AIは調べ物から制作現場まで、どこまで来ているか
ボードゲームで天下を取るためにビジネス的な視点を交えて考察する番組「ボドゲの天下取り」。この回のテーマは、ボドゲ制作におけるAI利用です。
Mana(マナ)さんはまず、自身のAIとの付き合い方から話し始めます。ちょっとした調べ物であれば、以前はGoogleで検索していたところを、最近はGeminiを立ち上げて聞いてしまうようになったと言います。
生成AIでデザインを作ったりイラストを描いたりと、さまざまな使い方が巷では騒がれています。ボドゲ制作の現場でも、AIをうまく使えないかという勉強会があちこちで始まり、活発になってきているといいます。
ただしMana(マナ)さん自身は、まだうまく使いこなせていないからかもしれないと前置きしつつ、AIの立ち位置は今のところ微妙だと考えていると話します。
そのうえで、AIの進歩はすさまじく、数ヶ月先には状況が変わっている可能性もあるため、あくまで今の時点の話として聞いてほしいと断りを入れています。
そもそもなぜAIを使うのか。多くは「コスト削減」が入口
AIが誕生する前は、イラストはイラストレーターに発注し、ルールも説明書も自分で作っていました。では、なぜここまでAI利用が広がっているのか。Mana(マナ)さんはいくつかの理由を挙げます。
一つは、個人でやっていて外注する先がない、あるいは頼むのも大変だから、自分で作ってしまおうという流れです。デザインができない人が自分でデザインを作ってみる、といった使い方が考えられます。
プロトタイプをサクッと作る段階なら、AIは雰囲気も出てスムーズだといいます。一方で、ちゃんとしたものを作るとなると、AIだけでは難しいというのがMana(マナ)さんの実感です。
ボドゲ制作者としては、いいものを作ることに向かっていくべきだと話します。特に自分が苦手な分野でどこまで踏ん張れるかが問われ、そこを諦めると自分の得意分野でしか戦えなくなってしまいます。
こうした状況を紐解いていくと、AI利用の目的の多くはコスト削減を狙っているのではないか、とMana(マナ)さんは見ています。安くできるところは安くする、そのためにAIを使えないかと考えている人が多いのではないか、という指摘です。
コスト削減のはずが「妥協」に。AIの微調整の落とし穴
ところが、安くするためにAIを使っても、面倒なところが出てくるとMana(マナ)さんは言います。特にイラストやデザインは、手軽に作れる反面、もう一段階こだわりを入れる段階で苦労します。
ちょっとした微調整、「ここが違うんだよな」という部分を直すのが、AIではかえって大変だといいます。
ある意味全部作り直しみたいなものだったりだとか、ちょっとずつ直すっていうのも試行錯誤を繰り返してやる必要とかが出てきてしまう
AIは無料ではなく、トークンを使ってリクエストを生成するほどお金がかかります。ちょっとした調整をやろうとすると、結局そこまで安くないという問題が出てきます。
入口がコスト削減になっていると、微調整を諦めてしまう人が多いのではないか、とMana(マナ)さんは指摘します。トークンの限界が来て追加購入が必要になり、「これでいっか」と妥協になっていくという流れです。
さらに、AIはどこかで学習したデータから生成するため、どこかで見たようなデザインになりがちです。自分のこだわりも貫ききれず、世の中のものの劣化版のようなものしかできないのではないか、と話します。
もちろん、AIの使い方が上手で、トークンをリッチに使え、単に発注先や人脈がないだけという人にとっては、AIは大いに活用できるかもしれない、とも補足しています。
説明書づくりでは強い。散らばった情報を素案にまとめる使い方
では、Mana(マナ)さん自身はAIをどこで使っているのか。よく使うのは説明書だといいます。
ゲームのアイデアが出た最初の段階では、メモにバーッと書き出していきます。友達とテストプレイしながら組み立てることもあり、その時点では情報が整理されていない状態です。
そこで、インストするように「こういうルールです」「手番はこうです」といった内容をどんどん書いてAIに投げ込み、説明書の形にしてもらうと、手順を追って読めるレベルにしてもらえるといいます。
ポイントは、それをそのまま使うのではなく、文書構造として整理される過程で、自分がやりたかったものも整理されていくことです。
そしてルールの穴であったりだとか、ここ定義していなかったなだとか、そういったものとかも見えるようになっています
初めから自分で説明書を書いて直そうとすると、自分の説明の拙さや細かい部分に気を取られ、ルール自体を叩くレベルではなくなってしまいます。だからこそ、まず素案をAIに起こしてもらい、そこに手直しや追加をしていく形が向いているといいます。
ただし、そのままは使えないとも言います。楽しさのためのニュアンスの違いなどがあるため、手は加えなければいけませんが、散らばった情報をひとまとめにする用途ならAIは十分使えると話します。Mana(マナ)さんはこの作業をGeminiで行っているそうです。
翻訳もAIが得意。ただしネイティブの手はまだ必要
もう一つの活用先が翻訳です。直訳系のツールでは言葉がそのまま英語に置き換わってしまいますが、AIの翻訳は文脈を読んでくれるぶんレベルが高い、とMana(マナ)さんは評価します。
「これはボードゲームの説明書です。英語に翻訳してください」と指示するだけでも、ボードゲームらしいニュアンスを加味した、読める状態の英文になるといいます。
ただし、これもそのままは使えません。AIが出力した英語の説明書を、実際にイギリスの友人に読んでもらったところ、いろいろな指摘が入って戻ってきました。
ここニュアンス変だねだとか、ここわかりにくいねだとか、ここ実際にはこういう言い方しないよだとか、結構赤入れが入って戻ってきました
一方で、その友人からは「全然読めるレベルだよ、わかりやすかったよ」とも言われたそうです。ベースはクリアしているものの、ネイティブとして読みやすいところまで求めるなら、まだ人の手が必要だと考えています。
まとめると、Mana(マナ)さんはバラバラなルールを説明書の素案としてまとめてもらい、それを翻訳にかけるところまでをAIに任せています。実際の制作物は、ほぼ人の手でやっているといいます。
散らばったルールを説明書の素案にまとめる、その説明書を英語に翻訳する
素案への手直しや追加、翻訳のネイティブチェック、実際の制作物
辛口評価で「絶対売れる」。でも一人で回したら面白くなかった
ゲームを作る過程で、Mana(マナ)さんは思いついたばかりのルールをAIに投げて壁打ちしたことがあると言います。「面白いかどうか辛口で評価してください」「このゲームの穴は何ですか」と問いながら、ルールを組み立てていきました。
すると、あるゲームでは、どんなに辛口で評価してほしいと頼んでも、AIは高評価を返してきたそうです。
これはもう完璧です。絶対売れます。数学的にもルール的にも穴はありません。展開も完璧です
そこで、実際に自分で一人で回してみたところ、結果は正反対でした。
そしたらですね、全然面白くないんですよ。びっくりするぐらい面白くなかったです
ゴールに向けて考えを巡らせながら進む面白さがなく、ただゴールへ向かう作業でしかなかったといいます。一人で回していても「早く終われ」と思うような感覚だったそうです。ここから、人間が感じる楽しさはまだAIにはわからないのではないか、という話に入っていきます。
そもそも「楽しさ」とは何か。意外性と人間のバグから生まれる
では、そもそも面白さとは何なのか。Mana(マナ)さんは、お笑いや映画でも同じだとしたうえで、楽しさの正体について自身の考えを述べます。
面白いと感じるのは、意外性や、元々考えていたものとの違い、想定外のこと、自分がコントロールしきれないものがある時ではないか、というのです。
意外性や、人間に起こる不具合のようなもの。それはAIには理解できないのではないか、とMana(マナ)さんは考えます。だからこそ、人がエンタメとして楽しむものは、まだAIには難しいのではないかと話します。
特に、一見理論的なゲームルールの上で遊ぶ楽しさは、まだ人間にしか作れない。そこがゲームデザインの核になってくるのではないか、という見立てです。
仮にAIが人間の心をちゃんと理解するまでは、楽しさにこだわる領域へのAIの侵食はないだろう、とまとめています。
AIに奪われない「楽しさ」。人間臭さを掘るという結論
世の中ではAIの登場で多くの仕事が失われると言われています。それでもエンタメや楽しさの部分はまだ大丈夫だ、とMana(マナ)さんは考えます。演出を支える細かい作業や効率化はAIが担うとしても、人間の芯の部分は残るという見方です。
ただし、心理学のような学問をAIが完璧に理解し、楽しさを学問レベルまで昇華できたとしたら、その先はわからないとも付け加えます。それでも、人間がハンドリングしなければ面白いものは出てこないのではないか、と話します。
だからこそ、ボードゲームやエンタメの部分は、便利さよりも人間臭さ、自分にしかできないこと、自分の感性を掘っていった方がいいのではないか、というのがMana(マナ)さんの提案です。
AI利用をめぐる議論が活発になること自体はよいことだとしたうえで、AIにはできないこと、自分にしかできないアイデンティティやコアコンピタンスは何かを見つめ直しながら創作していくのがよい、と締めくくります。
散らばった情報の整理、説明書の素案づくり、文脈を踏まえた翻訳、演出の効率化
ゲームの楽しさの設計、意外性やニュアンス、創作の芯となる感性
結論として、情報を整理・変換する部分ではAIは結構使えるが、創作や楽しさの部分はまだ様子見、というのがMana(マナ)さんの現時点でのスタンスです。AIについては引き続き勉強を続けており、進展があればまた報告したいと話しています。
まとめ
ボドゲ制作におけるAI利用について、Mana(マナ)さんは「情報整理と翻訳では使えるが、楽しさの創作はまだ人間の領域」という立場を、自身の実体験を交えて語りました。
- AI利用の入口はコスト削減が多いが、微調整はかえって手間とコストがかかり、妥協につながりやすい
- 散らばったルールを説明書の素案にまとめる用途では、情報が整理され、ルールの穴も見えるためAIが役立つ
- 翻訳は文脈を読むぶん直訳より優れるが、ネイティブチェックはまだ人の手が必要
- AIが辛口評価で「絶対売れる」と言ったゲームも、一人で回すと面白くなかった
- 楽しさは意外性や人間のバグから生まれるため、創作の芯は当面人間に残るというのがMana(マナ)さんのスタンス





