入園前夜、なぜあれほど不安だったのか
サエキタカフミさんは、Xに書いたところ思いのほか反応が多かった育児の話を、今回のポッドキャストで取り上げています。きっかけは、2人いる子どものうち上の子が数年前に保育園へ入るとき、園長先生に言われた一言です。
保育園はお子さんにとっては職場みたいなものですと。
園長先生は続けて、子どもは楽しそうにしていると思うけれどそういうものなので、少しでも早くお迎えに来られそうなときは来てあげてほしい、と伝えたそうです。サエキさんは、この言葉がずっと頭に残っていると話します。
第1子を保育園のような施設に預けるのは、サエキさんにとって初めての経験でした。入園式の前日、それまでずっと家にいた子が、慣らし保育 ── 入園直後に短い時間から預け始め、少しずつ保育時間を延ばして子どもを園に慣らしていく期間のことで数時間とはいえ自分たちの手を離れることに、強い不安を覚えたといいます。
(子どもは)怖い、怖いと思うんですよ、絶対。
サエキさんの中では、子どもへの「ごめんね」という気持ちと、ライフステージが1つ変わる段階を応援する「頑張れよ」という気持ちが入り混じっていました。いろいろな感情が巡って、とても悲しくなったことを今でも覚えているそうです。
楽しそうな子どもが、帰り道に見せる緩んだ顔
園長先生に「子どもにとっての職場」と言われたとき、サエキさんは「なるほど」と強く納得したといいます。上の子は今も毎日楽しそうに保育園へ通い、「なんとか先生がね」と園での出来事をよく話してくれるそうです。
サエキさんの目には、保育士の先生たちは本当にいい人たちで、仕事でありながら園に来る子どもたちを平等に愛しているように見えています。そこから話は、保育士の待遇の問題にも少し広がります。
保育士の待遇悪い問題とかね、社会的にあると思うんですけど、本当に誰かどうにかしろよと思ってて。
サエキさんは会社で経営企画 ── 企業の経営戦略や事業計画、組織の仕組みづくりなどを担う部署。全社的な視点で会社の方向性を考える役割を持ちますという、会社の仕組みを考える部署にいます。その視点から、保育園の仕組みがかなり属人的になっていて、それが保育士さんを悩ませているのではないかと感じ、力になれないかと思うこともあるそうです。
一方で、保育園から帰ってきた夕方の子どもたちは、かなり疲れていて、強く甘えたりかんしゃくを起こしたりもします。サエキさんは、子どもが気の緩んだ顔をしていることに気づきました。
緩むってことは、きっと気が張っていたんだろうなって。
楽しそうに見えても、子どもなりに保育園では気を使っているのだろう、とサエキさんは考えます。サエキさん自身も職場は楽しいものの、会話でも仕事でも「疲れるもんは疲れる」と話し、子どもも大人と同じなのだと実感したといいます。
保育園での子どもの状態について、サエキさんが語った流れを整理すると次のようになります。
園で気を張る
楽しそうにしながらも、子どもなりに気を使って過ごしている
夕方に気が緩む
お迎えのころには疲れて眠そうになっている
家で甘える
強く甘えたり、かんしゃくを起こしたりする
お迎えに行かないと翌日に言われる一言
そうした気づきから、サエキさんは早く行けるときは早くお迎えに行くことを意識しています。サエキさんの家庭では、朝は妻に任せることが多く、帰りのお迎えはサエキさんが担当することが多いそうです。
サエキさんが飲みに行くなどしてお迎えを妻に任せた日の翌日には、子どもから「昨日パパ来なかったね」と言われるといいます。ニヤッとしながら言われることもあれば、とても怒っていることもあるそうです。
子供たちにとってはパパがお迎えに来てくれるっていうルーティンみたいなものはやっぱ大事だったりもするんだろうなとか思ったりもします。
ただ、子どもが疲れてわがままを言うのは日中頑張ったからだと理屈では理解していても、親も仕事から帰ってきて疲れています。サエキさんは、毎朝毎晩牛乳をガブガブ飲む子どもに「誰のおかげで飲めるか知ってんのか」と冗談で言うこともあるそうです。
サエキさんは正直なところ、子どものわがままを受け入れられない日も全然あり、怒鳴り散らしてしまう日もあると打ち明けています。
泣く子どもに「泣くな」と言うことの意味
怒鳴ってしまう自分について、サエキさんは感情を出すことを自分に許してあげたいと思う一方で、子どもにも同じように感情を出すことを許してあげたいと考えています。
怒るなっていうことって、こう気持ちを殺せって子供に言ってるようなもんじゃないですか。
サエキさんは、幼い子どもに気持ちを殺させるのは、大人の都合であり傲慢なことではないかと感じています。子どもは自分の気持ちを素直に言語化できず、疲れて泣いていても「疲れたから泣いています」とは言えないからです。
だからこそサエキさんは、人生の先輩として、子どもの感情を受け入れられるくらい自分が成長しなければならないと最近考えているそうです。
「育児は育自」が腑に落ちた理由
「子どもを育てるとは自分を育てることだ」という意味の「育児は育自」という言葉について、サエキさんは子どもが生まれて間もない数年前には正直ピンと来ていなかったといいます。
今では子どもとのぶつかり合いが毎日のようにあり、本当にピンと来ているそうです。サエキさんはこれを、アンガーマネジメント ── 怒りの感情と上手に付き合い、衝動的な言動を抑えるための心理トレーニングの考え方。1970年代にアメリカで広まりましたに近い、自分の器を大きくさせてもらうチャンスだと捉えています。
子どもが生まれてしばらくのころは、言葉の意味にピンと来ていなかった
子どもとの日々を通じて、自分の器を大きくさせてもらうチャンスだと実感している
収録は夕方で、1、2時間後にはこの日もサエキさんがお迎えに行く予定でした。せっかくこの話をしたので、今日は10分でも早く迎えに行ってあげたい、と話してエピソードを締めくくっています。
まとめ
園長先生の「保育園は子どもにとっての職場」という一言は、サエキさんにとって、楽しそうな子どもの裏にある疲れに気づくきっかけになりました。そこから、お迎えの意味や、子どもの感情を受け止める親としての成長へと話が広がっています。
- 楽しそうに通う子どもも、保育園では子どもなりに気を張っていると考えられる
- 夕方のかんしゃくや甘えは、気が緩んだサインとして受け止められる
- パパのお迎えという日常のルーティンは、子どもにとって大事なものになっている
- 「泣くな」「怒るな」は、言葉にできない気持ちを隠させることにつながりかねない
- 育児は、親が自分の器を大きくしていく機会でもある






