なぜExcelとWordが社労士実務に必要になるのか
今回のテーマは、Excelを勉強しすぎたけれど、あまり意味がなかったという吉田さん自身の振り返りです。
吉田さんはまず、社労士の実務が試験勉強だけでは完結しないと説明します。労働基準法や健康保険法を学んでも、実務がバリバリできるわけではなく、いろいろなことを勉強する必要があるといいます。
その中で、ある程度使えないとまずいものとして挙がるのがExcelとWordです。吉田さんは一時期かなり凝って勉強したそうですが、やりすぎても意味がなかったと切り出します。
社労士って何に苦労するのかっていうと、意外と泥臭いことにこう苦労するんですよ。
泥臭さの具体例として、紙のタイムカードの手集計が挙げられます。一日一日を電卓で集計するのは手間なので、集計が楽になるExcelを作るという発想が生まれます。
もう一つの例が、お客さんからもらったCSVやExcelのデータを、VLOOKUP関数などを使って自社ソフトに入れられる形式へ変換する作業です。VLOOKUP関数 ── Excelで表からキーに一致する値を探して取り出す関数。名簿やコード表の照合に使われ、データ変換作業で多用される。吉田さんは、これができるかどうかで作業時間が大きく変わると話します。
100人分のデータ入力をExcelで一発化する現場
吉田さんが社労士を始めた頃は、労務管理ソフトへの手入力が基本的なオペレーションでした。シャロームやセルズ、オフィスステーションといったソフトを事務所で契約して使っていたといいます。労務管理ソフト ── 社会保険や労務の手続きを電子化・効率化するための業務ソフト。従業員情報を登録し、各種書類作成や申請を支援する。
たとえば「山田太郎さんが入社しました」となると、生年月日や住所を一件ずつ手打ちしていく。これが基本の流れですが、吉田さんはいつか限界が来ると指摘します。手打ちだからです。
そこで生まれるのが、100人分のデータを入れるなら、基礎となるExcelをデータベース形式で作り、一行ずつ並べて一括で取り込むという発想です。多くのソフトでこうした一括取り込みができるといいます。
この元データを作るにはExcelスキルが欠かせません。前述のタイムカード集計も、気の利いた関数が入り乱れた集計表を作ることになります。吉田さんはこれをきっかけに猛勉強していた時期があったと振り返ります。
その結論として、吉田さんが実務で必要と考える関数の水準はかなり限定的です。
作った人が辞めると誰も直せない「ExcelのOパーツ」
なぜ関数の高度なスキルまで要らないのか。吉田さんの答えははっきりしていて、Excelやマクロを組んでも、結局それが属人化するからダメだといいます。
その前提として、社労士事務所で働く人の知識の偏りがあります。試験で出てくる法律には詳しくても、ExcelやWordの知識は全然ないケースが多いというのです。
イメージとしては十人に一人ぐらいしか、すごいまともに(Excelを)使える人っていうのはいないような印象です。
そうなると、事務所の中に事実上のExcel開発担当のような人が生まれます。その人が気を利かせて、みんなのためにタイムカード集計表を作ったり、決まった場所にデータを入れれば一瞬で処理が進む仕組みを作ったりする。吉田さん自身も作ったといいます。
問題はその後です。作った人が辞めると、そのExcelのメンテナンスができなくなります。
誰も理解できないような、このOパーツみたいなのが、ExcelのOパーツみたいなのができて。
不具合が起きても直せないため、結局は一人ずつ入力する元のオペレーションに戻ってしまいます。吉田さんは、あまりにも高すぎる知識で作った成果物のExcelは、メンテナンスできないから無駄だと言い切ります。
条文を追加すると番号が総崩れ。Wordで格闘した就業規則の改正
もう一つ吉田さんが頑張ったのがWordです。ワープロソフトの延長に見えて、実は機能が奥深いといいます。
社労士が困るのは就業規則の改正です。就業規則は第1条が目的、第2条が適用範囲というように条番号が決まっています。ここで手作業に頼ると大変なことになります。
たとえば100条ある就業規則で、第50条の後に新しい第51条を追加すると、旧第51条以降の番号を全部手作業で書き換えなければなりません。51を52、52を53と直していく作業です。
Wordには、これをやらずに済む機能があります。吉田さんは、正式名称はわからないとしつつ、アウトライン機能のようなものだろうと話します。一条追加すると以降の条文番号が自動でスライドする仕組みです。
さらに研究すると、本の冒頭にあるような目次を自動生成することもできると知り、そこまで勉強したといいます。
もう一つ吉田さんが感心したのが相互参照機能です。就業規則では、たとえば第50条の中に「この条文は第40条を参照します」と書くことがあります。
新しい条文を挿入して番号がずれると、本来は参照先の「第40条」という記述も書き換えが必要になります。Wordの相互参照機能を使えば、この参照先も自動でスライドします。吉田さんはこうした機能まで学んでいたと振り返ります。
教え続けられない現実。ITリテラシーの格差が生む属人化
これらのWordスキルも、吉田さんは結局あまり意味がなかったと感じています。目的は、勉強した内容を勤務先の事務所に持ち帰り、みんなに広めて全員で業務効率化することでした。
ところが、それを教えるのが難しかったといいます。相互参照のような機能は、ITリテラシーの格差があると伝わりにくいのです。
さらに、一度教えて終わりではないという難しさもあります。知識は劣化していくため、みんなが忘れないよう定期的に教え続ける必要があります。しかし社労士事務所は忙しく、知識のメンテナンスに時間を割く余裕がありません。
その結果、ExcelやWordの担当者が一人で全部を抱え込み、ExcelもWordも属人化していくという、Excelのときと同じ構図に戻ってしまいます。吉田さんはここで、ExcelとWordでは限界だと感じたといいます。
詳しい人が仕組みを作る
集計表や自動化を一人が構築する
教えても定着しない
リテラシー差と多忙で継続的に教えられない
担当が一人に固定される
ExcelやWordが特定の人に属人化する
担当が辞ける・忘れる
メンテナンスできず元の手作業に逆戻り
Excel・Wordの限界を超える答えはクラウドツールだった
限界を感じた吉田さんが出会ったのがクラウドツールでした。まず勤怠管理の面で、Excelでのタイムカード集計にはやはり限界があるといいます。
特に1か月単位の変形労働時間制はExcelでの集計が大変ですが、KingofTimeを使えばかなり楽になると話します。変形労働時間制 ── 一定期間内で労働時間を平均して法定内に収める働き方。日や週の労働時間が変動するため、残業計算が複雑になりやすい。通常の労働時間制でも、1日8時間や週40時間を超えた分を残業として処理するのを、デジタル勤怠システムなら難なく処理してくれるといいます。
吉田さんがクラウドツールの利点として強調するのが、属人化しにくいという点です。学ぶコストはあるものの、みんなが同じデータを見て、オンラインヘルプも充実しています。
すごい属人化しにくいんですよ。みんな同じデータを見るし、オンラインヘルプは充実してるし。
就業規則についても同じで、Wordのアウトラインや相互参照を使いこなせても、事務所の中で使いこなせる人は一握りにとどまります。そこで出会ったのがKITERAというサービスでした。
(KITERAだったら)これだったら誰でもみんなで就業規則メンテナンスできるようになるなって思いました。
吉田さんは、ある程度ExcelとWordを勉強することは重要としつつ、勉強しすぎてもその先に限界があると社労士事務所で働く人に伝えたいと締めくくります。そして、それを解決する手段は今のところクラウドツールしかないと話します。
まとめ
吉田さんは、ExcelやWordを極めても、それを扱えるのが一人に偏ってしまえば結局は属人化し、その人が辞ければ元の手作業に戻ると指摘します。個人のスキルではなく、みんなが同じ仕組みを共有できるクラウドツールこそが、社労士事務所の業務効率化の答えだという実感が語られました。
- 社労士実務ではExcelとWordがある程度必要になるが、必要な関数はVLOOKUP・COUNT・SUM・SUMIF程度で十分
- 高度なExcelやマクロは、作った人しか直せず属人化するため、辞めると誰もメンテナンスできなくなる
- Wordのアウトラインや相互参照は就業規則改正に便利だが、使いこなせる人が一握りで定着しない
- 知識は劣化するため教え続ける必要があるが、多忙な事務所ではメンテナンスの余裕がない
- KingofTimeやKITERAなどのクラウドツールは属人化しにくく、業務効率化の現実的な解になる







