なぜサービス業に未払い賃金が潜むのか
この回のテーマは、サービス業には高確率で未払い賃金があるのではないか、という問題提起です。ここでのサービス業は、飲食店や小売業、介護業などがイメージされています。
きっかけになったのは、つい先日マクドナルドが裁判で負けた出来事だと話されています。
負けた理由は、サービス業でよく使われる変形労働時間制の運用が、正しくできていなかったことにありました。
吉田さんは、この点について個人的な見方も添えています。
マクドナルドでも正しく運用ができないような制度だったら、法律が要求しているハードルが高すぎるんじゃないかなと思ってます
ただ、法律への意見はさておき、実務の現実として、求められている水準はそれほど高いのだと強調されています。
一般的なサービス業で運用されている変形労働時間制は、その水準を満たしていないケースが多いといいます。満たしていなければ、従業員から残業代の未払いを指摘され、会社が追加でお給料を支払うリスクが生じます。
そもそも変形労働時間制とは何か
話は、制度の基本に戻ります。変形労働時間制とは、一言でいうと法定労働時間の総枠を貸し借りできる制度だと説明されています。
たとえば事務職のサラリーマンであれば、1日8時間が通常の所定労働時間で、週5勤務で40時間まで働くのが原則です。
変形労働時間制を使うと、この8時間や40時間という総枠を、1ヶ月や1年の中で貸し借りできるようになります。
この回で取り上げるのは、1年単位と1ヶ月単位のうち、1ヶ月単位の変形労働時間制です。
1ヶ月単位の場合、月の前半はたくさん働き、後半は少なく働く、といったシフトが組めます。たとえば前半は週50時間働き、後半は週30時間しか働かない、という配分が可能になります。
1日8時間・週40時間を超えると残業。日ごと週ごとに一定
総枠を月内で貸し借り。前半週50時間・後半週30時間のような配分ができる
適法に運用するための3つのステップ
便利に見える一方で、1ヶ月単位の変形労働時間制を適法に運用するのは、かなりハードルが高いと話されています。踏むべきステップは大きく3つです。
1つ目は書類の作成と届け出です。就業規則、もしくは労使協定という書類を正しく作る必要があります。
吉田さんの肌感覚では、この最初のステップができていない会社も結構あるといいます。
2つ目はシフトの作成です。就業規則や労使協定の内容に合致したシフトを作らなければなりません。
運用がルーズだと問題になります。たとえば1ヶ月単位の制度なのに、シフトが2週間ごとにしか発表されないようなケースは、不適切な運用にあたります。1ヶ月ごとにシフトを作る必要があるのです。
そして3つ目が、正しく労働時間を集計することです。これが最も難しいと話されています。
残業代の計算がこれほど複雑になる理由
変形労働時間制の残業集計は、非常に複雑です。ポイントは、シフトで組んだ時間を基準に残業が判定される点にあります。
たとえば1日10時間のシフトが組まれている日は、10時間まで働いても残業代はかかりません。残業代がかかるのは、10時間を超えたところからです。
逆に8時間未満の、6時間のシフトを組んでいた日はどうでしょうか。6時間を超えても、すぐに残業代がかかるわけではありません。6時間から8時間までは残業代がかからず、8時間を超えたところから残業代がかかります。
10時間までは残業代なし。10時間を超えた分に残業代がかかる
8時間までは残業代なし。8時間を超えた分に残業代がかかる
こうした計算を、1日単位、週単位、月単位で細かく積み重ねていきます。リスナーに理解してほしいのは、とにかく集計がとても複雑だという点だと話されています。
電卓があっても集計が難しい。エクセルがあってもかなり難しいっていうぐらいの集計の難易度です
吉田さんの実感として、ここまでちゃんとやっている会社は多くありません。
冒頭のマクドナルドの話に戻れば、あのマクドナルドですら運用できなかったほど難しい制度です。零細企業でここまでできている会社は、ほとんどないといいます。
運用できないと何が起きるのか
正しく運用できていないと、どうなるのか。場合によっては変形労働時間制そのものが無効とされてしまいます。
すると原則に戻り、8時間を超えたところや週40時間を超えたところについて、残業代を求められるリスクが生じます。
飲食店でよくある間違いとして、変形労働時間制を適用しているから一切残業代はかからない、と思い込んでいる経営者もいまだにいると話されています。
比較的真面目に運用している会社でも、月170時間を超えたところしか残業扱いにしていない、といった不適切なケースもあるといいます。
問題は残業代だけにとどまりません。特に介護のように人材採用が難しい業界では、会社側がしっかりすることが重要だと指摘されています。
会社が頑張って運営していても、変形労働時間制の未払いを指摘されれば、社員の士気が下がり、会社の信頼にも影響しかねません。
信頼関係のためにシステム化という選択肢
だからこそ、大変であってもきちんと計算したほうがよい、というのが吉田さんの考えです。
ただし現実には、専門家である社労士でさえ、電卓やエクセルでは集計がかなり難しいといいます。そこで現実的な解決策として挙げられるのが、システムの導入です。
じゃあどうやったらきっちりできるのかってなると、やっぱりシステムを入れないといけないと思うんですよ
具体的には、クラウド勤怠システムの活用です。吉田さんの会社が推しているのはKingofTimeで、1ヶ月単位の変形労働時間制を適法に集計できるシステムを入れて計算する方法が紹介されています。
正しく集計して給料を払っていくことが、会社と従業員の信頼関係を作り、長い目で見れば会社の発展にも寄与すると締めくくられています。
まとめ
マクドナルドの敗訴が示すのは、変形労働時間制が正しく運用しにくい制度だという現実です。飲食・小売・介護などのサービス業では、書類・シフト・集計のどこかでつまずき、未払い賃金が潜んでいる可能性があります。
- サービス業でよく使われる変形労働時間制は、適法に運用するハードルが高い
- 書類の作成と届け出、1ヶ月ごとのシフト作成、複雑な労働時間の集計という3つのステップが必要
- 残業代はシフトで組んだ時間を基準に判定され、集計は電卓やエクセルでもかなり難しい
- 運用が不適切だと制度が無効とされ、残業代の追加支払いを求められるリスクがある
- クラウド勤怠システムなどで正しく集計することが、従業員との信頼関係と会社の発展につながる






