産休・育休は「断ってはいけない」が出発点
この回のテーマは、1人目の産休・育休です。会社の社長がスタッフから「産休・育休を取りたい」と申し出を受けたときに、どう対応すればいいのかを整理していきます。
吉田さんがまず基本として挙げるのは、産休や育休は申し出があったら断ってはいけない、という点です。
なので、まずうちの会社は育休ないですよ、とか言わないようにしてください。
「育休はない」と口にした時点で、いわゆるマタニティハラスメントと受け取られるおそれがあります。その事実がSNSで広まると、会社の評判は大きく下がると吉田さんは注意を促します。
産休・育休を取る人は、特に産休については男女で大きな偏りがあり、圧倒的に女性が多いのが実情だと説明されます。肉体的に休まなければならない期間があること、その後に子どもを保育園へ入れるまでの時間があることが理由です。多くの場合、子どもが1歳になるまで育休を取るケースが多いといいます。
最初に届くのは「育休の申し出」ではなく「妊娠の報告」
経営者がまず理解しておきたいのは、最初に会社へ来る連絡は「育休を取りたい」ではない、という点です。それより前に上がってくるのは、妊娠の事実の報告だと吉田さんは言います。
多くの場合、安定期に入った段階で会社に伝えられます。そのため、実際に産休・育休へ入るまでには数か月ほど余裕があり、会社は早めに妊娠の事実を把握できることが多いといいます。
ここで吉田さんが強調するのは、報告を受けたときの最初の反応です。定番の解説では、すぐ引き継ぎの話に行きがちだと指摘します。
まずはその、おめでとうっていう風な形で、その妊娠の事実というのをお祝いするところから始めて、そこからじゃあ次、事務的にどうしていくんですか、と。
お祝いの言葉から入り、そのうえで事務的な話に移るという順番が大切だという整理です。
いつ休み、いつ戻る、を決めるスケジュールの共通認識
事務面で最初に決めるべきは、いつからお休みに入るのかです。多くの場合は産前産後休業の期間にあたります。
産休は産前6週間から入ることが多いものの、つわりがひどい場合はその前から病気休職という形で休むケースもあると説明されます。これを認めるかどうかは会社の判断で分かれるところです。
また、慣れ親しんだ環境で出産したいという希望から、早い段階で実家に帰る人もいます。こうしたケースもあるため、今後どう動いていくのかというスケジュールの共通認識を持った方がよいと吉田さんは述べます。
復帰時期が読めない理由と、代替人員をどうするか
ここからが難しいところだと吉田さんは切り出します。子どもが1歳になるまで育休を取るケースが多い一方で、その時期に確実に復帰してくるとは限らないためです。
理由の一つが待機児童の問題です。比較的解消されてきたとはいわれるものの、東京や神奈川では今もこの問題が残っていると指摘されます。
子どもが1歳になる年度の4月から保育園に入れるとは限りません。保育園には受け入れられる園児の数に限度があり、希望者がそれを上回ると受け入れられず、一旦待機の扱いになるからです。
子どもを保育園に預けられないと出社も難しくなり、そのまま育児休業が延長になる可能性があります。延長した場合、最大で子どもが2歳になるまで育児休業を取得できます。
つまり、1歳で復帰する場合もあれば、もっと早い場合も、2歳まで復帰しない場合もあり、復帰時期が読みにくいのが実情です。だからこそ本人の希望を整理したうえで進めた方がよいと吉田さんは言います。
復帰時期の見通しは、代替人員の判断にも直結します。
代替人員は採用しなくてもよい、と判断する会社もある
代替人員を確保し教育した方が、会社を安定的に経営できるという判断もある
産休・育休中のお金と、社労士に任せたい複雑な手続き
本人とのやりとりが終わると、次に待っているのが各種手続きです。産休中も育休中も、会社は基本的に給料を払わないことがほとんどで、特に中小零細企業ではまず払わないと吉田さんは述べます。
給料がないことで困るのは、産休・育休を取得するスタッフ本人です。そこに対して国が、給料の代わりになる金銭給付を用意しています。
これらを順番に申請していく流れですが、給付金を請求すれば終わりというわけではないと説明されます。
たとえば社会保険料を免除する手続きや、復帰後に年金が減額されないようにする養育特例といった、あまり知られていない手続きもあります。
ここは正直、社労士に委託した方が社長もストレスなく手続きできるかなと思います。
女性と男性で違うのは「会社に伝わるタイミング」
残りの時間で扱われるのは男性の育休です。イクメンという言葉が浸透し、男性の育児休業の取得も増えてきていると吉田さんは言います。国としても男性の育休取得を支援し、肯定的に捉えています。
男性と女性の育休の違いは、生物学的な体の変化がないという点にあります。それによって何が変わるかというと、会社に「育児休業を取ります」と伝えてくる時期です。
女性の場合は安定期に入ったら報告し、予定日も伝えられるため、そこから育休の期間を予想しやすいと説明されます。
ところが男性の場合、まずそもそも配偶者の方が妊娠しているかどうかっていうのを会社に報告してくるとも限らないんですよ。
1か月前の申し出でも取得できる、男性育休の難しさ
ここで問題になるのが、育児休業は法律上、1か月前に会社へ申し出れば取得させなければならないというルールです。
吉田さんは、これをさらっと言ったが非常に大きなことだと注意を促します。男性スタッフが「1か月後から育児休業を取ります」と言った場合、現実的に取れるのかというと、なかなか難しいというのです。
その人がやっていた業務を誰がやるのか、引き継ぎは1か月で終わるのか、代替人員として誰が入るのか。こうした問題が一度に出てくるためです。
なので、男性の育休っていうのは唐突に来る可能性がありますから、非常に難しいところがある。
こうしたトラブルが多かったためか、最近は法改正が入り、配偶者や本人の妊娠の事実がわかったら、会社が育児休業を取るのか取らないのかを確認するルールもできたと説明されます。
ただ、それでもこの義務を履行できていないケースはあると吉田さんは見ています。対策として、普段から研修をして、早く取るつもりなら会社に申し出るルールを浸透させておくことが望ましいと述べます。
まとめ
1人目の産休・育休で経営者がまず取り組むべきは、取得する可能性がある人を適切に把握し、本人とスケジュールの共通認識を持つことです。復帰時期の見通しや複雑な手続きを踏まえ、女性と男性それぞれの違いに合わせて早めに備えることが、円滑な事業運営につながります。
- 産休・育休は申し出があったら断ってはいけない。否定はマタニティハラスメントと受け取られ、会社の評判を損なう
- 最初に届くのは妊娠の報告。まずお祝いをし、そのうえでいつ休み・いつ戻るかのスケジュールを共通認識にする
- 待機児童などで復帰時期は読みにくく、最大2歳まで延長の可能性がある。見通しに応じて代替人員を判断する
- 出産手当金や育児休業給付金に加え、社会保険料免除や養育特例など複雑な手続きがあり、社労士への委託が勧められる
- 男性育休は伝わる時期が読めず1か月前の申し出でも取得可。研修で早めの申し出ルールを浸透させておくとよい






