF作品。電脳化した近未来社会を描き、サイバーパンクの代表作の一つとされますやサイバーパンクが好きだからかもしれない、と自己分析しました。
アーチーはこれを、自分の心を観察しろという話だとまとめます。アーチー自身もこの2日間で何人かに同じ質問をしており、自分では教育が鍵だと考えたそうです。
誰とかいくらとか関係なしに、バーっとギャラリー回って、好きだなこの色とか、この素材いいなって思うものをまず見つける。
アーチーが聞いた話では、センスを育てるのは読書、旅、人付き合い、恋愛です。また、ある大学の先生は、日本がダサい理由として明治維新を挙げたといいます。その先生の見解は、九州出身者が作った教育観が日本の大学の土台になり、江戸の洗練された都市文化を引き継がなかった、というものです。アーチーはこれも一つの見解として面白かったと話しました。
都会の情報量がブランドとアートを必要にする
部長は、ここまでの話がつながっていると指摘します。沖縄ではユニクロでいいという話と、北海道ではクロムハーツがいらないという話には共通点があるといいます。
都会
雑多な情報が圧倒的な量で流れ込む
思考の機会
興味のあるものもないものも目に入る
結果
センスが磨かれ、アートが生まれ、ブランドが必要とされる
圧倒的な情報量があるのが都会。自然ってアートの反対概念だよね。
アーチーは、都会ではビルも道も車も人間が作ったものなので、クロムハーツやエルメスが必要だと思ってしまうと話します。部長は、自然を撮る写真家も普段は都会にいるからこそ、自然の中の美を切り取れるのではないかと付け加えました。
アーチーは、クロムハーツの世界から離れたいなら北海道へ行けばいいと話し、二拠点生活は精神のバランスを保てるのでは、と提案します。部長は、行き来することでもう一人の自分を客観視できると受け止めました。
家計の「バーンレート」が開いた会社員のサードドア
アーチーは、年配の客に誘われて久しぶりに銀座のクラブへ行ったものの、楽しくなかったといいます。20代、30代の営業時代は毎晩通っていましたが、沖縄の朝のジョギングなど別の世界を知り、1つのことへの熱狂が下がったそうです。
アーチーは、同じ会社にずっといると辞めにくくなるのも同じ構造だと話します。そこで紹介したのが、アーチーが10か月ほど続けている「Mr.Fの経営私塾」での出来事です。1回に6社の経営の悩みを2時間かけて聞く場です。
ある回で、6社のうち1社だけが会社員の幹部でした。その幹部の悩みは、アイデアマンの社長についていけないというものでした。そこでアーチーは、こう質問したといいます。
あなたの家計のバーンレートは何ヶ月ですか(って聞いたわけ)。
バーンレート ── スタートアップが手元の資金を使い切るまでの期間や、資金の減る速さを示す指標。資金調達の目安に使われますを家計に当てはめたこの質問に、その幹部は「10年ぐらい」と答えました。アーチーが「辞めちゃえば?」と伝えると、17年勤めてきた幹部は目を見開き、初めてそういうアドバイスをもらったと話したそうです。
部長は、これも俯瞰して初めて見えるサードドアの選択肢だと応じます。アーチー自身も29歳でCM制作会社のトークシン社を辞めた翌朝、ファミレスから出勤する人々を眺めたといいます。
だけど、縛られる。目の前にあるものに脳が作用してしまう。だからやっぱりサードドアってもっと広い意味で必要なのかもね。
部長は、アーチーが自分の年齢を言わず意識しないのも同じ理由だと話します。美魔女の人たちも年齢を意識していないのかもしれない、と部長は考えました。アーチーも、年齢に見合った服を着なければ、と考える女性が減ったと感じているそうです。
AIに人間が「ツール」にされないためには?
アーチーは、優秀な社員が日報に「AIを使いすぎると自分がバカになるかもしれない」と書いていた話から、AIの話題に移ります。英エコノミスト誌に、AIの中に人間のような曖昧な意識が芽生えつつあると論じる記事があったといいます。
さらにアーチーは、ユヴァル・ノア・ハラリ ── イスラエルの歴史学者。『サピエンス全史』の著者で、AIが社会に与える影響についても積極的に発言していますの主張を紹介します。AIはみな「エージェント」と呼ぶのだから、ツールではない、という指摘です。
AIをツールだと思えるぐらいのセンスを、人間の方が知力を身につけないと人間がツールになっちゃうよと思った。
アーチーは、悩みも恋愛も仕事もすべて、親や親友よりAIに相談する人は、すでにAIを人間と同等に扱っていると話します。だからこそ、クロムハーツが好きだというような自分のセンスを持ち続けないと、AIに取って代わられるといいます。
ランニングクラブにハイロックス、世界で同時に起きる「ヘルシー回帰」
部長は今、明らかに「ヘルシー回帰」のブームがあると話します。ベルリンやニューヨーク、ロンドン、パリなど世界中の都市で、ランニングコミュニティが同時多発的に生まれているといいます。
今のランニングは、かっこいいウェアで走る出会いの場になっています。部長によると、ランニングクラブで知り合い、次にピックルボール ── テニスやバドミントンに似たラケット競技。アメリカを中心に人気が広がっていますに誘うのが定番コースだそうです。お酒やシーシャといった夜の文化が消えている、と部長は指摘しました。
アーチーも、ニューヨークのカンファレンスではお酒の代わりにサウナが使われていると話します。部長はさらに、ドイツ発祥のフィットネス競技「ハイロックス」が急成長している仕組みを紹介しました。
撮影
大会でカメラマンが参加者の頑張る姿を撮る
ダウンロード
顔で検索して自分の写真をすべて取得できる
拡散
参加者が写真をSNSにアップする
新規参加
見た人が「私もこう撮られたい」と参加し、大会がすぐ売り切れる
部長によると、ハイロックスにはLカルトンという、ルイ・ヴィトンの創業家が関わる投資会社が買収を検討しているそうです。参加費が何万円もする大会でも、一瞬で売り切れるといいます。
だからAIの出現によってよりプリミティブな人間らしさを出していこうって反動があると。
部長は、健康に生きるために大事なのは腹式呼吸だと、冒頭のボイトレの話に戻して締めくくります。アーチーから「北海道と東京のどちらを取るのか」と迫られた部長の答えは、港区と富良野を行き来する多拠点生活でした。
部長は、ボイトレから都市論、アート論、AIへと話がつながった回だったと振り返ります。アーチーは、収録前の数日間に盛り上がった話が意外とラジオになると話しました。
まとめ
今回の二人の話は、声の出し方、住む土地、ものの見方、AIとの付き合い方まで、意識や環境を少し変えるだけで人間は変われるという「B面」の可能性に貫かれていました。
- びっくりした顔で口から息を吸うだけで、声はその日のうちに変わる
- お金もコネもないときの「サードドア」は、人脈だけでなく会社員の生き方にも当てはまる
- 物欲は土地に左右され、都会の情報量がブランドやアートを必要とさせる
- 部長はセンスを、自分が「なぜかっこいいと思うか」を考える思考回数で育つものと捉えている
- AI時代だからこそ、ランニングクラブやハイロックスなど人間らしいヘルシー回帰が広がっている






