フロー型とストック型、その違いはどこにあるのか
番組「ボドゲの天下取り」のこの回のテーマは、ボードゲームはストック型であるという考え方です。作ったものが資産的に積み上がっていくスタイルが、ボドゲ制作・販売に合うのではないかという話です。
ストック型を説明する前に、Manaさんはまず対になるフロー型を紹介します。フロー型は、新作をどんどん売り切っていったり、来た人に次々と商品を提供していったりするスタイルです。
フロー型のわかりやすい例として挙げられたのが飲食店です。ラーメン店で塩ラーメンや味噌ラーメンといったメニューを増やしても、その日の売上はそれほど変わらないと説明されます。
同じくそこで食べる人といったものも、1日で食べられる量も一緒ですから、客数自体を増やしていかないといけない。
つまりフロー型では、メニュー数が客数に直接つながるわけではありません。来た人に商品を販売し続けていく、その積み重ねが売上になるビジネスモデルだと整理されます。
新作や最新情報を次々に届けて売り切る。初速の到達と拡散力は強いが、過去のものは売上に残りにくい。
過去に作ったものが資産として溜まっていく。後から人気が出ると過去作の売れ行きまで変わっていく。
一発屋で終わるか、過去作まで動くか
ストック型の例として挙げられたのが本です。新作が動くのはもちろん、ある作者を好きになると、その人の過去作までさかのぼって読んでいくという流れがあります。
Manaさんは具体例として東野圭吾を挙げ、新しい作品で面白いと感じたら過去作も見ていくはずだと話します。逆に過去作がない場合は、一発屋という言われ方で終わってしまうと指摘します。
後半に人気が出ることで、過去作の売れ行きまで変わっていく。これまでの活動がすべて資産に変わっていく、それがストックになっていくという説明です。
SNSで見るフロー型とストック型
SNSにあてはめると、Xはフロー型に分類されると説明されます。最新情報はインプレッションが上がっていく一方で、過去に投稿された記事はほとんど見られないという特徴です。
自転車操業のように、どんどんどんどん情報を発信していかないといけない。
ただしフロー型には強みもあります。初速での情報の到達と拡散力、最新性、そして皆が興味あるものにズバッと当てていく力は、フロー型がとても強い部分だと補足されます。ショート動画も同じくフロー型に入るとされました。
一方でストック型のSNSとして挙げられたのが、YouTubeの長尺動画です。良いと思ったYouTuberの過去の動画を履歴でさかのぼったり、検索やおすすめ欄から古い動画にたどり着いたりするからです。
しっかりとしたYouTubeの動画を撮り続けていくと、動画の本数が上がれば上がるほど、(1ヶ月あたりの)総再生数といったものは上がっていきます。
同じくnoteやブログ記事もストック型に入るとされます。記事や動画が積み重なるほど、チャンネルやサイト全体の再生数・購読数が伸びていく構造です。
ボードゲーム制作はどちらに当てはまるのか
では、ボードゲームの制作はどちらにあたるのか。Manaさんの答えは、やはりストック型だというものです。
ボードゲームにも初速はあります。オフラインの制作では「新作ブースト」がかかり、新作を出すこと自体が一つの告知・ニュースになると説明されます。
ただし、それ以上に強いのは実績として積み重なっていく点だと話されます。今は作者を知らない人でも、将来どこかの作品を面白いと思ってもらえれば、過去作をさかのぼって買ってもらえる「作者買い」が起こるからです。
実際に私もこれまで(複数作)出しておりますけれども、全然(過去作も)動くわけなんですよ。
Manaさん自身、新作を売り切って終わりではなく、在庫が切れる時もあるものの、できる限り過去作も含めて在庫を用意していると語ります。過去作もポロポロと売れ、中には全作品まとめて買ってくれる人もいるそうです。
一つの作品だけで戦う難しさ
ここでManaさんは、一つの作品だけで頑張っていく場合の難しさに話を移します。新作というブーストは一回しか使えず、その後は同じ作品を告知し続ける形になるからです。
既にその作品を知っている人や、一度買わないと判断した人に、同じ告知を繰り返しても、遊んでみようとはなりにくいと指摘されます。
これをYouTubeに置き換えると、一本の動画に広告を打つだけで再生が伸びていくのは難しい、というイメージがつきやすいと例えられます。ボードゲームも同じだという説明です。
一本の動画で果たして伸びていけるのか。それって難しいっていうのは結構イメージつくと思うんですね。
商品を宣伝して購買につなげるには、ニュース、つまり新しい情報を届けることが必要になります。ところが一つの作品では、そのニュースを起こしにくいという構造的な問題があると整理されます。
大会を開いたり、取り扱い店が増えたりすれば告知にはなりますが、それも簡単ではありません。仮にこの作者は良いと思ってもらえても、一個しか買われないで終わってしまうことが起きます。
新作が過去作を引っ張るストックの循環
ストック型であれば、過去作も動くうえに、資産として積み上がっていくとManaさんは話します。新作を出すたびにニュースになり、新たな告知にもなるからです。
最新作を出すよ、そして過去作もあるよという形にすると、合わせ買いも生まれます。新作を買ってくれた人が過去作にも興味を持つ、という流れです。
作品が溜まっていくほど、この循環は起こりやすくなります。この作者は面白かった、過去作もいろいろある、実績もある、じゃあ次は何を買おうか、という検討に入ってもらえるからです。
この作者面白かったなと。そうすると過去作いろいろある。結構いろいろ出してるんだ、実績もあるんだ。
次に何を買おうかという検討が生まれるためには、ストックされている資産の数が重要だとまとめられます。YouTubeやブログも、記事や動画が多いほど全体の再生数・購読数が伸びるのと同じ理屈です。
作品を面で売ることが安定収益につながる
番組の狙いは、ボードゲームをうまくビジネスに転換していくことにあり、安定的な収益も意識していると語られます。
一つの作品だけだと、その商品の売れ行きに左右されてしまいます。しかし月々、自分の作品全体がどれくらい売れているかで考えると、それが新作でも旧作でも収益は積み上がっていきます。
Manaさんはこれを「面で売る」と表現します。初速ほどの勢いはなくても、複数の作品が少しずつ売れることで、売上が安定していくという考え方です。
たとえば毎月1作品につき1個しか売れなくても、作品数だけ合計すればまとまった数になります。一つの作品で毎月コンスタントに売るより、複数作品で同じ販売数を保つほうが安定すると説明されました。
運の要素にどれだけエントリーできるか
さらにManaさんは、売れるかどうかにはトレンドやタイミングという運の要素もあると話します。5年前なら売れなかったものが今なら売れる、逆に今では遅いものもある、という具合です。
どれだけそこにエントリーできるのかっていう話になってくると思うんですよ。いわゆるガチャ引きですね。
運の要素があるなら、たくさんの種類を出してエントリー回数を増やすほど、大ヒットを引き当てる確率も上がる、という発想です。過去作でじわじわ売れて安定を保ちつつ、いつか大ヒットを狙うスタイルが勝ち筋だとされます。
YouTubeでも、最初は鳴かず飛ばずでも、どこかの動画がバズると過去作まで一気に見られるようになります。ボードゲームでも、バズって作者のファンが増えれば、過去作の購買も伸びていくという同じ構造です。
作品を出し続ける
新作をニュース・告知として使いつつ、過去作を資産として積み上げていく。
じわじわ売れて安定
過去作が面で売れることで、初速に頼らない安定した売上のベースをつくる。
どこかでヒットを引く
トレンドやタイミングという運の要素に、多くの作品でエントリーし続ける。
過去作まで動き出す
ヒットでファンが増えると、作者買いで過去作の購買も一気に伸びる。
ブランド構築と動線づくりの重要性
続けていくうえで意識すべきなのがブランド構築だとManaさんは話します。作品を買って面白かったで終わってしまうのはもったいない、という問題意識です。
自分の作品をまだ遊んでいない人には、新作で積極的に攻めのマーケティングを仕掛けていく。そこで気に入ってくれた人を、過去作へと向けていく動線づくりが必要になります。
一個最新作買って終わりではなくて、過去作も買いたいなって思ってもらえる、そういったような動線づくり。
そのために必要なのがブランドです。「この人なら大丈夫」という安心感や、「この作品もこの人なんだ」とわかってもらえること。そうした設計を考えていく必要があると語られます。
一度ゲームマーケットに出た、一作作っただけで終わってしまうのはもったいない、という指摘もされました。拡張版や第二版で一つの作品を育てる道もありますが、それは一回のガチャ引きの結果がそこで止まっている状態でもあると捉えられています。
継続が複利で効く。勝つまで続ける発想
一つの作品を継続して売ることも大事ですが、それに加えて、新しい作品をニュースとして、新しい間口としてどんどん広げて出していくことが必要だとまとめられます。
Manaさんはこれを「勝つまで続けましょう」という言葉で表現します。下積み時代が長いほど、当たったときの反動は大きくなるという見立てです。
いわゆるこの継続、どんどんボードゲームを出していくっていったものは、ほんと複利的に増えていくものだと思っております。
たとえば第一作が毎月1個しか売れなくても、どこかでヒットが起きれば毎月10個売れるようになる。そうした変化が、各作品に起こっていく可能性があると説明されます。
人気が出れば販売店から声がかかることもあります。その際、最新作だけでなくメーカーとして新カテゴリーを用意してくれる場合もあり、過去作を含めてまとめて発注が入ることもあるそうです。
売れ残っても資産。資産形成としてのボドゲ制作
売れなかったとしても、作品を出したこと自体がストックとして溜まっていく、と資産の側面が強調されます。
どっかでヒットが出てくるまでは資産形成っていうような位置付けで、どんどんどんどん貯めていく。
この位置づけのほうが、考えていて楽であり、着実な勝ち方になっていくとされます。一作目や二作目で大ヒットする人もいますが、いずれにせよ継続的に出していくことが必要という点は変わりません。
仮に10作品目や20作品目でヒットしたとしても、過去作まで動いてしまえば結果は同じになります。フロー型のように毎月ガスガス出して消耗するのではなく、継続することが大切だと語られます。
継続は力なり、継続は大事っていったものは、ある意味ボードゲーム制作でいうと本当にそうなのかな。
売れていない人こそ続けたほうがいい理由
最後にManaさんは、これからボードゲームを作る人へメッセージを送ります。一作品目だけで終わらず、どんどん続けていったほうがいいという勧めです。
すでに何作か出したものの、なかなか売れていないという人にも言葉がかけられます。どこかで当たることもありますし、売れなかったのは商品が悪いのではなく、欲しい人に情報が届いていない、知名度が足りないだけの可能性もあるからです。
商品自体は素晴らしい、とても面白い。だけど知ってもらえてない。じゃあ知るきっかけってどこなんだ?
だからこそ新しい作品を出し続け、そこで爆発的にヒットさせて「実は隠れた名作があった」という形で過去作も売れていく。そんなスタイルへの切り替えも一つの考え方としてありなのではないかと提案されます。
番組「ボドゲの天下取り」は、制作論だけでなく、実際にどう売っていくかというボドゲ活動をビジネス視点も交えて語るチャンネルだと締めくくられました。
まとめ
この回は、ボードゲーム制作をフロー型ではなくストック型のビジネスとして捉え直す考察でした。過去作を資産として積み上げ、面で売って安定させながら、どこかで訪れるヒットを引き当てる。その継続こそが、着実な勝ち筋だと語られています。
- ボードゲーム制作は、新作を売り切るフロー型ではなく、過去作が資産として積み上がるストック型として捉えられる。
- 一つの作品だけではニュースを起こしにくく、告知を繰り返しても届きにくい。新作は過去作を引っ張る告知にもなる。
- 複数作品を「面で売る」ことで、初速に頼らない安定収益につながる。
- 売れるかどうかにはトレンドやタイミングの運もあり、作品数を増やすほどヒットにエントリーできる回数が増える。
- 売れ残っても作品はストックとして残る。資産形成と位置づけ、勝つまで継続する発想が着実な勝ち方になる。



