ポッドキャストがコラムになる、その裏側で使われる生成AI
吉田さんは今週の回を、前回に続く「労務分野における生成AIの活用」の後編と位置づけています。前回は雇用契約書の点検や、Geminiでの業務の一部自動化といった実務寄りの事例を扱ったと振り返っています。
今回のテーマは、このポッドキャスト自体がコラム記事になっていくという話です。そして、そのコラム化の過程でも生成AIを使っているという舞台裏を紹介していきます。
背景にあるのは、社労士法人ONE HEARTの経営課題です。法人は4年が経ち、来年2月に5年を迎えるところで、ウェブマーケティングを強化していきたいという狙いがあると話されています。
その手段として挙げられるのがコンテンツマーケティングです。自社のウェブページにコラムを蓄積し、Googleなどの評価を上げて、検索時に自社ホームページが上位に表示される状態を作りたいという構想です。
コラム作成の「筆の重さ」を、170回分の音声で解く
ただし、コラムを1から作るのは大変な作業だと吉田さんは言います。ゼロから起票すると1日仕事になり、書いた経験のある人なら、筆が重くて進まない感覚がわかるはずだと語られています。
そこで着目したのが、170回以上続けてきたこのポッドキャストの音声データです。この蓄積を使ってコラムを作れば、リスナーにとっても文字起こしされたものが読めて聞きやすいのではないか、という発想でチャレンジしていると話されています。
結構あれ筆が重くて進まないんですよね。
音声からコラムへ、文字起こしと初稿作成の手順
具体的な手順として、まず10分ほど話したポッドキャストの音声データを、文字起こしをしてくれるAIにアップロードすると説明されています。
文字起こしツールの例として、LINEが出している無料のツール、GeminiやNotebookLM、貼り付けると文字起こししてくれるSlackなどが挙げられています。ツールはたくさんあるので、そこにアップロードしてまず文字起こしをするという流れです。
文字起こしをすると、話した内容がテレビドラマの台本のような形で出来上がります。ただ、それだとコラムとしては読みづらいため、その台本のようなデータをAIに読み込ませてコラムを書いてもらう、という2段階になっています。
コラムを書かせるプロンプトでは、まずAIに役割を与えていると言います。「あなたは一流のビジネスライターです」と設定し、吉田さんから音声の文字起こし情報と記事タイトルを渡し、それをもとに最適な記事を出力させるという指示です。
あなたは一流のビジネスライターです。吉田から音声のラジオの文字起こし情報と記事タイトルを提供します。
さらに、どんな文体で書くか、セクションごとに何百字で区切るかなど、細かくプロンプトを作り込んでコラムを書いてもらっていると話されています。
NG表現を弾き、「吉田が書いたっぽい」文章にする工夫
プロンプトには、社会保険労務士として不適切な表現を弾く工夫も入れていると説明されています。
NG表現の例として、「完全成功報酬型で助成金を獲得します」「障害年金を成功報酬で報酬を頂戴します」といった、社労士会が倫理的な観点から使わないよう求めている表現が挙げられています。これらをAIに学習させ、弾くようにしていると話されています。
元の音声でも使っていないので大丈夫だと思うが、念のためこうした仕組みを入れている、と補足されています。
もう一つの工夫が、文章を「吉田さんらしく」する点です。ただ「コラムを書いて」と指示すると、Geminiが書けばGeminiの文体になってしまい、自分が作った文章ではなくなってしまうと指摘しています。
あくまでGeminiに書き起こしたら、Geminiの文体になっちゃうんです。
そこで、過去に吉田さん自身が実際に書いたコラムを10記事ほど読み込ませ、言い回しをAIに理解させた上でコラムを書かせていると言います。プロンプトには「執筆前に必ず参考記事を参照し、構成や文体を参考にしてください」といった指示を入れているとのことです。
その結果、後から自分でコラムを読んだときに、自分が書いたような文章になっていて、しかも速く出来上がるようになったと話されています。
ChatGPTとGeminiを比べて、書き起こしに向くのはどちらか
ここで吉田さんは、どのAIで書き起こすのがよいかという脱線に入ります。結論としてはGeminiが一番良かったと述べています。
比較したのはChatGPTとGeminiのどちらで書き起こすかという点です。理由ははっきりしないとしつつ、Geminiのほうが昔から自然な日本語が出てくると話されています。
一方でChatGPTで書き起こしたものは、コラムというより淡々とまとめたような文章で、読み物という感じではなかったと述べています。同じことをやるならGeminiのほうを勧める、というのがこの比較の結論です。
昔から自然な日本語が出てくる。読み物としてのコラム向き
淡々とまとめたような文章で、読み物という感じではなかった
プロンプトはAIに作ってもらう、という今どきの作り方
プロンプトの作り方についても触れられています。役割を与えるといった基本はネットに情報が落ちているとしつつ、今は状況が変わり、プロンプト自体もAIに作ってもらえるようになっていると言います。
具体的には、やりたいことを素直に伝えるのがよいと説明されています。ウェブ集客の観点からコラムを作りたい、元の音声データを集客や採用につながるコラムにしたい、そのためのプロンプトを作ってほしい、と相談すると作ってくれるとのことです。
出来上がったプロンプトの内容を見て、おかしい点を直したり、付け加えたほうがよい点を足したりしていくと、短時間で良いプロンプトができると話されています。
Gemini・Claude・人間、3段階で仕上げるコラム制作
実は、この書き起こしは吉田さん自身が行っているわけではなく、ポッドキャストの収録支援をしている会社に依頼していると明かされています。
その会社からの提案が、AIの組み合わせ方につながっています。吉田さんからは「Geminiがよい」と情報提供したところ、相手からは「Claudeのほうがより日本語がよい」という提案があったと言います。
そこで、Geminiで書き起こしたものをClaudeで仕上げていく、というAIとAIを組み合わせる形になったと説明されています。
さらに整理すると、書き起こしの段階で別のAIを使い、文字起こしのAI、Geminiでのコラム初稿、Claudeでの仕上げ、と3つのAIを使っていることになります。そして最後は当然、人間が確認していると付け加えられています。
文字起こしAI
音声を文字起こしする
Gemini
文字起こしをもとにコラムの初稿を作る
Claude
初稿を日本語として仕上げる
人間
最終的に内容を確認する
一番のメリットは、コラムの「心理的ハードル」が下がったこと
吉田さんは、この仕組みを本当にやってよかったと振り返ります。コラムで何が大変かというと、内容そのものより心理的なハードルだと語っています。
書き出してしまえば集中して書けるものの、その前に「よいしょ」と気持ちを入れるのが非常に大変だという実感です。自分の場合はコラムを書くなら他の仕事を全部片付けてから、夜や土日にゆっくり書きたくなり、多くの人も同じではないかと話されています。
土日はチャットも電話も来ないため書きやすい一方で、貴重な休日を使うことへの抵抗もあると述べています。AIを使うことで、まずこの心理的ハードルが下がったと言います。
作業時間の面でも効果が大きいと語られています。以前はコラム作成に半日から1日かかっていた上、気持ちを上げるのに1日2日かかるため、実質的にはかなりの時間を費やしていました。
それがAIをかませることで、1時間ぐらいで終わるようになったと話されています。心理的ハードルが下がったことこそ、このAI活用の一番ありがたいところだとまとめています。
気持ちを上げるのに1日2日、作業に半日から1日。心理的ハードルが高い
AIをかませることで1時間ほどで完了。心理的ハードルが大きく下がった
そしてリスナーに向けて、コラムがどんどん出来上がっていくので、ぜひそちらも見てほしいと呼びかけています。
生成AIとうまく付き合うコツは「複数を使い分ける」こと
最後に、生成AIとうまく付き合うコツが語られます。生成AIの活用は好き嫌いが分かれるとした上で、うまくいかない人には共通点があると指摘しています。
批判的に語る人は、ちょっとしか使っていなかったり、一つのAIに固執していたりする場合が多いように見受けられる、という観察です。Geminiしか使わない、ChatGPTしか使わない、といった状態です。
そうした人は、一つのAIに正解を出させようと攻撃的に指示を出し、うまくいっていないのではないかと吉田さんは見ています。
一方で、AIをうまく使っている人は複数のAIを使い、それぞれの出力結果を組み合わせて最適な答えを出しているケースが多いと述べています。
だからこそ、一度生成AIの活用を諦めた人がいたら、一つのAIに頼るのではなく、複数のAIで回答結果を見比べたり比較したりしてみることを勧めています。それが活用を進めるためのポイントだという主張です。
吉田さん自身も、Gemini、ChatGPT、Genspark、生成AIが入ったプロダクトなどを使っていると挙げています。数え上げるだけでもこれだけあり、他にもいろいろあるので、いろんなAIを使って業務効率化していきたいと締めくくっています。
まとめ
この後編では、社労士のポッドキャストをコラム記事に変える具体的なワークフローを通じて、生成AIを実務にどう組み込むかが語られました。要点は、複数のAIを役割ごとに使い分け、最後は人間が確認するという組み立て方にあります。
- 170回以上のポッドキャスト音声を、文字起こしAIとコラム生成AIでコンテンツ資産に変換している
- プロンプトでは役割・文体・字数を指定し、NG表現を弾き、過去記事を読ませて「本人らしい」文章に近づけている
- 書き起こしはGeminiが自然な日本語で優れており、Geminiで初稿、Claudeで仕上げ、最後に人間が確認する3段階構成を採っている
- 最大のメリットは、半日から1日かかっていたコラム作成が1時間ほどになり、心理的ハードルが下がったこと
- 生成AIを活かすコツは、一つに固執せず複数のAIの出力を見比べて組み合わせること



