20年来の読者が本人と初対面、番組の原点は「みんな勝間」
番組の第1回ゲストは経済評論家の勝間和代さんです。全4回の出演予定で、この回はその1回目にあたります。
けんすうさんは20年以上前から勝間さんの本を読んできましたが、対面は今回が初めてだと明かします。共通の知り合いは「死ぬほどいる」のに、直接会うのは初対面という関係でした。
けんすうさんも田中さんも、生産性を上げたい、ライフハックをやろうと思ったきっかけは勝間さんの本にあったと振り返ります。この番組で紹介してきたデジモノハックの原点も、勝間さんの著作にたどり着くといいます。
(この番組は)あらゆるライフハックやらデジモノハックやらを紹介してるんですけど、原点は全部勝間さんなんです。
みんなカツマーだった。
勝間さん自身は、20年ほど前にライフハック系の本を書いた頃を思い出し、読者の年齢が当時の自分を超えていることに時の流れを感じている様子でした。パソコン通信世代だと自ら語ります。
Whisper×SuperWhisperに着地するまで
初回のテーマは執筆です。勝間さんは以前から音声入力を強く推していて、その研究歴は長いといいます。
もうドラゴンスピーチの時代と、その前にAmiVoiceとか全部使ってるんですよ。
最近のメインは、OpenAIが開発したWhisperモデルです。そのWhisperを使うためのソフトはいくつもありますが、勝間さんはSuperWhisperのUIが好きで、これを使っていると話します。
SuperWhisperを選んだきっかけは、共通の知人である尾原さんの推薦でした。もともとMac版は1年ほど前からあり、Windows版が新しく出たタイミングで、Windows派の勝間さんが使い始めたといいます。
気に入っている点は、UIやプロンプトを細かくいじれることです。用途ごとにモデルを作っておけるため、開いているサイトのURLで自動判定してプロンプトを切り替えてくれます。
モデルをいくつかWhisperモデルを作ってるので、それごとに、例えばGeminiの時はこれを使うとか、Facebookの時はこれを使うとか。
切り替える中身も用途で変えています。Facebookのように人に見せる文章は一発できれいにしたい一方、Geminiへの質問は一字一句変えてほしくないため、あえて素のまま渡すと使い分けます。
パソコン6台をスペックで使い分ける親指シフト環境
SuperWhisperは、音声認識モデルの大きさもパソコンごとに変えられます。うるさい場所では大きいモデルが必要でも、静かな場所では過剰なので中くらいのモデルに落とす、といった調整をしています。
勝間さんが日常的に使うパソコンは6台。一番良いものはVRAMが12ギガバイト、一番悪いものは6ギガほどで、それぞれのスペックに応じてクラウドを使うか、どのモデルを使うかを全部使い分けています。
パソコンはほぼマウスコンピューターのG-Tuneというゲーミングノートで統一しています。理由は入力方式にありました。
マウスコンピューターがですね、Nの真下に変換キーがあるんですよ。そうすると親指シフトがとてもやりやすいので。
多くのゲーミングノートはスペースキーが長く、親指シフトができません。G-Tuneだけが親指シフトと両立でき、そのため多少高くてもずっと推していると説明します。
音声入力を中心にした今も、親指シフトには役割があります。音声入力の訂正を手を止めずにできるのがメリットだといいます。
Groqの「1時間11セント」という衝撃
モデルを細かく変えるのは、入力スピードと出力の質のバランスを取るためです。小さいモデルは速い代わりに誤変換が増えるため、間違いの多さと速さのトレードオフを見て調整しています。
仕上げに文章を整えるLLMを通すかどうかも、原稿の種類ごとに変えています。後でまとめて整えるものは通さず、1〜2行単位で整えたほうが楽なものは都度通す、という使い分けです。
最近は、この整形処理をGroqで通しているといいます。話に出たGroqは、xAIのGrokではなく、ハードウェアの会社のほうです。
最後の方のGroqですよ、ハードウェアの方のGroqです。あのxAIのGrokじゃなくて。だから全部今Groq通しちゃってますね。
速さの理由として、勝間さんはハードウェアの階層を挙げます。CPUの10倍速いのがGPU、そのGPUのさらに10倍速いのがLPUで、GroqはそのLPUの会社だと整理します。
料金の安さも大きな魅力です。最大モデルでも1時間あたり11セント、Turboなら3セント程度で、勝間さんは「ほぼタダ同然」だと話しました。
メルマガ1000字を3分で、Geminiは「整形係」
速いWhisperモデルは、勝間さんの速い話し方にも追いつきます。田中さんが、音声入力のときはつい少しゆっくり喋ってしまうと明かすと、勝間さんも同じだと応じつつ、Whisperなら速いままでも拾えると話します。
拾えます。だからGoogleのPixelの音声入力モデルも大好きで、Pixelの6から使ってるんですけど、あれよりも優秀です。
Pixelのようなリアルタイム変換型は、長文を一気に話すとフリーズすることがあります。一方Whisperは一旦すべて受け取ってから処理するため、500字ほどを一気に話しても全部受け止めてくれるといいます。
無料のメルマガは1000字ほど。勝間さんはこれを、素の話をどっと喋って整形だけしてもらう形で作っています。かかる時間は驚くほど短いものでした。
だからそれこそ喋るだけですから。1分とか2分とか3分とか。
作り方は、文章として喋るのではなく、要素を先に全部話してしまうスタイルです。過去のメルマガのフォーマットを大量に読ませてあるため、その形に組み替えてもらうだけで済みます。
そのために勝間さんがGeminiへ繰り返し出している指示は、シンプルで強いものです。
運用はGemsのような機能ではなく、1つのスレッドをずっと使い続ける方法です。重くなってきたら、そのスレッドからプロンプトだけ抽出して新しいスレッドを作り直します。
Gems私嫌いです。だって面倒じゃないですか。作ったってどうせまた更新しないし。あれは人に使わせるものであって、自分で使うもんじゃないんですよ。
足踏みペダルを卒業、無変換キーをトグルに
スマホでの音声入力には、Dictateというソフトを使っています。400円ほどの買い切りで、提供がGroqのため、WhisperモデルもLLMも一度に走って結果が出てくると説明します。
SuperWhisper自体も買い切りで、3万円ほど払って月額料金は発生していません。勝間さんは、実処理はAPIで動いているのに毎月お金を払う形に強い抵抗があると話します。
もうなんか嫌なんですよ。月々千円とか二千円とかお金を払うの。「お前何にもやってないぞ」と自分から思うんですよ。
音声入力の起動方法も進化してきました。かつては足踏みのフットスイッチを使い、踏むと音声入力がオン、離すとオフになる仕組みでした。
今はフットスイッチをやめ、無変換キーをSuperWhisperのトグルに割り当てています。普段使わない無変換キーなら、キーボードから手を離さずに音声入力を起動・停止できるからです。
今無変換キーをSuperWhisperのトグルにしてるんですね。無変換キーは手を動かさなくて済むので、ピッと。
カフェの小声入力と「うねうね波形」の官能性
カフェで仕事をするときも、勝間さんは音声入力を諦めません。USB-Cにつないだ小さな有線マイクで、周囲の音にかき消される程度の小声で入力しています。
USB-Cにつないだ、あの小さな有線マイクで本当にボソボソ喋ってますよ。
それが成り立つのもWhisperならではです。さらにプロンプトへ「これはカフェで録音している」と書いておくと、LLMがその前提で補正してくれるといいます。
入力の体感についても、勝間さんは独特のこだわりを見せます。画面に波形が「うねうね」と出ることが大切だというのです。
あとあの波のうねうねがないとなんか気分出ないんですよ。
くるくる回るだけの表示では迫力がなく、ちゃんと読み取っているかがわからなくなる。フィードバックがないと感応性がないと表現し、入力中の視覚的な手応えを重視していました。
キーボードはHHKBもほぼやめ、今はG-Tune付属のキーボードを使っています。SuperWhisperのアップデートで、Whisperモデルを一定時間メモリに乗せっぱなしにできるようになり、ますますキーボードが不要になったといいます。
指ほど遅いものはない、そして「勝間家電」を2週間で
田中さんは、あえて一度手を動かすことで深い思考ができるのではないかと問いかけます。しかし勝間さんの答えは明快でした。
指はおよそ4倍遅い、という感覚が語られます。田中さんが言葉を探すために立ち止まる時間が要ると返すと、勝間さんはそれは習慣だと応じました。喋りながら言い直しても、今はAIが訂正してくれる点も大きいといいます。
執筆速度の具体例として、著書『勝間家電』の話が出ます。今どきの本は10万字ほどですが、この本の執筆はごく短期間でした。
2、3週間ぐらいだったと思います。締め切りを間違えていて、ハワイ行っちゃったんですよ。
ハワイではゴルフ以外の時間をずっと執筆に充て、それでも半分ほどしか終わらなかったといいます。しかも何度も書き直しを重ね、5回ほどフィードバックを受けて仕上げたそうです。
商品名や機能性が多い勝間さんの本は、AIだけで書けるものではありません。その細部を直すのは人間だと勝間さんは言い切ります。それでも2週間で書き上げたことに、二人は驚きを隠しませんでした。
ところが人間が直すんですよ、そこは。
1日20〜30回Geminiと話す、ネタは遊びから降ってくる
入力の前に頭の中で何が起きているのかを尋ねられ、勝間さんはふわっと浮かんだものをそのまま話すだけだと答えます。そして、その思考の相手はいつもGeminiでした。
一日中私Geminiと話しててみんなに笑われてるんですけど。いつでもどこでも。
その回数は、勝間さんの感覚で1日20〜30回ほど。話す内容は徹底して日常的で、対話そのものがインプットになっています。
たとえば収録場所に来る途中では、ハイルーフの車が入れる近くの駐車場を探し、空き状況やバックアップまでGeminiに聞いていたといいます。
さらに、昼間に遅くなるモバイル回線について、どのキャリアが良く、料金がいくらか、どこで電波が悪くなるかまで対話していました。話は各キャリアのブラックパターンの違いにまで及びます。
勝間さんが使うキャリアは、ドコモ回線を使うエキサイトモバイルです。解約も契約も「はい」で済み、ブラックパターンが一切ないことを気に入っているといいます。
Foldをやめて大画面回帰、枠の外は人間担当
AI用の端末選びにも変化がありました。勝間さんはChatGPTではなくGeminiを多用しますが、その大きな理由は端末の扱いにありました。
ChatGPTは複数端末で使うとセキュリティの都合でログアウトしてしまう一方、GeminiはAndroidも含めGoogleのIDでつながっているため、話したい瞬間にログインし直すストレスがないといいます。
もう嫌なんですよ。その会話する瞬間にログインしなきゃいけないっていうこのストレスが。
スマホはすべてPixelで、6以降ずっとPixelを使い続けています。折りたたみのFoldは1と2を試したものの、内面ディスプレイがふにゃふにゃでフリックが打ちづらく、2世代でやめてXLに戻したそうです。
折りたたみをやめた背景には、大きな端末の位置づけの変化があります。大きいものはもうスマホではなくパソコンになった、という感覚です。AIのためにVRAMの大きいパソコンを買い足し、いわば「パソコン民」に戻っていました。
折りたたみのPixel Foldで、大画面とフリック入力を両立しようとしていた
Foldをやめて大画面のXLとパソコンへ回帰、入力は音声中心に
最後の話題は、毎日4000字を書き続けるためのインプットです。田中さんが、ネタがどこまでも湧いてくるように見えると尋ねると、勝間さんの答えはシンプルでした。
毎日遊んでればいいんですよ、朝から晩まで。遊んでたら自動的にいろんなとこがネタが降ってくるので。
人と会い、旅行し、スポーツをする。アウトプットの時間が短くなったからこそ、いかに遊んでインプットするかが重要になった、と整理されます。
その理由が、この回の核になるAI時代の考え方です。枠の中はAIが得意だから、枠の外を人間が担当するという発想でした。
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まとめ
勝間さんの執筆術は、道具の話に見えて、その根っこには「指ほど遅いものはない」という徹底した思想があります。Whisperを軸に、モデルやプロンプトを用途ごとに使い分け、Geminiは勝手に足させない整形係に徹させる。そうして生まれた時間を、遊びによるインプットへ振り向けているのが特徴です。
- 音声入力はWhisperモデルが軸で、SuperWhisper(Windows/Mac)とスマホのDictateを使い分けている
- モデルの大きさやLLM整形の有無を、場所・パソコンのスペック・原稿の種類ごとに調整している
- Geminiへの指示は「勝手に足すな」「改変するな」で徹底し、1スレッドを継続運用している
- Groq(LPU)の活用で処理は爆速かつ安価、最大モデルでも1時間あたり11セント程度
- AI時代は「枠の中はAI、枠の外は人間」。遊んでインプットを増やすことが最重要という哲学




