同窓会で言われた「人生ゲームみたいなの?」
この回のテーマは、ボードゲームを普段遊ばない層についてです。ボードゲームは流行ってきていると感じる一方で、日常的に遊ばない人は確かに存在します。
きっかけは、Manaさんが中学校の同窓会に行ったことでした。「最近何やってるの?」と話が振られ、ボードゲームを作っていると答えたそうです。
すると、案の定クエスチョンマークが返ってきました。電気を使わず、コマやサイコロ、カードで遊ぶものだと説明したところ、返ってきた反応が象徴的でした。
人生ゲームみたいなの?
Xなどでよく話題に上る反応ですが、実際に面と向かって言われたのは初めてで、Manaさんはこの感覚を新鮮に感じたと話します。
ここ最近はボードゲームにとっぷり浸かっていたため、遊ばない人の感覚から離れてしまっていた、とも振り返っています。
チェスや将棋は「ボードゲーム」と思われていない?
遊ばない層が最初に思いつくのは、人生ゲームやモノポリーです。一方で意外だったのは、チェスや将棋、囲碁をボードゲームと捉えている人が少なかったことでした。
話していると、将棋は将棋、囲碁は囲碁、麻雀は麻雀という独立したイメージのようです。UNOも同様で、UNOというゲームであって、ボードゲームの一種という認識ではなかったといいます。
ボードゲームの中にUNOってあるんだよね、みたいな、そんな印象ではなかったみたいです。
それなのに代表格として人生ゲームが挙がるのは不思議だ、とManaさんは感じたそうです。ボードがあって、駒を動かして、みんなで囲むという要素が、遊ばない層のボードゲーム像なのかもしれません。
市場規模は70億円、紅生姜やペット用おむつと同じ規模
熱心なファンはジャンルを細分化して楽しみ、自ら情報を取りに行きます。では、そうではない層はどうか。ここで市場規模の話に移ります。
Manaさんによると、ボードゲームの市場規模は今でも70億円ほどだといいます。よく引き合いに出されるのが、紅生姜やペット用おむつと同じくらいという表現です。
70億円でもまだまだ少なく、市場を拡大するには、普段遊ばない層を遊ぶ層へ変えていく必要があると考えられています。
テレビとYouTubeが広げるボードゲームの知名度
一方で、盛り上がってきているのも事実です。市場拡大だけでなく、YouTuberのショート動画や芸能人のYouTube企画が後押ししていると話されています。
特に吉本系が強くなっているといいます。ブラマヨの小杉さんが登場するボードゲームの番組ができたり、朝や夜の番組でボードゲームっぽい企画が増えたりしているそうです。
これは不景気で番組予算が少ないことも背景にあるのでは、とManaさんは推測しています。夜の特番で芸能人が真剣にババ抜きをするような例も挙げていました。
知名度のある人が配信し、一度見るとショート動画でボードゲームがレコメンドされていきます。こうして知名度は少しずつ上がってきているとみています。
有名人が配信
テレビやYouTubeで芸能人・YouTuberがボードゲームを扱う
一度視聴する
興味を持ってボードゲーム関連の動画を見る
レコメンドされる
ショート動画などで関連動画が繰り返し表示される
認知が上がる
遊ばない層にも少しずつ知名度が広がる
中学生や子どもは、YouTubeを入り口にしている
若い層がどこで情報を得ているかは悩ましい点だといいます。ロフトやハンズにボドゲコーナーはありますが、いきなりPOPを見て選ぶことは少ないと考えていました。
ところが、蔦屋のボードゲームコーナーにいたところ、中学生が来て会話しているのが聞こえたそうです。
何々さんがYouTubeでやってたやつだ、それを見て欲しくなって探してたんだ、ここにあったんだ。
やはりYouTubeが入り口になっている、とManaさんは実感します。ゲームマーケットにもファミリー層が来るようになったといいます。
Manaさん自身の体験も印象的でした。作品「パロパロ」を展示していたところ、小学生くらいの子どもが駆け寄ってきたのです。
あ、これYouTubeで見たやつだ。
その子はパロパロで実際に騒ぎ出してくれたそうです。インフルエンサーの力で新たな層を呼び込めていると感じた一方、その時はお母さんが苦い顔をして、買ってはもらえなかったと苦笑まじりに振り返っています。
ゲームマーケットには、ポケモンのごいたや、芸能人・異業種の企業も参入しています。レイザーラモンHGさんやサントリー、謎解きの松丸さんなどの名前も挙がり、業界全体の盛り上がりを感じると話します。
「置いてあるだけ」では遊ばれない、あるバーの話
では、盛り上がってきた層にどう遊んでもらうか。ここにジレンマがあると、Manaさんは切り出します。
ボードゲームを作っていると言いふらしているManaさんに、ある人が「近所の行きつけのバーにボードゲームがあった」と教えてくれました。
ただ、そのバーは少し変わっていました。各テーブルに別々の種類のボードゲームがちょこちょこと置かれ、飲みながら自由に遊んでいいスタイルだったそうです。
同人系の印刷物も置いてあったと聞き、Manaさんは疑問を投げかけました。それは実際に遊ばれているのか、というものです。
置かれていたとしても遊ばれないと思うんですね。
聞いてみると、実際に遊ばれているのはUNOなどでした。飲みに来て「UNOあるじゃん、懐かしいね」となる、というのです。
知らないもの、興味のないものを、わざわざ手に取って説明書を読むことはしない。その想像は当たっていた、とManaさんは述べます。店長の趣味で置かれているだけで、実際には稼働していないという見立てです。
自分のボドゲを「無差別に置く」ことの無意味さ
いろいろな場所に自分のボードゲームを置いてもらう活動をする人もいます。けれど、そこで遊ばれなければ意味がない、とManaさんは考えます。
以前は、全国のボードゲームカフェにあちこち置いてほしいと考えていた時期もあったそうです。しかし、置かれてもたくさんの中から選ばれて遊ばれるのは厳しいと気づきました。
特に、店員がいない「場所だけ貸す」タイプの店舗では遊ばれにくく、棚のスペースにも限りがあるため、やがて破棄されてしまうと目に見えているといいます。
だからこそ、店員がきちんとおすすめし、インスト ── インストラクションの略。ボードゲームのルールを実際に遊ぶ人に説明すること。ボドゲカフェではスタッフがこの役割を担うことが多い。をしてくれる体制のカフェに置いてほしい、と考えています。
無差別に置いたとしても全然意味ないよなぁ。
認知がなければ、店頭に並んでも手に取られない
ただし、この戦略しか取れないのは、今の自分のフェーズだからだ、とManaさんは冷静に見ています。まだ問屋には流通させておらず、認知を取る動きができていないからです。
目につくところ、手に届くところに置いても、何かしら知っていなければ興味さえ持たれません。パロパロを見た子どもは駆け寄ってきましたが、その動画を見た人自体がまだ少ないのが実情です。
店頭に並べるより先に、認知を取るプロモーションが要るという考えです。本屋に流しても店舗にあるだけ、カフェにあっても遊ばれない、バーにあっても手に取られない、となりかねないと述べます。
だから今は積極的にそうした設置活動はしていないといいます。箱の裏やPOP、キャッチコピーの工夫も課題ですが、それだけを見て新規層が買うことは多くないとみています。
今のフェーズはネット通販とYouTubeに力を入れる
POPと箱裏で理解して買ってくれるのは、すでにボードゲーム好きな層です。彼らは自分で情報を得に行き、ゲームマーケットにも足を運びます。
そうした層に向けては、店頭よりもネット通販を狙った活動のほうが可能性があると考えています。動画で遊ぶ姿を見せられ、インストに役立つ画像も示せるからです。
そこでヒットが出て口コミが広まれば、次は店頭でどう魅力的に見せ、気づいてもらうかを考えるフェーズに入る、という展望です。
多くのボドゲ作家がそのフェーズに入っていけば、ボードゲームの認知も市場も広がっていくと考えられています。今その役を担えるのは大手や国内のパブリッシャーくらいで、しかも数が少ないのが現状だといいます。
問屋への流通で足踏みする理由
そもそも「ボードゲームってどこで買えるの?」という層がほとんどだ、とManaさんは指摘します。おもちゃ屋や本屋、トイザらスでも、この種のボードゲームは多くは置かれていません。
市場はまだ熟成していない、という見立てです。だから自分のフェーズでやるべきことを愚直にやりつつ、新たな層へのプロモーションも進め、Amazonなど買いやすい通販の反響を見て探っていきたいと話します。
強引に問屋から流通させる話もありますが、店頭で売れなければ次がないという懸念があります。問屋はワンカートン100個といった単位でまとめて仕入れるためです。
それがそのまま不良在庫になれば、次からおすすめしにくくなります。だからこそ足踏みしている、という実情を率直に語りました。
まとめ
ボードゲームを遊ばない層は、今も「人生ゲームみたいなもの」というイメージを持っています。テレビやYouTubeで知名度は広がりつつありますが、置くだけでは遊ばれず、認知がなければ店頭に並んでも手に取られません。Manaさんは今のフェーズでネット通販と動画に力を入れながら、市場拡大の道を探っていると話しています。
- 遊ばない層はボードゲームを人生ゲームやモノポリーで思い浮かべ、将棋やUNOは別物として捉えている
- 市場規模は70億円ほどで、紅生姜やペット用おむつと同程度。拡大には遊ばない層の取り込みが要る
- テレビ・YouTube・ゲームマーケットへの芸能人や異業種の参入で、知名度は少しずつ上がっている
- 無差別に置いても遊ばれず・買われないため、認知を取るプロモーションが先に必要
- 今のフェーズはネット通販と動画に注力し、ヒットと口コミを起点に次の段階を目指す



