ボードゲーム作家にブランディングが必要な理由
Manaさんはこれまでの配信で、ボードゲームの作品単体だけでなく、ボードゲーム作家自体にもブランディングが必要だと繰り返し伝えてきました。今回の「ブランディングの罠」は、その前提を踏まえたうえでの補足です。
Manaさんがブランディングを重視する理由は、ボードゲームで生計を立てるには売れ行きの安定が欠かせないからです。一作ごとにヒットを狙うばくちのような勝負を続けるのは、作家にとってかなり大変だといいます。
一つ一つの作品でばくちを打つような形でなんとかヒットを飛ばそうですとか、それで売れた売れないっていった勝負を毎回やっていくっていうのって、なかなか大変だったりするんですね。
Manaさんによれば、作品を出して売るほど実績と信頼が積み重なり、ブランディングが構築できれば安定につながります。正当な価格で売れるようになり、やりたいこともできるようになるというのが、これまで語ってきたメリットです。
ボードゲームは年間に何千もの新作が出る市場です。その中で自分の作品が選ばれ、新作が出るたびに「あの作品が気になる」と思ってもらうために、ブランディングが重要だとManaさんは説明します。
ブランディングの進め方として、Manaさんは特徴を明確にすることや箱のサイズを統一することを挙げてきました。例として、特徴的な箱を使っているオインクゲームズさんの名前も出ています。
特徴を決めることは「制限」でもある
ただしManaさんは、箱や特徴などの「あなたのボードゲームだとわかるアイコン」づくりばかりにとらわれるのは微妙だと考えています。どんなブランディングにするかは、本来は売る前の戦略的な部分にあたるからです。
Manaさんが挙げる戦略の例は、専門性を高めることです。箱のサイズを揃える、トリックテイキング専門にする、特定のジレンマやアートワークを特徴にするなど、方向性はさまざまです。
(特徴を決めることは)今後のボードゲーム制作活動において、一体お客様に何を約束するのか、何を伝えるのか、それを決めていくっていう作業になるわけなんですよ。
Manaさんは、一度決めた特徴はぶらさないほうがよいとも考えています。だからこそ、ブランディングは自分の今後の制作活動に制限をかける行為だともいえ、窮屈な面があると話します。
自分が本当にその方向に向いているのか、特化すべきなのか、ユーザーに刺さるのかがわからない段階でブランディングに注力するのは危険だというのが、Manaさんの問題提起です。「必要だから、とりあえずやろう」と本質を見ずに始めることへの注意でもあります。
ブランドは誰がつくるのか?作り手と市場、2つの側面
Manaさんは、ブランディングは「作ろうと思って作れるものでもない」と話し、自分の発言が矛盾して聞こえるかもしれないと前置きしたうえで、ブランディングには2つの側面があると説明します。
作者が何を提供するかを約束し、それを履行することで「この作者はこういうものだ」というイメージを持ってもらう
周りの評価から「この人はこういうものだ」という特徴が自然と見えてくる
2つの側面のうち、最終的に決め手になるのは市場の評価だとManaさんは考えています。作り手が何を約束しても、そう思ってもらえるかどうか、何を期待され何が刺さるのかは、市場が決めるからです。
ある意味、市場の評価がブランドを作り上げていくと言っても過言ではないのかなっていうふうに思っておりますと。
ブランディングはリピーターのための戦略
Manaさんは、ブランディングの目的を「あなたのボードゲームだと気づいてもらう」「買おうと思ったときに最初に思い浮かぶ」「この価格でもあなたの作品なら買う」と思ってもらうことだと整理します。
こうした目的を並べると、ブランディングは新規客を取るためではなく、リピーターを積み重ねるための戦略だとManaさんは指摘します。リピーターが増えると、次のような良い循環に入るといいます。
リピーターが増える
売れ行きが安定し、作品の価値もリピーターが自然と高めてくれる
初期販売ロットが増える
初期製造数を増やせるようになる
1個あたりのコストが下がる
浮いた分をコンポーネントにかけられる
ユーザーが喜ぶ
リッチなコンポーネントで満足度が上がる
ただし、リピーターを生むにはまず遊んでもらう必要があり、そのためにはたくさんの人に買ってもらわなければなりません。だからManaさんは、最初はブランディングの設計より、自分のボードゲームをいかに届けるかに注力すべきだと話します。
自分の活動に制限をかけるブランディングと、より多くの人に届ける活動は、相反する面があります。Manaさんは、この点を勘違いすると「窮屈だし、売れない」状態に陥ると警告します。
そもそも売れないとユーザー体験も積み重なっていかないので、リピーターが起こらないと。
Manaさんによれば、ジレンマやアートワークといった特徴も、買った人がそう感じて初めて、作者の狙いとユーザーの感じ方が合致し、ブランディングになっていきます。誰も遊んでいない状態では、伝えることすらできません。
売る前のブランディングは「ハリボテ」
誰にも売っていない段階でブランディングばかり考え、売ること自体をおろそかにするのは本末転倒だとManaさんは言います。一方で、売るためにブランディングが必要かというと、それも少し違うといいます。
Manaさんは、ブランディングを立ち上げると宣言しただけで売れ行きが伸びるわけではないと考えています。最初に大切なのは、情報をきちんと届けることと、届いた人がどう感じるかを受け止める受け皿を用意しておくことです。
初めはブランディングを考えずにどんどん売ってもよい、というのがManaさんの考えです。そのうえで、ブランドが形になっていく流れを次のように説明しています。
ちゃんと売る前のブランディングっていったものは、あくまでもハリボテに過ぎないんですね。もう一人で言ってるだけの状態です。
Manaさんは、初めはハリボテでもよいかもしれないとしつつ、それが本物になるにはユーザーの体験から生まれる印象が欠かせないと話します。1作や2作でブランディングが成立することはまずないともいいます。
例外として、最初の1作や2作が大ヒットし、共通する特徴もある場合は、早めにブランディングを進められるとManaさんは見ています。ただしそれも、大ヒットしてからの話です。
ブランディングは魔法の杖ではない
大ヒットがない限り、地道に何作も出して着実にファンを増やすことが重要だとManaさんは強調します。ブランディングを特別な武器のように捉えることへの注意です。
Manaさんにとってのブランディングは、枠組みやパッケージングを整える、泥臭い作業の一環です。この点を履き違えると失敗しかねない、というのが今回の「ブランディングの罠」です。
Manaさんがこの話をした背景には、配信の聴き手やnoteの読者が増え、X上で反応を見かけるようになったことがあります。「その通りだ、やってみよう」という声の中に、意図が端的にしか伝わっていない、本質からずれた受け取り方も見えたといいます。
まずはほんと、そういった細かいことよりも、いかに自分の素晴らしい作品をお客様に届けるのか、楽しいって思える人たちをどれだけ探すのか。
Manaさんは、届けた相手が何を楽しいと感じ、何に期待し何に満足したのかを把握するところから始めてほしいと呼びかけ、話を締めくくりました。
まとめ
Manaさんは、ブランディングの重要性を認めつつも、売る前に特徴を決め込んで自分の活動を縛ることを「ブランディングの罠」と呼びました。ブランドは市場の評価とユーザー体験から育つものであり、まずは作品を届けることが先決だという内容です。
- ブランディングは売れ行きを安定させるが、目的はリピーターを積み重ねること
- 特徴を決めることは制作活動への制限でもあり、向き不向きがわからない段階での注力は危険
- ブランドは作り手の約束だけでなく、最終的には市場の評価とユーザー体験から生まれる
- 何作か出して反応を見て、自然と絞られた特徴を言語化・研磨するとブランドを作りやすい
- ブランディングは魔法の杖ではなく、地道にファンを増やす泥臭い作業の一環

