「たくさんゲームを出せるのはなぜ?」という質問から始まる回
この回のテーマは、ゲームシステムの勉強方法です。番組「ボドゲの天下取り」で、制作者のManaさんが日頃どう勉強しているのかを話します。
きっかけは、ある人から受けた質問だったとManaさんは話します。たくさんゲームを出しているが、どうやってさまざまなゲームシステムを勉強して作っているのか、という問いでした。
いきなりアイデアがポッと思いつく天才ならそこまで苦労しないが、多くの場合は日頃の勉強の成果としてゲームが出来上がる、とManaさんは考えていると述べます。
ただし勉強の仕方は人によってさまざまで、これが正解というものではないとManaさんは前置きします。今回はあくまで自分がどう勉強しているかを話す、という立場です。
「お勉強」が嫌いな制作者と、辞書的な本の使い方
まず初めにManaさんが言いたいこととして挙げたのが、お勉強がとても嫌いだ、という点です。
私、勉強、お勉強といったものがもうとても嫌いでして。
Manaさんにとっての「勉強」のイメージは、目的や具体的な仕様のないもののために、とりあえず知識をたくさん集めて詳しくなろうとする行為だと説明されます。こうした地道な努力は苦手で、なかなか気持ちが入らないと話します。
ボードゲームを作り始めた当初は、まずゲームについて詳しくなろう、しっかり勉強しようと考えていたとManaさんは振り返ります。そこで本も買っていました。
例として挙がったのが『ゲームメカニクス大全』という分厚い本です。ドラフトやバッティングなど、ゲームを構成する要素を細分化し、名前が付いたものを解説した、辞書的な内容だと説明されます。
Manaさんは当初、この本を頭から全部覚えようとして読み進めていました。しかし、なかなかつまらなくて最後まで読むことはできなかったと明かします。
一方で、本を捨てたわけではありません。作りたいゲームが決まったときに、近いシステムが実際にどこにあるのか、足りない部分を補うにはどんなメカニクスがあるのかを調べる用途で活用していると話します。
日常的にそれ(本)を見て勉強をしているということはなかったりします。
日課はYouTubeの紹介動画を見まくること
では日頃どうしているのか。Manaさんが重要だと考えるのは、いろいろなゲームシステムに触れることです。いろんなゲームで遊ぶことに近いと述べます。
もちろん実際に遊ぶのが一番強いとしつつ、Manaさん自身がそんなにたくさん遊べているわけではないとも認めます。毎日のように遊び続けるのは難しい人も多いだろう、という前提です。
そこでManaさんが日々ルーティン的にやっているのが、YouTubeのゲーム紹介動画を見まくることだと説明されます。インフルエンサーが毎日のように上げる動画を、一通りチェックしているそうです。
それ(YouTubeのゲーム紹介動画)をまずとにかく見まくってますね。毎日のように。
参考にしている配信者たちと、それぞれの強み
Manaさんが参考にしている配信者として、まず筆頭に挙げたのがムーブさんです。基本的にプレイ動画を上げていて、最初にゲームルールの説明があり、その後プレイに入る構成が分かりやすいと話します。
ただしManaさんは、全部を全部見ているわけではないとも述べます。前半のルール説明の途中で離脱してしまうことも多いそうです。まずどんなゲームで、何が面白みなのかを把握したい、という意図があると説明されます。
その上で、動きや展開が気になったときだけ、後半の実際に遊んでいるプレイ動画まで見ると話します。純粋にエンタメとして見たいときは別ですが、勉強としてはこういう見方だと述べます。
口頭での説明はポイントを絞る必要があり、動画は特に、見ている人にサッと伝えないと離脱されてしまうとManaさんは指摘します。だからこそ特徴が端的にまとまっていて、ゲームシステムの知識を取り入れるのにちょうどいいという見立てです。
ショート動画についても、プレイの盛り上がりや展開の部分が端的にまとまっていて参考になると話します。そしてこの「端的に面白さを伝える」ことは、自分がゲームを作るうえでも重要だと結び付けます。
Manaさんは、しっかりインストして内容を熟知してもらってから遊ぶ形だと、遊ぶまでのハードルが遠くなると指摘します。ゲームマーケットでも売りにくく、SNSでも宣伝しにくくなる、という実感です。
ショート動画で参考にしている人として、せとさんとワタナベさんの名前も挙がります。それぞれ伝え方の個性が違うとManaさんは見ています。
どういうゲームで、誰におすすめか、遊んでみましょう、とわかりやすく紹介してくれる印象。
なぜそのゲームを遊ぶのか、どこが面白いのか、どんな世界観なのか、といった雰囲気をしっかり伝えてくれる印象。
さらにHAL99さんの動画も参考にしていると話します。ムーブさんやワタナベさんやせとさんは日本国内のゲームが多い印象だが、HAL99さんは海外のゲームも紹介してくれるとManaさんは述べます。
HAL99さんについては、軽ゲーだけでなく重ゲーも紹介してくれる点も参考になると付け加えます。扱うゲームの幅が広いことが理由として挙げられています。
ジャンルに特化した例として、Manaさんはアブストラクトゲームを大量に紹介しているチャンネルにも触れます。ラディアスリーさんが発信するYouTubeの「アブな世界」というコーナーです。
Manaさんは、アブストラクトはニッチなジャンルかもしれないとしつつ、そこにルール説明と実際のプレイがかなりの量あがっているため、このジャンルについてはとても参考になると話します。
ただ見るだけにしない、動画の「見方」のコツ
Manaさんは、ただ見て時間を消費しているわけではないと強調します。動画の見方にはポイントがある、というのがここでの話です。
1つ目のコツは、しっかり全部理解しようとしないことだと説明されます。Manaさん自身、ゲームの名前とシステムがあまり紐付いていないこともあるが、それは概要の把握に集中しているからだと述べます。
全体をしっかり覚えようとすると、自分が考えるときにそのゲームに引っ張られてしまう気がする、とManaさんは話します。だからこそ、面白いと感じたポイントだけを覚えていくやり方を取っています。
Manaさんは、作品ごとに光るものがあり、その光るもの同士の組み合わせから新しいイノベーションが生まれると考えています。だから覚えるのは作品全体ではなく、面白さの「粒」だと述べます。
勉強が先ではない。アウトプットと課題意識が吸収を変える
吸収は見るだけではダメで、必ずアウトプットを伴わないと血肉にならない、とManaさんは述べます。ここが勉強法の核心として語られます。
重要なのは順序です。Manaさんの場合は「勉強してから作る」のではなく、作りたいものが先にある、という順序だと強調します。集めた知識の中から何か作ろうとしても難しい、という実感です。
Manaさんは、作りたいゲームのアイデアはポンポンと大量に出てくると話します。ゲームシステムだけでなく、世界観だけのアイデアや、1つのアクションのアイデアも含まれると言います。
そうしたアイデアは、手帳にネタ帳のように書きためていると説明されます。それをもとにアイデア出しや検討を進めているそうです。
ただし、アイデアの粒だけではゲームは出来上がらないとManaさんは指摘します。まとめても面白くない、この要素がないと成立しない、ここが解決できない、といった課題がいっぱい出てくるからです。
この課題意識こそが吸収の鍵になる、というのがManaさんの主張です。こういう情報が欲しいと求めているからこそ、動画を見たときに使えそうな部分をピックアップできると述べます。
Manaさんは、自分の中に進行中・今後作りたいものの「粒」がたくさんあるほど、「え、何それ」というシステムに出会ったときの驚きも大きくなると話します。既存の粒があるから、新しさがより際立つという理屈です。
使えそうだと思ったものは、これをベースに考えてみようという形で創作につながっていく、とManaさんは述べます。吸収と制作が地続きになっている点が特徴です。
課題意識を持つ
作りたいゲームのアイデアや、うまくいかない課題を常に大量に出しておく。
使う前提で見る
その課題を解決できそうな要素を探す視点で、動画や説明書を見る。
粒を抜き出す
作品全体ではなく、面白いと感じた「粒」だけをピックアップして覚える。
組み合わせて試す
集めた粒と自分のアイデアを組み合わせ、テストプレイや脳内シミュレーションをする。
神経衰弱の裏表から生まれた「パロパロ」の例
Manaさんは、覚える「粒」がどれくらい小さいものかを、具体例で説明します。例えば「カードの裏と表の絵柄が違う神経衰弱」といったレベルだと言います。
自身の作品「パロパロ」も、表と裏で絵が違うカードを使うと紹介されます。ひっくり返しながら絵を合わせていくが、どんどん返すうちに訳が分からなくなる、という遊びです。
Manaさんは、両面が違う神経衰弱は世の中にいっぱいあると考えていて、その「違いが面白い」という点だけをピックアップしていたと話します。ここでも吸収するのは仕組みの全体ではなく面白さの一点です。
ただしパロパロは、両面が違うだけのゲームではないとも説明されます。蝶々の右羽と左羽で色を合わせる遊びで、左右の概念が加わっている点が特徴です。
さらに、胴体に右と左をセットするため保持できるのは2枚までで、別のものに変えるときは保持していたものを場に解放しなければならない、といったコントロール要素も追加していると述べます。こうして単なる神経衰弱ではないシステムになっている、という流れです。
Manaさんは、「裏表で絵が違う」という他所から吸収した粒や、自分で考えた粒をガチャガチャと組み合わせ、テストプレイや脳内シミュレーションを重ねると説明します。そこで面白さが足りない、詰まってしまう、といった課題をどんどん溜めていくそうです。
説明書やXの一文からでも「粒」は拾える
Manaさんは、実際に遊ぶことが新たなアイデアや創作意欲につながるのは間違いないとしつつ、それだけが情報源ではないと述べます。説明書を見るだけでも全然違うと話します。
Xで投稿されている紹介文、「こういうものが面白い」といった文脈を見るだけでも違うとManaさんは言います。「もうそういうシステムがあるんだ」という気づきになるからです。
具体例として、ムーブさんが紹介していたポーカーのゲームが挙がります。「役をぶっ壊すポーカー」と書かれていた、という一文だけでも粒になったと話します。
作った役を壊すっていうようなアクションというか技があるんだぐらいの把握で、何かそういうのも面白いよな。
Manaさんは、役を他のプレイヤーが妨害して壊すのか、といったレベルの解像度で覚えていくと述べます。細かく理解するのではなく、そのくらいの粗さで足していくことが勉強になっているという考えです。
頭の中の練習問題「混ざらなそうなものを混ぜる」
Manaさんは、吸収に加えて、頭の中だけで練習問題のようなこともやっていると明かします。全然違うジャンルを掛け合わせたらどうなるか、という化学変化を想像する作業です。
例として、アブストラクトの要素をトリックテイキングに入れてみる、役の効果の部分をドラフトに入れてみる、といった組み合わせが挙げられます。一見混ざらなそうなものでも混ぜてみる、というのがポイントです。
たいていは思いついただけではうまくいかない、とManaさんは述べます。そこで、うまくいかない理由も考えるのが大事だと言います。矛盾が生じる、といった原因を突き止め、それを解消する方法を考えていく流れです。
こうした課題意識を常に持ったうえでいろいろな動画を見るからこそ、短時間で日常的にさまざまなものを吸収できる、とManaさんはまとめます。とりあえず知識を入れるのではなく、何かに使う前提で見るという一貫した姿勢がここでも語られます。
どん詰まりの人へ。完成にこだわらず量を作るという選択
最後にManaさんは、作品作りでどん詰まっている人に向けて話します。1つの作品を作り上げることは重要だとしつつ、別のやり方も提案します。
それは、完成させるかどうかは置いておいて、様々な作品をどんどん作ってみることです。練習でもいいから作っていくことが、本筋のゲーム制作にも生きてくると考えられると述べます。
Manaさん自身、出している作品は7〜8個だが、没作品や途中まで考えて止まっているものはもっとずっと多いと明かします。テストプレイまで行けないアイデアばかりの中から、やっと完成にいけたものがある、という実感です。
たくさん作っていくと、自分の中でもアイデアの合体や、壊して作り変えるといった変革がいっぱい起こっていく、とManaさんは述べます。だから量をこなすやり方はありなのではないか、という提案です。
Manaさんは、これはあくまで自分のゲームシステムの勉強方法だと改めて断ります。人それぞれ勉強法があるはずなので、いろいろな媒体で発信してくれたら自分も参考にできて面白い、と締めくくります。
まとめ
Manaさんの勉強方法は、知識を集めることそのものではなく、作りたいものという課題意識を先に持ち、使う前提で情報を吸収する点に一貫しています。動画や説明書からは仕組み全体ではなく「面白さの粒」だけを拾い、それを組み合わせて試すサイクルが語られました。
- お勉強として辞書的な本を頭から覚えるのは続かず、必要なときに参照する道具として使っている
- 日課はYouTubeのゲーム紹介動画を見まくること。ムーブ・せと・ワタナベ・HAL99など、強みの違う配信者を使い分けている
- 動画は全部理解しようとせず、面白いと感じた「粒」だけを覚える。作品全体を覚えると発想が引っ張られるため
- 勉強してから作るのではなく、作りたいものと課題意識が先。だから「何かに使う前提」で見ると吸収が速くなる
- どん詰まりのときは1作にこだわらず、練習として量を作ることが本筋の制作にも生きてくる





